高安犬(こうやすいぬ)は、山形県東置賜郡高畠町高安地区でかつて飼われていた日本犬の一種[1]

高畠町にある神社「犬の宮」の境内に鎮座する狛犬石像でも確認できるように、高安犬は犬張子を思わせる体型である。優秀なマタギ犬としてなどの獣猟や五目猟に使われていたが、昭和初期に絶滅した。

高安犬のルーツは甲斐犬にあるといわれており、犬の宮の伝説によれば、和銅年間(708年 - 718年)に甲斐の国から連れてこられた三毛犬四毛犬が、村人たちを困らせていた化け大狢(おおむじな)を退治したという。

戸川幸夫の小説『高安犬物語』は、高安犬の最後の1頭とされた「チン」の姿を描いた作品である。戸川は旧制山形高等学校在学中、チンについて知ったという。チンは犬フィラリア症に罹って死亡したとされ、姿だけでも残そうと剥製化を試みたものの、剥製師の技量が悪く失敗したため、現在は生前の写真が数枚残るのみである。

特徴 編集

  • 体格:筋肉質で引き締まった体つき。犬張子のごとく厚い胸。
  • 毛:やや堅めで、毛色は虎毛か白で、耳は茶色。白い毛色のものは白高安(しろこうやす)とも呼ばれる。立ち耳・巻き尾。
  • 用途:猟犬番犬
  • 性格:忠実でよく人を選び、気に入った人にのみ懐く。
  • サイズ:中型犬

三毛犬・四毛犬について 編集

高安犬の先祖となった三毛犬・四毛犬とは、既出の通り大狢を退治するために甲斐の国から取り寄せた甲斐犬とされる。

かつての甲斐犬は能力を重視して繁殖されていたことから毛色が統一されておらず、虎毛以外の毛色を持つ犬も多く存在していた。昔の甲斐犬の毛色は黒虎、赤虎、中虎以外にも三毛みけ:白地に虎)、四毛しけ=白地に虎に別の色の斑の入ったもの)という2パターンの混色や白、柴の毛色のものがいた。このころは毛色が虎毛のものを甲斐虎犬(かいとらいぬ)と呼び、他の毛色のものと区別されていた。しかし、戦後に犬種保存のためにスタンダード(犬種基準)が設定されると、三毛や四毛のものは排除されるようになり、姿を消してしまった。

出典 編集

  1. ^ 戸川幸夫の「高安犬(こうやすいぬ)物語」に出てくる犬はどんな犬ですか。”. レファレンス協同データベース. 国立国会図書館. 2023年1月26日閲覧。

関連項目 編集