宇宙

惑星、恒星、銀河、銀河間空間、全ての物質とエネルギーの総体

宇宙(うちゅう、ユニバース、universe)は、時間空間のすべて、およびその中に存在するすべての事物の総称。恒星銀河などあらゆる形態の物質およびエネルギーが含まれる。現代天文学および物理学においては、ビッグバン理論(Big Bang theory)に基づいて記述される、138億年前に誕生し現在も膨張を続ける物理体系を指す[2]

観測可能な宇宙対数スケールで表した図。便宜上、太陽系を中心として描かれており、太陽からの各天体の距離は、中心から端に向かって指数関数的に増加している。また、形状が分かるように各天体は拡大されており、実際のスケールとは異なる。
ハッブル・ウルトラ・ディープ・フィールド。130億年前(ビッグバンから8億年後)と推定される宇宙の画像。現在までに撮影された中で最も深い宇宙の画像である[1]

観測技術の向上に伴い、今日では我々の住む地球は、太陽を中心とした惑星系(太陽系)の一部であり、その太陽は天の川銀河の中の何千億という数の恒星のうちの一つである、ということが分かっている。そして天の川銀河でさえも、何千億という数の銀河の一つにすぎないと推定されている。宇宙内における物質・エネルギーのあり方には宇宙原理(cosmological principle)が仮定され、宇宙に中心は存在せず、(巨視的には)すべての物質・エネルギーは均一に分布していると想定されている。宇宙全体の大きさは現在も不明だが、我々から観測可能な宇宙(observable universe)については、直径930億光年の球状の領域であると計算されている。

ビッグバン理論では、宇宙は誕生直後、指数関数的な膨張(インフレーション)を経験したと推定され、これはインフレーションモデルにより説明される。それと前後して、宇宙を支配する4つの基本的な相互作用(fundamental interactions)が分離した。その後も宇宙は膨張を続けるとともに冷却され、亜原子粒子、ついで原子分子が構成された。水素およびヘリウムからなる分子雲から銀河および恒星が生まれ、長い時間をかけて我々が知る今日の宇宙が成立したと考えられている(宇宙の誕生と進化の項を参照)。

ビッグバン理論を構成する宇宙論的パラメータはΛ-CDMモデルとして体系化されている。このモデルにおいて、宇宙は原子バリオン)からなる通常の物質(matter)、ダークマター(dark matter)、そしてダークエネルギー(dark energy)から構成される。現代の物理学で記述できる通常の物質が占める割合は5%程度であり、ダークマター・ダークエネルギーからなる残りの95%は現在も正体がわかっていない。各成分の構成比率は時間とともに変化しており、現在はダークエネルギー優勢時代(dark energy-dominated era)とされ、ダークエネルギーの影響により宇宙の膨張が以前より加速している(宇宙の加速膨張[3]

定義編集

宇宙は、各時代・文化によって様々な形で議論されてきた。したがって、統一された単一の定義は存在しないが、例えば、以下のように宇宙を定義づける。

  1. 秩序をもつ完結した世界体系(コスモス)。
  2. 全ての時間と空間、およびそこに含まれるエネルギーと物質[4]
  3. 多元的宇宙(マルチバース)のうちの一つとしてのユニバース。単一宇宙と区別して複合宇宙全体を指す場合にはオムニバースともいう。
  4. 地上約100km以上の上空を指す便宜的な定義[注釈 1]。この意味を明示する「outer space」を「外宇宙」と訳す場合も有る。

各定義は互いに重なり合っており、排他的なものではない。本項は主に1~3の意味での宇宙に対応する。

天文学的観点からは、宇宙はすべての天体・空間を含む領域をいう。銀河のことを「小宇宙」と呼ぶのに対して「大宇宙」ともいう。物理学的観点からは、宇宙は物質・エネルギーを含む時空連続体のまとまりであり、生成・膨張・収縮・消滅する物理系の一つである。哲学宗教的観点からは、宇宙全体の一部でありながら全体と類似したものを「小宇宙」と呼ぶのに対して、宇宙全体のことを「大宇宙」と呼ぶ場合がある。

