チャップリンの寄席見物
『チャップリンの寄席見物』(A Night in the Show) は、1915年公開の短編サイレント映画。エッサネイ社による製作で、主演・監督はチャールズ・チャップリン。チャップリンの映画出演48作目にあたる[注釈 1]。
チャップリンの寄席見物 | |
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A Night in the Show | |
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監督 | チャールズ・チャップリン |
脚本 | チャールズ・チャップリン |
製作 | ジェス・ロビンス |
出演者 |
チャールズ・チャップリン シャーロット・ミノー ディー・ランプトン エドナ・パーヴァイアンス レオ・ホワイト |
撮影 | ハリー・エンサイン |
配給 | エッサネイ・スタジオ |
公開 | 1915年11月20日 |
上映時間 | 30分 |
製作国 |
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言語 |
サイレント映画 英語字幕 |
作品はフレッド・カーノー劇団時代の成功作『唖鳥』(Mumming Birds) を翻案したもので、チャップリンの十八番の一つである「酔っぱらいもの」のジャンルに属する[1]。ストーリーの大筋は『唖鳥』と同一であるが、チャップリンはロビーと観客席のシーンを追加している[2]。
あらすじ編集
酔っぱらってある劇場にやってきたペスト氏(チャップリン)は、座席をいろいろ変わってせわしない様子。早々につまみ出されるも舞い戻り、太った女性(メイ・ホワイト)をロビーの噴水の中に突き落としたり、特別席のエドナに色仕掛けを試みたりとやりたい放題であった。一方、二階桟敷ではこれも酔っぱらいのラウディ氏(チャップリン二役)がいた。特別席のエドナらに対してビールをかけたり一階席に落ちそうになったり、舞台に向かってトマトを投げつけたりと、こちらも大暴れ。しまいには、火食い術の奇術師に対して消火ホースから水をかけるのであった[2][3][4]。
背景編集
カーノーは著作権に関して口うるさい人物であるが、チャップリンがカーノーに『唖鳥』の翻案の許可を求めた形跡はなく、またカーノーが抗議した形跡も見られない[1]。もともと『唖鳥』は1904年に、ロンドンで行われたチャリティー公演のための舞台を改作したもので、チャップリンは劇団のアメリカ巡業の際に演じて好評を得ていた[5]。アメリカにおいて『唖鳥』は『イギリス・ミュージックホールの一夜』と改題して上演されたが、上演の一つをキーストン社の株主ハリー・エイトキンが見てチャップリンをキーストン社に誘ったという伏線がある[6]。翻案の経緯は定かではないが、「優れたアイデアは決して古びない」という信念を持っていたチャップリンが、信念に基づいて翻案したとも考えられる[7]。
このころ、チャップリンは『生活』と題された長編喜劇に取りかかっていた。『チャップリンの掃除番』のころから断続的に製作に入っていたと考えられるが、『チャップリンの掃除番』と前作『チャップリンの船乗り生活』、この『チャップリンの寄席見物』との封切日の間隔を開けてまで製作が続けられた『生活』が完成することはなかった[2]。のち、『生活』の未使用フィルムはチャップリンの不承認作品『三つ巴事件』(1916年)に転用される[8]。ラストの放水シーンは後の「ニューヨークの王様」でシャドルフ王が米非活動委員会の裁判に出席する時エレベーターのホースに指を入れて抜けなくなった時、火事と誤解した係員が放水したため騒ぎになるというシーンでトーキーで再現された。その前にはキーストン時代の「チャップリンの道具係」のラストでもしている。
キャスト編集
- ペスト氏・ラウディ氏(二役):チャールズ・チャップリン
- 特別室の婦人:エドナ・パーヴァイアンス
- 特別室の婦人:シャーロット・ミノー
- 太ったいたずら小僧:ディー・ランプトン
- 特別席の紳士・手品師(二役):レオ・ホワイト
- 二階桟敷の男:ウェズリー・ラッグルズ
- 指揮者:ジョン・ランド
- ミュージシャン・歌手(二役):ジェームズ・T・ケリー
- ミュージシャン:パディ・マグワイア
- ロビーの太った女性・蛇つかい(二役):メイ・ホワイト
- エドナの夫・歌手:バド・ジェイミソン
- 観客:フィリス・アレン、フレッド・グッドウィンズ、チャールズ・インズリー
- フランク・J・コールマン
日本語吹替編集
俳優 | 日本語吹替 |
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チャールズ・チャップリン | 江原正士 |
エドナ・パーヴァイアンス | 中司ゆう花 |
シャーロット・ミノー | 小宮和枝 |
ジョン・ランド | 中村浩太郎 |
(ナレーター) | 羽佐間道夫 |
- この作品はサイレント映画だが、チャップリンのデビュー100周年を記念し、日本チャップリン協会監修のもと、スターチャンネルで日本語吹替が製作された[10]。
脚注編集
注釈編集
- ^ 1914年製作、2010年発見の『泥棒を捕まえる人』を含む。1971年に映画研究家ウノ・アスプランドが制定したチャップリンのフィルモグラフィーの整理システムでは47作目(#大野 (2007) p.252)
出典編集
- ^ a b #ロビンソン (上) pp.190-191
- ^ a b c #ロビンソン (上) p.191
- ^ #Imdb
- ^ #BFI
- ^ #ロビンソン (上) p.107,131
- ^ #ロビンソン (上) p.139
- ^ #ロビンソン (上) p.190
- ^ #ロビンソン (上) p.194
- ^ “吹替で蘇る!チャップリン笑劇場”. STAR CHANNEL. 2014年10月1日閲覧。
- ^ “チャップリンの寄席見物”. STAR CHANNEL. 2014年10月1日閲覧。
参考文献編集
- チャールズ・チャップリン 『チャップリン自伝』中野好夫(訳)、新潮社、1966年。ISBN 4-10-505001-X。
- デイヴィッド・ロビンソン 『チャップリン』 上、宮本高晴、高田恵子(訳)、文藝春秋、1993年。ISBN 4-16-347430-7。
- デイヴィッド・ロビンソン 『チャップリン』 下、宮本高晴、高田恵子(訳)、文藝春秋、1993年。ISBN 4-16-347440-4。
- 大野裕之 『チャップリン再入門』日本放送出版協会、2005年。ISBN 4-14-088141-0。
- 大野裕之 『チャップリン・未公開NGフィルムの全貌』日本放送出版協会、2007年。ISBN 978-4-14-081183-2。
外部リンク編集
- A Night in the Show - IMDb(英語)
- チャップリンの寄席見物 - インターネット・アーカイブ
- “47. A Night in the Show (1915)” (英語). BFI Homepage - Chaplin Home. 英国映画協会. 2013年5月9日閲覧。