鍋山鉱山(なべやまこうざん)は、かつて島根県雲南市(旧 三刀屋町)で操業していた鉱山である。斐川礦業により、化粧品塗料合成樹脂の原料などとして使われる[1]絹雲母(セリサイト)を産出していた。

鍋山鉱山
所在地
鍋山鉱山の位置(島根県内)
鍋山鉱山
鍋山鉱山
所在地島根県雲南市三刀屋
日本の旗 日本
座標北緯35度16分14秒 東経132度49分44秒 / 北緯35.27056度 東経132.82889度 / 35.27056; 132.82889座標: 北緯35度16分14秒 東経132度49分44秒 / 北緯35.27056度 東経132.82889度 / 35.27056; 132.82889
生産
産出物絹雲母
歴史
開山1962年
閉山2012年
所有者
企業斐川礦業
プロジェクト:地球科学Portal:地球科学

地質 編集

三刀屋周辺の東西4km、南北8kmの一帯[2]では20近いセリサイト鉱床があり、明治末期から大正にかけて採掘が行われた。第二次世界大戦後に再び採掘されるようになり、鍋山鉱山は1962年昭和37年)に操業開始した[1]

花崗岩が200~300で熱水変成作用を受けてセリサイトが生成したものと推測され、フィッショントラック法による年代測定では、試料により35.1±2.1Ma(百万年前)、28.4±2.2Ma、36.6±1.6Maの結果が得られている[2]

採掘 編集

鍋山鉱山の鉱体は幅30m・長さ100mほどで、三刀屋地区の他の鉱床に比べて大きい。深さ30mの竪坑から横坑道で掘り進め、採掘を終えた坑道は埋め戻す充填工法が採用されている。高品位の鉱石は淡緑色を帯び、原岩の組織はほぼ残存していない[1]。採掘された鉱石は約18km離れた同社の上津工場に運ばれ精製される。直径3~4cmのセリサイトは水簸工程にかけられ、1ヶ月ほど水に浸され泥状にされる。上澄み液に含まれる1mm程の粒子は分離装置にかけられ、粒径100マイクロメートル以下の結晶を含む溶液が回収される。この溶液を脱水ののち天日乾燥させて得た水分1%程の固形物を破砕したものは塗料やアーク溶接用の溶接棒の原料となる。これをさらに別の分離装置にかけ、乾燥・破砕して粒径2~6ミクロンにまで精製したセリサイトは「斐川マイカZ20」の品名で出荷された[3]。鍋山鉱山は三刀屋地区で最後まで操業を続け、愛知県粟代鉱山と並ぶ日本で数少ないセリサイト鉱山として知られたが[2]、2012年7月に土砂崩れのため閉山となった[3]

脚注 編集

  1. ^ a b c 鍋山鉱山のセリサイト”. 島根地質百選選定委員会. 2020年1月9日閲覧。
  2. ^ a b c (大平 2005, pp. 9–12)
  3. ^ a b (イカロス出版 2012, p. 34)

参考文献 編集

  • 『鉱山を行く』イカロス出版、2012年9月10日。ISBN 978-4-86320-623-6 
  • 大平寛人「島根県東部鍋山鉱山のFT年代測定」(PDF)『フィッション・トラックニュースレター』第18巻、日本フィッション・トラック研究会、2005年、9-12頁、2020年1月9日閲覧