ジャン=リュック・メランション

フランス人の政治家

ジャン=リュック・メランションフランス語: Jean-Luc Mélenchon(フランス語発音: [ʒɑ̃lyk melɑ̃ˈʃɔ̃])、JLM, 1951年8月19日 - )は、フランスの政治家。現在、国民議会議員。2008年から2014年まで、マルティーヌ・ビヤル英語版と共に左翼党の共同党首を務めていた。

ジャン=リュック・メランション
Jean-Luc Mélenchon
ジャン=リュック・メランション(2017年)
生年月日 (1951-08-19) 1951年8月19日(72歳)
出生地 モロッコの旗 フランス保護領モロッコタンジェ
出身校 フランシュ=コンテ大学
所属政党 社会党(1977年 – 2008年)
左翼党(2008年 – 現在)
左翼戦線英語版(2008年 – 2016年)
不服従のフランス(2016年 – 現在)
公式サイト Jean-Luc Mélenchon

選挙区 ブーシュ=デュ=ローヌ県第4選挙区
在任期間 2017年6月21日 - 2022年6月21日

フランスの旗 職業教育大臣
内閣 リオネル・ジョスパン内閣
在任期間 2000年3月27日 - 2002年5月6日
大統領 ジャック・シラク

選挙区 南西フランス英語版
在任期間 2009年7月14日 - 2017年6月18日

フランスの旗 元老院議員
選挙区 エソンヌ県
在任期間 1986年10月2日 - 2000年4月27日
在任期間 2004年10月1日 - 2010年1月7日
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経歴 編集

モロッコタンジェ[1](詳しくはタンジェ国際管理地域内)に生まれた。父は郵便局員で、スペイン出身の母は学校教師だった。モロッコ北部で育ち、両親の離婚に伴い1962年にフランスへ移住し、ジュラ県ロン=ル=ソーニエのルージェ・ド・リール高等学校で学んだ。フランシュ=コンテ大学英語版では哲学を学び、卒業後はCAPESフランス語版(フランス文部省の専門の指導資格)に合格して教師となった[1]

1983年から1995年まで、エソンヌ県マシー市元老院委員・市長。1983年から2001年まで、マシー市長会委員。1998年から2001年まで、エソンヌ県大評議会副議長。1985年から1992年まで、1998年から2004年までエソンヌ県大評議会議員。1998年に再任。

1986年、エソンヌ県選出の元老院議員として当選(35歳での当選は当時最年少)。1995年に再任され、2000年まで務めた。

2000年から2002年まで職業教育大臣を務めた[1]。2004年に元老院議員に再任され、2010年まで務めた。

2008年11月に国民議会議員マルク・ドレズフランス語版と共に社会党を離党[2][3]して左翼党を創設した。

左翼党の党首として、2009年欧州議員選前に左翼戦線に加わり、南西仏選挙区の候補者として選ばれた。この選挙で8.15%の得票率を収めて欧州議会議員に当選した。

2010年に行われた年金制度改革に抵抗する運動の際、何回か公演やテレビ番組に出た影響で、公に知られるようになった。

選挙 編集

2012年大統領選挙 編集

2012年フランス大統領選挙で、フランス共産党左翼党統一左翼党英語版の合同組織「左翼戦線英語版」として立候補[4][5]。憲法を改め「第六共和政」の立ち上げを主張した。

2012年国民議会議員選挙 編集

大統領選挙に敗れた後、メランションは2012年フランス議会総選挙においてパ=ド=カレー県第11選挙区から立候補、ル・ペンとの直接対決に臨んだ[6]。しかし第1回投票で社会党のフィリップ・ケメルフランス語版に僅差で敗れ3位となり、決選投票へ進むことはできなかった[7]。なお、決選投票ではケメルがル・ペンを破り当選している。

事前の世論調査では第1回投票の上位2人が進出する決選投票への進出はないとされたものの、一時は結果として第1回投票で3位となったマリーヌ・ル・ペン国民戦線)に迫る支持を集めたが、結果としてル・ペンに得票で倍近い差をつけられた(第4位、得票率11.10%、3,984,822人[8])。

2017年大統領選挙 編集

2017年フランス大統領選挙では事前の世論調査で支持率を伸ばし3位まで浮上し、決選投票に進む可能性も指摘されたが[9]、結局は第1回投票で4位となり、決選投票には残れなかった(得票率19.58%、7,060,885人[10])。

2017年国民議会議員選挙 編集

2017年フランス議会総選挙においてブーシュ=デュ=ローヌ県第4選挙区から立候補し得票率59.85%で当選[11]

2022年大統領選挙 編集

2022年フランス大統領選挙では2022年4月10日の第1回目投票で3位(得票率22.00%)となり、決選投票に進めず落選した[12]

政治思想 編集

 
オリヴィエ・ブザンスノジョゼ・ボヴェと談笑するメランション(2005年)

2017年フランス大統領選挙において、以下の公約を掲げた[13]。( 大統領選挙パンフレット「人民の力」)