「地球の大気圏外の空間」という意味では、国際航空連盟 (FAI) の規定によると空気抵抗がほぼ無視できる真空である高度 100 km 以上のことを指す[5]アメリカ軍では高度50ノーチカルマイル (92.6 km) 以上の高空を「宇宙」と定めている。

語源編集

宇宙という言葉の起源は不明だが、次のような説がある。

  • 「宇」は「天地四方上下」(つまり上下前後左右、三次元空間全体)、一方「宙」は「往古来今」(つまり過去現在未来時間全体)を意味し(中国の戦国時代の書物・「尸子巻下」)、「宇宙」で時空(時間と空間)の全体を意味する(代の書物・「淮南子斉俗訓」)[6]
  • 「宇」は「天」、「宙」は「地」を意味し、「宇宙」で「天地」のことを表す。古代中国の漢字文化で、「宇」と「宙」を組み合わせて生まれた言葉であると言われている。

英語のuniverseは古フランス語のuniversに由来する。universはさらにラテン語のuniversumに由来する[7]。このラテン語を用いたのはキケロであり、その後も多くのラテン著作家によって現代の英語と同じ意味で使用された[8]

考察の歴史編集

 
ペトルス・アピアヌス (en:Petrus Apianus) による Cosmographia 。アリストテレスの説に沿ったコスモス像。天球の多層構造(アントワープ、1539年)
 
アルマゲスト』(George of Trebizond によるラテン語版、1451年頃)

宇宙がいかに始まったかについての議論は、宗教哲学科学上の問題として古代より語られて続けている[9]。例えば古代インドのヴェーダには、無からの発生、原初の原人の犠牲による創造、苦行の熱からの創造、といった宇宙生成論が語られている。古代ギリシャではヘシオドスの『神統記』に宇宙の根源のカオスがあったとする記述がある。ピタゴラス学派は宇宙を秩序ある体系(コスモス)と見なし、天文現象の背後にひそむ的な秩序を追究した。秩序の追究は、やがてエウドクソスによる地球を27層の天球が囲んでいるとする説へとつながり、それはさらにアリストテレスへの説へと継承された。

2世紀頃のクラウディオス・プトレマイオスは『アルマゲスト』において、天球上における天体の軌道を数学的に分析して天動説を完成し、ヨーロッパ中世においてもこの説に基づいて宇宙は説明された。しかし天球を用いた天体の説明は、その精緻化とともに、必要な天球の数が増えていき、非常に複雑なものとなっていった。こうした状況に対し、ニコラウス・コペルニクスは従来の地球を中心とする説(地球中心説)に対して、太陽中心説(地動説)を唱えた。地動説は、当初は惑星の楕円軌道が知られていなかったために、周転円を用いた天動説よりも精度が低いものであったが、やがてヨハネス・ケプラーによる楕円軌道の発見などにより精度が増していき、天動説に代わって中心的な学説となった。宇宙は始まりも終わりも無い同じ状態であるものとアイザック・ニュートンは考え[9]、『自然哲学の数学的諸原理』の第3巻「世界の体系について」において万有引力の概念を導入し、地球上の物体も、太陽の周りをまわる惑星の動きも、数学的原理を用いて統一的に説明できることを示した。ただし、こうした理論体系を構築した背景には神学的な意図があったとも指摘されている。ニュートンが同著でユークリッド幾何学を用いつつ絶対空間・絶対時間という概念を導入したため、その後の西欧では、多くの人々が宇宙を無限に均一に広がる静的で安定した空間であると考えていた。

しかし20世紀に入り、アルベルト・アインシュタインにより絶対時間・絶対空間が否定され、宇宙の動的なモデル(宇宙方程式)が提示された[9]。また、司祭であり天文学者でもあったジョルジュ・ルメートルが「宇宙は“原始的原子”の“爆発”から始まった」とする説を提唱し、この説が後に「ビッグバン」と呼ばれるようになった。この説は当初は反発もあったが、やがて受け入れられるようになり、今日の「標準的宇宙論モデル」の基礎となった。

現代宇宙論編集

現代宇宙論
 


宇宙
ビッグバンブラックホール
宇宙の年齢
宇宙の年表

宇宙の大きさ編集

映像外部リンク
  宇宙の大きさ - 2009年時点の科学的知識に基づき、宇宙背景放射が放射された面までの宇宙全体を光行距離で描いた動画 (2009年12月、アメリカ自然史博物館

