ジェチーン-ドレスデン=ノイシュタット線

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ジェチーン-ドレスデン=ノイシュタット線(ジェチーン-ドレスデン=ノイシュタットせん、ドイツ語: Bahnstrecke Děčín–Dresden-Neustadt、別名エルベタール線 Elbtalbahn)は、チェコウースチー州ドイツザクセン州を通る複線電化の鉄道路線である。ザクセン-ベーメン邦有鉄道線として建設され、プラハドレスデンを結ぶ幹線としてヨーロッパでも重要な路線となっている。エルベ川の峡谷をジェチーンからバート・シャンダウドイツ語版ピルナドイツ語版を通ってドレスデンへ結んでいる。

ジェチーン-ドレスデン=ノイシュタット線
1902年当時の路線図
1902年当時の路線図
基本情報
通称 エルベ谷線
現況 営業中
ドイツチェコ
所在地 ザクセン州ウースチー州
起点 ジェチーン本駅
終点 ドレスデン・ノイシュタット駅
駅数 26駅
路線記号 6240
路線番号 241.1、247
所有者 ドイツ鉄道
路線諸元
路線距離 65.8 km
軌間 1435 mm (標準軌)
電化方式 15000 V / 16.7 Hz (交流、ドイツ)
3000 V (直流、チェコ)
架空電車線方式
最大勾配 10 ‰
最小曲線半径 300 m
最高速度 160 km/h
線路等級 D4
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運行経路
STR
プラハ - ジェチーン線
ABZgl+xl
BHF
0.5 ジェチーン本駅 135 m
ABZgr
Děčín–Jedlová
LSTR
BST
2.0 ジェチーン・プルジーペルジ
ABZg+r
Nymburk–Děčín-Prestřední Žleb
BHF
4.1 ジェチーン・プロストレドニー・ジレプ 135 m
HST
6.8 ジェチーン・チェルトヴァ・ヴォダ 135 m
HST
9.3 ドルニー・ジレブ停車駅
WBRÜCKE1
Dolnožlebský potok
BHF
10.4 ドルニー・ジレブ 130 m
WBRÜCKE1
チェコ / ドイツ↓、Gelobtbach
GRENZE
eDST
12.7 Schöna Ldst
S+BHF
13.9 ショェーナ S 1終着駅 422 m
S+HST
15.6 シュミルカ・ヒルシュミューレ
LSTR
DST
20.1 Bad Schandau Ost
LSTR
S+HST
21.1 クリッペン 416 m
SBRÜCKE
Staatsstraße 169
S+BHF
22.8 バート・シャンダウ
ABZgr
バウツェン - バート・シャンダウ線
LSTR
SHST
27.7 コェニヒシュタイン
LSTR
SBHF
33.9 クーアオルト・ラーテン
eBST
36.9 Bk Basteiblick
SHST
37.1 シュタット・ヴェーレン (ザクセン)
eBST
38.8 Bk Zeichen
SHST
40.6 オーバーフォーゲルゲザング
LSTR
S+BHF
45.4 ピルナ S 2終着駅
S+HST
47.9 ハイデナウ・グロースゼドリッツ
S+HST
49.7 ハイデナウ南駅
WBRÜCKE1
ABZg+l
ハイデナウ - クアオルト・アルテンベルク線
S+BHF
51.2 ハイデナウ
S+HST
52.7 ドレスデン・チャッハヴィッツ
S+HST
54.2 ドレスデン・ニーダーゼドリッツ
S+HST
56.3 ドレスデン・ドーブリッツ
S+BHF
57.8 ドレスデン・ライク
S+HST
60.1 ドレスデン・シュトレーレン
S+BHF
62.5 ドレスデン中央駅 S 3終着駅
ABZgl
SHST
63.7 デレスデン・フライベルク街
S+BHF
64.7 ドレスデン・ミッテ
hKRZWae
マリエン橋 (エルベ川)
S+BHF
66.3 ドレスデン・ノイシュタット
ABZgl
GD線、LD線

この路線は、汎ヨーロッパネットワークの22号線(アテネ - ソフィア - ブダペスト - ウィーン - プラハ - ニュルンベルク/ドレスデン)の一部を形成しており、ヨーロッパ地域開発基金英語版 (ERDF) およびドイツ連邦政府からの資金1100万ユーロを投じて2000年から2006年にかけて改良工事が行われた。またドレスデンとイスタンブールを結ぶ汎ヨーロッパ回廊の4号線の最北端部分でもある。ドイツとチェコを直接結ぶ路線としては唯一の電化路線である。ベルリンとプラハを結ぶユーロシティが運転されており、一部はブダペストまで運転されている。

