秋永 一枝(あきなが かずえ、1928年昭和3年〉6月23日[12] -2017年平成28年〉9月29日[6])は、日本日本語学者早稲田大学名誉教授[7]日本語アクセント論を専門とする[4]。本名は鳥越 一枝(とりごえ かずえ)。夫は鳥越文蔵[1]

秋永 一枝
あきなが かずえ
人物情報
別名 鳥越一枝[1]
生誕 1928年(昭和3年)[2]
東京府東京市本所区東両国[3]
死没 2017年(平成29年)9月29日[4]
出身校 桜蔭高等女学校[5]
早稲田大学第一文学部[2]
配偶者 鳥越文蔵[6]
学問
研究分野 国語学 / 日本語学[7]
研究機関 早稲田大学文学学術院[8]
学位 文学博士[9]
主要な作品 明解日本語アクセント辞典[1]
古今和歌集声点本の研究[2]
東京弁辞典[4]
学会 日本音声学会[10]
主な受賞歴 第10回新村出賞(平成3年度)[11]
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人物・来歴編集

1928年(昭和3年)、東京府東京市本所区両国の商家に生まれる[3][13]。同地で、日本舞踊を習い芝居に通い、東京弁を聞いて育った[13]桜蔭高等女学校を経て[5]、戦後すぐに帝国女子医学薬学専門学校で学んだ[14]1949年(昭和24年)、早稲田大学第一文学部国文学専修に編入学し、1951年(昭和26年)3月に卒業論文清少納言について」を提出して卒業した[14]。大学卒業後は三省堂出版株式会社編修所の嘱託として『明解国語辞典』『明解日本語アクセント辞典』の改訂や編集にも携わり、1956年(昭和31年)からは再び早稲田大学大学院文学研究科修士課程博士課程)で学んだ。同大学院に提出した修士論文は「平安鎌倉文学作品における声点本の研究―古今集を中心に―」。「声点本(しょうてんぼん)」とは、漢字や仮名の四隅に点を差して、その音調(高低)を注記した伝本のことである。日本語学では、主にアクセントの歴史を解明するための資料として用いられるが、本来は古今伝授の実態を伝える貴重な文献であり、日本古典文学の研究には欠かせないものである。この研究が、後の博士論文古今和歌集声点本の研究』全4冊(1972年~1991年)として結実し、この研究で第10回新村出賞(1991年)を受賞した[14]

1974年(昭和49年)より早稲田大学教授を務め[1]1999年(平成11年)からは名誉教授となった[7]。『古今和歌集声点本の研究』で博士号を取得[9]、第10回新村出賞を受賞[11]NHK日本語発音アクセント辞典の編集委員も務めた[15]2017年(平成29年)、89歳で歿した[6]

明解日本語アクセント辞典

三省堂編修所は、同社から発行する一般諸辞典のための資料として、東京アクセントを記載した厖大なカードを作っていた[16]。この仕事に直接あたったのが、当時編修所員であった秋永であった[16]。三省堂編修所を編者としている『明解日本語アクセント辞典』(1958年(昭和33年))の編修は、実はそのカードを基礎にして、すでに早稲田大学文学部副手となっていた秋永がおこなったものである[16]。監修の金田一春彦は、ほとんど口出しをする余地がなかったとしている[16]

古今和歌集声点本の研究

秋永は、『古今和歌集』の声点の重要性に着目し、研究を始めた[17]。『古今和歌集』の中世以後の写本のなかには、要所要所の解釈が声点で特定されているものが少なくなく、声点を加えることを最初から前提して文字が選ばれており、文字の連鎖に声点を加えた全体が完全な本文であるからである[17]。修士論文に端を発する秋永の長い研究生活が、この研究のために費やされた[17]。『古今和歌集声点本の研究』(1991年(平成3年))は、刊行に二十年近くを要した大作であり、秋永にとってのライフ・ワークである[17]

東京弁アクセント

銀座生まれの国文学者池田弥三郎の「下町言葉は消滅した」という言葉を耳にし、東京弁は生きていることを証明しようと、1956年(昭和31年)から下町で育ったさまざまな職業の人たちへの聞き取り調査を始めた[13]。しかし時代は下がり、東京弁は話し手も少なくなり,やがては消え行く運命となった[18]。2004年(平成16年)、半世紀かけて集めた資料をもとに、今日ではその使用が稀なもの、意義不明になったものを主に収録した『東京弁辞典』を刊行した[13][19]。秋永は、東京弁がなくなれば、近代文学も落語も理解できなくなるとしている[13]