宇宙の大きさについては未だわかっていないが、「宇宙の果て」には2つの意味がある。ひとつは、物理的な空間に端があるのか、相対性理論が提唱されて以降は、空間は曲がってつながっていて端は無いのか、という問題として扱う場合。もうひとつは、地球から理論上観測可能な領域(観測可能な宇宙)という意味である。宇宙は膨張し続けているため、後者の意味での観測可能な宇宙の果ては、観測できる光のなかで、最も古い時代に光が放たれた当時の地点の現在の位置を意味する。つまり約138億年前(宇宙の晴れ上がり直後)、その地点(観測可能な宇宙の果て)は地球がある位置から約4100万光年離れたところにあり。その地点はその後、地球から光の約60倍の速度[注釈 2] で遠ざかっていたとされ、現在では約450億光年[注釈 3]共動距離英語版)の彼方にあると推定されている[10]

ちなみに、「天体から放たれたが地球にたどり着くまでの時間に光速をかけたもの」は光行距離英語版と呼ばれる[注釈 4]。これは光が地球に届くまでの間に、光の旅した距離を表す。光行距離では、電磁波により観測される宇宙[注釈 5] の果てから地球までの光の旅した距離は約138億光年と推定されている。これは光速に宇宙の年齢をかけたものだが、この値は先に述べた2つの距離(450億光年、4100万光年)と値が異なる。これは光が地球に届く間に宇宙が膨張し、そのため光の道のりが延び、また光を放った空間が遠ざかるためである。つまり、光行距離はある時刻における空間上の2点間の距離を指し示すものではない。天文学では光行距離を天体までの距離とみなすことが多いが、それは我々に届く光が旅した道のりであり、現在の天体までの距離や、天体が光を放ったときの天体までの距離を示すものではない。宇宙空間の膨張は一般相対性理論より導かれる。よって電磁波の媒質である空間の膨張により地球を基点としたときの、地球から離れた場所にある光の速度が変化しても特殊相対性理論における「光速度不変の法則」とは矛盾しない。

要約すると、現在の我々が観測することができる最も古い時代に放たれた光は、約138億年前に約4100万光年離れた空間から放たれた光である。本来の光源がある空間は、現在450億光年の彼方にあり、光は138億年かけて138億光年の道のりを旅してきた。わずか4100万光年の距離を光が進むのに138億年もの時間を費やしたのは宇宙の膨張が地球への接近を阻んだためである(これは、流れの速い川を上流へ向かう船がなかなか前に進めないことと似ている)。観測可能な宇宙の範囲内には推定1000億個(1011個)の銀河が存在している[11]

我々の観測可能な領域を超える宇宙は、共動距離的な意味の場合、インフレーション理論に基づき、より広大であろうと予想されている。宇宙の大きさは、誕生から現在までの膨張速度にもよるが、レオナルド・サスキンドはインフレーション直後の宇宙の大きさは有限ながらも、 メガパーセクという非常に大きな値を解の1つに得ている。宇宙の大きさが有限の場合、空間は閉じており、直進すれば宇宙を1周することになる。無限であるとすれば永久に元の場所に戻ることはない。

宇宙の年齢編集

宇宙の誕生からどれだけの時間が経っているのかという疑問については古くから様々な考えが提言され、始まりも終わりも無い不変なもの(定常宇宙)と考えられた時もあった[12]。しかし20世紀に入り、エドウィン・ハッブルが宇宙の膨張を発見すると、その始まりの時期について科学的な議論が行われるようになった。膨張を逆算して導いた当初の計算では、宇宙の年齢は約20億年であり、地球の年齢より若くなったが、その後の修正と新たな観測により、100億年以上と見積もられるようになった[12]。この値は、放射年代測定を根拠に計算された110–200億歳[13] や130–150億歳[14] とする大雑把な推定値とも整合している。21世紀に入り、NASAの宇宙探査機WMAPによる宇宙マイクロ波背景放射の観測値に基づく計算では、宇宙は約137億歳(13.772 ± 0.059 Gyr)と推定された[15] 。さらに、欧州宇宙機関(ESA)の人工衛星プランクによる高精度測定により、2020年時点において、138億歳(13.787 ± 0.020 Gyr)となっている[2]