歴史

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鉄道建設および王立ザクセン鉄道の管理

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ライプチッヒ - ドレスデン線が計画された際に、鉄道を南方へ延長することも計画された。1835年5月6日の建設許可ではライプチッヒ=ドレスデン鉄道会社(Leipzig-Dresdner Eisenbahn-Compagnie, LDE)が鉄道をザクセン・ボヘミア境界まで建設する権利が認められていた[1]。ザクセン王国はオーバーラウジッツを通過してチッタウ、ライヒェンベルク(現在リベレツ)経由の経路を好んだが、地形の難しさのため、計画は挫折した。オーストリア帝国は地形の難点が少ないヴルタヴァ川とエルベ川の沿線経路を好んだ。1840年5月にエルベ川辺の測量が開始された。エルベ川辺の経路について、オーストリアとザクセンは1842年に条約を結んで、ニーダーグルント(現在ドルニーズレブ)の中間地点として確定された[2]。LDEは会社資金で建設は不可能だと判断して、計画および建設工事はザクセン政府が担当することとなった。1845年12月1日に起工式は現在のドレスデン中央駅の敷地で開催された。線路と路盤は1845年3月当時の洪水最大水位よりおよそ90 cm高く構築するように設定された。

1848年7月31日にピルナ - ドレスデン間が最初に開通された[3]。その区間は1850年5月9日にコェーニヒシュタインまで、同年6月9日にクリッペンまで延長された。1851年4月8日にクリッペン - ボーデンバッハ(現在ジェチーン本駅)間がアウシヒ(現在ウースティー・ナド・ラベム) - ボーデンバッハ間とともに開業されて、所有権に順ってザクセン=ボヘミア国鉄管理局が運営を担当した。1850年12月31日に締結された協定によりボーデンバッハ駅はザクセン=ボヘミア鉄道と北部帝国鉄道(k.k. Nördliche Staatsbahn, NStB)の境界駅として決定された[4][5]。ドレスデン市内ではザクセン=ボヘミア鉄道はシュレジエン駅(現在ノイシュタット駅)に至るように、計画が立てられた。1846年8月にエルベ川鉄道橋の工事が開始されて、1852年4月19日に鉄道・道路橋梁は列車通行の開始とともに開通された。

19世期末、運送量増加でドレスデン市内の線路容量が不足になった。市街地の平地線路は多い踏切のため交通発達の障害になると見なされた。ドレスデン市内の線路改修が企画されて、主要事業では複々線設置だけではなくドレスデン主要駅の改築および高架線路の設置も含まれた。施設改修工事は1892年4月に開始された。既存のボヘミア駅は撤去されて、新しい中央駅は1898年4月17日に開業された。マリエン鉄道橋とノイシュタット駅の改築は1901年3月1日に完了した。1890年代にドレスデン - ピルナ間の複々線工事は、1895年12月9日に発効した布告17号を根拠として実行された。1902年7月3日ドレスデン - シュトレーレン間に複々線線路が備えられた。第一次世界大戦の開戦まで線路改修はハイデナウまで完了した。

ドイツ国営鉄道

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終戦後、複々線工事は資金不足と確然に減少した貨物列車の通行量のためすぐに行われなかった。1920年代末にピルナ - ハイデナウ間の工事はようやくで再開されて、1934年5月11日に終了した。

1938年10月1日付きにナチス・ドイツはズデーテン地方を合併して、この路線の場合、国境線と国境統制が省略された。1939年夏の当時、ベルリン発特急列車が主にウィーン、プラハ、ブラチスラヴァへ走行して、他にカルロヴィヴァリ行きの列車もこの路線を経由した[6]

1945年4月19日にアメリカ空軍の編隊がピルナ駅を爆撃した。駅施設は重大な損傷を負って、列車の定期運行は不能となった。

運行形態

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超特急「インターシティ・エクスプレス (ICE)」

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2時間間隔で運行し、主にドレスデン~フランクフルトの系統で運行している。ドレスデン~ドレスデン=ノイシュタット間のみ、241号線を走行する。