著書等編集

明解日本語アクセント辞典関連
  • 三省堂編修所 編 『明解日本語アクセント辞典』金田一春彦、三省堂、1958年6月25日。全国書誌番号:58009424 
  • 『明解日本語アクセント辞典』金田一春彦(第二版)、三省堂、1981年4月。全国書誌番号:81024623 
    • 李凡 訳(中国語) 『日语音调学习规则一百条』上海译文出版社、上海、1988年5月。ISBN 7-53270355-X [注 1]
  • 『新明解日本語アクセント辞典』金田一春彦、三省堂、2001年3月。ISBN 4-385-13670-X 
    • 『『(新)明解日本語アクセント辞典』からの報告』坂本清恵、アクセント史資料研究会〈アクセント史資料索引 別冊 5〉、2010年3月。 NCID BB04209335 
    • 「『新明解日本語アクセント辞典 CD付き』ができるまで」『myb = みやび』第41号、みやび出版、2012年9月1日、 2-5頁、 NAID 40019409559
  • 『新明解日本語アクセント辞典』金田一春彦(第二版)、三省堂、2014年4月。ISBN 978-4-385-13672-1 
NHK日本語発音アクセント辞典関連
  • 「座談会 標準アクセント選定の問題点」『文研月報』第12巻第1号、日本放送出版協会、1962年1月、 doi:10.11501/1757859
  • 日本放送協会 編 『日本語発音アクセント辞典』日本放送出版協会、1966年8月。 NCID BN01271687 
  • 日本放送協会 編 『日本語発音アクセント辞典』(改訂新版)日本放送出版協会、1985年6月。ISBN 4-14-011040-6 
  • 日本放送協会放送文化研究所 編 『NHK日本語発音アクセント辞典』(新版)日本放送出版協会、1998年4月。ISBN 4-14-011112-7 
    • 「『NHK日本語発音アクセント辞典』改訂(8) --改訂作業を振り返って--」『放送研究と調査』第49巻第3号、日本放送出版協会、1999年3月、 76-89頁、 doi:10.11501/3478560
古今和歌集声点本の研究関連
  • 「古代のアクセント註記からみた古今和歌集解釋の諸問題」『國文學研究』第12号、早稻田大學國文學會、1955年8月30日、 91-107頁、 NAID 120005480172
東京弁アクセント関連
  • 「江戸アクセントから東京アクセントへ」1967年。
  • 「アクセントのゆれと今後の動向」『国文学 解釈と鑑賞』第59巻第7号、至文堂、1994年7月、 21-28頁、 NAID 40001339718
  • 言葉の馴染み度とアクセントとの関係」 『早稲田大学日本語研究教育センター紀要』 4巻、田中ゆかり,松永修一,吉田健二、早稲田大学日本語研究教育センター、1992年3月25日、1-35頁。 NCID AN10088548https://hdl.handle.net/2065/2814 
  • 東京・芦安両アクセントにみる接合型の衰退」『国文学研究』第118号、早稲田大学国文学会、1996年3月15日、 86-96頁。
  • 「東京弁アクセントから首都圏アクセントへ」 『言語学林』三省堂、1996年4月、663-682頁。ISBN 4-385-35692-0 
  • 「字音一字語のアクセント」。
  • 「アクセント核の移りと聞こえの方言差--母音の無声化を中心に--」『音声の研究』第23号、日本音声学会、1994年。
  • 平山輝男博士米寿記念会 編「東京弁音声の衰退」 『日本語研究諸領域の視点 下巻』明治書院、1996年10月、1211-1224頁。ISBN 4-625-42101-2 
  • 『東京弁辞典』覚え書」『早稲田日本語研究』第14号、早稲田大学日本語学会、2005年9月30日、 112-108頁、 NAID AA11139085
  • 「滅びゆく言語「東京弁」」 『日本の危機言語 ― 言語・方言の多様性と独自性』北海道大学出版会、2011年6月25日。ISBN 978-4-8329-6747-2 
その他
  • 「駿馬の骨」『文學者』第44号、十五日會、1954年2月、 doi:10.11501/11209494
  • 『こくご 1:あそんであいうえおこくご』金田一春彦、集英社〈母と子の幼稚園知育百科 学習コース2〉、1983年11月。ISBN 4-08-245002-5 
  • 『こくご 2:ことばのあそび』金田一春彦、集英社〈母と子の幼稚園知育百科 学習コース6〉、1984年3月。ISBN 4-08-245006-8 
  • 「新 日本語学者列伝 金田一春彦」『日本語学』第30巻第12号、明治書院、2011年10月、 76-79頁、 NAID 40019015141

