金沢連隊区(かなざわれんたいく)は、大日本帝国陸軍連隊区の一つ。前身は金沢大隊区である。石川県の一部または同県全域の徴兵召集兵事事務を取り扱った。連隊区司令部金沢城内に設置されていた。1945年(昭和20年)、同域に金沢地区司令部が設けられ、地域防衛体制を担任した。

金沢連隊区司令部(金沢城内)

沿革

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1888年(明治21年)5月14日、大隊区司令部条例(明治21年勅令第29号)によって金沢大隊区が設けられ、陸軍管区表(明治21年勅令第32号)により石川県の全域が管轄区域に定められた。第3師管第6旅管に属した[1]

1896年(明治29年)4月1日、金沢大隊区は連隊区司令部条例(明治29年勅令第56号)によって金沢連隊区に改組された。また、6個師団の新設による13個師団体制合わせて旅管が廃止となり第6旅管の区域を引き継いだ第9師管に属した[2][3]

1898年(明治31年)7月1日、連隊区司令部は金沢市尻垂坂通(兼六坂)から金沢城内の新築庁舎に移転した[4][5]

1903年(明治36年)2月14日、改正された「陸軍管区表」(明治36年勅令第13号)が公布となり、再び旅管が採用され連隊区は第9師管第6旅管に属した[6]

1907年(明治40年)9月17日、内地19個師団体制に対応するため陸軍管区表が改正(明治40年9月17日軍令陸第3号)となり[7]1907年(明治40年)10月1日、高岡連隊区などが創設された。管轄区域のうち能登半島地域(珠洲郡鳳至郡鹿島郡)を高岡連隊区へ移管し、管轄区域は次のように変更された[8]

  • 石川県
金沢市羽咋郡河北郡石川郡能美郡江沼郡

1925年(大正14年)4月6日、日本陸軍の第三次軍備整理に伴い陸軍管区表が改正(大正14年軍令陸第2号)され[9]、同年5月1日、旅管は廃され引き続き第9師管の所属となった。高岡連隊区が廃止され、その旧管轄区域から珠洲郡・鳳至郡・鹿島郡を編入し、再び石川県全域を管轄とし、その廃止まで変更はなかった[10]

1940年(昭和15年)7月24日、陸軍管区表が改正(昭和15年軍令陸第20号)金沢連隊区は東部軍管区金沢師管に属した[11][12]

1945年(昭和20年)2月11日、陸軍管区表が改正(昭和20年軍令陸第1号)金沢師管は東海軍管区に所属が変更された[13][14]。同年には作戦と軍政の分離が進められ、軍管区師管区に司令部が設けられたのに伴い、同年3月24日、連隊区の同域に地区司令部が設けられた[15]。地区司令部の司令官以下要員は連隊区司令部人員の兼任である。同年4月1日、金沢師管は金沢師管区と改称された[16]

