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遊星歯車機構

遊星歯車機構(ゆうせいはぐるまきこう、: planetary gear mechanism)とは太陽歯車: sun gear)を中心として、複数の遊星歯車: planetary gear)が自転しつつ公転する構造を持った歯車機構である。「遊星」は、planet惑星)の別の訳語で、その構造を惑星系に見立てたことに由来する。

目次

概要編集

当初、ジェームズ・ワットビームエンジンの往復運動を回転運動に変換する際、クランクによって回転運動に変換しようとしたが、その機構は既に特許が取得されており、特許を回避するためにクランク軸の代わりに遊星歯車機構を使用した。クランク軸の特許権が切れた後は機構学的に合理的なクランク軸が一般的に使用されるようになり、蒸気機関で往復運動を回転運動に変換する目的では遊星歯車機構は使用されなくなった。クランク軸と比較して高い精度が要求され、歯面が磨耗するため、頻繁に修繕が必要で敬遠された。後に減速を目的として変速機に使用されるようになった。他の減速機構と比較して入力軸と出力軸を同軸にして増減速できることから減速機が全体的にコンパクトで剛性を高くできるが、歯面の調整に高い精度の加工を要求される。

 
遊星歯車(断面)

遊星歯車機構は以下の特徴を持つ。

  • 少ない段数で大きな減速比が得られる。
  • 大きなトルクが伝達できる。
  • 入力軸と出力軸を同軸上に配置できる。
  • 複数の遊星歯車に負荷を分散できるので、磨耗や歯車の欠損が比較的少ない。
  • 構造上、機構が複雑かつギア比の計算が難しい。

一つのユニットは太陽歯車sun gear)、遊星歯車planetary gear)、遊星歯車の公転運動を拾う遊星キャリヤplanetary carrier)、内歯車outer gear)の四点の部品から構成される(右図参照)。太陽歯車の回転、遊星歯車の公転(キャリヤの回転)、外輪歯車の回転の3つの要素の内、一つを固定、一つを入力、一つを出力に接続する。それぞれどれを入出力・固定に割り当てるかによって、一つのユニットで複数の減速比や回転方向の切替が可能である。

分類編集

遊星歯車機構は、駆動軸(入力軸)、従動軸(出力軸)、固定軸の3本の基本軸からなる。

分類1編集

内歯車をC、太陽歯車をA、遊星キャリヤをSとする。

  • プラネタリー型 - C軸が固定、A軸が駆動軸、S軸が従動軸でありS軸はA軸と同方向回転で減速される。
  • ソーラ型 - A軸が固定、C軸が駆動軸、S軸が従動軸でありS軸はC軸と同方向回転で減速される。
  • スター型 - S軸が固定、A軸が駆動軸、C軸が従動軸でありC軸はA軸と逆方向回転で減速される。

分類2編集

太陽歯車(外歯車、内歯車を含む)の軸をK、キャリヤ軸をH、遊星歯車軸をVで表すと次のように分類される。

  • 2K-H型 - 外歯車A、内歯車C、キャリヤSの軸が基本軸となっており2個の太陽歯車軸と1個のキャリヤ軸が基本軸となっている。
  • 3K型 - 外歯車A、内歯車C、内歯車Eの軸が基本軸、キャリヤSは遊星歯車の軸受を取り付けているため基本軸ではない。
  • K-H-V型(ハイポサイクロイド減速機) - キャリヤS、遊星歯車B、内歯車Cの軸が基本軸である。
  • 複合遊星歯車機構(2個以上の2K-H型) - 2個以上の2K-H型のそれぞれの3本の基本軸のうち2本の基本軸同士を結合し、残りの基本軸の1本を固定し他の1軸を駆動軸または従動軸とする機構。

2K-H型遊星歯車機構(I型)の速比編集

 
遊星歯車機構の各要素の自転と公転

2K-H型遊星歯車機構(I型)において太陽歯車、遊星歯車、内歯車の角速度および歯数をそれぞれ とし遊星キャリヤの角速度を とすると、作表法などにより一般に次の式が成り立つ。

 
 

これらの式から遊星歯車機構の速比(出力/入力)は次のようになる。

遊星歯車機構の変速比
区分 太陽歯車   内歯車   遊星キャリヤ 速比
減速 入力 固定 出力  
固定 入力 出力  
増速 固定 出力 入力  
出力 固定 入力  
逆転 入力 出力 固定  
出力 入力 固定  

応用編集

 
自動車の内装速機
自動車
複数のユニットを組み合わせたものが、乗用車トルクコンバータ式のオートマチックトランスミッションの補助変速装置や一部の四輪駆動車センターデフとして一般的に用いられている。またトヨタ・プリウスなどTHS採用のハイブリッドカーでは太陽歯車を発電機に、遊星キャリヤをエンジンに、外輪歯車を車輪(モーター)に接続することでエンジンの駆動力を車輪(モーター)と発電機に分配するのに用いられている。これにより、余ったエンジンパワーを随時発電に回すことが可能となっている。
自転車
後輪のハブ内部に組みこまれる内装型変速機に用いられている。
減速機
シールド掘削機ガントリークレーン等多くの産業機械の駆動に遊星歯車機構を利用した遊星減速機が使われている。また、風力発電風車では発電用増速機として遊星歯車機構のギヤボックスが使用されている。ギヤードターボファンエンジンはファンの減速に遊星歯車機構を利用している。
コーヒーカップ (遊具)
プラネタリウム
機械式の惑星投影装置に使用されたが近年は電子化されつつある。
アンティキティラ島の機械
古代の歯車式計算機

出典編集

  • 両角宗晴『遊星歯車と差動歯車の設計計算法』産経出版社、東京、1984年。NCID BN10354821

注釈編集

関連項目編集

外部リンク編集