エクボサイシン(笑窪細辛、学名: Asarum gelasinum)とは、ウマノスズクサ科カンアオイ属に属する常緑多年草の1種である。別名エクボカンアオイ。の表面に光沢が無く、裏面は紫色を帯びる。筒開口部は狭くならず、雄しべは6個、花柱は3個で先端に角状突起がある。日本の西表島のみに分布し、沖縄県では準絶滅危惧に指定されている。

エクボサイシン
分類
: 植物界 Plantae
階級なし : 被子植物 Angiosperms
階級なし : モクレン類 Magnoliids
: コショウ目 Piperales
: ウマノスズクサ科 Aristolochiaceae
: カンアオイ属 Asarum
: エクボサイシン
A. gelasinum
学名
Asarum gelasinum Hatus.1988[1][2][注 1]
シノニム
和名
エクボサイシン[5][2]
エクボカンアオイ[2]

特徴 編集

常緑性多年草[5][6]の葉身は卵心形、長さ6–11センチメートル (cm)、幅 4–9 cm、先端はやや鋭頭[5][6]。葉の表面は光沢のない暗緑色、白紋が入ることがあり、葉縁周辺には毛が散生する[5]。葉の裏面は帯紫色[5][6]

花期は1月から4月[5][7][8]花弁を欠き、萼片は合着して長さ・直径とも 1 cm 程度の筒状の萼筒を形成し、帯緑褐色、口環が発達せず開口部が広い。萼筒内壁は格子状隆起があるが、隆起は弱い[5][6]。萼裂片は3枚、三角状広卵形、長さ・幅は約 0.8 cm、鋭頭、汚紫色、細毛が密生する[5]雄しべは6個[5][6]雌しべの花柱は3個、直立し先端は短い角状、外側からも見える[5]

染色体数は 2n = 24[5]

分布・生育環境 編集

琉球諸島西表島のみに分布する[5][6]。低山地の常緑広葉樹林の林床に生育する[5][6]

保全状況評価 編集

西表島に広く分布するが、園芸用の採取によって個体数が減少している[6]。特に歩道沿いなどでは急減しているが、人跡未踏の場所ではまだ残っている(2018年現在)[6]

エクボサイシンは環境省レッドデータでは絶滅危惧等に指定されていないが、沖縄県では準絶滅危惧に指定されている[9][6]

脚注 編集

注釈 編集

  1. ^ 学名の著者を Hatus. & Yamahata, 1988 としている例もある[3][4]

出典 編集

  1. ^ a b c 島袋敬一 (1997). “エクボサイシン”. 琉球列島維管束植物集覧【改訂版】. 九州大学出版会. pp. 195–196. ISBN 4-87378-522-7 
  2. ^ a b c 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “エクボサイシン”. BG Plants 和名-学名インデックス(YList). 2023年1月27日閲覧。
  3. ^ Asarum gelasinum”. Plants of the World Online. Kew Botanical Garden. 2023年1月27日閲覧。
  4. ^ GBIF Secretariat (2022年). “Asarum gelasinum Hatus. & Yamahata”. GBIF Backbone Taxonomy. 2023年1月28日閲覧。
  5. ^ a b c d e f g h i j k l m 菅原敬 (2015). “エクボサイシン”. In 大橋広好, 門田裕一, 邑田仁, 米倉浩司, 木原浩 (編). 改訂新版 日本の野生植物 1. 平凡社. p. 66. ISBN 978-4582535310 
  6. ^ a b c d e f g h i j 新城和治・新島義龍・横田昌嗣 (2018). “エクボサイシン”. 改訂・沖縄県の絶滅のおそれのある野生生物(レッドデータおきなわ)第3版-菌類編・植物編-. 沖縄県. p. 168 
  7. ^ エクボサイシン”. 西表島植物図鑑. 2023年1月27日閲覧。
  8. ^ エクボサイシン(笑窪細辛)”. 野の花賛花. 2023年1月27日閲覧。
  9. ^ エクボサイシン”. 日本のレッドデータ 検索システム. 2023年1月25日閲覧。

外部リンク 編集