オルステン動物群Orsten fauna)は、オルステンのラーガーシュテッテに化石として保存された動物群。カンブリア紀の第三世や第四期(第二世)から[1]フロンギアン英語版世にあたる[2]エイラム頁岩[注 1]中の有機物に富む石灰岩中に保存されており、特にスウェーデン南部に分布する[4]

スウェーデン南部のフロンギアン英語版統から産出したオルステン

概要 編集

1975年に Klaus Müller と彼の助手が発見した最初の発掘サイトでは、硬組織を持たない生物やその幼生が例外的に3次元的に保存されていた。化石が保存されている石灰岩塊自体が酸の作用を受けても、化石はリン酸塩ケイ酸塩に覆われていて繊細なキチン質クチクラや軟質部分は酸の影響を受けないため、酸による研究が行われた。石灰岩が酸によって溶解すると、アシッド・エッチングと呼ばれる復元プロセスで微化石を浮かび上がるのである[5]。2011年に前田晴良らは糞粒が濃集している厚さ約3センチメートルのペレット層にのみ化石が立体的に保存されていること、そして遺骸の保存に寄与したリンが化石を取り巻く糞に由来していることを発表した[4]

石灰岩ノジュールを含むエイラム頁岩で構成されるカンブリア紀の地層(エイラム頁岩累層)は、水深50 - 100メートル程度の、酸素が枯渇した海洋底水の生息環境の産物と解釈されている[5]

オルステン型の化石はカナダ東部のネバダ州イングランドポーランドシベリア中華人民共和国オーストラリアノーザンテリトリーからも産出している[6]。排泄物の濃縮した地層は世界各地に存在しており、これらから良好な保存状態の化石が得られる可能性がある[4]

ギャラリー 編集

化石産地は特筆したもの以外はスウェーデン産。オルステン研究のウェブサイトC.O.R.Eのデータに基づく[7]

脚注 編集

注釈 編集

  1. ^ ミョウバン頁岩とも[3]

出典 編集

  1. ^ Maas, A.; Mayer, G.; Kristensen, R. M.; Waloszek, D. (2007). “A Cambrian micro-lobopodian and the evolution of arthropod locomotion and reproduction”. Chinese Science Bulletin 52 (24): 3385. doi:10.1007/s11434-007-0515-3. 
  2. ^ 化石から地球の歴史と生物進化を探る”. 九州大学. 2021年4月30日閲覧。
  3. ^ 進化:オルステン型の新しい化石”. Nature (2007年10月4日). 2021年4月30日閲覧。
  4. ^ a b c 3D化石と「汚物だめ」: カンブリア紀オルステン化石の保存の謎を解明』(プレスリリース)京都大学、2011年4月12日https://www.kyoto-u.ac.jp/static/ja/news_data/h/h1/news6/2011/110412_1.htm2021年4月30日閲覧 
  5. ^ a b Welcome to the C.O.R.E. Website on Orsten-Fossils and Research”. C.O.R.E.. 2021年4月30日閲覧。
  6. ^ Waloszek, Dieter (2016年2月19日). “'Orsten' on World-Wide Scale”. Center of 'Orsten' Research and Exploration. 2016年11月29日閲覧。
  7. ^ 'Orsten' Taxa”. www.core-orsten-research.de. 2022年8月15日閲覧。