宇宙の成分編集

 
原子でできている通常の物質は宇宙全体の5%にも満たない。

宇宙の構成成分について、かつては光を含む電磁波による観測で認識できる通常の物質のみが想定されていたが、現在では、従来の観測では認識できていない成分の存在が議論されている。実際、未だ正体が判明しない暗黒物質(ダークマター)とダークエネルギーの割合が多数を占めている[16]宇宙マイクロ波背景放射の観測で得た宇宙初期のむらから当初試算されたエネルギー比は、ダークエネルギー72.8%・ダークマター22.7%・物質(原子)4.5%だったが[16]、2003年以降、宇宙探査機WMAP人工衛星プランクの観測によって精度が高められ、以下の数値になった。[16][17]

人類は通常の物質については、宇宙開闢時の様子さえ理論的に説明しつつあるが、それが宇宙全エネルギーの4.9%程度でしかなく、残りの95%は、いまだ謎に包まれている。

宇宙にある元素は、水素原子が93.3%を、ヘリウム原子が6.49%を占める。[18] また、観測可能宇宙内の原子の総数は、足し合わせると10の80乗個程度となる。

宇宙の膨張編集

20世紀に入り行われた観測から、宇宙は膨張をしていると見なされている。だが過去には様々な考えがあった。アイザック・ニュートン絶対時間絶対空間の前提から導かれたニュートン力学が支持され、人々は宇宙は静的定常であると見なしていた[9]

1915年アルベルト・アインシュタインが発表した一般相対性理論では、エネルギー時空曲率の間の関係を記述する重力場方程式アインシュタイン方程式)が導き出す宇宙の未来は、星々の重力によって宇宙は収縮に転じ、やがて一点に潰れるというものだった[9]。この解は、アインシュタイン自身やウィレム・ド・ジッターアレクサンドル・フリードマンジョルジュ・ルメートルらによって導かれた。当初アインシュタインは、宇宙は定常であると考えていたため自分が見つけた解に定数宇宙定数)を加えることで宇宙が定常になるように式に手直しを加えた[9]

1929年エドウィン・ハッブルが、すべての銀河が遠ざかっている事を発見し、さらに距離が遠い銀河ほど遠ざかる速度が早いことを見出した(ハッブルの法則)。この観測結果から「膨張する宇宙」という概念が生じ、アインシュタインも「人生最大の誤り」と述べ重力場方程式から宇宙定数を外した[9]

膨張の中心編集

すべての天体を含む宇宙全体が膨張しているため、無数の銀河がほぼ一様に分布していて、その距離に比例した速度で遠ざかっている。そのため、いずれかの銀河から見たとしても、同じ速度に見える(膨張宇宙論)。宇宙原理に従えば、宇宙膨張の中心は存在しない。銀河の後退速度が光速に等しくなる距離は、宇宙論的固有距離において地球から約150億光年のところとなる。宇宙年齢に光速をかけた距離とこの距離が近似するのは偶然である。これはハッブルが発見したため、ここまでの距離はハッブル距離、あるいはハッブル半径と呼ばれるが、これは宇宙の地平面(宇宙の事象の地平面、あるいは粒子的地平面)ではない。光速を超えて遠ざかる天体は赤方偏移Z=1.6程度の天体と考えられるが、この値を超える天体はすでに1000個程度観測されている。

宇宙の誕生と進化編集

 
ビッグバン理論では、宇宙は極端な高温高密度の状態で生まれたとされる(下)。その後、空間自体が時間の経過とともに膨張し、銀河はそれに乗って互いに離れていく(中、上)

ビッグバン理論(ビッグバン仮説)では、宇宙の始まりはビッグバンと呼ばれる大爆発であったとされている。ハッブルの法則によると、地球から遠ざかる天体の速さは地球からの距離に比例している。そのため、逆に時間を遡れば、過去のある時点ではすべての天体は1点に集まっていた、つまり宇宙全体が非常に小さく高温・高密度の状態にあった、と推定される。このような初期宇宙のモデルは「ビッグバン・モデル」と呼ばれ、1940年代にジョージ・ガモフが物理学の理論へ纏め上げた[9]

