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概要編集

第二次世界大戦中にドナルドダック・シリーズ第43作として製作された短編映画で、枢軸国をアニメで風刺したプロパガンダの要素が強い作品となっている。その舞台となる町は作品中では『ナチランド』として描かれ、ヒトラーの独裁政権下に置かれていた当時のドイツ国をイメージしている。

元々は"Donald Duck in Nutzi Land"というタイトルだったが、1942年に先行して発売された主題歌のレコードがヒットした為に改題された。この主題歌の歌詞や劇中のセリフの一部は、ドイツを揶揄する為に敢えてドイツ語風に崩して書かれている。レコードは複数発売されているが、中でもスパイク・ジョーンズによるものが最も知られる[1]

あらすじ編集

オープニングは、アドルフ・ヒトラーがこよなく愛したワーグナーの楽劇『ニュルンベルクのマイスタージンガー』が流れて映画は幕を開ける。

ドイツの小さな街で、朝から枢軸国の要人ら ― スーザフォンの昭和天皇、ピッコロのヘルマン・ゲーリング、トロンボーンのヨーゼフ・ゲッベルス、バスドラムのベニート・ムッソリーニ、スネアドラムのハインリヒ・ヒムラーからなる楽器隊が行進をしながら演奏し軍歌を歌っていた。

街は雲や木、電柱、標識、柵などありとあらゆるものがハーケンクロイツを模したもので、そこからほど近い、簡素な家に暮らす主人公のドナルドは曲につられる形で寝ながらナチス式敬礼をとる。家のすぐそばを軍人が通ると、ドナルドはうるさく感じてロールスクリーンを下げるが、銃剣で破られベッドから無理やり起こされる。

ドナルドは起床早々ヒトラー、昭和天皇[2]、ムッソリーニの肖像に敬礼させられ、二度寝したくても外から水をかけられそれは叶わない。パジャマから軍服に着替え、朝食には金庫に隠し持っていた僅かばかりのコーヒーバッグに、「ベーコンエッグの香り」という物質のニオイをかいでオカズにし、配給で提供されたのこぎりで切らなければならないほど木のごとく固い食パンを前歯でかじって食べていた。そこに軍人から『我が闘争』の本を見せつけられ、さらには家に先ほどの楽器隊が押し寄せ、ドナルドはお尻を蹴られながら勤務地の兵器工場へ向かう。

兵器工場では、1日48時間のシフト制で砲弾をライン生産していた。ドナルドは砲弾の組み立てにかかるが、途中大量のヒトラーの肖像も生産ラインに流れてくると、一つ一つに敬礼しながら作業し、指先程度の小さな弾から体を超える大きな弾まで組み立てていく。途中愚痴をこぼすと四方から銃剣を突き付けられ、ドナルドは怯えながら許しを乞う。さらに総統の栄誉を称えるプロパガンダの放送を聴かされながら作業を続けていく。しばらくして歓喜力行団の名目で休憩となり、アルプス山脈が描かれた粗雑な壁紙をみるものの、総統のためにもっと働けと言われて休憩はそそくさに終わる。

その後、増産を求める大音量の命令を聴かされながら砲弾を果てしなく組み立て続ける過酷な作業に、混迷のあまりドナルドは「耐えられない!(I can't stand it!)」と叫び、体が震え精神に異常をきたしてしまう。そのままドナルドは空想に飛び込んでしまい、様々な砲弾が行き交う世界に迷い込み、その爆発に巻き込まれる。

しかしそれは夢で、星条旗のパジャマを着て眠るドナルドがいた。目覚めると窓際から伸びていた物影をヒトラーと勘違いし、一瞬敬礼しようとするものの、振り向くと輝く自由の女神像のミニチュアが立っていた。喜びのあまりそれに熱烈なキスをし、像を抱きしめながらアメリカ国民であることを心の底から喜ぶドナルドであった。

エンディングは軍歌とともにヒトラーの顔の戯画があらわれ、そこにトマトが投げつけられて、"THE END"の文字へと変わり映画は幕を閉じる。

スタッフ編集

他メディアの収録編集

現地アメリカ合衆国では公開から半世紀以上他の媒体で公開や販売をすることはなかったが、2004年に初めて"Walt Disney Treasures: On the Front Lines"のDVDボックスに本作が収録され、翌2005年にもドナルドの短篇映画集 "Walt Disney Treasures: The Chronological Donald, Volume Two"にも収録された。

なお、日本では映画の公開およびDVD・VHS等の販売はなされていない。

関連作品編集

新しい精神(原題:The New Spirit)、43年の精神(原題:The Spirit of '43
同時期に作られた短編アニメーション作品。アニメ映画。枢軸国の否定および連合国への忠誠が主題。アメリカ政府の依頼でディズニーが制作し、それぞれ1942年と1943年に政府へ納品されたという経緯から、ディズニーではなくアメリカ政府の著作物となっている。

参考文献編集

  • 辻田真佐憲『世界軍歌全集―歌詞で読むナショナリズムとイデオロギーの時代』社会評論社、2011年。ISBN 4784509682

脚注編集

  1. ^ 辻田 2011, p. 365.
  2. ^ 昭和天皇の肖像には「Heil Hirohito(裕仁)!」と言っている。
  3. ^ a b c d e f Der Fuehrer's Face - The Big Cartoon DataBase
  4. ^ a b c d e f Der Fuehrer's Face - インターネット・ムービー・データベース(英語)

外部リンク編集