円分体 (えんぶんたい、英 : cyclotomic field ) は、有理数 体に、1 の
m
(
>
2
)
{\displaystyle m(>2)}
乗根
ζ
(
≠
±
1
)
{\displaystyle \textstyle \zeta (\neq \pm 1)}
を添加した代数体 である。円分体およびその部分体 のことを円体 ともいう。
以下において、特に断らない限り、
ζ
n
=
e
2
π
i
/
n
{\displaystyle \zeta _{n}=e^{2\pi i/n}}
とする。
3 以上の整数 m に対して、円分体
Q
(
ζ
m
)
{\displaystyle \textstyle \mathbb {Q} (\zeta _{m})}
の拡大次数
[
Q
(
ζ
m
)
:
Q
]
{\displaystyle \textstyle [\mathbb {Q} (\zeta _{m}):\mathbb {Q} ]}
は、
φ
(
m
)
{\displaystyle \textstyle \varphi (m)}
である。但し、
φ
(
n
)
{\displaystyle \textstyle \varphi (n)}
はオイラー関数 である。
任意の円分体は、ガロア拡大体 であり、ガロア群 は、アーベル群 である。
3 以上の整数 m に対して、
m
=
p
1
e
1
⋯
p
r
e
r
{\displaystyle \textstyle m=p_{1}^{e_{1}}\cdots p_{r}^{e_{r}}}
(
p
1
,
…
,
p
r
{\displaystyle \textstyle p_{1},\ldots ,\ p_{r}}
は、相異なる素数 、
e
1
,
…
,
e
r
≧
1
)
{\displaystyle \textstyle e_{1},\ldots ,e_{r}\geqq 1)}
と素因数分解 すると、
Q
(
ζ
m
)
{\displaystyle \mathbb {Q} (\zeta _{m})}
は、
Q
(
ζ
p
1
e
1
)
,
…
,
Q
(
ζ
p
r
e
r
)
{\displaystyle \mathbb {Q} (\zeta _{p_{1}^{e_{1}}}),\ldots ,\ \mathbb {Q} (\zeta _{p_{r}^{e_{r}}})}
の合成体 であり、
Gal
(
Q
(
ζ
m
)
/
Q
)
≅
(
Z
/
m
Z
)
×
≅
(
Z
/
p
1
e
1
Z
)
×
×
⋯
×
(
Z
/
p
r
e
r
Z
)
×
{\displaystyle \operatorname {Gal} (\mathbb {Q} (\zeta _{m})/\mathbb {Q} )\cong (\mathbb {Z} /m\mathbb {Z} )^{\times }\cong (\mathbb {Z} /p_{1}^{e_{1}}\mathbb {Z} )^{\times }\times \cdots \times (\mathbb {Z} /p_{r}^{e_{r}}\mathbb {Z} )^{\times }}
が成立する。また、円分体
Q
(
ζ
m
)
{\displaystyle \textstyle \mathbb {Q} (\zeta _{m})}
で分岐する有理素数[ 注釈 1] は、
p
1
,
…
,
p
r
{\displaystyle \textstyle p_{1},\ldots ,\ p_{r}}
に限る。
Q
(
ζ
m
)
∩
R
=
Q
(
ζ
m
+
1
/
ζ
m
)
{\displaystyle \textstyle \mathbb {Q} (\zeta _{m})\cap \mathbb {R} =\mathbb {Q} (\zeta _{m}+1/\zeta _{m})}
である。この
Q
(
ζ
m
+
1
/
ζ
m
)
{\displaystyle \textstyle \mathbb {Q} (\zeta _{m}+1/\zeta _{m})}
を、最大実部分体 または実円分体 という。
一意分解整域 となる円分体
Q
(
ζ
m
)
{\displaystyle \textstyle \mathbb {Q} (\zeta _{m})}
(
m
≢
2
(
mod
4
)
{\displaystyle \textstyle (m\not \equiv 2{\pmod {4}}}
)[ 注釈 2] は、m が 3, 4, 5, 7, 8, 9, 11, 12, 13, 15, 16, 17, 19, 20, 21, 24, 25, 27, 28, 32, 33, 35, 36, 40, 44, 45, 48, 60, 84 の場合だけである。
特に、23 以上の素数 p に対しては、円分体
Q
(
ζ
p
)
{\displaystyle \textstyle \mathbb {Q} (\zeta _{p})}
は一意分解整域でない。
類数 が 2 である円分体
Q
(
ζ
m
)
{\displaystyle \textstyle \mathbb {Q} (\zeta _{m})}
(
m
≢
2
(
mod
4
)
{\displaystyle \textstyle (m\not \equiv 2{\pmod {4}}}
) は、m = 39, 56 だけである。
円分体
Q
(
ζ
m
)
{\displaystyle \textstyle \mathbb {Q} (\zeta _{m})}
に含まれる代数的整数 の集合は、
Z
[
ζ
m
]
{\displaystyle \textstyle \mathbb {Z} [\zeta _{m}]}
である。
m を 3 以上の整数として、円分体を
K
=
Q
(
ζ
m
)
{\displaystyle \textstyle K=\mathbb {Q} (\zeta _{m})}
とする。
(1) m が素数のとき
K の判別式 は、
(
−
1
)
(
m
−
1
)
/
2
m
m
−
2
{\displaystyle (-1)^{(m-1)/2}m^{m-2}}
である。
(2)
m
=
p
h
{\displaystyle m=p^{h}}
(p は素数、h は 2 以上の整数)のとき
K の判別式は、
ε
p
p
h
−
1
(
h
(
p
−
1
)
−
1
)
{\displaystyle \textstyle \varepsilon p^{p^{h-1}(h(p-1)-1)}}
である。但し、
ε
=
{
−
1
(
p
=
h
=
2
,
or
p
≡
3
(
mod
4
)
)
,
+
1
(
p
=
2
,
h
≧
3
,
or
p
≡
1
(
mod
4
)
)
.
