イージスガンダム

ガンダムシリーズの登場兵器

イージスガンダム (AEGIS GUNDAM) は、テレビアニメ機動戦士ガンダムSEED』に登場する、モビルスーツ(MS)に分類される架空の有人式人型ロボット兵器のひとつ。「地球連合軍」が開発した5機の試作機の1機だが、敵対国家である「プラント」の軍隊「ザフト」に強奪され、ザフトパイロットで主人公の一人である「アスラン・ザラ」の搭乗機となる。赤基調のカラーリングとトサカ状の頭部センサーユニットが特徴で、5機の中では唯一の可変MSである。「イージス」はギリシア神話に登場する防具「アイギス」に由来するうえ、「ガンダム」にはバクロニムが設定されており「AEGIS General Unilateral Neuro-Link Dispersive Autonomic Maneuver Synthesis System」とも表記される[1]。メディアでの公称は「イージスガンダム」と呼称されるが、『機動戦士ガンダムSEED』シリーズやその関連作品群の作中においては、同作の他のガンダムタイプと同様に「イージス」と呼称される。

メカニックデザイン大河原邦男

本項では、『機動戦士ガンダムSEED C.E.73 Δ ASTRAY』に登場する派生機であるロッソイージスについても解説する。

設定解説 編集

諸元
イージス
AEGIS
型式番号 GAT-X303
分類 X300系[2]
高速強襲用試作MS[3]
全高 18.86m
重量 79.60t
装甲材質 フェイズシフト装甲
動力源 バッテリー[4]
武装 75mm対空自動バルカン砲塔システム「イーゲルシュテルン」×2
60mm高エネルギービームライフル
ビームサーベル×4
対ビームシールド
580mm複列位相エネルギー砲「スキュラ」
自爆装置
搭乗者 アスラン・ザラ

地球連合加盟国の1つ大西洋連邦が、オーブ連合首長国公営企業モルゲンレーテ社技術協力を受け、オーブ管轄の資源コロニーヘリオポリス」で極秘開発した5機の試作型MS(G兵器 / 初期GAT-Xシリーズ)の1機[4]

イージスガンダム最大の特徴は、他の機体に採用されたX100番台・X200番台フレームとは根本的に構造が異なるX300番台の可変フレームを採用し、モビルアーマー (MA) への変形機能を有する点にある[5][注 1]

イージスに導入されたMA形態は宇宙空間における高速強襲戦闘で力を発揮する[6][注 2]。MA形態は対称の形状となった両手脚を進行方向に伸ばした巡航形態と、その手脚を広げ腹部に装備された580mm複列位相エネルギー砲「スキュラ」の使用を可能とした攻撃形態に分けられ、巡航形態では前面投影面積が小さく、突撃戦法に適する[4]。この巡行形態は推力が後方に集中し高加速が可能なため、MSでは得られない単一方向での最高速度をもたらす[8]。これによって急速接近し、攻撃形態に変形して両手足のクローによって攻撃、または敵MSや艦船を捕捉して腹部のスキュラを零距離から発射して目標を完全に破壊する[6]。また、MS形態は近接戦闘を考慮しており、敵の攻撃を回避し戦うことにも長けている[6]。同時期に開発された他の初期GAT-X4機と同様に大気圏内における飛行能力は持たない[注 3]

部隊運用も想定され、他の4機との連携行動における指揮官機として開発されていたため、頭部に大型の多目的センサーユニットを搭載するなど、通信・分析能力がより強化されている。イージスという機体名もこれに由来している[5]

初期GAT-Xシリーズ5機の中では最高の機動性能と火力を持つものの[4]、直系の量産機や後継機は充実しているとは言いがたい。これはイージスガンダムの機体構造の複雑さにあり、生産性・運用面において負担に見合うメリットを見出だせなかったことに起因する[4]。ただし、MS時における手足部分など、同シリーズ機体からのある程度の設計流用などはなされているとした資料もみられる[9]また、強奪したザフト軍では本機の可変機構を踏襲した核エンジンおよびニュートロンジャマーキャンセラー搭載型のMSリジェネレイトが開発され[10]第1次連合・プラント大戦後「『DESTINY』序盤」に開発されたセカンドステージシリーズ5機は本機の影響を受けて、全機に何らかの変形機構が導入されるに至っている[11]。連合においても後述の「アクタイオン・プロジェクト」にて再建造された本機がロッソイージスとして改造を施され、ファントムペインに配備された。

