棒鱈

鱈を乾燥した保存食

棒鱈(ぼうだら)とは、日本マダラ干物のこと。日持ちしないタラを流通させるために、古くから加工されてきた保存食である。主に煮物に用いられ、ほろほろとした食感と独特の風味に特徴がある。干鱈(ひだら)とも呼ぶ。北欧でもよく似た見た目のタラの干物が作られており、中でも塩漬け干物は輸出先のポルトガルスペインバスク地方などではバカラオと呼ばれている。

棒鱈

歴史 編集

江戸時代以前から、東北北海道地方における海産物を使った保存食の代表格として製造が行われてきた。加工された棒鱈は北前船関西方面に運ばれ、正月料理やお盆料理の一品として食べられた。東北地方の山間部では夏の保存食としても、また北九州では夏のに食べる習慣がある。

製造方法 編集

マダラ(スケトウダラを使う場合もある)を三枚におろし(尾の部分は下ろさず両身が繋がった状態)頭と背を取り去ってから洗い、本来はを振らずに厳寒期に1〜3ヶ月程度凍結する状況で荒縄にかけて陰干しし(水分が多い状態では日に当たると傷みやすい)、最後に天日干しで乾燥加工をするが、現在では乾燥機により乾燥させ最後に天日干しをするところもある。風の強い地域では長期の寒風干しを行うところもある。主に漁期であり旬でもある12月から2月までの間に製造される。完全に乾燥したものは極端に身が硬くなり文字通り棒状になる。地方(新潟県小千谷地方など)により三枚に下ろさず内臓と頭だけ取り除き骨付きのまま干したものが好まれる地域もある。

食べ方 編集

 
たらおさ

非常に硬いため、そのままでは食べることが出来ないが、金槌等で叩いて身をほぐし、酒のにすることはできる。

一般的には何日も掛け水に浸し水を取り替えながら戻し、あく抜きをする必要がある。十分に柔らかくなってから、芋などと炊き合わせたり、うま煮甘露煮煮魚等に加工される。海老芋と炊き合わせた芋棒は、伝統的な京料理として知られる。棒鱈と芋の煮物を河原などで作って食べる風習が、芋煮会の起源とも言われる。

日田など九州の山間部や博多では棒鱈の内臓部分(えらと食道と胃の繋がった物)を「タラの胃」若しくは「たらおさ」と称して煮付けにしてハレの日のご馳走にしている。一説では、棒鱈を売る際にこれらの地域に入る頃には身は全て売れてしまい内臓と骨だけになってしまっていたから、と言うのが由来とされる。

参考文献 編集