民族

一定の文化的特徴を基準として他と区別される共同体

民族(みんぞく、英語:Ethnicity)とは、言語人種文化・歴史的運命を共有し、同族意識によって結ばれた人々の集団である。以下のように英語における概念日本語翻訳したものなど、複数の概念が存在する。

  • エスニック・グループ (Ethnic group):文化(言語、習慣宗教など)で区分される集団(人類学における定義)。→本記事で扱う。
  • ネーション (Nation)18世紀以降、社会の近代化や「国民国家の形成」に晒されたEthnic groupのうち、エリートが「民族運動」を行って「政治力」を獲得し、その「政治力」によって「民族」としての認知を獲得したものをいう。さらに「国家」の獲得に成功したものは「国民」と訳される。(政治学における定義)→ネーション国民を閲覧のこと。
  • トライブ (Tribe):一般には「部族」と訳されるが、「民族」と訳される場合もある。「民族集団」より小単位。→部族を閲覧のこと。
  • レイス (Race):「人種」を意味するが、稀に「民族」と訳される場合がある。→人種を閲覧のこと。

民族 (エスニック・グループ)の定義

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民族(みんぞく)または民族集団(みんぞくしゅうだん)(: Ethnic group, Ethnicity)とは一定の文化的特徴を基準として他と区別される集団をいう。土地、血縁関係、言語の共有(母語)や、宗教、伝承、社会組織などがその基準となるが、普遍的な客観的基準を設けても概念内容と一致しない場合が多いことから、むしろある民族概念への帰属意識という主観的基準が客観的基準であるとされることもある[1]

津田みわによると、ethnic groupの定義について、「本質論」と「構築論」がある。[2]

本質論による定義では、血縁、性、身体的特性、社会的出自、言語、慣習など、自分の意思では変えられない、人にあらかじめ与えれたものや外から見て明らかなもの(客観的な属性)が集団を確定する。

構築論による定義では、集団は人々が他の集団との相互作用の過程で選択的に形成するもので、目的に応じて自分である程度自由に選択できるとし、外から見て必ずしも明確でない帰属意識など(主観的な属性)が集団の確定にとって重要である。

津田は、現在では、学問分野を問わず「民族」という言葉はほぼ ethnic group を指すと考えて良くなりつつあるとするが、政治学・歴史学などの学問分野では、依然として「民族」という言葉がネーション (Nation)を指して使用されている。

分類

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「民族」、「民族集団」という概念は広がりを持つものであり、客観的基準を設けても概念内容と一致しない場合が多いが、以下のように分類されることもある。

母語による分類

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民族の最も実用的な分類の一つとして、母語による分類がある[3]ウラル語族を母語とする民族はウラル系民族テュルク諸語を母語とする民族はテュルク系民族などである。この場合、民族の括りは言語のそれと等しくなり、言語によって民族が一意に定まる。

語族によって定義された民族集団に特異的なY染色体ハプログループは以下のとおりである[4]

生活様式による分類

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生業様式によって定義する方法である。狩猟採集民族農耕民族遊牧民族騎馬民族など。

語源・語義

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Ethnic groupの語源

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英語エスニック・グループ(エスニシティー)(ethnic group, ethnicity)の語源は、ギリシャ語エトノス(ethnos)であり、またはエトニ(フランス語)である。これは、一定の文化的特徴を基準として他と区別される共同体をいう。土地、血縁関係、言語の共有(母語)や、宗教、伝承、社会組織などがその基準となる。

東アジアにおける「民族」の語源

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西川長夫によると「民族」という熟語は、明治期に日本で鋳造された和製漢語[5]で、明治期はそれまでもっと一般的な熟語であった「氏族」・「種族」といったことばを、洋書翻訳の際あまり繰り返さないようにするための虚弱な役割しかなかった。1930年代以降、日本の社会学者によって ethnicity/people/folk/nation/kinship/race 等の西洋の各概念がパッチワーク・ごった煮されたうえで、ナショナリズムで味付けされて強化されたキメラである [6]

中国古典では、ほとんど「民族」という語は登場しないが、古代にまで遡ればごくまれに一定のグループをなす人々の共同体を指す例があり、こうした例を主に中国の和製漢語説否定論者が珍重している。[例:郝時遠《中文“民族”一詞源流考弁》,《民族研究》2004 年第 6期[7]如瑩《漢語"民族"一詞在我国的最早出現》,《世界民族》2001 年第 6 期] 。例えば、6世紀の前半に成立した『南斉書』列伝三十五の「高逸伝・顧歓伝」中の

「今諸華士女、民族弗革、而露首偏踞、濫用夷禮」(民族を氏族とする写本もある)

という記述をあげることができる。なおこの記事は、士大夫やその子女までも中国の北朝の異民族の風俗(夷礼)に染まっていると述べている部分である。

関連する用語

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脚注

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  1. ^ 山内昌之『民族の時代』NHK人間大学テキスト,1994,30頁
  2. ^ 「民族 Ethnic Group / Tribe / Nation」(アジア経済研究所「調査研究」)
  3. ^ 水野一晴(2016)『人間の営みがわかる地理学入門』ベレ出版
  4. ^ 崎谷満(2009)『DNA・考古・言語の学際研究が示す 新・日本列島史』勉誠出版
  5. ^ 民族という錯乱”. 2021年11月19日閲覧。
  6. ^ 社会学者小松堅太郎(1894-1959年)と“民族”―“民族”概念肥大化の潮流の中で”. 2023年11月19日閲覧。
  7. ^ 中文“民族”一詞源流考弁”. 2021年11月19日閲覧。

関連項目

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外部リンク

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