武装 編集

75mm対空自動バルカン砲塔システム「イーゲルシュテルン」
両側頭部に2門装備されている実体弾の近接防御機関砲。目標の補足・追尾・射撃まで自動化され、対歩兵・ミサイル・航空兵力・車両に対して使用される[5]デュエルストライクにも同型の装備が搭載されている[6]
60mm高エネルギービームライフル
MS形態の主力装備である専用ビームライフル。イージスが得意とする強襲戦闘のため、口径はストライクやデュエルのものより大きい[12]。また、ストライクやデュエルのビームライフルよりも強力とした資料もみられる[6]。MA形態時と非使用時は右腰のバインダーにマウントされる。
ビームサーベル
両腕・両脚のクローを発振源とするビームサーベル。手持ち式ではなく内蔵式であり、MA形態での使用も考慮している[13]。他の初期GAT-Xシリーズ搭載モデルよりも出力が高い[6]。アニメーション『機動戦士ガンダムSEED』第30話(リマスター版第28話)作中においては手足のサーベルを併用した攻撃を行った。
対ビームシールド
対ビームコーティングされたシールド[13]。他の初期GAT-Xに採用されたシールドと性能差はない[8]が、MA形態時に邪魔にならないよう小型化されている[6]。非使用時およびMA形態時には左腰のバインダーにマウントされる。アニメ『機動戦士ガンダムSEED』第30話(リマスター版28話)ではスカイグラスパー2号機(トール・ケーニヒ機)へ投擲し撃墜したこともある。プロモーションアニメ『機動戦士ガンダムSEED RED FRAME』においては、ジャンク屋組合のオークションにこのシールドが出品される場面も見られた。
580mm複列位相エネルギー砲「スキュラ」
MA形態でのみ使用可能な大口径エネルギービーム砲[6][14][注 4]。戦艦を一撃で沈めるほどの威力を持ち、イージスではMA形態においてクローで敵を捕縛し、この火器で葬り去る戦法を得意とする[13]。ランチャーストライクのビーム砲「アグニ」と同様に赤いビームで描かれ、高出力が強調されている。
名前はギリシャ神話の怪物「スキュラ」に由来する。
ソノブイ
手首部に収納されている。周囲の熱源や音波を探知する[4]。アニメ『機動戦士ガンダムSEED』第24話(リマスター版第22話)作中では、遭難時に使用された。
自爆装置
ストライクガンダムとの決戦時に電力がゼロになり、スキュラの発射ができなくなった際に使用。後述の通り機体は消滅した。

劇中での活躍 編集

C.E.71年1月25日、ヘリオポリスを襲撃したザフト軍のクルーゼ隊によって強奪された。以降は奪取時のパイロットであったアスラン・ザラの専用機として、同じく強奪した3機と共に地球連合軍の新型艦アークエンジェルや唯一強奪を免れたストライクと、四対一のガンダム戦を繰り広げていく。

C.E.71年4月17日、オーブ近海の孤島にてストライクと激闘を繰り広げ(この戦闘では頭部と左腕を切り飛ばされている)、MA形態で組み付きその状態でスキュラでとどめを刺そうとするが発射直前にフェイズシフトダウンを起こし失敗。急遽そのままの状態でストライクを巻き添えに自爆し四散している。モルゲンレーテに回収されたストライクとは異なり、アスランがジャスティスでこの島を再訪した時(第38話)も頭部が砂浜に残されていた。

ASTRAY』のプロモーションOVAでは、本機のシールドがジャンク屋組合のオークションに出品されている描写があるが、このシールドがアスランの使用していたトール機に投擲されたものと同一かは不明。劇中では「連合のMSが落としていった盾」と説明されている。

