ジャリオン・ローソンJarrion Lawson1994年5月6日 ‐ )は、アメリカ合衆国テキサス州テクサーカナ出身の陸上競技選手。専門は走幅跳短距離走(主に100m200m)。走幅跳で8m58、100mで10秒04、200mで20秒17の自己ベストを持つ。2017年ロンドン世界選手権男子走幅跳の銀メダリストである。2016年全米学生選手権ではジェシー・オーエンス以来となる男子100m・200m・走幅跳の3冠を達成した。

ジャリオン・ローソン Portal:陸上競技
選手情報
ラテン文字 Jarrion Lawson
国籍 アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国
競技 陸上競技(跳躍, 短距離走
種目 走幅跳, 100m, 200m
大学 アメリカ合衆国の旗 アーカンソー大学
生年月日 (1994-05-06) 1994年5月6日(29歳)
出身地 アメリカ合衆国の旗 テキサス州テクサーカナ
身長 188cm
体重 78kg
プロ転向 2016年
成績
オリンピック 走幅跳:4位(2016年
4x100mR:予選1組1着(2016年
世界選手権 走幅跳:2位(2017年
国内大会決勝 全米選手権
100m:7位( 2016年)
走幅跳:優勝(2017年)
自己ベスト
60m 6秒60(2016年)
100m 10秒04(2015年)
9秒90w(2015年)
200m 20秒17(2016年)
走幅跳 8m58(2016年)
三段跳 15m80(2012年)
獲得メダル
陸上競技
アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国
世界選手権
2017 ロンドン 走幅跳
世界リレー
2017 ナッソー 4x200mR
世界ジュニア選手権
2012 バルセロナ 走幅跳
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経歴 編集

高校時代まで 編集

リバティー=エイラウ高校 (Liberty-Eylau High Schoolの新入生になる前の2008年夏にテレビで北京オリンピックを見て、将来オリンピックに出場することを目標にした[1]

高校時代には5度のテキサス州チャンピオン(4×400mリレー・走幅跳・三段跳)に輝くなど活躍[2]。2012年には全米高校コーチ協会 (National High School Coaches Association) の陸上男子最優秀選手賞 (Boys' Track & Field Athlete of the Year) を受賞した[3]

高校時代には陸上競技の他にアメリカンフットボールバスケットボールにも取り組んでいた。アメリカンフットボールでは州セカンドチームのディフェンシブバックに選出されるなど活躍し[2]、複数の大学から奨学金の申し出もあった[4]

2012年には全米ジュニア選手権で走幅跳と三段跳の2冠を達成。両種目でバルセロナ世界ジュニア選手権に出場を果たし、走幅跳では銅メダルを獲得した[2]

高校卒業後は陸上競技の奨学金を得てアーカンソー大学に進学した。

大学時代 編集

2016年6月の全米学生選手権(NCAA選手権)には100m・200m・4×100mリレー・走幅跳と2年連続で4種目に出場した(前回大会は100m・4×100mリレー・4×400mリレー・走幅跳に出場し、4×100mリレーで優勝)。まず最初の決勝となった8日の男子走幅跳は制したが、10日は1日で100m・200m・4×100mリレーの決勝3本を走るというハードスケジュールだった。しかし、まず最初に行われた4×100mリレーは2走を務め3位に貢献すると、次に行われた男子100mはクリスチャン・コールマンを0秒01抑えて優勝。更に約45分後に行われた男子200mでもコールマンを抑えて優勝し、大会3冠を達成した。これらの種目での3冠達成は、1935年大会と1936年大会に200mハードルも加え4冠を達成したジェシー・オーエンス以来、史上2人目の快挙となった。また、ローソンは今大会でアーカンソー大学が獲得した56ポイント中、1人で31.5ポイントを獲得する活躍を見せた。これは1935年大会と1936年大会で40ポイントを獲得したジェシー・オーエンスに次ぐ最高得点となった[5][6]。これらの活躍によりローソンは、全米学生陸上界最高の栄誉とされるバウワーマン賞 (The Bowermanの男子選手部門を受賞した[7]

