サプリメント

サプリメント(supplement)とは、栄養補助食品(えいようほじょしょくひん)とも呼ばれ、ビタミンミネラルアミノ酸など栄養摂取を補助することや、ハーブなどの成分による薬効が目的である食品である。略称はサプリダイエタリー・サプリメント(dietary supplement)は、アメリカ合衆国での食品の区分の一つである。ほかにも生薬酵素ダイエット食品など様々な種類のサプリメントがある。健康補助食品(けんこうほじょしょくひん)とも呼ばれる。

またその市場拡大につれ議論も起こっている。

目次

アメリカにおける歴史編集

アメリカでは医療保険制度が日本とは異なり、病気にかかると日本と比べて高額な医療費が必要となるため、日頃からの健康の維持に大きく関心が割かれ、薬よりも安いものも多いサプリメントが幅広く普及している。また健康の自由運動英語版という、食品の効能の表示の自由や、サプリメントの使用の自由を健康のために求める運動が活発である。1910年代にビタミンが発見され、その後サプリメントとして消費されるようになった。

1938年、連邦食品・医薬品・化粧品法が制定され、ラベル表示の誇大表現が取り締まられるようになった[1]

1950年代に、アメリカ食品医薬品局(FDA)が強硬姿勢をとるようになったため、サプリメント産業は全国健康連盟英語版(NHF)を組織しロビー活動を開始する[1]

1962年、FDAはサプリメントの表示ラベルに欠乏症でない場合には必要ないと表示するよう提案をしたが、NHFから4万通の抗議の手紙が届く[1]

1966年、FDAは1962年と同様の提案をもう少し弱めた表現で求めたが、今度は200万通以上の抗議の手紙が届いた[1]

1976年、食品・医薬品と化粧品条例が改正され、サプリメントを医薬品に分類することが禁止された。

1980年代には、ロック・フェスティバルレイヴスマートドリンク英語版と呼ばれるビタミンやアミノ酸などが配合されたドリンクがアルコール飲料の代わりに飲まれたが、FDAはスマート(頭がよくなるという意味)という言葉を使用しないよう警告した[2]。また、この頃に生活習慣病と食事の関係がわかって食生活指針が策定され、こうした背景が今度は食品の効能表示を増やしていく。

1988年末から翌年にかけて大規模なトリプトファン事件が起こり死者も数十名に上った。

栄養補助食品健康教育法の成立編集

1990年、栄養表示教育法(NLEA)が策定され、食品やサプリメントと病気予防の関連について申請し科学的根拠があると認定されたものについては、申請者でなくても効能を表示できるようになった。

また、同じ1990年には『頭のよくなる薬-スマート・ドラッグ』[3]Smart drugs & nutrients)が出版され、スマートドラッグがマスコミで話題になりFDAの監視が強くなる[4]

1992年、NLEAに伴ってFDAのサプリメントのラベル表示の規制が進められようとしていたこの時期に、栄養療法を行っていたジョナサン・V・ライトのタホマ・クリニックに武装したFDA職員が押し入ったことが『ニューヨーク・タイムズ』に掲載された[5]。FDAはそこで使われている製品の安全性を懸念していたと弁解したが、サプリメントが医薬品として規制されるかもしれないという世論ができて反対活動が起こった[5]。同年、『頭のよくなる薬』のジョン・モーゲンサーラーStop the FDA:save your health freedom を出版して健康の自由を訴えた。オリン・ハッチ上院議員は健康の自由法(Health Freedom Act)の法案を提出したが、却下された。

1993年、FDAは「頭がよくなるということで承認された薬や食品はないので、このようなものが販売されないように動いている」ことを発表する[6]。NHF主導によって抗議活動が行われ、FDAに何十万通もの抗議の手紙が送られ、健康の自由をめぐって抗議活動が続いた[7]

1994年、アメリカの連邦政府は栄養補助食品健康教育法(ディーシェイ、DSHEA)を可決し、サプリメントを「ビタミン、ミネラル、ハーブアミノ酸のいずれかを含み、通常の食事を補うことを目的とするあらゆる製品(タバコを除く)」と定義し、サプリメントにわかりやすいラベル表示を義務付けた。

