1991年カナダグランプリは、1991年F1世界選手権の第5戦として、1991年6月2日にジル・ヴィルヌーヴ・サーキットで開催された。

カナダの旗 1991年カナダグランプリ
レース詳細
日程 1991年シーズン第5戦
決勝開催日 6月2日
開催地 ジル・ヴィルヌーヴ・サーキット
カナダ モントリオール
コース長 4.390km
レース距離 69周(305.670km)
決勝日天候 晴れ(ドライ)
ポールポジション
ドライバー
タイム 1'19.837
ファステストラップ
ドライバー イギリスの旗 ナイジェル・マンセル
タイム 1'22.385(65周)
決勝順位
優勝
2位
3位

予選 編集

ウィリアムズリカルド・パトレーゼ1989年ハンガリーGP以来となる4回目のポールポジションを獲得。パトレーゼは金曜フリー走行でマクラーレンのエンジンブローのあおりを受け大クラッシュを喫し、身体の痛みを抱えながらの走行だった。チームメイトのナイジェル・マンセルも予選2位となり、ウィリアムズ勢がフロントローを独占した。アイルトン・セナの連続ポールポジションは7でストップした。

交通事故に遭ったアレックス・カフィの代役として、ステファン・ヨハンソンフットワークのシートに座った。ロータスジュリアン・ベイリーとの契約を打ち切り、全日本F3000選手権に参戦中のジョニー・ハーバートを起用したが、予選落ちを喫した。

予備予選結果 編集

順位 No ドライバー コンストラクター タイム
1 21   エマニュエル・ピロ ダラーラジャッド 1'23.244
2 22   J.J.レート ダラーラジャッド 1'23.480 +0.236
3 33   アンドレア・デ・チェザリス ジョーダンフォード 1'23.672 +0.428
4 32   ベルトラン・ガショー ジョーダンフォード 1'23.719 +0.475
DNPQ 14   オリビエ・グルイヤール フォンドメタルフォード 1'24.795 +1.551
DNPQ 34   ニコラ・ラリーニ ランボランボルギーニ 1'25.736 +2.492
DNPQ 35   エリック・ヴァン・デ・ポール ランボランボルギーニ 1'26.900 +3.656
DNPQ 31   ペドロ・チャベス コローニフォード 1'34.475 +9.231
  • 上位4台が予選進出

予選結果 編集

順位 No ドライバー チーム タイム
1 6   リカルド・パトレーゼ ウィリアムズルノー 1'19.837
2 5   ナイジェル・マンセル ウィリアムズルノー 1'20.225 +0.388
3 1   アイルトン・セナ マクラーレンホンダ 1'20.318 +0.481
4 27   アラン・プロスト フェラーリ 1'20.656 +0.819
5 19   ロベルト・モレノ ベネトンフォード 1'20.686 +0.849
6 2   ゲルハルト・ベルガー マクラーレンホンダ 1'20.916 +1.079
7 28   ジャン・アレジ フェラーリ 1'21.227 +1.390
8 20   ネルソン・ピケ ベネトンフォード 1'21.241 +1.404
9 4   ステファノ・モデナ ティレルホンダ 1'21.298 +1.461
10 21   エマニュエル・ピロ ダラーラジャッド 1'21.864 +2.027
11 33   アンドレア・デ・チェザリス ジョーダンフォード 1'22.154 +2.317
12 3   中嶋悟 ティレルホンダ 1'22.262 +2.425
13 16   イヴァン・カペリ レイトンハウスイルモア 1'22.443 +2.606
14 32   ベルトラン・ガショー ジョーダンフォード 1'22.596 +2.759
15 24   ジャンニ・モルビデリ ミナルディフェラーリ 1'22.993 +3.156
16 25   ティエリー・ブーツェン リジェランボルギーニ 1'23.040 +3.203
17 22   J.J.レート ダラーラジャッド 1'23.040 +3.203
18 23   ピエルルイジ・マルティニ ミナルディフェラーリ 1'23.125 +3.288
19 29   エリック・ベルナール ローラフォード 1'23.260 +3.423
20 7   マーティン・ブランドル ブラバムヤマハ 1'23.516 +3.679
21 9   ミケーレ・アルボレート フットワークポルシェ 1'23.529 +3.692
22 30   鈴木亜久里 ローラフォード 1'23.585 +3.748
23 15   マウリシオ・グージェルミン レイトンハウスイルモア 1'23.650 +3.813
24 11   ミカ・ハッキネン ロータスジャッド 1'23.923 +4.086
25 10   ステファン・ヨハンソン フットワークポルシェ 1'24.433 +4.596
26 26   エリック・コマス リジェランボルギーニ 1'24.460 +4.623
DNQ 18   ファブリツィオ・バルバッツァ AGSフォード 1'24.491 +4.654
DNQ 17   ガブリエル・タルキーニ AGSフォード 1'24.653 +4.816
DNQ 8   マーク・ブランデル ブラバムヤマハ 1'24.661 +4.824
DNQ 12   ジョニー・ハーバート ロータスジャッド 1'24.732 +4.895

決勝 編集

スタートは2番グリッドのマンセルの加速が鋭く、1コーナーでトップに浮上すると、パトレーゼを引き離し独走状態に持ち込む。3位のセナはウィリアムズ2台のペースについていけず、その後ろにプロスト、アレジ、ベルガー、ピケが続く。しかし、上位勢にマシントラブルが相次ぎ、セナも電気系トラブルでリタイアし、開幕からの連勝が4でストップした。ピケが3位に上がり、ティレルのモデナが4位に浮上する。

