コバノイラクサ
コバノイラクサ(小葉の刺草、学名: Urtica laetevirens)は、イラクサ科イラクサ属の多年草[3][4][5][6][7]。「刺はなく痛くない。」とする文献もある[3]が、茎と葉に刺毛があり、刺さると痛い[7]。
コバノイラクサ | ||||||||||||||||||||||||||||||
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分類(APG IV) | ||||||||||||||||||||||||||||||
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学名 | ||||||||||||||||||||||||||||||
Urtica laetevirens Maxim. (1876)[1] | ||||||||||||||||||||||||||||||
シノニム | ||||||||||||||||||||||||||||||
和名 | ||||||||||||||||||||||||||||||
コバノイラクサ(小葉の刺草)[3] |
特徴
編集植物体全体が淡緑色。茎は四稜形で、直立して高さ50-100cmになる。茎に刺毛と細毛がまばらに生え、刺毛に刺さると痛い。葉は対生し、葉身は卵形から広卵形で、長さ5-10cm、幅3-5cm、縁は粗い単鋸歯であまりとがらず、重鋸歯にはならない。葉身の先は尾状になるが長くはとがらず、基部は切形または円形、葉の両面はほぼ同色で光沢が無く、両面に短毛が散生し、密に腺点がある。葉柄は葉身の3分の1の長さ。茎の各節に離生した4個の托葉があり、線形で長さ6-7mmになる[3][4][5][6][7]。
花期は7-10月。雌雄同株。葉腋から1対の穂状花序を出し、上方の葉腋につく花序は雄花序、下方の葉腋につく花序は雌花序である。穂状花序は長さ2-3cmになり、花は小さな緑白色になる。花は4数性で、雄花の花被片は4個で径2mm、雄蕊も4個あり、雌花の花被片は4個で小型である。果実は緑色で卵円形の痩果で長さ1-2mmになる。染色体数は2n=26[3][4][5][6][7]。
分布と生育環境
編集日本では、北海道、本州の近畿地方以北に分布し、山地の渓流沿いの湿った林内などに生育する[3][4][6][7]。世界では、朝鮮半島、中国大陸に分布する[4][6][7]。
名前の由来
編集和名コバノイラクサは、「小葉の刺草」の意で、小さい葉を持ったイラクサの意味[7]、「刺草」は茎葉にある刺毛によって疼痛を感じることによる[8]。
属名 Urtica は、ラテン語の uro で、「燃やす」「ちくちくする」に由来する古典ラテン語であり、この属の種にギ酸を含む刺毛があり、触れるとちくちくと痛むことによる[9]。種小名(種形容語)laetevirens は、「鮮緑色の」「ライトグリーンの」の意味[10]。
種の保全状況評価
編集国(環境省)のレッドデータブック、レッドリストでの選定はない。都道府県のレッドデータ、レッドリストの選定状況は次の通りとなっている[11]。東京都-絶滅危惧II類(VU)、新潟県-絶滅危惧II類(VU)、滋賀県-分布上重要種、奈良県-絶縁寸前種、徳島県-絶滅危惧IA類(CR)、高知県-絶滅危惧IA類(CR)、福岡県-絶滅危惧IB類(EN)。
ギャラリー
編集-
植物体全体が淡緑色、葉は対生する。沢沿いの湿った林内で。
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花序は穂状花序になり、花は小さな緑白色になる。
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茎の各節に離生した4個の線形の托葉がある。
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葉の表面。葉身は卵形から広卵形で、縁は粗い単鋸歯で重鋸歯にはならない。短毛が生え、腺点が多い。
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葉の裏面。表面とほぼ同色。短毛が散生する。