サプリメントは、食品医薬品とは異なるカテゴリーにある。FDAの定義ではサプリメントは医薬品など治験により効果を実証されたものとは異なっているため、病気を治療するという主張はできない。しかし、DSHEAでは科学的根拠がなくてもなんらかの証拠があれば効能を表示できることになっており、医薬品ほどに厳しい品質基準を維持する義務もないため、製品の品質のばらつきも許容されている。このため効果を連想できるような表現が用いられる。DSHEAでチラシやパンフレットをラベルとみなすことを禁じ、FDAは製品の文面を製品ラベルとみなすように規定されている。パンフレットや書籍その他の広告は連邦取引委員会(FTC) が監視しているため、広告に関しては製品ラベルより規制が緩い。

また、DSHEAでは製品を発売する前に医薬品の治験のようにその成分の安全性を確認する必要はない。FDAは自ら定めた基準に基づき安全性に問題があると見られる製品について市場追放命令を出すことができる。FDAは商品製造工場や販売メーカーへの抜き打ち検査や消費者からのクレームの処理を行っている。詳細にわたって管理を行うとともに、基準に達していない場合や許可時と異なった配合などを行った場合には、製品の販売停止・業務停止を執行できる権限をもつ。故に、アメリカの栄養補助食品は日本国内で生産される製品に比べると、公的機関による「監視・検査」確率は非常に高い。それに対し、日本国内で製造される栄養補助食品は、事故が発生しない限り、製造・販売中止になる確率は極めて低い。FDAはこれら指導を行った内容についてインターネット上などで詳細な報告を行っており、消費者もそれらを容易に確認することができ、それら資料を購入前の判断の一つとして利用することが可能である。

アメリカ国立衛生研究所のODS(Office of Dietary Supplements)がDSHEAによって設置され、サプリメントのデータベースの公開や、査読制度のある雑誌の研究を基に有効性のあるサプリメントに絞って報告書「Annual Bibliography of Significant Advances in Dietary Supplement Research」[8]を作成している。

1997年、世界中のビタミンの価格に関与しているビタミン業界による価格カルテルが発覚した、刑事罰による罰金が全米史上最高の10億ドルとなった[9]

2004年11月、これまで効能表示の根拠の基準はなかったが、その基準が発表された。

2007年6月、不純物や有害物質の混入を防ぎラベルどおりの内容物を含むという適正製造基準(CGMP:Current Good Manufacturing Practice)[10]のラベル表示が義務付けられることが決定する。従業員規模によって猶予期間は2008〜2010年までとなる。

日本編集

日本では、サプリメントは法律的や行政的な定義が存在せず、厚生労働省では便宜上「特定成分が凝縮された錠剤やカプセル形態の製品」と定義して食品に分類される健康食品とは分けているが、広い意味ではサプリメントも健康食品の一つとしている[11]

1996年には、アメリカの外圧により、市場開放問題苦情処理体制サプリメントが販売できるように規制緩和が決定された[12]で。

1990年頃から、国民の健康意識の高まりやテレビ番組での紹介によりサプリメントへの認識は広まり、また医療費高騰の対策として国政として予防医学を進めて法整備や規制緩和が行われ、また一般の人に健康維持の意識を高めてもらう目的で推進されていることもあり、日本でも一大市場となっている。

EU編集

EUでは、フードサプリメント(food supplement)の制度があり製品の品質に基準がある。このため区分としては日本での医薬部外品に近い。フードサプリメントでは錠剤やカプセルなど医薬品に近い形態の、ビタミン、ミネラル、アミノ酸、ハーブなどが対象になっている。

国によって異なるが、在来の伝統約である西洋ハーブ(生薬)はハーバルメディスンとして医薬品の区分が用意されている国も多い。ハーバルメディスンは治験の承認の負担が軽い。(伝統生薬製剤の欧州指令