寝台特急「ユーロナイト (EN)」

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下記の3系統が、一日1往復ずつ運行している。なお、フェニックス号とカノープス号は、アムステルダム・チューリヒ方面に限り、併結運転する。

  • フェニックス号(プラハ~アムステルダム間)
  • カノープス号(プラハ~チューリヒ間)
  • メトロポル号(ブダペスト~プラハ~ベルリン間)

2時間間隔で運行し、主にブダペスト~プラハ~ジェチーン~ベルリン・ハンブルクの系統で運行している。

2時間間隔で運行し、主にドレスデン~ケルンの系統で運行している。ドレスデン~ドレスデン=ノイシュタット間のみ、241号線を走行する。

区間毎に運転系統が異なる。

  • ヴァーノチニー・コメタ号、レトニー・コメタ号: ウースチー - ジェチーン - ドレスデン 【春・夏および12月の休日運行】
    一日1往復の運行。チェコ国鉄090号線に直通する。チェコ国内は、普通列車として案内される。停車駅はジェチーンとバート・シャンダウのみ。愛称名は、春・夏の便がレトニー・コメタ、秋の便がヴァーノチニー・コメタとなっている。
    2016年以前はヴァーノチニー・コメタ号のみ、夏・秋の休日に運行していた。2017年度は12月のみ運行となった。2018年度より、春・夏の運行を開始した(当時は愛称名無し)。レトニー・コメタ号の愛称は2019年以降つけられる予定。
  • リトムニェルジツェ - ジェチーン - ドレスデン間 【春・夏の土曜・休日運行】
    一日1往復の運行。チェコ国鉄090号線に直通し、ドレスデン~リトムニェルジツェ間で運行される。チェコ国内は、普通列車として案内される。
    2017年以前は、春・夏の休日のみの運行であった。2021年度以前は、シュミルカとクリッペンを通過していた。

普通

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以下の5種類が運行されている。

 毎時1本の運行。大部分が233号線に直通する。

  • シュタットバーン・ザクセン (SBS)」 ドレスデン~ドレスデン=ノイシュタット~カメンツ

 毎時1本の運行。大部分が233号線に直通する。

  • Sバーン (S1)」 マイセン~ドレスデン=ノイシュタット~ピルナ・シェーナ

 毎時2本の運行だが、半数はピルナ以北の運行で、ピルナ~シェーナ間は毎時1本の運行となる。ノイシュタット以北は500号線に直通する。

  • 「Sバーン (S2)」 ドレスデン空港~ドレスデン=ノイシュタット~ハイデナウ・ピルナ

 毎時2本の運行だが、平日は午前中のみ空港~ハイデナウ間のみの運行で、休日は空港~ドレスデン間のみの運行となる。ノイシュタット以北は233号線に直通する。

  • 「オソブニー (Os)」 ルンブルク~バート・シャンダウ~ジェチーン

 2時間に1本の運行で、バート・シャンダウ以北は248号線に直通する。この他、ドルニー・ジレブ~ジェチーン間の区間運行もある。なお、2020年秋に限り、248号線に直通せず、バート・シャンダウ止まりとなる。

駅一覧

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以下では、ドイツ国鉄241号線の駅と営業キロ、停車列車、接続路線などを一覧表で示す。

  • 種別
    • ICE:超特急「インターシティ・エクスプレス」
    • EN:寝台特急「ユーロナイト」
    • EC:特急「ユーロシティ」「インターシティ」
    • RB:快速
    • S:普通
  • 停車駅
    • 印:全列車停車
    • 印:一部通過
    • 印:一部停車
    • |印:全列車通過

ジェチーン本駅 - ドレスデン=ノイシュタット駅間

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路線名 駅名 駅間営業キロ 累計営業キロ ICE EN EC RE S 接続路線 所在地
ジェチーン
旧駅から
ジェチーン
本駅から
083 ジェチーン本駅 - 0.5 0.0  

チェコ国鉄
  073号線(ストルジェコフ方面)
  081号線(ルンブルク/リベレツ方面)
  130号線(プラハ/ホムトフ方面)
  132号線(テルニツェ方面)

