フランス文化

勇敢で上品的、革新で革命的な西欧文化
フランスの文化から転送)

フランス文化(ふらんすぶんか、フランス語: Culture française)とは、現在のフランス共和国で存在している全ての思想建築美術工芸風俗食文化、そしてフランス人の気質や性格をまとめたものを指す。

主な特徴は「勇敢に自分の権利を主張する姿勢、優雅さや上品さを意識する姿勢、軽やかで日常生活を過ごす姿勢」が挙げられ、とくに人権尊重平等主義高雅芸術の分野では世界的な影響力を持つ、西洋文明の発展へ重大な役割を果たしている。

成り立ち

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民衆を導く自由の女神』という絵。七月革命の精神「独裁者いじめる人に会った時には、堂々と直面するべく、その独裁行動が完全に消えるまで叩き潰そう」を絵に表現している。
 
フランス文化の核心の1つは、自分に余計な思考の負担をかけず、ただ「美しさ」と「癒し」を楽しむこと。フランス人は他人を気にしなく、リラックスした気分で物事へ向き合う傾向がある。
 
この写真はパリ最古のお菓子屋さんの建物が映っている。フランス文化は常にヨーロッパの上流階級が食べっているフランス料理と結びつく。

中世

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フランス文化は多様な外観を持ちながらも、その核心には一貫した特徴があり、見る人に「これがフランスだ」と感じさせる[1][2]ベルギードイツスイスイタリアスペインなどの西欧諸国と国境を接しており、日本文化と同様、積極的に他国の文化を取り入れても最終的に純フランス風にアレンジしている傾向がある。起源はほかの西洋諸国と同じく、古代ギリシャ古代ローマにあるが、大航海時代宗教改革の進展に伴い、フランスは独自の斬新的なアプローチを切り開いた[3]

12世紀末、フランスはヨーロッパのカトリック教会の「革新中心地[4]」となり、中世ヨーロッパでもっともと多くの大学を持っていた[5]フランス大革命の前では、これらの教会学校はすでにフランス政府の下の行政機関の1つとして吸収され、パリ大学などの名門大学は独自性の高い「人文学」を重視するようになった[6]。こうしたフランス人はますます「革新的な性格」になるようとなり、ほかの欧州諸国よりも早く、キリスト教の教義の認知から解放されていた。当時のフランス人は、とある聖書の文章を解読するさいには、わざわざ教会が教えた教義を避け、理性哲学の思考でその文章の真実性を判断する傾向があった[7]

近代

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近代には「贅沢さ」と「勇敢さ」の2つの特徴が生まれ、現代に至るフランス人に対するステレオタイプは、この時代に形成されていた。

フランス文化の中の贅沢さは主に1718世紀にかけて形成され、その始まりはフランス王・ルイ14世であった[8][9][10]。ルイ14世はボルボン朝の統治下のフランス王室は絢爛豪華な生活スタイルを過ごし、それを意図的に外部へ誇示し続けることにより、ほかのヨーロッパの王家はフランスを非常に羨ましがるようとなった。徐々に、フランス製品やフランス式のモノが欧州最高級だとみなされ、フランス語も急速に「宗教専用のラテン語」を切り替え、欧州貴族たちの間で話している「上流社会の専用語」として定着していた[11]。当時の高等教育を受けた大学生思想家外交官音楽家たちは、標準的なフランス語で話せることを非常に誇りにしていた[12]

一方で、フランス文化の中の勇敢さは「フランス大革命」から生まれ、現代のフランス社会で頻繁に見られる企業へのストライキや、政府への抗議デモはこの革命がルーツになっている[13][14][15][16][17]。革命の過程で、中世の革新的な思想はさらに開花し、「人権平等理性科学尊重」などの用語とその意味がフランス語を通じてヨーロッパ全土に広まっていた。最初は上流貴族だけが影響を受けていたが、フランス語の持つ高級感から市民階級も主動的にこれらの用語に関心を持つようになった。また、市民階級は商業活動を通じて、知らず知らずのうちに平等主義の概念を拡散させており、最終的には一般の農民階級でも理解するようになった[18][19]。こうして革命精神は西欧全体に深く浸透していた。東欧はそれほどでは無いが、ロシアポーランドの知識人も一定の影響を受けていて[20][21]、フランス文化は「欧州や西洋人の思想的進歩」に大きく貢献していた。

