非対称ジメチルヒドラジン

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非対称ジメチルヒドラジン(Unsymmetrical dimethylhydrazine、UDMH、または1,1-ジメチルヒドラジン)はヒドラジンの誘導体の有機化合物である。用途はロケットエンジンの燃料など。

非対称ジメチルヒドラジン
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識別情報
CAS登録番号 57-14-7 チェック
PubChem 5976
ChemSpider 5756 ×
EC番号 200-316-0
国連/北米番号 1163
KEGG C19233 チェック
MeSH dimazine
ChEBI
RTECS番号 MV2450000
バイルシュタイン 605261
特性
化学式 C2H8N2
モル質量 60.1 g mol−1
示性式 (CH3)2-N-NH2
外観 無色透明の液体
匂い アンモニア臭
密度 790 mg mL−1 (at 20 °C)
融点

-57 °C, 216 K, -71 °F

沸点

64 °C, 337.1 K, 147 °F

蒸気圧 13.7 kPa (at 20 °C)
屈折率 (nD) 1.4075
熱化学
標準生成熱 ΔfHo 48.3 kJ mol−1[2]
標準燃焼熱 ΔcHo −1980 kJ mol−1[2]
標準モルエントロピー So 200.25 J K−1 mol−1[2]
標準定圧モル比熱, Cpo 164.05 J K−1 mol−1[2]
危険性
GHSピクトグラム 可燃性 腐食性物質 急性毒性(高毒性) 経口・吸飲による有害性 水生環境への有害性
GHSシグナルワード DANGER
Hフレーズ H225, H301, H314, H331, H350, H411
Pフレーズ P210, P261, P273, P280, P301+310
EU分類 強い可燃性 F 有毒 T 環境への危険性 N
EU Index 007-012-00-5
NFPA 704
3
4
1
Rフレーズ R45, R11, R23/25, R34, R51/53
引火点 −10 °C
発火点 248 °C
爆発限界 2–95%
半数致死量 LD50
  • 122 mg kg−1 (oral, rat)
  • 1.06 g kg−1 (dermal, rabbit)
関連する物質
関連物質
特記なき場合、データは常温 (25 °C)・常圧 (100 kPa) におけるものである。

異性体には1,2-ジメチルヒドラジン)があり、こちらは「対称型ジメチルヒドラジン」と呼ばれる。

アンモニア様の臭気を持つ無色透明の液体で、吸湿性を持ち、水に非常に溶けやすい。空気に触れると黄色に変色する。常温で気化しやすく、引火点が-10度のため引火しやすい。

用途 編集

ロケットエンジンの推進剤として用いられ、酸化剤には四酸化二窒素赤煙硝酸液体酸素などが使用される。ヒドラジンに比べ高温でも安定しており、ヒドラジンと置き換えまたは混合が可能である。

常温で保存可能であるので即応性を要求されるミサイル等の用途に用いられ、また、酸化剤と混ぜるだけで燃焼する自己着火性推進剤であるため、高い信頼性を求められる人工衛星スペースシャトル等の姿勢制御に使用される。ロケットエンジンの始動時にも使用され、この場合は運転が始まったらケロシンなどに切り替える。ただし、モノメチルヒドラジンの方が比推力が高い。

ロケットエンジンの燃料以外の用途として有機金属気相成長法による蒸着における窒素源としても使用される。

毒性など 編集

強い発火性物質である。皮膚や粘膜に対して腐食性を持つ。また発がん性を持ち、国際がん研究機関の発がん性評価ではグループ2Bの発がん性の可能性がある物質に分類されている。また日本では消防法により危険物第5類(自己反応性物質)に、毒物及び劇物取締法では毒物に、労働安全衛生法特定第2類物質(特定管理物質)に指定されている。

UDMHを使用したロケットエンジンの例 編集

  • ヴァイキングIIアリアン1~3の1段目用エンジン。酸化剤は 
  • ヴァイキングIV:アリアン1~4の2段目用エンジン。酸化剤は 
  • ヴァイキングVアリアン4の1段目用エンジン。酸化剤は 
  • RD-251:ソ連R-36M ICBMの1段目エンジン。酸化剤は 
  • RD-253:ソ連のプロトンの1段目エンジン。酸化剤は 
  • YF-20B中国長征シリーズの1段目エンジン。酸化剤は 
  • アメリカ合衆国MGM-52 ランスロケットダイン製ロケット・モーター。酸化剤は不明。
  • フランスのロケット会社「アリアンスペース」の小型ロケット「ヴェガ」4段目に搭載のウクライナ製エンジンRD-869またはRD-843。酸化剤は 

出典 編集

  1. ^ dimazine - Compound Summary”. PubChem Compound. USA: National Center for Biotechnology Information (2005年3月26日). 2012年2月21日閲覧。
  2. ^ a b c d Hydrazine, 1,1-dimethyl-”. NIST. 2021年3月8日閲覧。

関連項目 編集