ウースチー州 ジェチーン郡
ジェチーン・プルジーペルジ駅 1.5 2.0 1.5    
ジェチーン・プロストルジェドニー・ジレブ駅 2.1 4.1 3.6    
ジェチーン・チェルトヴァ・ヴォダ駅 2.7 6.8 6.3    
ドルニー・ジレブ停留所 2.5 9.3 8.8    
ドルニー・ジレブ駅 1.1 10.4 9.9    
241 シェーナ駅 3.5 13.9 13.4     ザクセン州 ザクセン・シュヴァイツ・東エルツ山地郡
シュミルカ・ヒルシュミューレ駅 1.7 15.6 15.1    
クリッペン駅 5.6 21.2 20.7    
バート・シャンダウ駅 1.6 22.8 22.3   247号線(ルンブルク方面)
ケーニヒシュタイン駅 4.9 27.7 27.2    
クーアオルト・ラーテン駅 6.2 33.9 33.4    
シュタット・ヴェーレン駅 3.1 37.0 36.5    
オーバーフォーゲルゲザング駅 3.6 40.6 40.1    
ピルナ駅 4.8 45.4 44.9   248号線(ノイシュタット方面)
ハイデナウ・グロースゼードリッツ駅 2.6 48.0 47.5    
ハイデナウ南駅 2.0 50.0 49.5    
ハイデナウ駅 1.2 51.2 50.7   246号線(クロート・アルテンベルク方面)
ドレスデン=チャハヴィッツ駅 1.5 52.7 52.2     ドレスデン市
ニーダーゼードリッツ駅 1.5 54.2 53.7    
ドーブリッツ駅 2.1 56.3 55.8    
ライク駅 1.3 57.6 57.1    
シュトレーレン駅 2.5 60.1 59.6    
ドレスデン中央駅 2.4 62.5 62.0 225号線510号線
フライベルク通り駅 1.4 63.9 63.4  
ドレスデン中駅 0.8 64.7 64.2  
ドレスデン=ノイシュタット駅 1.6 66.3 65.8 230号線500号線

参考文献

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  • Peter Hilbert et al. (2001) (ドイツ語). Flügelrad und Elbsandstein: 150 Jahre erste sächsisch-böhmische Eisenbahnverbindung Bodenbach-Dresden. Pirma: Pirmaer Redaktions-Verlagsgesellschaft. ISBN 3-9808416-1-8 
  • Johannes Raddatz (2010) (ドイツ語). Eisenbahn in der Sächsischen Schweiz. Band 1. Berlin: Verlag Bernd Neddermeyer. ISBN 978-3-937496-06-1 
  • Johannes Raddatz (2010) (ドイツ語). Eisenbahn in der Sächsischen Schweiz. Band 2. Berlin: Verlag Bernd Neddermeyer. ISBN 978-3-941712-11-9 
  • Johannes Raddatz (2011) (ドイツ語). Eisenbahn in der Sächsischen Schweiz. Band 3. Berlin: Verlag Bernd Neddermeyer. ISBN 978-3-941712-17-1 
  • Hermann Strach (1898). Österreichischer Eisenbahnbeamten-Verein. ed (ドイツ語). Geschichte der Eisenbahnen Oesterreich-Ungarns von den ersten Anfängen bis zum Jahre 1867. Geschichte der Eisenbahnen der Oesterreichisch-Ungarischen Monarchie. Band 1.1. K. Prochaska. p. 73–503. https://archive.org/details/geschichtedereis11aust/page/72/mode/2up 

関連項目

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外部リンク

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  • 路線経路、主要施設、許容速度: OpenRailway

脚注

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  1. ^ Udo Becher (1981) (ドイツ語). Die Leipzig-Dresdner Eisenbahn-Compagnie. Berlin: transpress VEB Verlag für Verkehrswesen. p. 123 
  2. ^ H. Strach (1898). Band 1.1. p. 232]
  3. ^ J. Raddatz (2010). Band 2. p. 82
  4. ^ (ドイツ語) Reichs-Gesetz und Regierungsblatt: 80. Übereinkunft zwischen der kaiserlich-österreichischen und der königlich-sächsischen Regierung vom 31. December 1850. Wien: Kaiserlich-königliche Hof- und Staatsdruckerei. (1851). p. 251. https://alex.onb.ac.at/cgi-content/alex?aid=rgb&datum=18510004&seite=00000251 
  5. ^ H. Strach (1898). Band 1.1. pp. 236-239
  6. ^ Deutsches Kursbuch Sommer 1939: 133e Dresden - Bodenbach - Lobositz - Theresienstadt” (ドイツ語). Ingolf Aschenbrenner. 2024年7月1日閲覧。