翻刻編集

研究成果報告書編集

文部省科学研究費補助金研究成果報告書

脚註編集

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註釈編集

  1. ^ 『日语音调学习规则一百条』は、『明解日本語アクセント辞典』第二版の附録部分のみ訳出し出版したもの[20]

出典編集

  1. ^ a b c d 秋永一枝さん89歳=国語学者、早大名誉教授」『毎日新聞』毎日新聞社、東京、2017年10月18日、毎日新聞東京本社版,全国書誌番号:000673592020年12月9日閲覧。
  2. ^ a b c 秋永一枝 1997, p. 922.
  3. ^ a b 日本語音韻史・アクセント史論 / 秋永 一枝【著】”. 紀伊國屋書店ウェブストア. 紀伊國屋書店. 2021年12月9日閲覧。
  4. ^ a b c 秋永一枝さん死去 日本語学、アクセント論が専門”. 朝日新聞デジタル. 朝日新聞社. 2021年12月9日閲覧。
  5. ^ a b 国語学者、早大名誉教授・秋永一枝さん=9月29日死去・89歳」『毎日新聞』毎日新聞社、東京、2017年12月4日、毎日新聞東京本社版,全国書誌番号:000673592021年12月5日閲覧。
  6. ^ a b c 早稲田大名誉教授・秋永一枝さん死去 日本語アクセントを研究”. 産経ニュース. 産経デジタル (2017年10月18日). 2017年11月30日時点のオリジナルよりアーカイブ。2021年12月6日閲覧。
  7. ^ a b c 秋永 一枝 (20063381)”. KAKEN — 研究者をさがす. 科学研究費助成事業データベース. 国立情報学研究所. 2021年12月5日閲覧。
  8. ^ 上野和昭. “アクセント史資料研究会”. 上野和昭研究室. 早稲田大学文学学術院. 早稲田大学. 2021年12月5日閲覧。
  9. ^ a b 古今和歌集声点本の研究 : 1991”. 書誌詳細. 国立国会図書館サーチ. 国立国会図書館. 2021年12月5日閲覧。
  10. ^ 上野善道「秋永一枝先生の思い出」『音声研究』第21巻第3号、日本音声学会、東京、2017年12月30日、 77-79頁、 doi:10.24467/onseikenkyu.21.3_74ISSN 1342-8675NAID AA11148803全国書誌番号:00002986
  11. ^ a b ◆これまでの新村出賞の受賞者一覧”. 新村出賞など学術支援. 新村出記念財団. 2021年12月5日閲覧。
  12. ^ 『現代日本人名録』
  13. ^ a b c d e 産経抄」『産経新聞』産業経済新聞社、東京、2017年10月20日、産経新聞東京本社版,全国書誌番号:000680232021年12月11日閲覧。
  14. ^ a b c 早稲田大学における女性専任教員の草分け 故秋永一枝名誉教授” (日本語). 早稲田ウィークリー. 2022年2月6日閲覧。
  15. ^ 最上勝也, 坂本充, 塩田雄大, 大西勝也「『日本語発音アクセント辞典』--改訂の系譜と音韻構造の考察」『NHK放送文化調査研究年報』第44号、日本放送協会放送文化研究所、東京、1999年、 97-157頁、 ISSN 0910-1594NAID 110000501327全国書誌番号:00041690
  16. ^ a b c d 三省堂編修所 1958, pp. 1–3.
  17. ^ a b c d こまつひでお「秋永一枝著『古今和歌集声点本の研究』」『国語学』第167号、日本語学会、1991年12月31日、 29-34頁、 ISSN 0491-3337全国書誌番号:000082942021年12月10日閲覧。
  18. ^ 東京弁辞典”. 東京堂出版. 2021年12月11日閲覧。
  19. ^ 秋永一枝「『東京弁辞典』覚え書」『早稲田日本語研究』第14号、早稲田大学日本語学会、東京、2005年9月30日、 112-108頁、 ISSN 1348-4796NAID AA11139085全国書誌番号:000082942021年12月11日閲覧。
  20. ^ 日語音調學習規則一百条 (上海譯文出版社): 1988”. 書誌詳細. 国立国会図書館サーチ. 国立国会図書館. 2021年12月4日閲覧。

参考文献編集