司令官

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金沢連隊区司令官(前身を含む)
氏名 階級 在任期間 出身 前職 後職 備考
金沢大隊区
01 木村寛良 歩兵少佐 1888.5.14[17] - 1891.7.27[18] 加賀藩[19] 名古屋鎮台金沢営所
次官 兼 後備軍司令官[20]
富山大隊区司令官[18]
02 下村定辭 歩兵少佐 1891.7.27[18] - 1896.4.1[2] 土佐藩[19] 歩兵第7連隊第3大隊長[18] 金沢連隊区司令官
金沢連隊区
01 下村定辭 歩兵少佐 1896.4.1[2] - 1901.1.3[21] 土佐藩[19] 金沢大隊区司令官 死亡[21]
02 小山熊次郎 歩兵少佐 1901.1.3[21] - 1902.10.1[22] 熊本藩[23] 歩兵第19連隊第3大隊長[21] 非職[22]
03 野溝甚四郎 歩兵中佐 1902.10.1[22] - 1906.3.5 岡藩[24] 歩兵第35連隊第1大隊長[25] 第9師団本部付[26] 日露戦争では歩兵第7連隊長などと兼任[27]
04 玉井淸水 歩兵中佐 1906.3.5[28] - 1910.10.1[29] 松江藩[30] 歩兵第22連隊第2大隊長[31] 退職[29]
05 勝田太郎 歩兵中佐 1910.10.1[29] - 1912.6.29[32] 陸士2期 歩兵第69連隊[29] 歩兵第36連隊[32]
06 小川賢之助 歩兵中佐 1912.6.29[32] - 1913.8.31[33] 陸士4期 歩兵第36連隊附[32] 歩兵第38連隊長[33]
07 富塚貞一郎 歩兵中佐 1913.8.31[33] - 1916.8.18[34] 陸士5期 歩兵第69連隊附[33] 歩兵第79連隊長[34]
08 本間力彌 歩兵中佐 1916.8.18[34] - 1918.1.31[35] 陸士4期 近衛歩兵第4連隊[34] 退職[36]
09 山本淸次 歩兵中佐 1918.1.31[35] - 1921.6.28[37] 陸士7期 歩兵第36連隊附[35] 歩兵第8連隊長[37]
010 田中館浩太郎 歩兵中佐 1921.6.28[37] - 1923.8.6[38] 陸士8期 歩兵第33連隊[37] 歩兵第67連隊長[38]
011 津村吉彦 歩兵大佐 1923.8.6[38] - 1924.2.4[39] 陸士9期 歩兵第7連隊本部[40] 非職[39]
012 村井清規 歩兵中佐 1924.2.4[41] - 1924.12.16[42] 陸士14期 歩兵第35連隊附[41] 歩兵第19連隊[43]
013 嘉村達次郎 歩兵大佐 1924.12.16[42] - 1928.3.8[44] 陸士13期 歩兵第4連隊[45] 歩兵第42連隊長[44]
014 原田弟吉 歩兵大佐 1928.3.8[44] - 1930.8.1[46] 陸士14期 浜田連隊区司令部[47] 非職[46]
015 河村勘市 歩兵大佐 1930.8.1[46] - 1932.4.11[48] 陸士15期 本郷連隊区司令官[46] 死亡[48]
016 斎藤済一 歩兵中佐 1932.4.12[49] - 1934.3.5[50] 陸士17期 歩兵第15連隊[49] 歩兵第29連隊長[50]
017 金子定一 歩兵大佐 1934.3.5[50] - 1936.8.2[51] 陸士19期 第20師団司令部[50] 非職[51]
018 伊佐一男 歩兵大佐 1936.8.2[51] -1937.8.2[52] 陸士23期 陸軍士官学校[51] 歩兵第7連隊長[52]
019 清水靖弘[53] 歩兵大佐 1937.8.2 - 1938.7.15 陸士23期
020 蓮花豊吉 歩兵大佐 1938.7.15[54] - 1941.3 陸士23期
021 藤岡武雄 大佐 1941.3[52] - 1942.3.11 陸士23期 歩兵第7連隊長[52] 台湾軍兵務部長[52]
022 江口四郎 大佐 1942.3.11[52] - 1945.3.31[55] 陸士25期 歩兵第239連隊長 第13師団司令部[55]
023 越生虎之助 予備役中将 1945.3.31[55] - 陸士22期 予備役 金沢地区司令官を兼務

