伊予鉄道610系電車(いよてつどう610けいでんしゃ)は、伊予鉄道の鉄道線用電車

伊予鉄道610系電車
4両編成で運用中の610系(2006年6月)
基本情報
製造所 アルナ工機
主要諸元
編成 2両編成2本(MT比1M1T)
軌間 1,067 mm
電気方式 直流 600/750 V
架空電車線方式
最高運転速度 65 km/h
設計最高速度 80 km/h
編成定員 260 人
車両定員 130 人
車両重量 32t
全長 18,000 mm
全幅 2,779 mm
全高 4,079 mm
台車 住友金属工業製FS340 FS340(改)
主電動機 直流直巻電動機
東洋電機製造製TDK-824
主電動機出力 75 kW / 基
駆動方式 平行カルダン
歯車比 6.06
編成出力 300kW
制御装置 抵抗制御
日立製作所製MMC-HTB-20B
制動装置 HSC-D電磁直通ブレーキ発電ブレーキ
保安装置 ATS
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非冷房車で老朽化の進んだ600系の置き換え用として、1995年アルナ工機で2両編成2本(4両)が製造された。中古車の転入が多かった中で久々の自社発注車であった。

編成は制御電動車のモハ610形と制御付随車のクハ660形から構成される。

車両概要 編集

車体 編集

東武鉄道20000系に準じたステンレス製構体を用いる3扉・18m級車体であるが、前面は独自デザインの普通鋼製であり、白色を基調とする塗装が施されている。窓下には伊予鉄道のシンボルカラーである濃淡オレンジの帯を配しており、後にこれをベースとし、地色をクリーム色とした車体塗装が700系800系に採用された。

「東武20000系の注文流れの構体を流用した」との意見もあるが、伊予鉄では否定している。東武20000系の構体とは車体裾の絞りや天井肩部分などに相違があるほか、車体幅についても東武20000系より狭くなっている[1]

車内の座席はロングシートで、伊予鉄道の鉄道車両で初めて車椅子スペース優先座席が設置された。

冷房装置は、伊予鉄道の標準である三菱電機集約分散式CU127R(冷凍能力10,500kcal/h)を1両につき3基搭載する。運転室背面の仕切り構造は大阪市営地下鉄を走行する大阪市交通局66系北大阪急行電鉄8000形などと共通である。

機器 編集

700系とほぼ同一のものである。すなわち制御装置は、京王5000系の発生品である日立製作所製MMC-HTB-20Bを使用している。京王5000系は1台の制御装置で8個の主電動機を制御する1C8M方式であったが、架線電圧京王線の1,500Vと異なり600Vまたは750Vであることから、1台の主制御器で4個の主電動機(75kW×4)を制御する1C4M方式である。

台車は、東武2000系の発生品である住友金属工業製FS340形を装着する。

制動装置は発電ブレーキ併用電磁直通ブレーキ (HSC-D) である。ただし、発電ブレーキは使用しないこともある。

集電装置は新品で、東洋電機製造製PT-7107-T型シングルアーム式パンタグラフをモハ610形に1基搭載する。

連結器は700系と同様の密着連結器を装備している。 このため、700系や800系中間車とも併結が可能であるが、実際に併結して運用されたことはない。

運用 編集

平日ダイヤでは松山市6時50分発(留置線の都合により2番のりばから発車)横河原行きに2本併結の4両編成で運用され、横河原7時25分発高浜行きとして折り返す。高浜線古町駅以北はホーム有効長の関係で4両編成は入線が不可能であることから、古町で後部2両を解結し、前部2両が高浜行となる。また、大手町駅のホーム有効長は3両分であることから、松山市到着後に横河原側の1両分をドアカットする。

その後、松山市偶数時0分発・偶数時15分発の高浜線 - 横河原線運用に充当される。ただし、検査などで古町駅で車両入れ替えを行う場合はこの限りでない。

日曜・祝日ダイヤでは2006年9月まで郡中線での固定運用となっていたが、その後は平日と同様に高浜線 - 横河原線運用に充当されている。

2018年に全車が新塗装化(橙色一色化)された。

2020年8月22日より定期運用では14年ぶり、代走運用を含めると2010年8月8日以来10年ぶりに郡中線での運用が再開された。また2023年11月のダイヤ改正で郡中線減便とともに全車両3両編成化が行われたことにより、610系の郡中線での運用は消滅した。

 
610系第二編成。新塗装化で全身オレンジ色になった。また当編成は梅津寺駅前にあるみきゃんパークのラッピングが施されている。(2023年4月 梅津寺駅)

なお、2025年2月より7000系を投入し、700系を淘汰することが発表されたが、本系列は代替対象から外されている[2]

脚注 編集

  1. ^ ついにやります!伊予鉄道オリジナル車両 610系のひみつ IYOTETSU, Iyo Railways, Matsuyama EHIME JAPAN - 【伊予鉄公式】いよ子の鉄道クラブ IYOTETSU Official Channel (2021年4月28日)
  2. ^ 67年ぶり!? 伊予鉄が中古じゃない「完全新設計の新型車」導入のワケ 既存3車種はどうなる?”. 乗りものニュース (2023年11月15日). 2023年11月17日閲覧。