ストリートアート
ストリートアート(street art )とは、街をカンバスとしてペンキやスプレーで描かれる落書きの事。自称アート。英語ではgraffiti(グラフィティ)とも呼ばれることもある。合法的な場所に描かれたものに関しては市民権を得るようになってきているが、社会常識的な面においては、景観破壊とみなされることもある。
なお様式化されたマークや記号化されたメッセージ等を書いて回る(書き散らす)行為に関しては、タギングの項を参照のこと。
概要編集
この様式は、古くは街の随所に見られた公共の、もしくは建物に付随した彫刻など(パブリックアート)とは違い、その土地の管理者もしくは施設所有者とは無縁の第三者が描く迷惑行為である(許可を得ている場合は除く)。その多くは建物や施設を汚損する器物損壊行為の範疇として取り締まられている。
近年ではごく一部ではあるが、試験的に街の装飾や、計画された都市景観の一部として採用される動きもある。
題材にはエロティックで公共の場所にはやや難のあるヌードや、独自のアニメやカートゥーン風のキャラクター、または写実的なモノやポップなモノまで様々で、描く側の趣味志向によって幅広い様式が存在する。所有者に無断で描かれる場合は、アートを称していても器物損壊にあたる犯罪行為であるので、多くは深夜にゲリラ活動的に描き込まれる。しかし、特に描き手を募集して描かれる場合は、平日の日中に制作されることもある。
街への影響編集
自称アートを謳っていても、荒廃した雰囲気を作り出してしまうなど、周囲に悪影響を及ぼす事がほとんど。
街に乱雑なストリートアートが溢れることには、割れ窓理論に絡んで犯罪が起こりやすい雰囲気を作り出すと懸念されている。
個人の住宅の外壁や商店のシャッターに描き込まれる場合が多く見られ、所有者に深刻な損害を与える。
その一方で少子高齢化の進む日本に於いて、商店街に閉店した店が目立ってしまう事から、閉店している店のシャッターを装飾する事で商店街の活性化を期待する活動も一時期行われた。が、一時的なものでありそれで活性化した例は聞こえてこない。
シャッターに描かれたアートはそのままいつでも見られる状態(つまりは店舗は復活できていない)又は店舗ごと消えている場合が多い。
この場合、市民から作品を募る所もある。特に完成度の高いストリートアートは従来、その上に乱雑なタギングなどの描き込みをしたり張り紙広告を行うのを躊躇させる効果も見られたため、公共の場所への落書き防止のために用いられる場合もあったが、そもそもストリートアートの描き手は公共物に落書きをする事を良しとしているタイプの人間である為、そのモラルの無さから臆面も無く汚される。現状で落書き防止の効果はほとんどないと言っていい。(タギングの項も参照)
ヨーロッパやアメリカ、近年では日本でも、特定の壁面を解放し自由に描いてもらおうという「リーガル・グラフィティ(合法的な落書き)のための壁面」を用意する自治体や建物所有者がごく一部試験的に現れるようになった。描きたい人間には見回りの目を気にしない発表の場を存分に提供し、同時に非合法な落書きを減らし、都市の装飾や観光にも使おうとのアイデアである。これには非合法の落書きを減らすことにはならないと歓迎しない立場と、歓迎する立場とがある。
なお、2005年には水戸芸術館で美術の立場から海外や日本のストリートアートを考える展覧会が開かれ[1]、一環として水戸市内にも合法的に制作されたストリートアートが出現している。
関連項目編集
脚注編集
- ^ “『X-COLOR/グラフィティ in Japan』展”. 2005年10月24日時点のオリジナルよりアーカイブ。