魚油(ぎょゆ、fish oil)とは、魚から採取される脂肪油で、しばしば海産動物油と同義語を意味する。通常はイワシサンマなど大量に捕獲される魚類を原料とする。

魚油
魚油(sardine)
100 gあたりの栄養価
エネルギー 3,774 kJ (902 kcal)
0 g
食物繊維 0 g
100 g
飽和脂肪酸 29.892 g
一価不飽和 33.841 g
多価不飽和 31.867 g
22.766 g
0 g
ビタミン
ビタミンA相当量
(0%)
0 µg
チアミン (B1)
(0%)
0 mg
リボフラビン (B2)
(0%)
0 mg
ナイアシン (B3)
(0%)
0 mg
パントテン酸 (B5)
(0%)
0 mg
ビタミンB6
(0%)
0 mg
葉酸 (B9)
(0%)
0 µg
ビタミンB12
(0%)
0 µg
ビタミンC
(0%)
0 mg
ビタミンD
(55%)
332 IU
ミネラル
ナトリウム
(0%)
0 mg
カリウム
(0%)
0 mg
カルシウム
(0%)
0 mg
マグネシウム
(0%)
0 mg
リン
(0%)
0 mg
鉄分
(0%)
0 mg
亜鉛
(0%)
0 mg
マンガン
(0%)
0 mg
セレン
(0%)
0 µg
他の成分
水分 0 g
コレステロール 710 mg
%はアメリカ合衆国における
成人栄養摂取目標 (RDIの割合。
出典: USDA栄養データベース(英語)
魚油(100g中)の主な脂肪酸の種類[1]
項目 分量(g)
脂肪 100
飽和脂肪酸 29.892
14:0(ミリスチン酸 6.525
16:0(パルミチン酸 16.646
18:0(ステアリン酸 3.887
一価不飽和脂肪酸 33.841
16:1(パルミトレイン酸 7.514
18:1(オレイン酸 14.752
20:1 5.986
22:1 5.589
多価不飽和脂肪酸 31.867
18:2(リノール酸 2.014
18:3(α-リノレン酸 1.327
18:4(ステアリドン酸 3.025
20:4(未同定) 1.756
20:5 n-3(エイコサペンタエン酸(EPA)) 10.137
22:5 n-3(ドコサペンタエン酸(DPA)) 1.973
22:6 n-3(ドコサヘキサエン酸(DHA)) 10.656

概要

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他の脂肪油と異なり、脂肪酸成分はパルミチン酸が主であるがステアリン酸ミリスチン酸アラキジン酸オレイン酸ヘキサデセン酸などを含む。また、エイコサペンタエン酸(EPA)やドコサヘキサエン酸(DHA)などのω-3脂肪酸である高度不飽和脂肪酸や不鹸化物成分の含量も多い。精製しても空気中で高度不飽和脂肪酸などが容易に酸化され、しばらく放置すると独特の生臭い悪臭を発する。に含まれるDHAの多くは、ラビリンチュラ類の1属である Schizochytrium 属などのような海産の微生物によって生産されたものが、食物連鎖の過程で魚の体内に濃縮されたものである。

用途

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  • 硬化油の原料の一つであり、マーガリンショートニング、あるいは固形石鹸の原料として使用される。魚油を使用した業務用マーガリンを原料として添加している食パンクッキーなどもある。
  • 養魚用の飼料に添加するフィードオイル(養魚飼料油脂)にも利用され、必須脂肪酸供給源として重要な飼料の原料のひとつとなっている。
  • 製革用油、重合油ボイル油、低級塗料用油としても利用される。
  • アメリカ心臓協会は、心臓病と闘うための健康的な食事と生活スタイルを勧告している(心臓病#食と生活の勧告参照)[2]。魚油関連項目を以下に抜粋する。
    • 少なくとも週2回は魚を食べる。魚の油は多価不飽和脂肪酸のω-3脂肪酸を含み、心臓疾患のリスク低下と相関関係がある。
  • 魚油に多く含まれる高度不飽和脂肪酸は、サプリメント健康食品としても利用されているが、2023年、ハーバード大学医学部は、心臓の健康のために魚油などのサプリメントを購入すべきではないと発表した[3]。むしろ、魚油のサプリメントは健康に悪い可能性があり、魚油は健康のために魚を食べて直接摂るべきだとしている[4]
  • エイコサペンタエン酸(EPA)やドコサヘキサエン酸(DHA)は、医薬品として認可されている。(エパデール(EPA)やロトリガ(EPAとDHAの合剤)など)
  • 以前は行灯の燃料としても使用されていた。圧搾技術が未発達だった当時、抽出に手間のかかるナタネ油など植物油は高級品であり、ハゼノキの実から抽出する蝋を原料とする蝋燭はさらなる贅沢品であった。一方、イワシ油やニシン油など魚油は比較的安価であり、燃焼時に煙や臭気を発する欠点こそあれ庶民の間で広く使われた。化け猫が行燈の油をなめるという言い伝えは、行灯の燃料に魚油を使っていたことに由来する[要出典]

