療養費

療養費(りょうようひ)とは、健康保険法等を根拠に、日本の公的医療保険において、被保険者が負担した療養の費用について、後で現金給付を行うものである。

日本の保険医療では療養の給付(現物給付)を原則としていて、保険証を窓口で提示することにより一部負担金の支払いのみで療養の給付を受けることができる(受領委任払い)。しかし保険証を提出できない等により療養の給付を受けられない場合は療養の費用は全額自己負担となる。しかしながら所定の要件に該当する場合は、保険者に申請することにより、本来療養の給付等として現物給付されるべきであった額を償還払い(現金給付)で受けることができる。

目次

概要編集

保険者は、療養の給付若しくは入院時食事療養費、入院時生活療養費若しくは保険外併用療養費の支給(以下「療養の給付等」という)を行うことが困難であると認めるとき、又は被保険者が保険医療機関等以外の病院診療所薬局その他の者から診療、薬剤の支給若しくは手当を受けた場合において、保険者がやむを得ないものと認めるときは、療養の給付等に代えて、療養費を支給することができる(健康保険法第87条1項)。

「療養の給付等を行うことが困難であると認めるとき」とは、具体的には以下のような場合である[1]

  • 事業主が資格取得届の手続き中で被保険者証が未交付のため、保険診療が受けられなかったとき
  • 感染症予防法により、隔離収容された場合で薬価を徴収されたとき
  • 療養のため、医師の指示により義手義足義眼コルセットを装着したとき
  • 生血液の輸血を受けたとき
    • 保存血の輸血は療養の給付に該当する。
  • 柔道整復師あん摩マッサージ指圧師はり師きゅう師から施術を受けたとき
    • 柔道整復師の施術は、急性などの外傷性の打撲捻挫・および挫傷骨折脱臼の場合に限る。現に医師が診療中の骨折・脱臼については、応急措置の場合を除き、患者が医師の同意を口頭または書面にて得ることが必要である。同意は患者または柔道整復師が得ればよく、医師の同意は書面でなく口頭でもよい。この場合、申請書やカルテに同意を得た旨を記載しておく(同意年月日、同意した医師の氏名)。
    • はり師、きゅう師の施術は、神経痛リウマチ五十肩頸腕症候群腰痛症頚椎捻挫後遺症の場合、医師による適当な治療手段がなくはり・きゅうの施術を受けることを認める医師の同意を必要とする。
    • あん摩マッサージ指圧師の施術は、筋麻痺関節拘縮等の症状が認められ、その制限されている関節の可動域の拡大と筋力増強を促し、症状の改善を目的として、あん摩マッサージの施術が必要と医師が同意している場合に限る。
    • あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師の施術による往療料は、治療上真に必要があると認められる場合に限る。片道16キロメートルを超える場合の往療料は往療を必要とする絶対的な理由がある場合以外は認められない。
  • 海外の病院等で診療を受けた場合(#海外療養費

「保険者がやむを得ないものと認めるとき」とは、例えば旅行中、すぐに手当を受けなければならない急病やけがとなったが、近くに保険医療機関がなかったので、やむを得ず保険医療機関となっていない病院で自費診察をしたとき、僻地で近くに保険医療機関がないとき、などがこれにあたる。この場合、やむを得ない理由が認められなければ、療養費は支給されない。

海外療養費編集

社会保険(健康保険等)では1981年3月から、国民健康保険では2001年6月から、海外の医療機関を受診した場合でも療養費が支給されるようになった。

現に海外にある被保険者からの療養費の支給申請は、原則として事業主を経由して行い、事業主が代理して受領する(海外への送金は行わない)。また海外療養費の支給額の算定に用いる邦貨換算率は、療養を受けた日ではなく支給決定日の外国為替換算率(売レート)を用いる(昭和56年2月25日保険発10号、庁保険発2号)。手続には診療内容明細書(診療の内容、病名・病状等が記載された医師の証明書)と領収明細書(内訳が記載された医療機関発行の領収書)およびこれらの和訳文、さらに旅券等の海外渡航の事実が確認できる書類の写しと当該海外療養担当者へ照会する旨の同意書が必要である(平成25年12月6日保保発1206第2号)。

国民健康保険の場合、1年以上海外に渡航する場合は市町村に海外転出届を提出しなければならず、提出すると国民健康保険も自動的に脱退となる。海外療養費は海外に短期滞在する場合のための制度であり、長期滞在の場合は給付の対象とされていない。また日本で保険対象の医療のみが対象で、単なる治療目的の渡航や、日本の保険対象外の医療を受けた場合には海外療養費の対象とならない。

支給額編集

療養費の額は、当該療養(食事療養及び生活療養を除く)について算定した費用の額から、その額に一部負担金の区分に応じて定める割合を乗じて得た額を控除した額及び当該食事療養又は生活療養について算定した費用の額から食事療養標準負担額又は生活療養標準負担額を控除した額を基準として、保険者が定める(健康保険法第87条2項)。制度上は必ずしも窓口で支払った金額から一部負担金額を控除した額が支給されるとは限らない。

時効編集

健康保険の他の給付と同じく、療養費の支給を受ける権利は、2年を経過したときは時効により消滅する(健康保険法第193条)。時効の起算日は、「療養に要した費用を支払った日の翌日」である。

脚注編集

  1. ^ 実際の支給基準は、社会保険研究所が改訂ごとに発行している「療養費の支給基準」に詳しい。

外部リンク編集

関連項目編集