桐一兵衛(きりいちべい)または斬一倍(きりいちばい)は、新潟県南魚沼郡南蒲原郡に伝わる妖怪[1][2]

概要 編集

ある侍が、おのぼり峠という場所を通っていたところ、小さい子供が「早く歩いてお父様に抱かれ」と言いながら追いかけてきた。侍が不審がって足を速めると、子供はさらに追いかけて来た。侍はこれを化け物と直感し、刀で真っ二つに斬り捨てた。ところが二つに斬られた子供は2人になり、それらを斬るとそれぞれがさらに2人ずつになり、やがて数え切れないほどになった。

侍はたまらず逃げ出したが、化け物は騒ぎ立てながら追いかけて来た。危うく化け物に捕まりそうになったとき、ニワトリの声がして、化け物たちは「朝になったから帰ろう」と消え失せた。侍が後で気づいてみると、ニワトリの声を上げたのは、自分の刀に彫られていたニワトリの目貫だった。これが桐一兵衛、または切一倍という化け物だという[3]

脚注 編集

  1. ^ 村上健司 編『妖怪事典』毎日新聞社、2000年、140頁。ISBN 978-4-620-31428-0 
  2. ^ 全国ご当地妖怪案内”. 週刊! エキサイト. エキサイト. 2009年1月31日閲覧。
  3. ^ 文野白駒『加無波良夜譚』玄久社、1932年、33-34頁。