ガモフはビッグバンの時に発せられた光がマイクロ波として観測されるはずと予言した[9]。その後、1965年アーノ・ペンジアスロバート・W・ウィルソンによって、宇宙のあらゆる方角から放射される絶対温度3度の黒体放射に相当するマイクロ波(宇宙背景放射)が発見された。これは宇宙初期の高温な時代に放たれた熱放射の名残とみなされ、予言の正しさを裏付ける証拠とされた[9]

ビッグバン・モデルの研究は進み、例えばその温度についてガモフは100億度程度と考えたが、後に1031度と試算されている。ビッグバン直後の宇宙には物質は存在せず、エネルギーのみが満ちた世界だったと考えられている。理論によると、物質の基礎になる素粒子は100万分の1秒が経過した頃に生じ、その時には温度が10兆度程度まで下がった。1万分の1秒後に温度は1兆度になり、陽子中性子が出来上がった。宇宙は膨張しながらさらに冷え、3分後には水素・ヘリウム・リチウムなどの原子核や電子が生じ、温度は10億度になった。38万年が経過すると温度は3800度程度になり、電子が原子核に囚われて原子となって、ビッグバンが起こった時に生じた光子が素粒子に邪魔されずに真っ直ぐ進めるようになった。これは「宇宙の晴れ上がり」と呼ばれ、この光が宇宙背景放射である[9]。原子は電気的に中性で反発しないため、やがて重力で纏まり始めて、約1~1.5億年後にはファーストスター[19]、約9億年後には[20] 星や銀河を形成するようになった[9]

しかしその後、宇宙の地平線問題平坦性問題といった、初期の単純なビッグバン理論では説明できない問題が出てきた。これらを解決する理論として1980年代にインフレーション理論が提唱され、ビッグバン以前に急激な膨張(インフレーション)が起こった、とされるようになった[21]。この理論では宇宙の真の誕生はビッグバンの前に無から生じ、急激な膨張(インフレーション)を経てからビッグバンが起こったという。インフレーション時に内包するエネルギーにはわずかなムラがあり、このムラが原子の集積を呼び込んだ事、またムラが一様だったため宇宙が平坦になったとしている[20]。提唱当時のインフレーション理論には観測結果が伴っていなかったが、後に精密な宇宙背景放射の測定が理論と一致する事が判明し、信頼性が高まった[20]

宇宙の未来編集

宇宙定数を取り除いたアインシュタイン方程式の解が示す宇宙の未来は、膨張がやがて収縮し、最終的に一点につぶれるビッグクランチと呼ばれるモデルであった。地球表面でボールを空に投げると高く上がるが、やがて勢いが無くなり落ちて来る。同様に、膨張の原動力である熱や光の放出の力が低下し、重力が優勢になると宇宙は膨張速度を落とし、収縮に転じる。ほとんどの科学者はこのモデルを支持していた[22]

ところが1998年に膨張速度を観測した2つのグループ[注釈 6] が、宇宙誕生後70億年頃から加速膨張が始まったと発表し、未来モデルは書き換えられた。宇宙を加速膨張させる原動力は謎のままダークエネルギーと名付けられ、将来的にこの量がどのように推移するかによって2つのモデルが作られた。ダークエネルギーの増加が続き膨張が加速され続けてやがて無限大になると、宇宙は素粒子レベルまでばらばらに引き裂かれて終焉を迎える。これはビッグリップと呼ばれる。ダークエネルギーによる膨張が無限大に達しなければ、宇宙は緩やかに膨張を続けながらも破綻しない可能性もある[22]

宇宙の歴史編集

宇宙の階層構造編集

 
局所銀河群最大のアンドロメダ銀河
250万光年の距離

地球太陽の周りを回る惑星の一つである。太陽と惑星、その周りを回る衛星、そして準惑星小惑星彗星太陽系を構成している。太陽のように自ら光っている星を恒星という。恒星が集まって星団を形成し、恒星や星団が集まって銀河を形成している。銀河に含まれる恒星の数は、小さい銀河で1000万程度、巨大な銀河では100兆個に達すると見られている。我々の住む銀河は天の川銀河と呼ばれ、2000億~4000億個の恒星が存在している。直径は10万光年ほどで、地球から銀河の中心部分を見たときに、多くの星が集まっている様が天の川となって見える。星座を形づくるような明るい星は地球の近傍にある星であり、ほとんどは数光年から千数百光年ほどの距離にある。