漫画『機動戦士ガンダムSEED Re:』において、大気圏内用の専用装備が登場。腹部のスキュラがMS形態でも使用可能となり、武装は大型化したビームライフルと3本のビームサーベルを追加したシールドに変更されている。このビームライフルとシールドはMA形態時での機首となり、ビームライフルはスキュラと連結された状態となる。また、左右のバインダーもレールガンの付いたウイングバインダーに換装されている。

ロッソイージス 編集

漫画『機動戦士ガンダムSEED C.E.73 Δ ASTRAY』に登場するモビルスーツ。デザインはビークラフトの新谷が担当している[16]

諸元
ロッソイージス
ROSSO AEGIS
型式番号 GAT-X303AA
装甲材質 フェイズシフト装甲
武装 60mm高エネルギービームライフル×2
ビームサーベル×4
580mm複列位相エネルギー砲「スキュラ」
搭乗者 エミリオ・ブロデリック
設定解説
地球連合軍第81独立機動群「ファントムペイン」が、アクタイオン・インダストリー社を中心とした複数企業の技術協力を受け推進したエースパイロット用カスタマイズMS開発計画―通称「アクタイオン・プロジェクト」に基づき、再製造されたイージスを改修した機体[14]。パイロットはエミリオ・ブロデリック中尉。
外見上はベース機とほぼ同一に見えるが、内部機構がかなり複雑になっている[17]。可変機構もベース機をそのまま踏襲しているが、背部に新規追加されたウイングバインダーを各部に展開させることにより、さらに複数の新形態への変形が可能となっている[17]。動力部分には核動力を組み込むための余剰スペースが存在していたことから、ネロブリッツと同様に条約違反前提に作られていることがわかる[17]。なお、頭部センサーは強化されている[14]
型式番号の「AA」は、「アドヴァンスト・アクセラレイション:Advanced Acceleration」の略[14]であり、機体名の「ロッソ」はイタリア語で「赤」を意味する。

武装(ロッソ) 編集

60mm高エネルギービームライフル
ベース機と同一のビームライフル。腰のバインダーごと既存のマウント部が無くなっているが、その代わりに変形時に両腰部サイドアーマーとなる副翼基部にマウントする事が出来るようになった[18]
ビームサーベル
ベース機と同じく、両腕・両脚に装備されたビームサーベル。ただしクローは、ビームを纏わせるような形ではなく、腕や足にビームサーベル発生器をそのまま取り付けた形になっており、ビームサーベル専用となっている[19]
580mm複列位相エネルギー砲「スキュラ」
ベース機と同じく、腹部に装備されたビーム砲。後述の砲撃形態を取ることで、MS形態におけるスキュラの使用および曲射も可能となっている[14]

変形パターン 編集

巡航形態
高速移動時の巡航形態。ベース機から引き継がれた形態の1つだが、大気圏内飛行も可能[18]
突撃形態
巡航形態から両手足を展開した状態で、ベース機から引き継がれた形態の1つ。MA形態とも。さらに本機では左右ウイングバインダーもアームとしての機能を持ち[20]、計6本に増加したアームを駆使して格闘戦にも対応する[21]
砲撃形態
胴体前面装甲を展開し、腹部のスキュラを露出させた砲戦形態。MS形態ではスキュラが使用不可となっていたベース機の欠点を解消する為に追加された新形態。同時に砲と平行配置されたウイングバインダーは、後期GAT-Xシリーズの1機であるGAT-X252 フォビドゥンの誘導プラズマ砲の技術を応用したビーム誘導装置としての機能を持ち、磁場干渉によってある程度の射線偏向を可能としている[14]
飛行形態
ウイングバインダーをジェットストライカーの様に両肩に水平配置したMS時の大気圏内飛行形態。最高速度こそ巡航形態に劣るものの、MSの汎用性を殺すことなく高い空戦能力を発揮できる[14]
多脚形態
MS形態からウイングバインダーを第3、第4の脚部に変形させた4足形態。山岳地帯などの不整地での移動を目的とした形態[14]

