決定論(けっていろん、: determinism: determinare)とは、あらゆる出来事は、その出来事に先行する出来事のみによって決定している、とする立場。

対立する世界観や仮説は「非決定論」と呼ばれる。

概説編集

決定論/非決定論には様々な種類があり、宗教的信念や世界観とも関わる面があるため、時として見解の対立も出る。神学と自然科学の2つの論点がある。

ギリシャ哲学以前の原始文明からの超常現象や神学の時代から17世紀-19世紀に掛けた産業革命を経て、哲学と自然科学は急速な進歩を遂げた。そこで決定論は「人間には自由意志があるのか?無いのか?」といった角度から扱われることが多くなった。

自然科学的決定論は、20世紀になると、量子力学におけるコペンハーゲン解釈によって、宇宙は原子下のレベル・量子レベルであまねく確率的であるという説が有力となる。

その後人間を含めた物質を粒子の集まりとしてとらえるようになり、その挙動によって粒子の未来の位置は量子論的に決定されていると考えられ、人間の意志や思考を含めて絶対的に未来が確定されているという量子哲学的な解釈が可能となる。

分類編集

神学的決定論編集

全知全能な神によって、全て決められているという説。神による決定因子であり、人の自由意思が否定される。

動物的(生物的)決定論編集

人は生物(動物)の一種であるから、多くの餌(エサ)や縄張りを欲しがったり、他種と闘争するといった生物的な性質を備えている。

その帰結としての、過去の国家間レベルの植民地政策といったことが挙げられ、後述の政者的・統治論的決定論へ繋がる。

心理学的決定論編集

ギリシャ哲学のプラトンのイデア論(それ以前の哲学者など)から来ており、精神⇔物体という二元論の

心(精神のみ)という一元論を決定因子としたもの。

唯物論的決定論編集

世界は物体のみから形成される、という一元論(マテリアリズム)から来たもので、

ドルトンの原子論の立証や現代の素粒子論などにより根拠がある。

決定因子は「物体」である。宇宙論のダークマターも物質の一つである。

経験論的決定論編集

人は予め、白紙の存在であって、神に与えられたもので無く、後天的な経験によって得られる、とする説から、

人は経験によって決定する根拠が得られるという説。

経験的に危険なリスクを知り、それを回避する、といった経験的な行動がそれにあたる。

特に17世紀以降の近代の発展や産業革命の影響が大きく、啓蒙主義や啓蒙思想と呼ばれる。

イギリス的経験論として、ヨーロッパ大陸合理論と対比される。

機械論的決定論編集

決定因子は「機械的な因果律」によるものという説。特に17世紀以降の近代の発展や産業革命の影響が大きい。

工場の生産機械やコンベアで機械的に作られた機械や、機械が備える機能上の動作に例えられている。

自然科学的決定論編集

「決定因子」は「自然科学的な法則」によるものという説。

車で一定時間、一定開度でアクセルを踏むと、一定の速度に到達するが、これが古典力学的な決定論の結果である。

遺伝的決定論編集

「決定因子」は「自然科学的な法則」によるものという説に近いが、「遺伝因子」を根拠として、

これが決定因子となる、というものである。世襲と似ているが、

具体的には、運動が得意だ、頭脳労働が得意だ、容姿端麗である、特技がある、といった所から

職業や趣味などの選択が成されることが多いが、これらの特徴は

親世代からの「遺伝子的要因」とし、「遺伝子」を「決定因子」と見る。

つまり人の自由意思で無く、「遺伝子」を「決定因子」として、職業や趣味が決定された、と解釈できる。

経済的決定論編集

世襲制による二世問題や「教育問題」など、「経済力による決定因子」。これは現代の社会問題の一つであり、大衆に広く支持されている。

大金が必要だから、高度な名門学校で、高度な教育が受けられない。塾に通えない。医者や芸術家、政治家に成り辛い、といった問題である。

古くは小作人と地主の問題があり、親が大地主で無ければ、地主になるのは難しいとされる。創業しても、大成功する確率は低い。並の成功であろう。

道徳的決定論編集

社会的、公共的な立場から、決定する因子が決まるというもので、倫理学的、神学的な側面も備える。

具体的には、親が心配するから、オートバイの免許を取らない、といった「親の因子」による行為も「道徳的決定」にあたる。

「人の自由意思」と、「道徳観念」との競争、バランスが問題となる。

確率論的決定論編集

確率論的決定論とは、未来は確率因子によって支配されており、その限りで未来は決定しているのだ、とする主張。

量子力学をベースとした、哲学的解釈による、量子哲学が基本となり、その意味では「自然科学的決定論」とも言える。

未来が確率的であるので、機械論的決定論と同様に、自由意志の存在は原則的に否定されるのだ、と主張する人もいる。

自由意志#両立主義も参照)

為政者的・統治論的決定論編集

「為政者・統治者を決定因子」と見なす考え方。 神では無い、「地上の王様」、「政治家」、「有力者」などが、私的な軍隊を悪用し、国の統治が始まったと考えられている。 この為政者による独善的、あるいは社会主義的、あるいは資本主義的な、暴挙的な決定論のことである。 「為政者」に都合が良いように、大衆を管理・コントロールする為に、大衆が支配される所からの決定論となる。

「封建主義」「封建時代」にはこの意味合いが強くなり、大航海時代の植民地政策や、黒人奴隷などの帝国主義が典型例である。

現代の軍隊や警察といった国家権力などから、大企業やシンクタンクの方策に至るまでの決定因子がこれにあたる。

社会的・大衆的決定論編集

「大衆側を決定因子」と見なす考え方で、古くは「ギリシャ市民による国家運営」がある。 【ルターなどによる宗教改革】【産業革命による啓蒙主義運動】【議会制度】 などがこれらの一つである。 二度の世界大戦を経て、「為政者」「国家」「独裁者」側を大衆に都合が良いように、 管理・コントロールする為に、広く大衆運動が行われるようになった。 これを「民主化」運動などと呼び、帝国主義による資本主義的植民地支配から、 世界各国が独立して、民衆が救われるようになった。

