トカレフM1940半自動小銃
![]() |
トカレフM1940半自動小銃(トカレフM1940はんじどうしょうじゅう、ロシア語: Самозарядная винтовка Токарева, образец 1940 года〈СВТ-40〉 (Samozaryadnaya Vintovka Tokareva, Obrazets 1940 goda〈SVT-40〉)は、第二次世界大戦中にソビエト連邦で開発された半自動小銃である。
![]() SVT-40 1941年製
|
|
トカレフM1940半自動小銃 | |
---|---|
種類 | 半自動小銃 |
製造国 | ![]() |
設計・製造 | フョードル・トカレフ |
仕様 | |
口径 | 7.62mm |
銃身長 | 625mm |
使用弾薬 | 7.62x54mmR弾 |
装弾数 | 10発(箱型弾倉) |
作動方式 | ガス圧作動方式 |
全長 | 1,222mm |
重量 | 3,890g |
銃口初速 | 830m/秒 |
有効射程 | 500m |
歴史 |
目次
開発経緯編集
この時代にソ連軍が使用していた代表的な狙撃銃には、しばしばモシン・ナガンM1891/30が挙げられるが、この銃は機関部がボルトアクション方式だったために、連続して狙撃を行う事が困難だった。1930年代に入り各国の軍隊では次世代小銃として半自動小銃の開発を進めていた。ソ連の銃技師フョードル・トカレフは、この、スコープから目を離さず連続狙撃が可能である半自動小銃の研究を1920年代末頃から開始した(半自動小銃の構造についてはリンク先を参照)。
そして、1932年に試作型の半自動小銃が完成。しかし、機関部の不具合から、この試作銃は制式採用されることはなかった。トカレフは、この試作銃の欠陥を解消したうえで更なる改良を重ね、1938年にトカレフM1938半自動小銃を完成させた。
別名SVT-38とも呼ばれたM1938は、機関部はガス圧作動方式を採用・使用する弾丸は、以前から小銃に使用されてきたリム付き7.62x54mmR弾を併用可能という高い互換性を備えていた。しかし、当時のソ連軍が使用していた弾薬には粗悪品も多く混じっていたため、発射圧でふくらんだ空薬莢がチェンバー(薬室)内部に貼り付き作動不良を起こす事が少なからずあったという。トカレフM1938半自動小銃には、この作動不良を防ぐためにチェンバー内に細かな溝を刻む事で空薬莢がチェンバー内に貼り付かないよう改良が施されている。
トカレフM1940半自動小銃の登場編集
トカレフM1938半自動小銃の開発に成功したが、以前から使用されていた弾薬は、フョードル・トカレフが採用した装弾方法に合わなかった。そのため、給弾不良をよく引き起こし、また、軽量化を目指したため構造強度が低く耐久性も劣っていた。そこで、トカレフは、これらの欠点を若干克服したトカレフM1940半自動小銃(別名:SVT-40)を開発した。試作と改良を重ねたトカレフM1940半自動小銃だが、M1938からの欠点を完全に克服したわけではなかった。また、新たに寒冷地では発射薬の燃焼力低下による不発や、給弾不良も引き起こした。さらに、スコープの固定金具に不具合が多発し、正確な射撃ができないという苦情も相次いだ。
その後編集
M1938の欠点を改善するべく開発されたM1940であったが、最後まで欠点を改善することはできなかった。また、M1940のフルオートライフルへの改造(AVT-40)が行われたが失敗。前線の兵士は、結局既存の改良型モシン・ナガンM1891/30を使用するようになってしまった。結局、不具合が相次いだM1940は1944年頃に生産が打ち切られてしまった。
世間から見れば失敗作に近いM1940だが、作動方式や機構などは当時には無いものであった。ドイツ軍は、戦地で鹵獲したM1940を自軍の自動小銃開発の参考にしたと言われている。また、比較的軽量な狙撃銃である事も手伝って赤軍の女性スナイパーたちの多くはこの銃を愛用した。確認戦果309名射殺という傑出した成績を残した史上最高の女性スナイパーリュドミラ・パヴリチェンコも、遠距離射撃の精度に優れているモシン・ナガンM1891/30から、遠距離射撃には不向きでも装弾数が10発と多く、パヴリチェンコが得意とした後退戦闘や防御戦闘、あるいは近~中距離での市街戦という状況に適したこのトカレフSVT-40に持ち換えている。
AVT-40編集
AVT-40は、M1940にセミオート射撃とフルオート射撃のセレクターを追加したもので、当時不足していた機関銃を補うために開発された。フルオート射撃時に10発マガジンでは装弾数が少ないということから、AVT-40用の15発・20発マガジンが作られたとも言われる。外見はM1940とほぼ同一であるが、ライフル弾をそのままフルオートで射撃するには無理があり、制御ができないほど大きな反動が発生したほか、銃本体が反動に耐え切れず破損してしまう危険もあるなど、問題が多かったため途中で開発中止となり、計画は破棄された。
登場作品編集
映画・ドラマ編集
漫画編集
- 『ウクライナ混成旅団』
- 単行本「幻の豹 The Panther in Ukraina 1950」または「独立戦車隊」収録作品。赤軍の看守が所持していたものを暴動の際にリアシェンコが奪い使用するが、監視塔からDShK38重機関銃の攻撃を受け立ち往生していたところを中川に奪われる。その後、中川がDShK38の銃手を本銃で狙撃し無力化する。
ゲーム編集
- 『スナイパーエリートV2』
- 初回生産版のみに特典としてKar98kと共に「SVT-40」の名称で実装されており、使用可能。
脚注編集
関連項目編集
- 自動小銃
- 小銃・自動小銃等一覧
- シモノフM1936半自動小銃
- モシン・ナガンM1891/30
- SKSカービン
- ドラグノフ狙撃銃 - 第二次世界大戦後、ソ連で開発されたセミオート狙撃銃。