劇中での活躍(ロッソ) 編集

同僚のダナ・スニップ中尉が搭乗するネロブリッツと共に、アグニス・ブラーエ以下マーシャンの殲滅任務を受け、彼らの母艦アキダリアを追撃する。ファンフェルト・リア・リンゼイデストロイを差し向けた後、ネロブリッツと共にアキダリアを攻撃した。最終局面でターンデルタガードシェルの連携に敗れ、パイロットのエミリオはジャンク屋組合に拘束された。

脚注 編集

注釈 編集

  1. ^ X300番台に連なる機体はこの他にGAT-X370 レイダー、GAT-333 レイダー制式仕様などが存在するが、X100番台・X200番台のようにフレーム構造に必ずしも一貫性はなく、あくまで「MA形態への可変機構を備えた機体が属するカテゴリー」と位置づけられている。
  2. ^ 対艦戦で力を発揮するとした資料もみられる[7]
  3. ^ 『機動戦士ガンダムSEED』アニメーション本編では、大気圏内においてサブフライトシステム(グゥル)に搭乗して空中戦を行っている。作中では時折これから離脱しMA形態によって戦闘する場面もみられたが、これが自立飛行可能であるかは設定されていない。
  4. ^ 初期画稿段階ではMS形態での発射も予定されており、模型誌では同画稿のギミックを再現した作例も掲載されていた[15]

出典 編集

参考文献 編集

  • 書籍
    • 『機動戦士ガンダムSEED MSエンサイクロペディア』一迅社、2008年7月1日。ISBN 978-4-7580-1108-2 
    • 『機動戦士ガンダムSEED DESTINY MSエンサイクロペディア』一迅社、2008年11月25日。ISBN 978-4-7580-1126-6 
    • 『機動戦士ガンダムSEED コズミック・イラ メカニック&ワールド』双葉社、2012年11月。ISBN 978-4-575-46469-6 
    • 『ホビージャパンMOOK 機動戦士ガンダムSEED DESTINYモデルVol.2 DESTINY MSV編』ホビージャパン、2006年3月31日。ISBN 4-89425-415-8 
    • 『機動戦士ガンダムSEED OFIFICIAL FILE メカ編Vol.1』講談社、2003年2月。ISBN 4-06-334678-1 
    • 『KCデラックス-1770 機動戦士ガンダムSEED OFIFICIAL FILE メカ編Vol.3』講談社、2003年9月。ISBN 4-06-334770-2 
    • 『テレビマガジン特別編集エクストラ機動戦士ガンダムSEED&SEED DESTINY MOBILE SUIT FILE』講談社、2005年5月。ISBN 4-06-179152-4 
    • 『データコレクション17 機動戦士ガンダムSEED 上巻』メディアワークス、2004年10月15日。ISBN 4-8402-2817-5 
    • 『電撃データコレクション (19) 機動戦士ガンダムSEED外伝』メディアワークス、2007年8月。ISBN 9784840239073 
    • 『機動戦士ガンダムSEED C.E.73 STARGAZER コンプリートガイド』メディアワークス、2006年12月。ISBN 4-8402-3729-8 
  • コミックス
    • ときた洸一『機動戦士ガンダムSEED C.E.73 Δ ASTRAY 第2巻』メディアワークス、2007年6月。ISBN 978-4-04-713932-9 
  • 雑誌
    • 『電撃ホビーマガジン 2003年4月号』メディアワークス。 
    • 『電撃ホビーマガジン 2007年8月号』メディアワークス。 
  • 分冊百科
    • 『週刊ガンダム パーフェクト・ファイル 第139号』デアゴスティーニ・ジャパン、2014年6月3日。 
    • 『週間 ガンダム・モビルスーツ・バイブル 第98号』デアゴスティーニ・ジャパン、2021年5月25日。 
    • 『週刊ガンダム・モビルスーツバイブル第107号』デアゴスティーニ・ジャパン、2021年7月27日。 
  • プラモデルキット
    • 『ハイグレード 1/144 イージスガンダム』バンダイ、2002年12月。 
    • 『1/100 イージスガンダム』バンダイ、2003年2月。 
    • 『マスターグレード  1/100 エールストライクガンダム Ver.RM』バンダイ、2013年5月。 

関連項目 編集