種類編集

炭水化物脂質タンパク質といった3大栄養素が作用するためには微量栄養素のビタミンやミネラルが必要である。こうした栄養素の中では、必須ビタミン必須ミネラル必須脂肪酸が不足しやすいと考えられる。元来、狭義のサプリメントは生体に不足した栄養素を補充する目的で用いられていた。

製法から大別すると3つある。

  1. 化学合成サプリメント
  2. 天然素材を利用し化学合成したサプリメント - 以上2つは、基本的に成分表に書いてあるビタミンやミネラルのみが含まれる。
  3. 天然の成分を抽出したサプリメント - 目的とする成分だけでなく成分が自然に存在する配合であったり、フラボノイドなどが含まれるため、好ましいとする意見もある。

日本の法律上、一般的な食品と法律上効能表示が承認されたものに大別される。詳細は健康食品

議論編集

2013年12月にアメリカの研究者らによって、栄養不足のない人にとっては、ビタミンやミネラルのサプリメントは慢性疾患の予防や死亡リスクの低減に効果はなく、ビタミン・ミネラルの一部は特定の疾患リスクを高める可能性があると報告された[13][14]

代表的なサプリメント成分編集

脚注編集

  1. ^ a b c d マリオン・ネスル 『フード・ポリティクス-肥満社会と食品産業』 三宅真季子・鈴木眞理子訳、新曜社、2005年。ISBN 978-4788509313。284-287頁
  2. ^ B・ポッター、S・オルファーリ 『ブレイン・ブースター-頭をよくする薬、ビタミン、栄養素、ハーブ』 オークラ出版、1999年10月。ISBN 978-4872785203。131-133、176-177頁。原著:brain boosters 1993
  3. ^ ウォード ディーン、ジョン モーゲンサーラー 『頭のよくなる薬-スマート・ドラッグ』 第三書館、1994年5月ISBN 978-4807494071。原著 Smart drugs & nutrients 1990
  4. ^ B・ポッター、S・オルファーリ 『ブレイン・ブースター-頭をよくする薬、ビタミン、栄養素、ハーブ』 オークラ出版、1999年10月。ISBN 978-4872785203。196頁。原著 brain boosters 1993
  5. ^ a b B・ポッター、S・オルファーリ 『ブレイン・ブースター-頭をよくする薬、ビタミン、栄養素、ハーブ』 オークラ出版、1999年10月。ISBN 978-4872785203。193-194頁。原著 brain boosters 1993
    マリオン・ネスル 『フード・ポリティクス-肥満社会と食品産業』 三宅真季子・鈴木眞理子訳、新曜社、2005年。ISBN 978-4788509313。303-305頁
  6. ^ Using 'Smart' Drugs and Drinks May Not Be Smart(April 1993)(英語)(FDA)
  7. ^ マリオン・ネスル 『フード・ポリティクス-肥満社会と食品産業』 三宅真季子・鈴木眞理子訳、新曜社、2005年。ISBN 978-4788509313。311-313頁
  8. ^ Annual Bibliographies of Significant Advances in Dietary Supplement Research(ODS - Office of Dietary Supplements)
  9. ^ Tearing Down The Facade of 'Vitamins Inc.' (he New York Times, October 10, 1999)
  10. ^ FDA Issues Dietary Supplements Final Rule(英語)(FDA)
  11. ^ 多様な健康食品 - 厚生労働省
  12. ^ 基準・認証制度等に係る市場開放問題についての対応(平成8年3月26日)(市場開放問題苦情処理体制)
  13. ^ Ann Intern Med. 2013;159(12):824-834. doi:10.7326/0003-4819-159-12-201312170-00729
  14. ^ Ann Intern Med. 2013;159(12):850-851. doi:10.7326/0003-4819-159-12-201312170-00011

参考文献編集

  • マリオン・ネスル 『フード・ポリティクス-肥満社会と食品産業』 三宅真季子・鈴木眞理子訳、新曜社、2005年。ISBN 978-4788509313。原著 food politics, 2002(第4部 サプリメントの規制緩和)

関連項目編集

外部リンク編集