マイノリティ決定論編集

「マイノリティを決定因子」と見なす考え方で、大衆と関連し、マイノリティを保護する意味合いが強い「社会的な因子」の一つ。少数派の民族運動などがこれにあたる。為政者的・統治論的決定論で触れた、植民地時代の黒人奴隷問題からの、白豪主義や人種差別、黒人非正規雇用や未就学問題からの帰結である。

また経験情報が神学の領域から自然科学の領域へ発展・シフトする段階では、必ず優等的かつ先進的な哲学者や学者や思想家や人材が排出されることで、

大衆をリードするといった意味合いが大きい。宗教学者、天文学者、哲学者などが為政者から迫害された理由である。

この意味から、資本家を擁護する観点もあり、昨今のGAFA問題などがこれにあたる。

決定論のまとめ編集

近代科学においては、物理学者であり決定論者でもあったピエール=シモン・ラプラスは、 もし宇宙の全ての原子運動および位置が分かるならば未来は完全に予測できると主張した(ラプラスの悪魔)。 その後、「宇宙の全ての原子運動および位置が分かる」可能性が ビッグバン理論や宇宙論により、証明されつつある。

ビッグバン理論は一点に凝縮していた、素粒子群が、宇宙空間に広がったとする学説である。 これにより素粒子が存在する宇宙の果ては、時間と空間から明確に規定される。

さらに粒子性と波動性がハイゼンベルク不確定性原理によって証明され、 「確率論的決定論」として、量子哲学が生まれ、新たな場面を迎えた。 実際にブラウン管上での素粒子(電子)は、「確率論的に波動現象が生じて広がる」為に画面が表示されるのである。

近年では太古の昔に神学の範疇とされていた自然災害(地震や火山噴火)が自然科学の進歩によって、 有る程度、予測できる時代になっており、自然災害から「人災」という表現へ、シフトされつつある。 また近年は細胞生物学が目覚ましく進歩してきており、ES細胞といった神の領域へ近づきつつある。 このように複雑系の自然現象も有る程度は理解が進むようになってきている。

人は「確率論的な因子」によって未来が決定されてしまう可能性が高くなっている。

決定因子の因果律編集

①動物的(生物的)決定論→為政者的・統治論的決定論→神学的決定論→道徳的決定論→社会的・大衆的決定論→自然科学的決定論→マイノリティ決定論

ある「ライオン」が「多くの縄張りと餌を欲しがり」、「ライオン自らを神格化」して、「家来のライオンを従わせようとする」が、

それに対抗してお互いに「道徳」を持ち出し、「縄張りのライオンが相談」して、「優秀なライオン・虐げられたライオン」が、「優れた提案」をして

為政者ライオンと大衆ライオンがそれに従った、といった「因果律の相関関係と発展」の歴史が考えられる。

②世界の文化、文明が発展してきた大本が「大衆的決定因子」から生じた、「マイノリティ決定因子」によるもので、マイノリティは

遺伝子の突然変異から生じたという「遺伝的な決定因子」と因子を序列づけることで、決定因子そのものにも因果律が存在している。

③DNAは分子細胞生物学から、生じ、分子細胞は生化学から生じており、生化学は、原子化学から、生じ、量子化学から、素粒子論へ帰結する。

④太古の「神学的な決定因子」は

「為政者的・統治論的決定因子」/「道徳的な決定因子」/「経験論的な決定因子」/「自然科学的な決定因子」/etc

の混合と見なすことができる。

⑤ビッグバン宇宙論から銀河団→銀河系→恒星系→惑星という因果律が成り立つ。

⑥etc

このようにして、「全ての決定因子にまで因果律が成り立っている」のである。

・・・というのが決定論の根拠となる。

関連文献編集

日本語のオープンアクセス文献
  • 阿部剛久 「哲学から数理の世界へ-自然科学に現れた「決定論」とその現代的課題をめぐって」『京都大学数理解析研究所講究録』 1257巻 2002年 p.128-141, 京都大学数理解析研究所
  • 伊佐敷隆弘 「因果と決定論」『宮崎大学教育文化学部紀要 人文科学』 21巻 2009年 p.1-16, ISSN 1345-4005, 宮崎大学教育文化学部
  • 木村陽二郎 「生命現象からみた決定論と自由」『科学基礎論研究』 6巻 2号 1963年 p.55-59, doi:10.4288/kisoron1954.6.55, 科学基礎論学会
  • 遠山諦虔, 坂本賢三、「上田大助著“科学としての形而上学(昭.26年)”及び“形而上学の進歩(昭.30)”/ポーレット・フェヴリエ『決定論と非決定論』」『科学基礎論研究』 2巻 2号 1956年 p.273-279, doi:10.4288/kisoron1954.2.2_273, 科学基礎論学会
  • 真田郷史 「スピノザ哲学における「決定論と自由」の問題」『哲学』 1987巻 37号 1987年 p.163-174, doi:10.11439/philosophy1952.1987.163, 日本哲学会
  • 戸田洋樹 「「やわらかい決定論」について」『哲学』 1975巻 25号 1975年 p.131-141, doi:10.11439/philosophy1952.1975.131, 日本哲学会
  • 吉田夏彦 「決定論と自由」 『哲学』 1961巻 11号 1961年 p.1-10, doi:10.11439/philosophy1952.1961.1, 日本哲学会
一般書籍

関連項目編集

外部リンク編集