42周目、パトレーゼの右リアタイヤがパンクし、ピットでタイヤ交換をする間にマンセルにラップダウンされる。コース復帰後はギアボックストラブルも発生し、モデナに抜かれて4位に後退した。

マンセルは3位モデナ以下を周回遅れにし、2位ピケにも50秒以上の大差をつけ、残り4周でファステストラップを記録するという盤石のレース展開でシーズン初勝利を目指した。ファイナルラップではペースを落とし、観客に手を振る余裕を見せた。ところが、コース折り返し地点のオールドヘアピンを通過したところで突然スローダウンし、コースサイドにマシンを停めた。その脇をピケが通過し、思わぬ形でトップチェッカーを受けた。F1通算23勝目で、これが3度のワールドチャンピオンにとって最後の勝利となった。2位モデナは1989年モナコGP以来の表彰台で、ピレリタイヤユーザーのワンツーフィニッシュという結果になった。3位は災難続きのパトレーゼ。今季初参戦のジョーダンが予備予選から這い上がり、4位チェザリス、5位ガショーのダブル入賞で初ポイントを獲得した。マンセルは6位完走扱いとなった。

マンセルが優勝目前で止まってしまった原因については「燃費の厳しいコースをハイペースで走ったため、ガス欠になった」「観客に手を振った際、誤ってエンジンのキルスイッチに触れてしまった」などの説が流布した。チーフデザイナーのエイドリアン・ニューウェイの自伝によると、ヘアピンで減速した際、マンセルは観客に手を振っていてシフトダウンを忘れたため、エンジンの回転数が下がりすぎ、制御ソフトが想定外の挙動をしてエンジンをシャットダウンしてしまった、とのことである[1]

シーズン序盤のセナ独走状態から一転して、このレース以降マクラーレン・ホンダ対ウィリアムズ・ルノーの対決が激化してゆくことになる。マンセルはセナとチャンピオンを争ったが、カナダGPの幻の勝利とポルトガルGPのピットレーン失格事件が大きな失点となり、タイトル獲得はならなかった。

決勝結果 編集

決勝 [2]
順位 No ドライバー チーム 周回数 タイム/リタイア グリッド ポイント
1 20   ネルソン・ピケ ベネトンフォード 69 1:38'51.490 8 10
2 4   ステファノ・モデナ ティレルホンダ 69 +31.832 9 6
3 6   リカルド・パトレーゼ ウィリアムズルノー 69 +42.217 1 4
4 33   アンドレア・デ・チェザリス ジョーダンフォード 69 +1'20.210 11 3
5 32   ベルトラン・ガショー ジョーダンフォード 69 +1'22.351 14 2
6 5   ナイジェル・マンセル ウィリアムズルノー 68 電気系 2 1
7 23   ピエルルイジ・マルティニ ミナルディフェラーリ 68 +1 Lap 18
8 26   エリック・コマス リジェランボルギーニ 68 +1 Lap 26
9 21   エマニュエル・ピロ ダラーラジャッド 68 +1 Lap 10
10 3   中嶋悟 ティレルホンダ 67 +2 Laps 12
Ret 15   マウリシオ・グージェルミン レイトンハウスイルモア 61 エンジン 23
Ret 22   J.J.レート ダラーラジャッド 50 エンジン 17
Ret 10   ステファン・ヨハンソン フットワークポルシェ 48 スロットル 25
Ret 16   イヴァン・カペリ レイトンハウスイルモア 42 エンジン 13
Ret 28   ジャン・アレジ フェラーリ 34 エンジン 7
Ret 29   エリック・ベルナール ローラフォード 29 ギヤボックス 19
Ret 27   アラン・プロスト フェラーリ 27 ギヤボックス 4
Ret 25   ティエリー・ブーツェン リジェランボルギーニ 27 エンジン 16
Ret 1   アイルトン・セナ マクラーレンホンダ 25 オルタネーター 3
Ret 11   ミカ・ハッキネン ロータスジャッド 21 スピン 24
Ret 7   マーティン・ブランドル ブラバムヤマハ 21 エンジン 20
Ret 24   ジャンニ・モルビデリ ミナルディフェラーリ 20 スピン 15
Ret 19   ロベルト・モレノ ベネトンフォード 10 サスペンション 5
Ret 2   ゲルハルト・ベルガー マクラーレンホンダ 4 インジェクション 6
Ret 30   鈴木亜久里 ローラフォード 3 燃料漏れ 22
Ret 9   ミケーレ・アルボレート フットワークポルシェ 2 スロットル 21

脚注 編集

  1. ^ エイドリアン・ニューウェイ著、水書健司訳、世良耕太監修『HOW TO BUILD A CAR』、三栄、2020年、244頁。
  2. ^ 1991 Canadian Grand Prix”. formula1.com. 2014年11月3日時点のオリジナルよりアーカイブ。2015年12月23日閲覧。

外部リンク 編集


前戦
1991年モナコグランプリ
FIA F1世界選手権
1991年シーズン
次戦
1991年メキシコグランプリ
前回開催
1990年カナダグランプリ
  カナダグランプリ 次回開催
1992年カナダグランプリ