数学グラフ理論の分野における距離推移グラフ(きょりすいいグラフ、: distance-transitive graph)とは、任意の距離 i だけ離れた任意の二頂点 vw と、同じ距離だけ離れた他の任意の二頂点 xy との間に自己同型英語版vx へ、wy へ写すようなもの)が存在するグラフのことを言う。

最大の3-正則距離推移グラフであるビッグス-スミスグラフ英語版

距離推移グラフは頂点推移的対称かつ距離正則英語版である。

距離推移グラフの興味深い点の一つに、それが大きな自己同型群を持つ、というものがある。いくつかの興味深い有限群は、特に直径が 2 であるような距離推移グラフの自己同型群である。

距離推移グラフは、ノルマン・L・ビッグス英語版と D・H・スミスによって 1971年に初めて定義された。彼らは、有限3価(trivalent)な距離推移グラフは 12 種類しか存在しないことを証明した。それらを、次に挙げる:

グラフ名 頂点数 直径 内周 交差アレイ英語版
完全グラフ K4 4 1 3 {3;1}
完全2部グラフ K3,3 6 2 4 {3,2;1,3}
ピーターセングラフ 10 2 5 {3,2;1,1}
立方体のグラフ 8 3 4 {3,2,1;1,2,3}
ヒーウッドグラフ 14 3 6 {3,2,2;1,1,3}
パップスグラフ英語版 18 4 6 {3,2,2,1;1,1,2,3}
コクセターグラフ英語版 28 4 7 {3,2,2,1;1,1,1,2}
トゥッテ-コクセターグラフ英語版 30 4 8 {3,2,2,2;1,1,1,3}
正十二面体のグラフ 20 5 5 {3,2,1,1,1;1,1,1,2,3}
デザルググラフ英語版 20 5 6 {3,2,2,1,1;1,1,2,2,3}
ビッグス-スミスグラフ英語版 102 7 9 {3,2,2,2,1,1,1;1,1,1,1,1,1,3}
フォスターグラフ英語版 90 8 10 {3,2,2,2,2,1,1,1;1,1,1,1,2,2,2,3}

1969年、ゲオルギー・アデルソンヴェルスキ英語版の率いるロシアのグループが、距離正則英語版であるが距離推移的でないグラフが存在することを、独自に示した。そのようなタイプのグラフの内、次数が 3 であるような唯一つのものは、126-頂点のトゥッテ12-ケージ英語版である。距離推移的でないような最小の距離正則グラフは、シュリクハンデグラフ英語版(Shrikhande graph)である。3よりも大きい幾つかの次数に対しては、距離推移グラフの完全なリストは知られている。しかし、任意の大きさの頂点次数に対する距離推移グラフの分類については、未解決となっている。

最も簡単な、距離推移グラフの例である漸近英語版族は、超立方体グラフ英語版である。その他の族には、folded cube graphや、正方ルークのグラフ英語版がある。これら三つの族は全て、任意に高い次数を持つ。

参考文献

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初期の結果

  • Adel'son-Vel'skii, G. M.; Veĭsfeĭler, B. Ju.; Leman, A. A.; Faradžev, I. A. (1969), “An example of a graph which has no transitive group of automorphisms”, Doklady Akademii Nauk SSSR 185: 975–976, MR0244107 .
  • Biggs, Norman (1971), “Intersection matrices for linear graphs”, Combinatorial Mathematics and its Applications (Proc. Conf., Oxford, 1969), London: Academic Press, pp. 15–23, MR0285421 .
  • Biggs, Norman (1971), Finite Groups of Automorphisms, London Mathematical Society Lecture Note Series, 6, London & New York: Cambridge University Press, MR0327563 .
  • Biggs, N. L.; Smith, D. H. (1971), “On trivalent graphs”, Bulletin of the London Mathematical Society 3 (2): 155–158, doi:10.1112/blms/3.2.155, MR0286693 .
  • Smith, D. H. (1971), “Primitive and imprimitive graphs”, The Quarterly Journal of Mathematics. Oxford. Second Series 22 (4): 551–557, doi:10.1093/qmath/22.4.551, MR0327584 .

調査

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  • Brouwer, A. E.; Cohen, A. M.; Neumaier, A. (1989), “Distance-Transitive Graphs”, Distance-Regular Graphs, New York: Springer-Verlag, pp. 214–234 , chapter 7.
  • Cohen, A. M. Cohen (2004), “Distance-transitive graphs”, in Beineke, L. W.; Wilson, R. J., Topics in Algebraic Graph Theory, Encyclopedia of Mathematics and its Applications, 102, Cambridge University Press, pp. 222–249 .
  • Godsil, C.; Royle, G. (2001), “Distance-Transitive Graphs”, Algebraic Graph Theory, New York: Springer-Verlag, pp. 66–69 , section 4.5.
  • Ivanov, A. A. (1992), “Distance-transitive graphs and their classification”, in Faradžev, I. A.; Ivanov, A. A.; Klin, M. et al., The Algebraic Theory of Combinatorial Objects, Math. Appl. (Soviet Series), 84, Dordrecht: Kluwer, pp. 283–378, MR1321634 .

外部リンク

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