現代

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二次大戦後、フランス政府はフランス文化を全国民に無料・無制限に継承させるため、またはフランス人の小学生に正しいフランス文化を接触させるために、1959年で専門の「文化省」を創設した[22]。この省は教育省の管轄下でつとめており、とくにフランス国内の文化活動を重点的に力を入れ、国内における様々な文化の歴史や保存方法を収集・整理・普及させることを最優先としている。何故というなら、フランス人は「本国の文化が十分に優れていれば、外国人は自然と学びに来る」という考え方があり、お金を海外への文化輸出に投入することよりも、しっかり本国の文化商売に投入しているのほうが有益的である[23][24]

実は「文化(Culture)」という言葉の語源はフランス語ではなく、ドイツ語の「Kultur[25]」から来ており、当初ことの言葉は「文化」と「文明」を区別していなかった[26]。しかし、フランス人は文化の意味を別の方向へ解釈させ、1つの国の国民性・建築・美術・工芸・美食・政治・歴史などに結びつけることにより、現代の「文化」という概念を創った[27]。英語圏における「culture」という概念も、ドイツから来たではなくフランスから受け継がれているとされる。

そして、アンドレ・マルローのように国務秘書を兼任する文化大臣が多く、彼らは退任後で地方自治体に移り、フランス大区での文化発展に貢献しつづけるのが一般的である。文化を推す施設としては、ルーヴル美術館ヴェルサイユ宮殿などの博物館、フランス国立図書館のような図書館、そしてフランスの建築様式(エッフェル塔エトワール凱旋門)、工芸品、香水などがあり、これらはフランス文化は如何に活発であるかを示している。現代では、前衛的な芸術・文学・現代建築などがフランス政府から強い支持を受けていて、ただ実験的の段階で止まるモノでさえも政府の資金補助を引き取ることができる[28]