脚注

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  1. ^ 官報 1888年5月14日』大蔵省印刷局、1888年5月14日、141,145-147頁。doi:10.11501/2944696https://dl.ndl.go.jp/pid/2944696 
  2. ^ a b c 官報 1896年3月26日』大蔵省印刷局、1896年3月26日、378頁。doi:10.11501/2947097https://dl.ndl.go.jp/pid/2947097 
  3. ^ 官報 1896年3月16日』大蔵省印刷局、1896年3月16日、241頁。doi:10.11501/2947089https://dl.ndl.go.jp/pid/2947089 
  4. ^ 官報 1898年7月7日』大蔵省印刷局、1898年7月7日、78頁。doi:10.11501/2947794https://dl.ndl.go.jp/pid/2947794 
  5. ^ 金沢誌』和田文次郎、明31.3。doi:10.11501/764576https://dl.ndl.go.jp/pid/764576 
  6. ^ 官報 1903年2月14日』大蔵省印刷局、1903年2月14日、278頁。doi:10.11501/2949187https://dl.ndl.go.jp/pid/2949187/ 
  7. ^ 『陸軍軍戦備』57-58頁。
  8. ^ 官報 1907年9月18日』大蔵省印刷局、1907年9月18日、333-334頁。doi:10.11501/2950614https://dl.ndl.go.jp/pid/2950614/ 
  9. ^ 『陸軍軍戦備』101頁。
  10. ^ 官報 1925年4月8日』大蔵省印刷局、1925年4月8日、185-187頁。doi:10.11501/2955933https://dl.ndl.go.jp/pid/2955933/ 
  11. ^ 官報 1940年8月23日』大蔵省印刷局、1940年8月23日、721-722頁。doi:10.11501/2960588https://dl.ndl.go.jp/pid/2960588/1/1 
  12. ^ 陸軍管区表(昭和15年7月24日軍令陸第20号)
  13. ^ 官報 1945年1月24日』大蔵省印刷局、1945年1月24日、229頁。doi:10.11501/2961908https://dl.ndl.go.jp/pid/2961908 
  14. ^ 陸軍管区表(昭和20年1月22日軍令陸第1号)
  15. ^ 『陸軍軍戦備』480頁。
  16. ^ 陸軍管区表(昭和20年2月9日軍令陸第2号)
  17. ^ 官報 1888年5月19日』大蔵省印刷局、1888年5月19日、203頁。doi:10.11501/2944701https://dl.ndl.go.jp/pid/2944701/1/2 
  18. ^ a b c d 官報 1891年7月29日』大蔵省印刷局、1891年7月29日、281頁。doi:10.11501/2945686https://dl.ndl.go.jp/pid/2945686/1/1 
  19. ^ a b c 大植四郎『国民過去帳 明治之巻』尚古房、昭10、387,616頁。doi:10.11501/1262271https://dl.ndl.go.jp/pid/1262271 
  20. ^ 職員録 明治20年(甲)』印刷局、明治20年、111頁。doi:10.11501/779755https://dl.ndl.go.jp/pid/779755/1/66 
  21. ^ a b c d 官報 1901年1月12日』大蔵省印刷局、1901年1月12日、98-99頁。doi:10.11501/2948552https://dl.ndl.go.jp/pid/2948552/1/2 
  22. ^ a b c 官報 1902年10月1日』大蔵省印刷局、1902年10月1日、3-4頁。doi:10.11501/2949077https://dl.ndl.go.jp/pid/2949077/1/3 
  23. ^ 杉本勝二郎『征清武功鑑 : 一名・金鵄勲章伝 3巻』国乃礎発行社、明治29、115頁。doi:10.11501/773741https://dl.ndl.go.jp/pid/773741 
  24. ^ 旧岡藩勤王家略伝 : 主トシテ義挙に参加シタル勤王家』竹田町教育会、昭和15、49頁。doi:10.11501/1094352https://dl.ndl.go.jp/pid/1094352/1/34 
  25. ^ 官報 1900年5月11日』大蔵省印刷局、1900年5月11日、154頁。doi:10.11501/2948348https://dl.ndl.go.jp/pid/2948348/1/2 
  26. ^ 官報 1906年2月20日』大蔵省印刷局、1906年2月20日、804頁。doi:10.11501/2950129https://dl.ndl.go.jp/pid/2950129/1/3 
  27. ^ 徴兵適齢者心得』鍾美堂、明38.2。doi:10.11501/843126https://dl.ndl.go.jp/pid/843126/1/4 
  28. ^ 官報 1906年3月5日』大蔵省印刷局、1906年3月5日、146頁。doi:10.11501/2950140https://dl.ndl.go.jp/pid/2950140/1/6 
  29. ^ a b c d 官報 1910年10月3日』大蔵省印刷局、1910年10月3日、59頁。doi:10.11501/2951538https://dl.ndl.go.jp/pid/2951538/1/11 
  30. ^ 北川由之助『日本之精華』毎日通信社、大正3、16頁。doi:10.11501/980768https://dl.ndl.go.jp/pid/980768/1/435 
  31. ^ 軍人旌功録 在郷之巻 1』日本旌功協会、明41.12、6頁。doi:10.11501/842926https://dl.ndl.go.jp/pid/842926/1/34 