銀河は単独で存在することもあるし、集団で存在することもある。銀河の集団は、銀河群銀河団と呼ばれる。それらがさらに集まったものは超銀河団と呼ばれる。さらに巨視的には、いくつもの超銀河団が壁状あるいは柱状に連なったようになっていて、これを銀河フィラメントと呼ぶ。壁状のものは特に銀河ウォールもしくはグレートウォールなどとも呼ぶ。銀河ウォールや銀河フィラメントの周囲には銀河がほとんど存在しない空虚な大空間が広がっていて、超空洞(ボイド)と呼ぶ。現在の科学で観測されうる最大の宇宙の構造がこの超空洞と銀河フィラメントの重層構造であり、これを宇宙の大規模構造と呼ぶ。この構造は面と空洞から成ることから「宇宙の泡構造」としてよく表現される。

天の川銀河の所属する銀河群は局所銀河群と呼ばれ、局所銀河群はおとめ座超銀河団の一員である。また、おとめ座超銀河団は、「うお座・くじら座超銀河団Complex」という名の長さ10億光年の銀河フィラメントの一部である。 なお、超銀河団の枠組みとしては、おとめ座超銀河団より大きな範囲となるラニアケア超銀河団を設定すべきとの考えもある。ラニアケア超銀河団の中心には、グレートアトラクターと呼ばれる巨大な重力源が存在し、おとめ座超銀河団も、それにより引きつけられている。ただし、宇宙膨張によって引き離される力のほうが大きいので近づいているわけではない。

地球から観測可能な範囲(光が届く範囲)には、少なくとも1700億個の銀河が存在すると考えられている。

メガパーセク編集

天文的な距離を表すのには光年がよく用いられるが、銀河団間の距離や宇宙の構造を取り扱う場合にはメガパーセク (Mpc) が使われることがある。1メガパーセクは326万光年。

解説編集

  • おとめ座超銀河団の隣の超銀河団は、うみへび座ケンタウルス座超銀河団であるが、両者は非常に近い関係にある。
  • クエーサーは、天体の中でも最も明るいものであるが、宇宙が若い頃(20億〜30億歳の頃)に多く形成された天体であるため、遠くに見えている。(遠くの天体は過去の事象が見えている)
  • ヘルクレス座かんむり座グレートウォールは、今までに観測された中で最も大きな宇宙の大規模構造
  • かみのけ座銀河団を核とするかみのけ座超銀河団も、おとめ座超銀河団の隣の超銀河団であるが、所属するフィラメントは異なる。かみのけ座超銀河団はかみのけ座ウォールの中心部である。
  • ハッブルの法則をおとめ座銀河団に当てはめてみると、20Mpc x 67km/s/Mpc = 1340km/s となり、おとめ座銀河団は、1340km/sという速度で、我々から遠ざかっている。ここから、おとめ座銀河団の重力による銀河系がおとめ座方向へ近づく速度 185km/sを引くことにより、実際の相対速度1155km/sが導かれる。
  • シャプレー超銀河団は、ラニアケア超銀河団の隣の超銀河団

人類の宇宙観編集

人類の宇宙観は、ここ百年ほどの間で大きく進展してきた。学問的には、静的な宇宙観から動的な宇宙観へと移行し、科学技術的には、人類は有人宇宙飛行を実現し、地球以外の天体である月に降り立ち、国際宇宙ステーションも建造した。宇宙に関するSFや映画などの創作物も啓蒙的な意義を持っていた。

 
相対性理論によって宇宙論の道を示したアインシュタイン

中でも物理学上の時空間に関する観念の変革は、大きな意味を持っている。学問上の大きな起点となったばかりではなく、我々の生活上の常識からの類推が、宇宙の本質を考察するためには全く不適合であることを示した意味合いも持っている。

