ケンムンヒラヨシノボリ

ハゼ科の魚の一種

ケンムンヒラヨシノボリRhinogobius yonezawai)は、ヨシノボリ類の両側回遊魚。2020年新種記載されたハゼで、その以前はヤイマヒラヨシノボリと同種とされ、ヒラヨシノボリと呼ばれていた。成魚種子島屋久島奄美大島沖縄島の渓流に生息する。

ケンムンヒラヨシノボリ
分類
: 動物界 Animalia
: 脊索動物門 Chordata
亜門 : 脊椎動物亜門 Vertebrata
: 条鰭綱 Actinopterygii
: スズキ目 Perciformes
亜目 : ハゼ亜目 Gobioidei
: ハゼ科 Gobiidae
: ヨシノボリ属 Rhinogobius
: ケンムンヒラヨシノボリ R.yonezawai
学名
Rhinogobius yonezawai
(Suzuki, Oseko, Kimura & Shibukawa, 2020)
英名
Ryukyu fluviatile goby

分布 編集

琉球列島固有種[1]種子島屋久島奄美大島沖縄島に分布する[2]

形態 編集

成魚全長は7~8㎝だが、最大で10㎝になる[1]。縦列数は35–39でヤイマヒラヨシノボリと異なる。一方、脊椎骨数26でヤイマヒラヨシノボリと同数。他のヨシノボリよりも著しく頭部が縦扁していることが特徴。また、他種に比べ体が細長い[3][1]胸鰭は左右にせり出して見える。体の前半に3本程度の縦帯があり[1]、胸鰭基部の黒半が顕著である[1][4]。眼から吻端にかけての朱条は太く明瞭で[1]、ヨシノボリのなかではこの朱条は最大である。オスの体色は青みが強く、産卵期には黒くなる[3]。オスの第1背鰭は高く烏帽子形、その第2・3棘が最長で糸状に伸長しないものの倒すと第2背鰭第1から第4軟条起部に達する。腹鰭第5軟条は普通最初に5分岐する。胸鰭基底、腹鰭起部前方、腹部腹中線周辺もしくは腹部腹中線前半周辺は無鱗である。生時もしくは生鮮時に側頭部から第2背鰭起部にかけての背面に橙色または赤色の2縦線がある。オスの尾鰭に橙色または赤色の6–8 垂線があり、メスの尾鰭基底に横Y字形の1つの黒色斑があるなどの特徴で同属他種から区別できる[4]

生態 編集

主に流域の長い河川の[1]河川上流域[3]の急流を好み、渓流域の早瀬の礫底など流れの速い場所に生息する[3][1]。冬季は中流域にも出現することがある[1]仔魚は一度海に降りる両側回遊を行うが、成魚は落差40mを超えるような大きな滝の上にもみられる[3]。繁殖期は3月頃[1]

名称 編集

標準和名「ケンムンヒラヨシノボリ」のケンムンとは奄美諸島に伝わる水の精ケンムンに由来し、ヒラとは体が縦扁し平ぺったいことからである[2]。 また、他の和名として、イーブーという地方名がある[2][3]

色斑が「ヨシノボリ大型種(現在のオオヨシノボリ)」に似ていることから、もともと本種はヨシノボリ大型種と呼ばれていた。

その後、「ヨシノボリ大型種」に複数の型があるとわかり、ヨシノボリ南黒色大型と呼ばれるようになった。

「ヨシノボリ」が複数種に細分され、オオヨシノボリという種が発表されたことで、本種はオオヨシノボリ南黒色型と呼ばれるようになった。

「オオヨシノボリ南黒色型」は種に格上げされ、オオヨシノボリとは別種となり、ヒラヨシノボリという標準和名が提唱された。

「ヒラヨシノボリ」は2種に細分化され、ケンムンヒラヨシノボリRhinogobius yonezawai)とヤイマヒラヨシノボリ(Rhinogobius yaima)の新2種が記載された。

関連項目 編集

脚注 編集

  1. ^ a b c d e f g h i j 細谷和海 『増補改訂 日本の淡水魚』 山と渓谷社 2019年 466~467頁
  2. ^ a b c 川のさかな情報館 ヨシノボリ https://ichthysinfo.web.fc2.com/ichthys/genus/yoshinobori.html
  3. ^ a b c d e f 松沢陽士 『ポケット図鑑日本の淡水魚258』 文一総合出版 2016年 269頁
  4. ^ a b 鈴木 寿之, 大迫 尚晴, 木村 清志, 渋川 浩一 琉球列島の河川急流域に生息するハゼ科ヨシノボリ属魚類2新種 神奈川県立博物館研究報告(自然科学) 2020年 2020 巻 49号