ササ
ササ(笹、篠、筱、筿)は、イネ科タケ亜科に属する植物のうち、その茎にあたる稈(かん)を包んでいる葉鞘が枯れるときまで残る種の総称[1]。
定義編集
ササは単子葉植物イネ科タケ亜科(タケ科とすることもある)に属する植物である[1]。タケ(竹)やササは多くの草本類と同じく茎にあたる稈には年輪がみられないが、一方で木本類のように堅くなる性質がある[1]。
植物学上はイネ科タケ亜科のうち、タケは稈が成長するとともにそれを包む葉鞘が早く脱落してしまうものをいい、ササは枯れるまで稈に葉鞘が残るものをいう[1][2]。マダケなどタケの場合は芽(タケノコ)の段階にはあった葉鞘が成長すると剥がれ落ちるが、ササの場合は成長しても葉鞘はそのままである[1]。
タケとササの分類は必ずしも標準和名と一致しない。分類上、ヤダケは稈に皮がついたままなのでササ、オカメザサは皮が脱落するのでタケに分類される[2]。
生育環境編集
地下に匍匐茎を伸ばし、密集した群落を作る。一面に生えた場合、これを笹原という。
笹のよく生える条件として、日本ではいくつかのパターンがある。一つはパイオニア植物として振る舞う場合である。よく河川周辺や道端などにネザサ類が出現する。これは、草刈りや川の氾濫などによる不定期な攪乱(かくらん)に強いためである。また、寒冷地では森林の伐採跡が笹原になる例がよくある。
もう一つはブナ林の下生えで、日本のブナ林では林床でササ類が優占する例が多い。その種は地域によって異なり、太平洋側ではスズタケ、日本海側ではチシマザサの場合が多い。
ササは放置すると藪になってしまうが、生物多様性の観点からは小動物の隠れ家や昆虫の食草となっている[2]。
一方でササの繁茂は地中の水分を吸い上げて土壌を乾燥化させたり、日光を遮って他の植物の光合成を妨げたりする面もある。特に地球温暖化に伴う雪解けの早まりで土地が乾燥化して、湿潤な環境に適した高山植物の群落を脅かす状態が北海道の大雪山国立公園や礼文島、本州の平ヶ岳、立山、白山などで起きており、ササの刈り取りによる高山植物保護が試みられている地域もある[3]。
分類編集
非常に多くの種がある。日本のタケ類のほとんどが中国渡来であるのに比べ、ササ類は土着の種が多く、しかも地方変異が多い。
- メダケ属 Pleioblastus:カンザンチク、リュウキュウチク、タイミンチク、ケネザサ、カムロザサ、ゴキタケ、アカネザサ、ギボウシノ、ハコネダケ、アズマネザサ、メダケ
- アズマザサ属 Arundinaria:アズマザサ、スエコザサ、トウゲザサ、サドザサ、タンゴシノチク、ヤブザサ、アリマシノ
- ササ属 Sasa:ミヤコザサ、ウンゼンザサ、オオクマザサ、ニッコウザサ、アポイザサ、クマザサ、オオササ、オオバザサ、ミヤマザサ、チマキザサ、クマイザサ、チシマザサ、オクヤマザサ、イブキザサ、トクガワザサ、キンキナンブスズ、ミカワザサ、タキザワザサ
- スズタケ属 Sasamorpha:スズタケ、ケスズ
- ヤダケ属 Pseudosasa:ヤダケ、ヤクシマダケ
- インヨウチク属 ×Hibanobambusa:インヨウチク
ほかに、葉の幅が広いイネ科植物には、ササの名を持つ例が多い。代表的なものを以下に挙げるが、最もササに似ているのはササクサである。
それ以外にも、細長くてある程度幅のある葉をササになぞらえる例は多々ある。
利用編集
- 笹の葉には防腐作用があり、料理や食材、特に保存食を包む為に使用される(鱒寿司、ちまきなど)。
- 日本では、七夕において笹飾りとして使われる。
- 戦国武将の可児吉長は指物に笹を用い、討ち取った敵の首にその笹の葉を含ませて手柄の証としたため、「笹の才蔵」の異名をとった。
- 笹の実は古来から食用にも供されてきた。
- 笹の葉を浴槽に入れて入浴すると「ウルシカブレ」が治るという伝統風習が、長野県阿智村や喬木村にある[4]。
ササの実をめぐる出来事編集
文化編集
出典編集
- ^ a b c d e 岩槻秀明『散歩の樹木図鑑』新星出版社、2013年、247頁。
- ^ a b c “植物多様性センターの「ササとタケ」”. 東京都公園協会. 2019年10月1日閲覧。
- ^ 「大雪山国立公園でササ繁殖 高山植物を脅かす/温暖化影響 環境省、対応に苦慮」『毎日新聞』朝刊2020年7月11日(地方版)2020年9月1日閲覧
- ^ 信濃生薬研究会林兼道編集『信州の民間薬』(医療タイムス社、昭和46年12月10日発行)全212頁中83頁
- ^ 戦時下の盛岡中学:昭和18年流産事件の真相
- ^ 香田徹也「昭和18年(1943年)林政・民有林」『日本近代林政年表 1867-2009』(日本林業調査会、2011年)p472 全国書誌番号:22018608