分類
編集イラクサ科のうち、植物体に触ると痛い刺毛があるものに、ムカゴイラクサ属 Laportea Gaudich. と本種が属するイラクサ属 Urtica L. があり、ムカゴイラクサ属は葉が互生し、イラクサ属は葉が対生する[12]。イラクサ属に属する日本に分布する種は、本種のほか、イラクサ Urtica thunbergiana Siebold et Zucc.[13]、エゾイラクサ U. platyphylla Wedd.[14]およびホソバイラクサ U. angustifolia Fisch. ex Hornem. var. angustifolia[15]がある[6]。
本種とホソバイラクサは、托葉が各節に4個あり、本種の葉は卵形から広卵形で小型で先は長くとがらず、鋸歯は単鋸歯になり、ホソバイラクサの葉は本種と比べ幅が細く、先は細長くとがる。ホソバイラクサ(変種のナガバイラクサ var. sikokiana を含む。)は北海道、本州、四国、九州、朝鮮半島、中国大陸、シベリア東部、カムチャツカ半島に分布する。イラクサとエゾイラクサは、托葉が各節に2個あり、イラクサの葉は卵形で、鋸歯は欠刻状の重鋸歯になるのに対し、エゾイラクサの葉は狭卵形から卵状長楕円形になり、鋸歯は単鋸歯になる。イラクサは本州の福島県以南、四国、九州、朝鮮半島、台湾に分布し、エゾイラクサは、南千島、北海道、本州の中部地方以北、千島列島、サハリン、シベリア東部、カムチャツカ半島に分布する[6]。
利用
編集『食べられる野生植物大事典(草本・木本・シダ)』(2007年、柏書房)の著者の橋本郁三は、同著のなかで、本種について、他の文献(佐藤孝夫著、『北海道山菜図鑑』、1995年)の記述を紹介し、同属のホソバイラクサとともに山菜として「食べられる,と記述されている。」としている[16]。
脚注
編集- ^ コバノイラクサ 「BG Plants 和名−学名インデックス」(YList)
- ^ コバノイラクサ(シノニム) 「BG Plants 和名−学名インデックス」(YList)
- ^ a b c d e f 『山溪ハンディ図鑑2 山に咲く花(増補改訂新版)』p.348
- ^ a b c d e 『原色日本植物図鑑・草本編II(改訂53刷)』p.331
- ^ a b c 『新北海道の花』p.405
- ^ a b c d e f g 米倉浩司 (2016)「イラクサ科」『改訂新版 日本の野生植物 2』pp.351-352
- ^ a b c d e f g 『新分類 牧野日本植物図鑑』p.670
- ^ 『新分類 牧野日本植物図鑑』p.669
- ^ 『新分類 牧野日本植物図鑑』p.1480
- ^ 『新分類 牧野日本植物図鑑』p.1499
- ^ コバノイラクサ。日本のレッドデータ検索システム、2024年1月29日閲覧
- ^ 米倉浩司 (2016)「イラクサ科」『改訂新版 日本の野生植物 2』p.341
- ^ イラクサ 「BG Plants 和名−学名インデックス」(YList)
- ^ エゾイラクサ 「BG Plants 和名−学名インデックス」(YList)
- ^ ホソバイラクサ 「BG Plants 和名−学名インデックス」(YList)
- ^ 『食べられる野生植物大事典(草本・木本・シダ)』p.142
参考文献
編集- 北村四郎・村田源著『原色日本植物図鑑・草本編II(改訂53刷)』、1984年、保育社
- 梅沢俊著『新北海道の花』、2007年、北海道大学出版会
- 橋本郁三著『食べられる野生植物大事典(草本・木本・シダ)』、2007年、柏書房
- 門田裕一監修、永田芳男写真、畔上能力編『山溪ハンディ図鑑2 山に咲く花(増補改訂新版)』、2013年、山と溪谷社
- 大橋広好・門田裕一・木原浩他編『改訂新版 日本の野生植物 2』、2016年、平凡社
- 牧野富太郎原著、邑田仁・米倉浩司編集『新分類 牧野日本植物図鑑』、2017年、北隆館
- 米倉浩司・梶田忠 (2003-)「BG Plants 和名-学名インデックス」(YList)
- 日本のレッドデータ検索システム