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背面投げ(はいめんなげ)とは、野球投手の特殊な投法の一つである。

目次

概要編集

 
通常のオーバースローの投球動作を示した連続写真(タナー・ロアーク投手)

説明のため、オーバースローによる通常の投球動作の連続写真を示す。通常の投球動作では、まず利き腕と逆側の足を上げ(連続写真の2コマ目)、上げた足を前方に踏み出しながら利き腕を体の後ろにへ引き(3コマ目)、利き腕を振りかぶり(4コマ目)、ボールをリリースする(5コマ目)。

背面投げは、連続写真の3コマ目までは通常の投球動作と同じであるが、3コマ目の状態から肘を曲げて利き腕を背中へ回し、背中側の腰のあたりの高さからスナップを利かせてボールをリリースする。ボールをリリースした後は利き腕を連続写真の4コマ目の状態に持って行き、通常のオーバースローと同様の動作(5コマ目以降)をボールを持たずに行う。[1][2]

手首だけで投げるため力のない緩いボールとなるが、ボールのリリースポイントやリリースタイミングが通常の投球動作とは大きく異なり、打者の意表を突く目的[1]で使用されることがある。反則投球ではない[3]

公式戦編集

プロ野球の公式戦においては1969年6月15日、中日ドラゴンズ小川健太郎読売ジャイアンツ王貞治に対し、3回にカウント2ストライク0ボールから背面投げをした(投球はボール球)[3]。小川は6回にも王に対し、カウント2ストライク1ボールから再度背面投げをした(この投球もボール球)[3]。背面投げでタイミングを狂わされた王は3回は右飛、6回は見逃し三振に倒れた[3]

6月15日の試合で一塁の塁審を務めた松橋慶季は、以前に小川が練習で背面投げをしているところを目撃し、反則投球に当たるかどうかを小川からさりげなく尋ねられて「まあいいんじゃないか」と答えていた[3]。小川が実際に試合で投げたことについては大いに驚き、「えれえところでやりやがった」と感じたと語っている[3]。また捕手の木俣達彦によれば、6月15日の主審だった富澤宏哉にも試合前に相談して反則投球ではないことを確認したというが[3]、富澤はこれを記憶にないと否定している[3]。その後、7月20日のプロ野球ルール委員会で背面投げの可否が検討され、反則投球ではなく正規の投球であると認められた[3]

小川は王を特に苦手としており、王のタイミングを狂わせるために背面投げを用いた[1][2]。小川の背面投げは1969年6月15日の1試合だけという俗説がある[3]が、これは誤りで、同じ1969年の8月31日の試合で1球、10月19日の試合でも1球、いずれも王に対して背面投げを行っている[3][4]。この2球とも判定はボールであった[3]。小川は当時、背面投げを王以外の左打者にも「時々使うつもり」と予告していた[3]が、実際には王に対してしか投げなかった[3]

当時の正捕手だった木俣達彦によると、小川は背面投げを毎日20球は練習していたという[4]。練習では高い確率でストライクを取れていたというが、実戦で投じた4球はいずれもボールであった[4]

備考編集

元プロ野球選手の斉藤明夫は、2002年頃から[2]プロ野球マスターズリーグ[2]やOBオールスターゲーム[5]などで背面投げを披露している[2][5]。2004年にテレビ番組『トリビアの泉 〜素晴らしきムダ知識〜』が小川健太郎の背面投げを紹介した[2]際には、既に死去していた小川に代わって斉藤が背面投げを実演した[2]。このトリビアに対する番組内での評価は「80へぇ」であった[2]

また2005年1月3日放送のテレビ番組『徳光&所のスポーツえらい人グランプリ』の対決企画では、投手のゴルゴ松本が打者の阿部慎之助を相手に背面投げを行っている[6]

注釈編集

  1. ^ a b c 中村素至『もうひとつのフィールド・オブ・ドリームス ― 伝説のエース小川健太郎物語』新風舎、2001年12月、20-22頁。ISBN 4-7974-1866-4
  2. ^ a b c d e f g h フジテレビトリビア普及委員会(編)「トリビアNo.500 プロ野球で背中越しにボールを投げる投手がいた」『トリビアの泉: へぇの本 第9巻』講談社、2004年12月15日、59-60頁。ISBN 4-06-352728-X
  3. ^ a b c d e f g h i j k l m n 中村素至『もうひとつのフィールド・オブ・ドリームス ― 伝説のエース小川健太郎物語』新風舎、2001年12月、15-16頁、27-28頁、38-40頁。ISBN 4-7974-1866-4
  4. ^ a b c 週刊ベースボール編集部 (2018年1月15日). “【プロ野球仰天伝説23】球史に残る異色投法。背面投げの小川健太郎”. 週刊ベースボールONLINE. ベースボール・マガジン社. 2019年5月6日閲覧。
  5. ^ a b “プロ野球 OBオールスター 楽天田尾監督、グラウンドでもベンチ裏でも走る”. 日刊スポーツ東京版. (2004年11月29日) 
  6. ^ 徳光&所の復活えらい人グランプリ 15年分の偉人SP”. 日本テレビ公式ウェブサイト. 日本テレビ. 2013年3月2日時点のオリジナル[リンク切れ]よりアーカイブ。2018年8月2日閲覧。