VH-71 (航空機)
VH-71
着陸試験中のVH-71
- 用途:要人輸送
- 設計者:アグスタ・ウェストランド
ロッキード・マーティン
ベル・ヘリコプター - 製造者:
- 運用者:アメリカ海兵隊
- 初飛行:2007年7月3日
- 生産数:9機
- 運用状況:試作のみ
- ユニットコスト:4億米ドル(平均調達コスト)[1]
VH-71 ケストレル(Kestrel:チョウゲンボウの意)とは、現アグスタウェストランドが開発したEH101をベースとして、加えてロッキード・マーティンとベル・ヘリコプターが共同で開発した、アメリカ海兵隊のマリーンワン(アメリカ大統領専用機)用ヘリコプターである。VH-3D、及びVH-60Nプレジデントホークの後継とされていた(計画は中止、後述)。旧称US101。
概要
編集2002年7月23日、アグスタウェストランド社とロッキード・マーティン社が中型ヘリの共同開発に関して10年間の契約に調印した。これは、アメリカ空軍、アメリカ沿岸警備隊、そしてアメリカ海兵隊のマリーンワン向けに共同開発機を売り込む目的があった。
1961年から約50年が経とうとしている現在でも、マリーンワンとして運用されているVH-3であるが、老朽化と、最新設備を搭載する容量がもはや限界に達していた。加えて、UH-60ブラックホークを改造したVH-60Nも採用しているものの、輸送機への搭載が容易に出来る代わりに、キャビンが非常に狭いと言った欠点を持っていた。 そこで2003年12月、アメリカ国防総省が次期大統領専用ヘリコプター計画(VXX)を発表し、このトライアルにUS101を提出した。
ここでライバルとなったのは、シコルスキー・エアクラフト社のH-92スーパーホークであった。このH-92のバックには、L-3 コミュニケーションズ、ノースロップ・グラマン、GE・アビエーションなどの有力企業が付いていた。しかし、要求されていた18人乗りかつVC-25エアフォースワン並みの機器を積んで640kmの航続距離を飛行すると言う条件が課されており、H-92ではほぼ新製しなければ到底満たせない条件であった。加えて、US101は3発エンジンだった事が決定打となり、2005年1月28日、US101がトライアルを勝ち抜き、VH-71ケストレルの名称を与えられた。
開発と打ち切り
編集開発に関しては、AW側が36%、ロッキード・マーティンが31%、ベル・ヘリコプターが27%、と、他社6%(総計64%)で分配される事となっていた。2008年9月には初号機が初飛行テストに成功、2機が完成し、7機が完成間近の状態であった。
ところが、攻撃攪乱と対核兵器電磁波防御能力、さらにはキッチンの付与など、最終的に約1,900項目もの開発要求が次々追加されていき、当初60億ドル(約6,000億円:1ドル100円)だった開発予算総額が112億ドル(1兆1,200億円、イージス艦10隻が建造できる)と大幅に膨れ上がってしまい、1機4億ドル(400億円)と、F-22ラプター約2.5機分はおろか、VC-25エアフォースワン(3億2,500万ドル)より価格が暴騰してしまった事、2009年1月にアメリカ合衆国大統領がジョージ・W・ブッシュからバラク・オバマに交代、オバマ政権による予算削減のプランに入ってしまい、2009年6月には開発契約を破棄され、事実上の計画打ち切りとなってしまった[2]。実現していれば、2017年度までには27機編成の部隊が発足予定であった。
今後、VH-71用に積み立てられた予算はVH-3D・VH-60の改修に充てられる事となった。これに対してアメリカの非営利団体である『政府の無駄に反対する市民(Citizens Against Government Waste)』がこれに異を唱え、老朽化したヘリを使用すべきではないし、予算を注ぎ込んだ計画を中止すべきではない」としている[3]。
2014年5月7日、アメリカ海軍はシコルスキー・エアクラフトのS-92を、次期大統領専用ヘリコプターに決定したことを発表した[4]。
性能諸元
編集- 乗員:4名
- 全長:74.1ft (22.81m)
- 全高:6.65 m (21 ft 10 in)
- 主回転翼直径:18.59 m (61 ft 0 in)
- 空虚重量:10.500 t (23,150 lb)
- 最大離陸重量:15,600kg (34,320lb)
- 積載能力:14名または立席45名または担架16個。
- 出力:2,520 shp (1,879 kW) × 3
- 超過禁止速度:309 km/h=M0.25 (192 mph)
- 航続距離:1,389 km (750NM)
- 上昇限度:4,575 m (15,000 ft)
- 上昇率:2,000 m/min
脚注
編集- ^ Baker, Peter. "Cost Nearly Doubles For Marine One Fleet". Washington Post, 2008年3月17日
- ^ 因みに時を同じくして、アメリカ空軍の戦闘捜索救難 (CSAR)用新型機として選定されかけていたHH-47も中止となっている
- ^ [1]
- ^ J Wings 2014年8月号
登場作品
編集- 『バンテージ・ポイント』(2008年・アメリカ映画)
- コンピュータグラフィックス作成の同機が登場。
関連項目
編集- マリーンワン
- アメリカ合衆国大統領
- アメリカ海兵隊
- アグスタウェストランド EH101 - ベース機
- NH90 - 同じクラスのヘリコプター
- シコルスキー S-92 - トライアル時の対抗機