[第六共和政]大統領権限の縮小、議会の強化、直接民主制の部分的導入(ランダムで選ぶ市民のための議員枠)。

[労働者の権利強化]人員削減のための労使協議会に猶予拒否権を付与、経営危機時の配当金の支払いの禁止、様々な労働組合の権限強化。

[治安対策]科学警察の強化、警察署の改修促進、対テロ戦争からの撤退、人身売買対策の強化。

[経済]金融取引課税、経営陣や株主の法外な報酬の規制、脱税や不法投機対策としての資本移動の監視強化。

[雇用]時短の実現による350万人の新規雇用、最低賃金の上昇、アメリカ合衆国やカナダとの自由貿易協定の拒否、輸入品に対する距離と炭素の課税。

[年金]40年間の年金拠出による60歳からの年金支給の確約、最低保障年金の増額。

[ジェンダー]男女間の賃金や昇進差別を禁止する包括的社会契約、男女平等を尊重しない企業に対する罰金と刑事罰、公共調達のアクセス禁止。

[住宅]代替地の提示なき立ち退き要求の禁止、ホームレス・ゼロ化、グリーン基準による百万戸の公共住宅の新築。

[税金]高額所得者に対する課税強化、金融・不動産・相続課税の強化、居住住宅の非課税枠の拡大、脱税・資本逃避の対策強化。

[エネルギー]2050年までに再生可能エネルギー100%を実現。化石燃料関連の補助金の停止。新規のシェールオイル、ガス調査の禁止。核融合炉計画の放棄。

[農業]遺伝子組み換え作物の禁止。有害殺虫剤の禁止。若年者の就農支援強化とCAP(欧州共通農業政策)の見直しにより30万人の新規雇用を実現。家畜を虐待する牧場の営業停止措置。

[欧州問題]EUが要求する公共サービスの民営化の停止。EU離脱のための国民投票の実施。財政赤字がGDPの3%を上回ってはならないことを規定するEU協定への不服従。

[平和と独立]国連安保理決議無き軍事介入への不同意。NATOの軍事部門からの離脱。国連指導下における多国間交渉によるイラク、シリアの平和実現。パレスチナの国家承認による中東和平の推進。

[移民]難民を出さないための積極的な平和外交に注力。難民キャンプにおける人間の尊厳の尊重。保護者のいない未成年難民に対する支援強化、家庭生活の保証。

[健康]公立病院のサービス向上。予防医療の充実。農村部や地方における医療アクセスの保障。

[教育]3~18歳までの義務教育化。給食、通学、文具などの無償化。5年間で6万人の教員雇用。幼稚園、保育園における少人数学級の実現。職業専門学校の充実。

[文化]GDPの1%を文化と創造(芸術)に。音楽、映画、文化コンテンツを合法的に提供するプラットフォームを有するオンライン公共図書館の設立。

[宇宙]火星に向けた惑星間ミッションの推進。月面の永久基地の設立を提案。

[自由権]検閲と監視の無い仮想空間の保証。(被疑者の)広範なファイリングの禁止と「誠実な人」のファイル削除。個人データ保護と商業利用の規制。

脚注 編集

  1. ^ a b c ジャン=リュック・メランションの履歴書”. Frédéric Frangeul, Europe 1 (2014年2月27日). 2014年3月30日閲覧。(フランス語)
  2. ^ ジャン=リュック・メランションが社会党を離党宣言。”. 左翼党 (2008年11月7日). 2014年3月30日閲覧。(フランス語)
  3. ^ 左翼党立党会議日付”. "左翼党" (2008年11月29日). 2009年2月7日時点のオリジナルよりアーカイブ。2014年3月30日閲覧。(フランス語)
  4. ^ 2012年フランス大統領選挙に憲法委員会が公式に認識した候補者達”. フランス通信社 (2012年3月19日). 2014年3月30日閲覧。(フランス語)
  5. ^ 候補者としてのメランションの最初の演説会”. Sophie de Ravinel (2011年6月29日). 2014年3月30日閲覧。(フランス語)
  6. ^ 2012年大統領選挙 – 選挙区別第1回結果”. Politiquemania. 2014年3月30日閲覧。(フランス語)
  7. ^ French far-left leader Jean-Luc Melenchon admits defeat by far-right's Le Pen”. 2012年4月14日閲覧。(フランス語)
  8. ^ 国民議会選挙 – 結果”. フランス内務省. 2014年3月30日閲覧。(フランス語)
  9. ^ “フランス大統領選3位に急浮上、左翼党メランションの脅威”. ニューズウィーク. (2017年4月13日). http://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2017/04/3-56_2.php 2017年4月26日閲覧。 
  10. ^ 国民議会選挙 – 結果”. フランス内務省. 2017年4月25日閲覧。(フランス語)
  11. ^ Résultats des élections législatives 2017”. フランス内務省. 2018年9月17日閲覧。
  12. ^ Election présidentielle 2022 Résultats au 1er tour”. フランス内務省. 2022年4月12日閲覧。
  13. ^ “[https://www.alter-magazine.jp/index.php?フランス大統領選・メランション候補の政策を検証する 【オルタの視点】 フランス大統領選・メランション候補の政策を検証する]”. 2021年2月14日閲覧。

外部リンク 編集