6度の全米学生チャンピオン(100m・200m・4×100mリレー・走幅跳)、2度のサウスイースタン・カンファレンスチャンピオン(走幅跳)、19度のオールアメリカ (All-America、バウワーマン賞受賞などの輝かしい実績を残し、2016年の学生シーズン終了後にプロに転向した(アシックスと契約)[8][9]

プロ転向以降 編集

2016年7月の全米オリンピックトライアル(全米選手権)では、男子走幅跳でアメリカ史上9人目の28フィート(8m53)超えとなる8m58(+1.8)をマークして2位となり、リオデジャネイロオリンピック代表の座を掴んだ(男子100mは7位、男子200mは準決勝敗退)[10]。今季世界最高記録保持者として出場した8月のリオデジャネイロオリンピック男子走幅跳では、8m25(-0.5)で4位につけ決勝最後の跳躍を迎えた。順位が確定する最終競技者として登場したローソンは、1位(8m38)の記録を超えたと思える跳躍を見せ、本人も観客も逆転での金メダルを確信したが、左手が先に砂場に着いていたため記録は7m78(+0.1)に終わり、メダルを逃した[11][12]。ローソンは今大会の男子4×100mリレーにも出場し、予選でアメリカチームのアンカー(1走マイク・ロジャース、2走クリスチャン・コールマン、3走タイソン・ゲイ)を務め決勝進出に貢献した(予選のみ出場)[13]

2017年6月の全米選手権男子走幅跳を8m49(+3.7)で制し、初優勝を飾るとともにロンドン世界選手権代表の座を掴んだ[14]。今季世界4位(8m33)の記録を持って出場した8月のロンドン世界選手権男子走幅跳では[15]、8m43(+0.2)で2位につけ決勝最後の跳躍を迎えた。ローソンは記録を伸ばす8m44(+0.6)をマークしたが、1位のルヴォ・マニョンガには4cm及ばず、惜しくも銀メダルに終わった[16]

2018年は非常に好調だったジャリオン・ローソンだったが、8月31日ドーピング検査を行った際、陽性反応になった。この事によりローソンは聞き取りが終了するまで出場停止となった。[17]

自己ベスト 編集

  • 記録欄の( )内の数字は風速m/s)で、+は追い風、-は向かい風を意味する。
種目 記録 年月日 場所 備考
屋外
100m 10秒03 (+1.5) 2017年6月22日   サクラメント
9秒90w (+2.7) 2015年6月12日   ユージーン 追い風参考記録
200m 20秒17 (+1.5) 2016年5月28日   ローレンス
走幅跳 8m58 (+1.8) 2016年7月3日   ユージーン
三段跳 15m80 (-0.9) 2012年5月11日   オースティン
室内
60m 6秒60 2016年3月12日   バーミングハム
200m 21秒11 2014年1月31日   フェイエットビル
走幅跳 8m39 2014年3月14日   アルバカーキ
三段跳 14m94 2014年1月17日   フェイエットビル

主な成績 編集

  • 備考欄の記録は当時のもの
大会 場所 種目 結果 記録 備考
2012 世界ジュニア選手権   バルセロナ 走幅跳 3位 7m64 (+0.1)
三段跳 予選 15m18 (+1.4)
2016 オリンピック   リオデジャネイロ 走幅跳 4位 8m25 (-0.5)
4x100mR 予選 37秒65 (4走) 決勝進出 (予選のみ出場)
2017 世界リレー (en   ナッソー 4x200mR 2位 1分19秒88 (2走)
世界選手権   ロンドン 走幅跳 2位 8m44 (+0.6)
2018 世界室内選手権   バーミンガム 走幅跳 4位 8m14

ダイヤモンドリーグ 編集

大会 場所 種目 記録 備考
2017 英国グランプリ   バーミンガム 走幅跳 8m19 (+0.3)

