ヤセムツ科学名Epigonidae)は、スズキ目スズキ亜目に所属する魚類の分類群の一つ。ヤセムツなど、深海魚を中心に7属43種が含まれる[1]

ヤセムツ科
ヤセムツ属の1種 Epigonus pandionis
分類
: 動物界 Animalia
: 脊索動物門 Chordata
亜門 : 脊椎動物亜門 Vertebrata
: 条鰭綱 Actinopterygii
亜綱 : 新鰭亜綱 Neopterygii
上目 : 棘鰭上目 Acanthopterygii
: スズキ目 Perciformes
亜目 : スズキ亜目 Percoidei
: ヤセムツ科 Epigonidae
英名
Deepwater cardinalfishes
下位分類
本文参照

分布・生態 編集

ヤセムツ科の魚類はすべて海水魚で、インド洋太平洋大西洋など、世界中の海に幅広く分布する[1]。主な生息域は外洋の深海で、大陸棚海山の周辺にかけて分布し、しばしば中層にも進出する[2][3]。ほとんどの仲間は水深200~1,000mの中深層で暮らし、稚魚は中層で、成魚は海底と密接に関連した生活を送る種類が多い[2]

一部の大型種は食用とされることもあるが[2]、漁獲対象として利用されることは一般にほとんどない[3]

形態 編集

ヤセムツ科の仲間はやや細長く、円筒形あるいは紡錘形の体型をもつ[4]。体長10-20cm程度の種類が多いが、最大種では約58cmに達する[1]。眼は大きく発達する[3]

背鰭は2つで互いの間隔は離れ、第1背鰭の棘条は7-8本であるなど、一般形態は近縁のテンジクダイ科と類似する[1]椎骨の数が両グループの鑑別点の一つとなっており、テンジクダイ類の24個に対しヤセムツ科魚類は25個である[1]

背鰭と臀鰭の軟条部はに覆われる[1]。前上顎骨の突起は退化的で、もたない場合もある[1]。トゲメオキムツ属(1種のみを含む)は鰓蓋骨に3本のトゲをもち、ハタ科魚類との類似が指摘されている[1]

分類 編集

ヤセムツ科にはNelson(2016)の体系において7属43種が認められている[1]。本科はかつてテンジクダイ科の一亜科として分類されていたが[5]、近年ではJohnson(1984)の見解に従い独立のとして扱われるようになっている[6][7]

 
マルトゲスミクイウオ Rosenblattia robusta (マルトゲスミクイウオ属)。南半球に幅広く分布する中層遊泳性の深海魚[2]
 
ヒラヤセムツ Epigonus atherinoides (ヤセムツ属)。太平洋の外洋に分布し、海山の周辺から記録されている[4]
 
ヤセムツ属の1種(Epigonus lenimen)。インド太平洋の水深530-820mに分布する[2]
 
ヤセムツ属の1種(Epigonus occidentalis)。メキシコ湾カリブ海の深海に産する種類
 
ヤセムツ属の1種(Epigonus telescopus)。本科中の最大種。主に北大西洋に生息し、食用として利用されることもある[2]

出典・脚注 編集

  1. ^ a b c d e f g h i 『Fishes of the World Fifth Edition』 pp.434-435
  2. ^ a b c d e f Epigonidae”. FishBase. 2016年4月16日閲覧。
  3. ^ a b c 『日本の海水魚』 p.288
  4. ^ a b 『日本の海水魚』 pp.306-307
  5. ^ 『Fishes of the World Second Edition』 p.289
  6. ^ 『日本産魚類検索 全種の同定 第三版』 pp.865-866, 1986-1987
  7. ^ 『Fishes of the World Fourth Edition』 pp.356-357
  8. ^ 日本産魚類の追加種リスト”. 日本魚類学会. 2016年4月16日閲覧。
  9. ^ 『深海魚 暗黒街のモンスターたち』 p.95

参考文献 編集

外部リンク 編集