きく2号

日本初の静止衛星

きく2号英語: Engineering Test Satellite - IIETS-II)は宇宙開発事業団(NASDA)が打ち上げた日本初の静止衛星技術試験衛星)である。

技術試験衛星II型「きく2号(ETS-II)」
所属 NASDA
主製造業者 三菱電機
公式ページ 技術試験衛星II型「きく2号(ETS-II)
国際標識番号 1977-014A
カタログ番号 09852
状態 運用終了
目的 静止衛星技術の習得
通信機器試験
設計寿命 1年(基本機器)
6ヶ月(ミッション機器)
打上げ場所 種子島宇宙センター大崎射場大崎射点
打上げ機 N-Iロケット3号機(N3F)
打上げ日時 1977年2月23日17:50
軌道投入日 1977年3月5日
運用終了日 1990年12月
物理的特長
本体寸法 ⌀1,413mm×936.6mm
最大寸法 約1.6m(アンテナ間)
質量 254kg(打ち上げ時)
130kg(静止軌道上初期)
発生電力 75W
主な推進器 アポジモータ
二次推進系
姿勢制御方式 スピン安定方式
軌道要素
周回対象 地球
軌道 静止軌道
静止経度 130度
近点高度 (hp) 35,780km
遠点高度 (ha) 35,790km
軌道傾斜角 (i) 9.3度
軌道周期 (P) 1436分
ミッション機器
MDA メカニカルデスパンアンテナ
Sバンドトランスポンダ(R&RR測定用)
伝播試験用発信機(Sバンド、12GHz、35GHz)
打ち上げ環境測定器
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目的 編集

静止衛星の打ち上げ、追跡管制、軌道保持、姿勢保持に関わる技術の取得、通信衛星用通信機器の宇宙環境における試験を目的として開発された。

開発 編集

1971年度に高々度衛星(HAS-A/B)として概念設計、1972年度に技術試験衛星II型として予備設計が行われた。それらの結果から1973年度にはメーカーの選定を行い、基本設計及びエンジニアリングモデル(EM)の製作を開始した。

1974年度には基本設計審査、詳細設計、詳細設計審査を実施し、プロトフライトモデル(PFM)の製作に着手。PFMは1976年2月から同6月までシステム認定試験を実施し、その後筑波宇宙センター(TKSC)に予備機として保管された。フライトモデル(FM)製作は1976年2月から開始し、6月から受け入れ試験を実施、10月30日TKSCに納入され、11月初めに種子島宇宙センターへ輸送された。

運用 編集

1977年2月23日N-Iロケット3号機で種子島宇宙センターから打ち上げられた[1]。打ち上げ後25分に静止トランスファ軌道(GTO)に投入され、3回の姿勢変更の後、2月26日に第7遠地点付近でアポジモータに点火、ドリフト軌道へ投入された。その後、衛星の姿勢を軌道面にほぼ垂直まで引き起こし、4回の軌道制御を実施。3月5日に最後の軌道制御を行い、東経130度付近の静止軌道へ投入され、日本初の静止衛星となった。打ち上げ時には環境データの取得が行われた。また、GTOやドリフト軌道上でSバンドでの距離測定、メカニカルデスパンアンテナの動作確認が行われた。

静止軌道投入後、3月下旬までは衛星の機能確認が行われ、4月中旬には電波伝播実験用送信機の連続動作試験、4月下旬に電波伝播予備実験を実施した。5月下旬からは郵政省電波研究所においてミリ波帯での電波伝播実験が開始された。

8月22日に定常運用を終了。1990年12月10日にすべての運用を終了した[1]。運用終了までミリ波帯の電波伝播実験などのデータを取得し、アメリカ航空宇宙局(NASA)をはじめ、世界各国で宇宙通信のための電波伝播特性研究などに長く利用された。

脚注 編集

  1. ^ a b 技術試験衛星II型「きく2号」(ETS-II)”. 宇宙航空研究開発機構. 2021年12月23日閲覧。

関連項目 編集

外部リンク 編集