  32. ^ a b c d 官報 1912年7月1日』大蔵省印刷局、1912年7月1日、5頁。doi:10.11501/2952066https://dl.ndl.go.jp/pid/2952066/1/3 
  33. ^ a b c d 官報 19139月1日』大蔵省印刷局、1913年9月1日、7-8頁。doi:10.11501/2952428https://dl.ndl.go.jp/pid/2952428/1/5 
  34. ^ a b c d 官報 1916年8月19日』大蔵省印刷局、1916年8月19日、416頁。doi:10.11501/2953327https://dl.ndl.go.jp/pid/2953327/1/4 
  35. ^ a b c 官報 1918年2月1日』大蔵省印刷局、1918年2月1日、5-6頁。doi:10.11501/2953761https://dl.ndl.go.jp/pid/2953761 
  36. ^ 官報 1918年7月2日』大蔵省印刷局、1918年7月2日、40頁。doi:10.11501/2953887https://dl.ndl.go.jp/pid/2953887/1/5 
  37. ^ a b c d 官報 1921年6月29日』大蔵省印刷局、1921年6月29日、1001頁。doi:10.11501/2954788https://dl.ndl.go.jp/pid/2954788/ 
  38. ^ a b c 官報 1923年8月7日』大蔵省印刷局、1923年8月7日、151頁。doi:10.11501/2955429https://dl.ndl.go.jp/pid/2955429 
  39. ^ a b 官報 1924年2月6日』大蔵省印刷局、1924年2月6日、81頁。doi:10.11501/2955582https://dl.ndl.go.jp/pid/2955582/1/6 
  40. ^ 日本紳士録 第25版』交詢社、1920年12月。doi:10.11501/3454537https://dl.ndl.go.jp/pid/3454537/1/1085 
  41. ^ a b 官報 1924年2月7日』大蔵省印刷局、1924年2月7日、106頁。doi:10.11501/2955583https://dl.ndl.go.jp/pid/2955583/1/3 
  42. ^ a b 官報 1924年12月16日』大蔵省印刷局、1924年12月16日、437頁。doi:10.11501/2955844https://dl.ndl.go.jp/pid/2955844/1/7 
  43. ^ 外山 1981, 189頁.
  44. ^ a b c 官報 1928年3月9日』大蔵省印刷局、1928年3月9日、243頁。doi:10.11501/2956818https://dl.ndl.go.jp/pid/2956818/1/6 
  45. ^ 官報 1924年3月22日』大蔵省印刷局、1924年3月22日、323頁。doi:10.11501/2955619https://dl.ndl.go.jp/pid/2955619/1/3 
  46. ^ a b c d 官報 1930年8月2日』大蔵省印刷局、1930年8月2日、59頁。doi:10.11501/2957545https://dl.ndl.go.jp/pid/2957545/1/14 
  47. ^ 官報 1927年3月16日』大蔵省印刷局、1927年3月16日、429頁。doi:10.11501/2956520https://dl.ndl.go.jp/pid/2956520/1/10 
  48. ^ a b 官報 1932年5月25日』大蔵省印刷局、1932年5月25日、645頁。doi:10.11501/2958089https://dl.ndl.go.jp/pid/2958089/1/5 
  49. ^ a b 官報 1932年4月13日』大蔵省印刷局、1932年4月13日、390頁。doi:10.11501/2958055https://dl.ndl.go.jp/pid/2958055/1/6 
  50. ^ a b c d 官報 1934年3月6日』大蔵省印刷局、1934年3月6日、146頁。doi:10.11501/2958625https://dl.ndl.go.jp/pid/2958625/1/10 
  51. ^ a b c d 官報 1936年8月3日』大蔵省印刷局、1936年8月3日、53頁。doi:10.11501/2959358https://dl.ndl.go.jp/pid/2959358/1/15 
  52. ^ a b c d e f 福川秀樹『日本陸軍将官辞典』芙蓉書房。 
  53. ^ 職員録 昭和13年1月1日現在』内閣印刷局、昭和13年、49頁。doi:10.11501/1452287https://dl.ndl.go.jp/pid/1452287/1/51 
  54. ^ 同盟旬報 第2巻 第20号(通号039号)』同盟通信社、1938年7月、1894頁https://www2.i-repository.net/il/meta_pub/detail 
  55. ^ a b c 第74号 昭和20年3月31日 陸軍異動通報』陸軍省、昭和20年3月31日https://www.jacar.archives.go.jp/aj/meta/result?IS_KEY_S1=C12120937900&SUM_KIND=SimpleSummary&IS_KIND=detail&IS_SCH=META&IS_STYLE=default&IS_START=1&IS_EXTSCH=&DEF_XSL=default&IS_SORT_KND=ASC&IS_SORT_FLD=&IS_TAG_S1=InD&IS_LYD_DIV=&LIST_VIEW=&ON_LYD=on 

参考文献

編集
  • 防衛研修所戦史室『陸軍軍戦備』朝雲新聞社戦史叢書〉、1979年。
  • 外山操 編『陸海軍将官人事総覧 陸軍篇』芙蓉書房出版、1981年。ISBN 4829500026 
  • 官報