上段:海南島を含む中国大陸全域
中段:中国大陸と香港澳門の位置関係
下段:中国大陸と台澎金馬台湾地区)の位置関係

中国大陸(ちゅうごくたいりく、: Mainland China)は、1949年建国の中華人民共和国実効支配する陸地を指す用語。アジア大陸ユーラシア大陸東部)と海南島をその基本的な領域としているが、詳細な範囲は用語の使用者により異なっている。

範囲編集

中国編集

中華人民共和国(中国)では、祖国大陸(そこくたいりく)[1]とも表記され、台澎金馬(台湾)、香港及び澳門以外で中国政府領有権を主張している領域を指す。

中国政府の用例としては、1958年全国人民代表大会常務委員会(全国人大常委会)を通過した「中華人民共和国政府領海に関する声明」では、政府の既定が及ぶ範囲について「中国大陸及びその沿岸島嶼」と「台湾及びその周囲各島、澎湖列島東沙群島西沙群島中沙群島南沙群島」とで別記していた。また、全国人大常委会が1997年に策定した従前から香港にある法(香港原有法律)の処理に関する決定及び1999年に策定した従前から澳門にある法(澳門原有法律)の処理に関する決定では、中華人民共和国を構成する一部分(中华人民共和国的一个组成部分)として「大陸」、「台湾」、「香港及び澳門」の3つを記載している。この中国政府の決定は、香港では釈義及び通則条例(釋義及通則條例)第2A(3)条、澳門では回帰法(回歸法)附件四において法的に明文化されている。

特別行政区である香港澳門(マカオ)を中国大陸に含めないのは、植民統治終了後も一国二制度により中国のその他地域とは異なる政治・法律体系を採っており、中央政府のコントロールが直接及んでいないからである。実際、同じ国内でありながら、香港・澳門と中国大陸とでは相互に出入国管理にあたる出入境管理を行っている。

台湾編集

 
『第一屆國民大會第六次會議實錄』付属の『中華民國全圖』(1979年5月)

中華民国(台湾)では、大陸地区(たいりくちく)とも表記され、政府が編纂した国語標準中国語辞典では「台湾地区台湾澎湖金門馬祖及びその他我が国の統治権が及んでいる場所・地区)以外の中華民国の領土」[2] と説明されている。ただし、その範囲は時代毎の国策によって変化してきた。

第二次国共内戦で失った領土の奪還を公的に目指していた1950年代から1980年代前半までは、中華民国政府が公的に領有権を主張する範囲(詳細は中華民国#地理を参照)が「中国大陸」とされ、その中には中華人民共和国が領土としていないモンゴル等の地域も含まれていた。例えば、1954年最高行政法院中国語版が出した判字第11号(43年判字第11號)では「民国三十八年の政府遷台(国民政府の台湾移転)後、大陸は今日までに淪陷(「中共」によって陥落)し、窒礙の状態(国民政府による大陸奪還を妨げる状態)が存在し続けている。」(溯自民國三十八年政府遷臺後,大陸淪陷迄今,窒礙之狀態,仍繼續存在。)と記され、同年に司法院が下した憲法解釈(釋字第31號)では「中共」に占領された地域として「大陸各省市及び蒙古西藏」が挙げられている。また、1982年最高法院が下した判決では、依然として「我が国の大陸領土は共匪によって一時的に盗まれている」(我國大陸領土雖因一時為共匪所竊據)が「それは依然として固有の領土である」(但其仍屬固有之疆域)と記されている。

このような認識が変化し始めたのは、1980年代後半になって今まで「中共」・「共匪」と表現していた中華人民共和国と実務的な接触が生じるようになってからである。1992年に制定された両岸人民関係条例(臺灣地區與大陸地區人民關係條例)の施行細則第三条では「大陸地区」の定義を「中国共産党のコントロール下にある地区(中共控制之地區)」としている。そのため、中華民国政府の行政院大陸委員会は、中華人民共和国の直接統治区域だけでなく、香港・澳門についての事務も管轄している。

類語編集

特別行政区を除く中華人民共和国の実効支配地域に関しては、「中国大陸」のほかにもいくつかの呼称が用いられる。香港・澳門では「内地」(但し英語は「the Mainland」、中国語も「大陸」の意味)も使われることがある。例えば、香港、澳門住民が大陸地区を訪問する際に使用する身分証は「港澳居民来往内地通行証」である。

台湾では、台湾海峡を挟み向かい合うことから「対岸」、中国共産党政権の統治下であることから本来は同党の略称である「中共」が同義語として使われ、台湾独立派には、あえて台湾がそれに含まれないことを強調する政治的意図から「中国」と呼ぶ向きがある。

内地」は台湾人には歴史的な背景もあり植民地宗主国を思わせる上、中華人民共和国や特別行政区の体制側がよく使うために媚びが感じられ、受け入れられないことがある。「対岸」は台湾でのみ使える相対的で場面を選ぶ用語である。「中共」は、中華人民共和国を認めない含みがあるため、当の中国当局がこの用法を拒否している。「中国」は、香港・澳門を含むと考えられるので多くの場合「中国大陸」と範囲が異なるほか、中国語圏で台湾を含まないことを念頭に使用する(たとえば「中国」と「台湾」を同格に並べる)場合は、中華民国体制・一つの中国論を否定する政治的な意味が強い。このため消去法で、比較的中立である「中国大陸」が選ばれる面がある。

ただし、香港では返還後に大陸部から押し寄せた旅行者や移民への反感により、「大陸」の言葉自体がいささか侮蔑的ニュアンスを含むようになってしまった。「大陸仔」(大陸から来た男性)「大陸妹」(大陸から来た女性)などが完全に侮蔑的表現として定着したほか、「大陸」という言葉自体が形容詞として「マナーの悪い」「汚い」などの意味で用いられるようになったため(例として「道端で立ち小便するなんて、彼はなんて大陸なんだろう」など)、香港政府は「大陸」や「中国大陸」という表現を避け「内地」を好んで用いることが多い(大陸人→内地人、内地同胞など)。これはもともと差別用語でなかった「支那」という言葉が現代の日本語で差別的とされ、「中国」が好んで用いられるのと同じケースである。

日本語における旧称編集

第二次世界大戦の戦前および戦中には「支那大陸」(しなたいりく)という用語が一般的であったが、第二次世界大戦後には「支那」という用語を避けて、「中国」という用語が奨励されたため、2013年現在では「中国大陸」という用語が一般的である。

脚注編集

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関連項目編集

  • 中国本土(チャイナ・プロパー):歴史的に漢民族が多数を占める地域を指す中国に関する地域概念。
  • 台湾地区:中華民国の実効統治区域を指す語。「中華民国自由地区」、「台澎金馬」ともいう。中華民国政府は「中国大陸(大陸地区)」の対義語として用いている。