脚注

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  1. ^ Mandel, Eléonore (2012). “The French culturalist way: an interpretative approach on ‘national culture'” (英語). M@n@gement 15 (4): 441–451. doi:10.3917/mana.154.0441. https://shs.cairn.info/revue-management-2012-4-page-441?lang=fr. 
  2. ^ Culture and its statistics: a glance at French experience”. unesdoc.unesco.org. UNESDOC. 2024年8月24日閲覧。
  3. ^ ブルターニュの歴史” (英語). ル ブルターニュ (LE BRETAGNE). 2024年8月24日閲覧。
  4. ^ 田中 建彦 (2005). (日本語)大学の起源と学問の自由 (長野県看護大学紀要) 1: 93-100. https://dl.ndl.go.jp/view/prepareDownload?itemId=info%3Andljp%2Fpid%2F8243827&contentNo=1. 
  5. ^ France - Religion, Catholicism, Monasteries | Britannica” (英語). www.britannica.com (2024年8月24日). 2024年8月24日閲覧。
  6. ^ The French Revolution and the Catholic Church | History Today”. www.historytoday.com. 2024年8月24日閲覧。
  7. ^ France - Revolution, Monarchy, Enlightenment | Britannica” (英語). www.britannica.com (2024年8月24日). 2024年8月24日閲覧。
  8. ^ Lesso, Rosie. “Louis XIV: King of High Fashion” (英語). the thread. 2024年8月24日閲覧。
  9. ^ Chrisman-Campbell, Kimberly (2015年9月1日). “King of Couture: How Louis XIV Invented Fashion as We Know It” (英語). The Atlantic. 2024年8月24日閲覧。
  10. ^ 1790-1799 | Fashion History Timeline” (英語). fashionhistory.fitnyc.edu. 2024年8月24日閲覧。
  11. ^ Maza, Sarah (1997). “Luxury, Morality, and Social Change: Why There Was No Middle-Class Consciousness in Prerevolutionary France”. The Journal of Modern History 69 (2): 199–229. doi:10.1086/245486. ISSN 0022-2801. https://www.jstor.org/stable/10.1086/245486. 
  12. ^ History of France - France, 1715–89 | Britannica” (英語). www.britannica.com (2024年7月12日). 2024年8月24日閲覧。
  13. ^ 外務省 海外安全ホームページ|現地大使館・総領事館からの安全情報 履歴”. www.anzen.mofa.go.jp. 2024年8月24日閲覧。
  14. ^ フランスに見る、世界を変えた「市民」の力。未来に向けて行動する若者たち | 電通総研”. 電通総研 Quality of Societyセンター (2022年6月6日). 2024年8月24日閲覧。
  15. ^ 「自分を責めない」フランス人の労働観と健康観 | 現代フランス健康事情”. 毎日新聞「医療プレミア」. 2024年8月24日閲覧。
  16. ^ 最近のストライキの特徴と動向(フランス:2024年3月)|労働政策研究・研修機構(JILPT)”. www.jil.go.jp. 2024年8月24日閲覧。
  17. ^ なぜ「パリは燃えている」のか? フランス「黄色いベスト運動」と沈黙の国・ニッポンのコントラスト - 政治・国際 - ニュース”. 週プレNEWS[週刊プレイボーイのニュースサイト] (2018年12月28日). 2024年8月24日閲覧。
  18. ^ Citot, Vincent (2012). “Pour en finir avec quelques poncifs sur l'égalité (les dangers de l'égalitarisme en matière culturelle, économique et politique)” (フランス語). Le Philosophoire 37 (1): 133–185. doi:10.3917/phoir.037.0133. ISSN 1283-7091. https://shs.cairn.info/revue-le-philosophoire-2012-1-page-133?lang=fr. 
  19. ^ Buitron, Natalia; Steinmüller, Hans (2020-12-16). “Les fins de l’égalitarisme” (フランス語). L’Homme. Revue française d’anthropologie (236): 5–44. doi:10.4000/lhomme.37923. ISSN 0439-4216. https://journals.openedition.org/lhomme/37923. 
  20. ^ Malik, Matheo (2024年5月12日). “Les intellectuels russes entre les deux Occidents” (フランス語). Le Grand Continent. 2024年8月24日閲覧。
  21. ^ Bret, Cyrille (2020年1月16日). “Entre russophilie et russophobie, le cœur de la France balance” (フランス語). Slate.fr. 2024年8月24日閲覧。
  22. ^ 株式会社 シィー・ディー・アイ (平成 30 年3月). “諸外国における文化政策等の比較調査研究事業”. 文化庁委託事業 (文化庁) 1: 114‐139. 
  23. ^ 奥 純 (1922年). “ポール・クローデル関大講演再考”. 『千里山学報』 (関西大学) 1 (2): 2-13. https://www.kansai-u.ac.jp/nenshi/issue/pdf/27-1.pdf. 
  24. ^ “フランス語人になるための最初の一歩”. 【フランス語】 教育 1: 1-5. (2016). https://www.rdche.hit-u.ac.jp/wp-content/themes/daigaku-kyoiku2018/download/education/3-1_%E3%83%95%E3%83%A9%E3%83%B3%E3%82%B9%E8%AA%9E%E3%80%90%E9%81%B8%E6%8A%9E%E6%A1%88%E5%86%85%E3%80%91.pdf. 
  25. ^ kultur の意味、語源・英語語源辞典・etymonline”. www.etymonline.com. 2024年8月24日閲覧。
  26. ^ 「文化」という語の意味をめぐって——語義の変化を捉えるということ”. 人文学部日本文化学科オリジナルサイト | 明星大学 人文学部 日本文化学科. 2024年8月24日閲覧。
  27. ^ Translations, Day (2019年10月28日). “10 Interesting Traditions in French Culture” (英語). Day Translations Blog. 2024年8月24日閲覧。
  28. ^ 今日のフランス | フランス情報メディアのET TOI(エトワ)” (2022年12月16日). 2024年8月24日閲覧。

関連項目

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