奇蹟的な宇宙編集

そのように、物理学に大改革がもたらされた当初、この宇宙に存在する各物理定数がどうしてそのような値になったのかも次第に解明されていくものと思われていた。しかし、最新の超ひも理論などによれば、今の宇宙に見られる物理定数は、宇宙創世時にたまたまそうなっただけで、実はどんな値でも採り得たというのである。そのパターンは実に10の500乗通りにも及ぶという。そしてこれらの値は、人間の存在のために都合良く出来過ぎている。つまり、我々の住む宇宙は奇蹟的な宇宙なのである。この宇宙の不思議さに対して、これを紐解こうとする試みもある。人間原理によれば、生成される宇宙は無数にあるため、その中のひとつがたまたま人間に都合がよくても驚くに当たらない、という。例えば、10の500乗個の宇宙があれば、10の500乗のパターンのうちの特別なひとつが現れたとしても不思議ではなく、我々がたまたまそこに居るだけということになる。(なお、人間原理には、弱い人間原理や強い人間原理など、いくつか種類がある。詳しくは「人間原理」の項を参照のこと。)

歴史上の宇宙観編集

 
プトレマイオスの説にもとづいて作られた宇宙モデル
 
1208年のアラビアのアストロラーベ

以下の各項目を参照。

宇宙と哲学編集

「私は何故あるのか」という問いに答えようとすると「宇宙は何故あるのか」という問いにつながってゆく。こういった問いに関する問題は存在論と呼ばれ、認識論と並ぶ形而上学の主要テーマのひとつである。

ライプニッツは、存在論において「なぜ何もないのではなく、何かがあるのか」という形でこれを定式化し、カントショーペンハウアーベルクソンらが取り組み、ハイデガーもまたこの問題の重要性を説いた。

これに対し、ウィトゲンシュタインをはじめとする不可知論の立場からは、「語りえないものについては、沈黙しなければならない」との論がある。

地球外生命体編集

他の星に人が住んでいるという着想は古来より見られる。日本最古の物語とされる竹取物語においても、かぐや姫は月の住人であり、ローマ帝国時代の作家の作品には太陽の住人や金星の住人の話が出てくるという。 文化の大衆化が進んだ近現代においては、UFOの目撃情報などがまことしやかに流れ、地球外生命体の存在は観測されていないものの、十分に科学的か現実的な考えである。 また一方で、地球外生命体から地球人へのコンタクトがなされた形跡は今も見つかっておらず、これを論理的矛盾と見ることも出来る。この問題をフェルミのパラドックスと呼ぶ。

宇宙の観測・探査編集

宇宙開発編集

平行宇宙編集

平行世界とも呼ばれ、我々の住む宇宙となんらかの係わり合いがあるような平行宇宙、もしくはその存在が確かめられそうな平行宇宙は、議論の対象となる。理論物理学の世界では、エヴェレットの多世界解釈に代表されるような多元宇宙論が、いくつか知られている。

脚注編集

[脚注の使い方]

注釈編集

  1. ^ 国際航空連盟、NASAなどの諸活動を考慮した便宜的な定義
  2. ^ ここでいう「速度」の大きさとは地球のある位置から対象までの宇宙論的固有距離を宇宙時間で微分したものである。以下、「宇宙の大きさ」の項目における「速度」および「速さ」はこの定義に準ずる。
  3. ^ 450億光年先の空間は現在における光子の粒子的地平面である。
  4. ^ 「光行距離」は現代中国語での表現。日本語ではまだ Light travel distance の定訳はない。中国語でも Comoving distance の訳語は「共動距離」である。
  5. ^ 電磁波による観測に制限されない、観測可能な宇宙との違いに注意。
  6. ^ この2つのグループはライバル関係にあり、それらが同じ結論に至った事が観測の信ぴょう性を高めた。荒舩、p. 19

出典編集

  1. ^ “Hubble's Deepest View Ever of the Universe Unveils Earliest Galaxies” (プレスリリース), NASA, (2004年3月9日), http://hubblesite.org/newscenter/archive/releases/2004/07/ 2008年12月27日閲覧。 
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  19. ^ 荒舩、pp. 16-17、ビッグバンで膨張した宇宙の成長
  20. ^ a b c 荒舩、pp. 14-15、ビッグバンの前にも宇宙はあった
  21. ^ 「宇宙はどのように生まれたのか?」(国立天文台)
  22. ^ a b 荒舩、pp. 18-19、宇宙が辿る運命は3つの可能性

参考文献編集

関連項目編集

外部リンク編集