PERIL 危機』(ペリル きき、Peril)は、アメリカ合衆国のジャーナリストのボブ・ウッドワードロバート・コスタ英語版が、退陣するトランプ政権ジョー・バイデンへの大統領移行、そしてその政権初期について記したノンフィクション書籍である。2021年9月21日にサイモン&シュスターから出版された。

PERIL 危機
Peril
著者 ボブ・ウッドワード
ロバート・コスタ英語版
訳者 伏見威蕃
発行日 アメリカ合衆国の旗 2021年9月21日
日本の旗 2021年12月16日
発行元 アメリカ合衆国の旗 サイモン&シュスター
日本の旗 日本経済新聞出版
ジャンル ノンフィクション
アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国
言語 英語
ページ数 アメリカ合衆国の旗 512
日本の旗 616
前作 RAGE 怒り
コード ISBN 978-1982182915
ISBN 978-4532177157(日本語)
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ドナルド・トランプに関するウッドワード報道の集大成とされる本書のタイトルは、バイデンの就任演説から来ている[1]。演説の中でバイデンは、「私たちは切迫感をもって迅速に前進します。(中略)この危機の冬、私たちにはやることが大量にあるのです」と宣言している[2][3]。これはウッドワードのトランプ政権に関する前著『FEAR 恐怖の男 トランプ政権の真実』と『RAGE 怒り』のタイトルが2016年3月のウッドワードとコスタによるトランプへのインタビュー内容から来ていたのとは対照的である[4]

背景

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ウッドワードによる過去2冊のトランプ本『FEAR 恐怖の男 トランプ政権の真実』と『RAGE 怒り』に続き、『PERIL 危機』はウッドワードのドナルド・トランプ3部作の最終作である。長年『ワシントン・ポスト』の全国政治記者であり、『ワシントン・ウィーク』のホストでもあるロバート・コスタが本書の共著者を務めている。コスタは以前にもドナルド・トランプへのインタビューでウッドワードと協力した経験があり、コスタはウッドワードを師と仰いでいる[5]。本書の大部分はトランプ政権の最後の数ヶ月間を暴露する内容となっており、COVID-19への政権の対応英語版2020年アメリカ合衆国大統領選挙を覆そうとする試み英語版、ジョー・バイデンへの大統領以降を遅らせようとする試みなどが詳述されている。

内容

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本書は2つの物語を備えている。1つはトランプの再選運動英語版を追ったものであり、もう1つは予備選挙で対立候補のバーニー・サンダースを破り、トランプと対決することとなるジョー・バイデンの選挙運動を記したものである。

マーク・ミリー統合参謀本部議長と中国の李作成連合参謀部参謀長の会話も本書で取り上げられている。本書はまた、2020年大統領選挙の結果を覆そうとするトランプ政権の背後関係も書かれている[6][7]

評価

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本書に対する批評家の反応は賛否があった。『ロサンゼルス・タイムズ』のクリス・メジェリアンは「退屈」な読み物であると酷評し、ウッドワードとコスタが「既に徹底的に報道がなされている大統領政権について、新たな洞察を生み出すよりも、逸話を積み重ねることに時間を費やしている」と批判した[8]

スレート英語版』のフレッド・カプランは、「ウッドワードの過去の著作の多くがそうであったように、本書もまとまりのある1冊というよりは、身の毛もよだつような、あるいはそれほどでもない逸話の羅列になっている。おそらく執筆があまりにも早すぎたためなのか、本書には物語のヒントはあるもののフォロースルーに至らない、誰かがより徹底的調査すべき非常に興味深い部分がいくつもある」と評した[7]

ニューヨーク・タイムズ』のジョン・ウィリアムズの書評では、「まるで終わりのないマーベル・フランチャイズの一編のように、『PERIL 危機』はそのスペクタクルに対して、あっけないプロローグのような感じで終わっている」と論じられた[9]

カーカス・レビューズ英語版』は本書に肯定的であり、「よく知られた分野に踏み込みつつ、多くの驚きを提供している堅実な調査作品」と評した[10]

日本語版

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日本語版は2021年12月16日に日本経済新聞出版より出版された。2024年6月4日には『国家の危機』と改題した文庫版が出版された。

  • ボブ・ウッドワード; ロバート・コスタ英語版 著、伏見威蕃 訳『PERIL 危機』日本経済新聞出版、2021年12月16日。ISBN 978-4532177157 
  • ボブ・ウッドワード; ロバート・コスタ英語版 著、伏見威蕃 訳『国家の危機』日本経済新聞出版、2024年6月4日。ISBN 978-4296120611 

参考文献

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  1. ^ Exclusive: Title, cover and details of new Trump book from Bob Woodward and Robert Costa revealed”. CNN (2021年8月17日). 2021年11月12日閲覧。
  2. ^ Biden, Joe (20 January 2021). Joe Biden's Inaugural Address (Speech).
  3. ^ 日本語版 p.415
  4. ^ Kavi, Aishvarya (2020年9月9日). “5 Takeaways From 'Rage,' Bob Woodward's New Book About Trump” (英語). The New York Times. ISSN 0362-4331. https://www.nytimes.com/2020/09/09/us/politics/woodward-trump-rage-takeaways.html 2020年9月18日閲覧。 
  5. ^ Chotiner, Isaac (2016年4月12日). “Bob Woodward of the Washington Post on Trump, Bush, and web journalism”. Slate.com. http://www.slate.com/articles/news_and_politics/interrogation/2016/04/bob_woodward_of_the_washington_post_on_trump_bush_and_web_journalism.html 2017年4月24日閲覧。 
  6. ^ Gangel, Jamie; Herb, Jeremy (2021年9月20日). “Memo shows Trump lawyer's six-step plan for Pence to overturn the election”. CNN. https://www.cnn.com/2021/09/20/politics/trump-pence-election-memo/index.html 2021年9月21日閲覧。 
  7. ^ a b Kaplan, Fred (2021年9月21日). “The Most Confounding Part of Bob Woodward's New Trump Book Is What It Doesn't Say - It's heavy on scoops and light on analysis.”. Slate. https://slate.com/news-and-politics/2021/09/trump-woodward-book-review-scoops-analysis.html 2021年9月21日閲覧。 
  8. ^ Megerian, Chris (2021年9月17日). “Review: 'Peril' is a damning — and tedious — portrait of American democracy on the brink”. The Los Angeles Times. https://www.latimes.com/entertainment-arts/books/story/2021-09-17/woodward-costa-peril-trump-book-review 2021年11月13日閲覧。 
  9. ^ Williams, John (2021年9月17日). “Bob Woodward Extends His Trump Chronicles With the Chaotic Transfer of Power”. The New York Times. https://www.nytimes.com/2021/09/17/books/review-peril-bob-woodward-robert-costa-trump-biden.html 2021年11月13日閲覧。 
  10. ^ PERIL”. Kirkus Reviews. 2021年11月13日閲覧。