メインメニューを開く

カニダマシ科 Porcellanidae は、甲殻類の1群。カニに似た姿をしているが、ヤドカリの仲間である。

カニダマシ科 Porcellanidae
Petrolisthes japonicus 001.JPG
分類
: 動物Animalia
: 節足動物Arthropoda
亜門 : 甲殻亜門 Crustacea
: 軟甲綱(エビ綱) Malacostraca
: 十脚目(エビ目) Decapoda
亜目 : 抱卵亜目(エビ亜目) Pleocyemata
下目 : 異尾下目(ヤドカリ下目) Anomura
上科 : コシオリエビ上科 Galatheoidea
: カニダマシ科 Porcellanidae

目次

特徴編集

全体にカニによく似た動物[1]背甲は前後、あるいは左右に長いこともあるが、ほぼ円形で、前端に棘状に突出する額角は、多くのものであまり発達しない。眼柄の基部に角状に突出する眼棘は、多くのヤドカリ類にあるが、この群にはない。また第二触角の基部に退化した外肢である触角鱗があるが、本群ではこれを欠き、この触角は長い単純な糸状となっている。

胸部にある5対の胸肢の内、第1脚はよく発達した鋏となる。これは左右不対称の場合が多い。第2-4脚は歩脚状で、第5脚は小さな鋏型で、これは背甲の下の鰓室に入っている。つまり、外見的には1対の鋏と3対の歩脚のみを持つ。腹部はよく石灰化しており、幅広くて平らで、胸部の腹面に押しつけるように折りたたまれている。腹部の末端は尾節と尾肢があり、明確な尾扇を形成している。これはエビの尾の先にある鰭の並んだ扇状のものと同等の構造だが、この類では互いに寄り合って腹部先端に平らな面を作るものとなっている。尾扇は5葉に分かれるものと7葉のものがある。またこの尾扇の部分を更に内側に折りたたむことはしない。

腹部の付属肢としては、雌では第4-5節のそれぞれから出る2対の腹肢があるか、またはこれに加えて第3節にも1対の腹肢を持つ。雄では第2節によく発達した腹肢1対がある[2]

小柄な動物が多く、背甲の長さが3-15mm程度のものがほとんどである[3]

カニとの違い編集

上記のように主要な特徴はカニに似ている。特に鉗脚が大きく発達し、それを体の前方正面に構える姿はカらしく見える。ただし最後の胸脚が小さくて隠れており、歩脚が3対しかないことはカニとの大きな違いで、これは同じくヤドカリ類のタラバガニ類とも共通のカニとの違いである。また本科のものでは第2触角が糸状に長く発達する点は、カニ類と一目で区別出来る特徴となっている。細部では腹部先端に尾節が発達する点でも異なる[4]

分布と生息環境編集

全て海棲で、太平洋インド洋大西洋温帯域から熱帯域を中心として分布する。全ての種が大陸棚深度(水深200m)より浅い海域から記録されている。海岸性の種も多い[5]。なお、本種と共にコシオリエビ上科に所属する他の2つの科のものは、より深い深度に生息するものが多い。

生態など編集

岩礁珊瑚礁の岩などの隙間、あるいは転石の下などに生息する自由生活のものが多い。他に海綿動物刺胞動物環形動物などと共生している種も知られる[6]

全ての種がデトリタスを濾過摂食する懸濁物食者である。食べ方としては、第3顎脚に多数の羽状毛があり、これをあたかもフジツボ蔓脚の様に用いて水中に漂う微粒子をかき集めて食べる。カニとは異なり、鉗脚は必ずしも摂食に必要ではないと看做されている[7]。ほかにプランクトン等も食べられる。なお、カニでもヒライソガニなどごく一部で同様の摂食行動が知られている。

行動としては歩脚を使って歩くほか、腹部を激しく波打つように動かし、それによって後方へ泳ぐことが出来るものもある[8]

発生編集

十脚類の発生の様式と大差ないが、特徴的なのはゾエアの形態である。その大まかな形態は特にカニのものと似ているのだが、目立った特徴として背甲の前端から前に伸びる額棘が著しく長い。また、背甲後方両側から伸びる後側棘1対が後方に向かってこれも非常に長く伸びる[9]

同様にゾエアが長い棘を出すものにアサヒガニ科ヘイケガニ科があるが、他の特徴で明確に区別が出来、本科のゾエアは形態的に特殊と言える。この長い棘を持つ意味やその役割についてはよい説明がなされていない。飼育すると、幼生は壁にぶつかって棘を折ることがよくあるが、それでも脱皮して成長する個体も見られ、致命的な傷とはならないようである[10]

分類編集

コシオリエビ上科には他にコシオリエビ科 Galathridae とワラエビ科 Chirostylidae がある。このうちコシオリエビ科は腹部が後ろに伸び、先端近くがおりたたまれているだけなので、むしろエビに見える。ワラエビ科のものは腹部を頭胸部の下に折り曲げるが、頭胸部が縦長でエビに見えるものが多い。一部にカニに似たものがあるが、この科では本科と異なり、尾扇が腹部の内側に折り込まれる[11]。なお、クモエビ科の一部に関しては、カニダマシ科との類縁が論じられている[12]

本科と同じようにヤドカリからカニ型になったものにタラバガニ科 Lithodidae があるが、こちらは尾肢がない。また、この科は本科との系統関係は近くなく、ヤドカリ上科に属する[13]

下位分類編集

2008年までに約30属280種が知られている。その内で種数が多いのはイソカニダマシ属 Pterolisthes で、3つの大洋にわたって約100種が知られる[14]

西南日本の海岸では転石の下でイソカニダマシ P. japonicus がごく普通に見られる[15]

利害編集

特に知られていない。

出典編集

  1. ^ 以下、主として西村編著(1995),p.369-370
  2. ^ 三宅(1982),p.234
  3. ^ 大澤(2008),p.15
  4. ^ 大澤(2008),p.14
  5. ^ 大澤(2008),p.14
  6. ^ 大澤(2008),p.14
  7. ^ 大澤(2008),p.15
  8. ^ 西村編著(1995),p371
  9. ^ 岡田他(1947),p.1765
  10. ^ 大澤(2008),p.15
  11. ^ 西村編著(1995)P.368-369
  12. ^ 大澤(2008),p.15
  13. ^ 西村編著(1995)P.367
  14. ^ 大澤(2008),p.14
  15. ^ 大澤(2008),p.15

参考文献編集

  • 西村三郎編著、『原色検索日本海岸動物図鑑〔II〕』、1992年、保育社
  • 三宅貞詳、『原色日本大型甲殻類図鑑(I)』、(1982)、保育社
  • 大澤正幸、「インド-西太平洋域のカニダマシ科の分類、分布に関する研究の現状」、(2008)、タクサ 日本動物分類学会誌 No. 25:pp.13-23.
  • 岡田要他、『新日本動物図鑑 〔中〕』、(1967)、図鑑の北隆館