全米タイトル 編集

  • 優勝した全米大会を記載
大会 場所 種目 優勝記録 備考
2010 AAUジュニアオリンピック ノーフォーク 三段跳 14m69 (0.0)
2012 全米ジュニア選手権 ブルーミントン 走幅跳 7m77 (+2.5) 公認記録7m76 (+1.4)
三段跳 15m64 (+0.5)
2014 全米学生室内選手権 アルバカーキ 走幅跳 8m39 自己ベスト
2015 全米学生選手権 ユージーン 4x100mR 38秒47
2016 全米学生室内選手権 バーミングハム 走幅跳 7m95
全米学生選手権 ユージーン 100m 10秒22 (-2.3)
200m 20秒19 (-0.2)
走幅跳 8m15 (+1.6)
2017 全米選手権 サクラメント 走幅跳 8m49 (+3.7) 公認記録8m27 (+1.4)
2018 全米室内選手権 バーミングハム 走幅跳 8m38

脚注 編集

  1. ^ Jarrion Lawson's long-jump journey lands in Rio”. Texarkana Gazette (2016年8月4日). 2018年5月5日閲覧。
  2. ^ a b c Jarrion Lawson”. アーカンソー・レイザーバックス (2011年5月16日). 2018年5月5日閲覧。
  3. ^ Boys' Track & Field Athlete of the Year”. 全米高校コーチ協会 (2018年5月5日). 2018年5月5日閲覧。
  4. ^ Spotlight: Jarrion Lawson jumps into the nation's elite”. MaxPreps (2012年6月13日). 2018年5月5日閲覧。
  5. ^ Lawson and Brazier rewrite history at NCAA Championships”. 国際陸上競技連盟 (2016年6月11日). 2018年5月5日閲覧。
  6. ^ Observations From Day 3 Of NCAA DI Outdoor Championships”. 全米陸上競技&クロスカントリーコーチ協会 (2016年6月11日). 2018年5月5日閲覧。
  7. ^ Men's track and field: Arkansas Razorbacks' Jarrion Lawson wins Bowerman Award”. 全米大学体育協会 (2016年12月16日). 2018年5月5日閲覧。
  8. ^ Lawson Continues Big Moves with Pro Contract”. アーカンソー・レイザーバックス (2016年6月30日). 2018年5月5日閲覧。
  9. ^ JARRION LAWSON”. TFRRS (2018年5月5日). 2018年5月5日閲覧。
  10. ^ L-E grad headed to Olympics”. Texarkana Gazette (2016年7月4日). 2018年5月5日閲覧。
  11. ^ Report: men's long jump final – Rio 2016 Olympic Games”. 国際陸上競技連盟 (2016年8月13日). 2018年5月5日閲覧。
  12. ^ Team USA’s Henderson wins long jump, Jarrion Lawson 4th”. NBCスポーツ (2016年8月13日). 2018年5月5日閲覧。
  13. ^ 2016年オリンピック男子4×100mリレー予選リザルト”. 国際陸上競技連盟 (2018年5月5日). 2018年5月5日閲覧。
  14. ^ Lawson, Kebenei Round Out Worlds Qualifiers”. アーカンソー・レイザーバックス (2017年6月25日). 2018年5月5日閲覧。
  15. ^ 2017年世界選手権男子走幅跳予選スタートリスト (PDF, 132 KB) 国際陸上競技連盟 2018年5月5日閲覧
  16. ^ Report: men's long jump final – IAAF World Championships London 2017”. 国際陸上競技連盟 (2017年8月5日). 2018年5月5日閲覧。
  17. ^ “ローソンが陽性反応…ドーピング検査で 昨年の走り幅跳び世界選手権2位/陸上” (日本語). サンスポ. https://web.archive.org/web/20180902151944/https://www.sanspo.com/sports/news/20180831/ath18083121480003-n1.html 2018年9月2日閲覧。 

外部リンク 編集

受賞
前年
  マーキス・デンディー英語版
バワーマン賞(男子)
2016年
次年
  クリスチャン・コールマン