健康への影響

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前立腺がん

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前立腺癌に対する魚油摂取の効果はまちまちである[5][6]。例えば、ある研究では、血中DPA濃度が高いほどリスクが低下することが示された。しかし、別の研究では、EPAとDHAの血中濃度が高いほど、より攻撃的な前立腺がんのリスクが増加することが報告されている。

心臓血管系

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心血管疾患予防における魚油の役割については不確かであり、その潜在的な影響について異なる結論を出しているレビューがある。多くの研究が、魚油の摂取によって心臓発作や脳卒中の発生率がわずかに減少する可能性はあるが、心血管疾患の死亡率はほとんど減少しないことを示している[7]

妊娠

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母親が授乳期の最初の4ヵ月間に魚油サプリメントを摂取した、生後30ヵ月の子供の精神運動発達レベルが高かったという報告もある[8]。さらに、授乳開始後4ヵ月間に、母親が低用量の藻類由来のドコサヘキサエン酸サプリメントを摂取した5歳児は、注意力テストで良好な成績を示した。このことは、乳児期早期におけるドコサヘキサエン酸の摂取が、神経系の発達のある側面に対して長期的に良い影響を与えることを示唆している。

オメガ3脂肪酸は、卵子の健康状態を改善し、炎症を抑え、ホルモンを調整する[9][10]

高血圧

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オメガ3脂肪酸を摂取すると血圧がわずかに低下するというヒトの研究もある(EPAよりもDHAの方がより効果的かもしれない)[11]。オメガ3脂肪酸は出血のリスクを高める可能性があるため、魚油サプリメントを摂取する前に資格のある医師に相談すべきである。

魚介類の脂肪酸

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脚注

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  1. ^ USDA National Nutrient Database
  2. ^ Our 2006 Diet and Lifestyle Recommendations (英語) (AHA - American Heart Association)
  3. ^ Solan, Matthew (2023年2月1日). “Don’t buy into dietary supplements for heart health” (英語). Harvard Health. 2024年2月4日閲覧。
  4. ^ Corliss, Julie (2023年12月1日). “The false promise of fish oil supplements” (英語). Harvard Health. 2024年5月30日閲覧。
  5. ^ Fish oil slows prostate cancer xenograft growth relative to other dietary fats and is associated with decreased mitochondrial and insulin pathway gene expression”. www.nature.com. 2024年11月24日閲覧。
  6. ^ Fish Oil and Prostatic Cancer”. www.wholefoodsmagazine.com. 2024年11月24日閲覧。
  7. ^ Omega‐3 fatty acids for the primary and secondary prevention of cardiovascular disease”. pmc.ncbi.nlm.nih.gov. 2024年11月24日閲覧。
  8. ^ Effects of early maternal docosahexaenoic acid intake on neuropsychological status and visual acuity at five years of age of breast-fed term infants”. pubmed.ncbi.nlm.nih.gov. 2024年11月24日閲覧。
  9. ^ How to Use Safe Fish Oils to Balance Your Hormones and Reduce Inflammation”. hormonesbalance.com. 2024年11月24日閲覧。
  10. ^ Fertility”. conceiveplus.com. 2024年11月24日閲覧。
  11. ^ Omega-3 fatty acids can lower your blood pressure”. healthandscience.eu. 2024年11月24日閲覧。

関連項目

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出典

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