{\displaystyle \varepsilon ={\begin{cases}-1&(p=h=2,{\mbox{ or }}p\equiv 3{\pmod {4}}),\\+1&(p=2,\,h\geqq 3,{\mbox{ or }}p\equiv 1{\pmod {4}}).\end{cases}}}
(3)
m
=
p
1
e
1
⋯
p
r
e
r
{\displaystyle \textstyle m=p_{1}^{e_{1}}\cdots p_{r}^{e_{r}}}
(
r
≧
2
,
p
1
,
…
,
p
r
{\displaystyle \textstyle r\geqq 2,\ p_{1},\ldots ,\ p_{r}}
は相異なる素数、
e
1
,
…
,
e
r
≧
1
)
{\displaystyle \textstyle e_{1},\ldots ,e_{r}\geqq 1)}
であるときには
円分体
Q
(
ζ
p
i
e
i
)
{\displaystyle \textstyle \mathbb {Q} (\zeta _{p_{i}^{e_{i}}})}
の判別式を
D
i
{\displaystyle D_{i}}
とすると、
K の判別式は、
∏
i
=
1
r
D
i
φ
(
m
)
/
φ
(
p
i
e
i
)
{\displaystyle \prod _{i=1}^{r}D_{i}^{\varphi (m)/\varphi (p_{i}^{e_{i}})}}
である。
クロネッカー=ウェーバーの定理 (Kronecker-Weber's theorem)
K が有理数体上のアーベル拡大体 のとき、ある整数
m
≧
3
{\displaystyle \textstyle m\geqq 3}
が存在して、
K
⊂
Q
(
ζ
m
)
{\displaystyle K\subset \mathbb {Q} (\zeta _{m})}
となる。
例えば、二次体 はアーベル拡大体であるので、クロネッカー=ウェーバーの定理より、ある円分体の部分体になる。
クロネッカー=ウェーバーの定理は、基礎体が有理数体であるときを考えているが、基礎体を虚二次体 にしたときも、同様なことが成立するかを問うたのが、クロネッカーの青春の夢 である。
素数 p に対して、
x
p
+
y
p
=
z
p
{\displaystyle x^{p}+y^{p}=z^{p}}
の左辺を、
Q
(
ζ
p
)
{\displaystyle \textstyle \mathbb {Q} (\zeta _{p})}
上で分解すると、
(
x
+
y
)
(
x
+
ζ
p
y
)
⋯
(
x
+
ζ
p
p
−
1
y
)
=
z
p
{\displaystyle (x+y)(x+\zeta _{p}y)\cdots (x+\zeta _{p}^{p-1}y)=z^{p}}
となる。
ラメ (G. Lamé)、コーシー (A. Cauchy)らは、上記左辺を考察し、フェルマーの最終定理が成立することを証明したと発表した。しかし、クンマー (E. E. Kummer)は、彼らの証明は、左辺の分解が一意的である ことが前提になっており、
p
=
23
{\displaystyle p=23}
のとき、それが成立しないことを示した。
そのため、
p
=
23
{\displaystyle p=23}
(円分体の性質 にある様に、23 以上の全ての素数) の場合、別の方法をとる必要がある。
クンマーは、素元の分解が一意でなくとも、ある性質をもつ素数である場合、彼らの証明のアイデアを生かしながら、フェルマーの最終定理が成立することを証明した。
クンマーにより考察された素数は、以下の性質を持ち、正則素数 と呼ばれる。
素数 p は、円分体
Q
(
ζ
p
)
{\displaystyle \textstyle \mathbb {Q} (\zeta _{p})}
の類数 を割り切らない。
正則素数に対しては、以下の補題が成立し、クンマーは、この補題を用いて、ベキが正則素数の場合のフェルマーの最終定理を証明した。
クンマーの補題
素数 p が正則素数であれば、円分体
Q
(
ζ
p
)
{\displaystyle \textstyle \mathbb {Q} (\zeta _{p})}
の単数 ε を、
ε
≡
a
(
mod
(
1
−
ζ
p
)
p
)
{\displaystyle \textstyle \varepsilon \equiv a\ (\operatorname {mod} \ (1-\zeta _{p})^{p})}
となる有理整数 a が存在するようにとると、
Q
(
ζ
p
)
{\displaystyle \textstyle \mathbb {Q} (\zeta _{p})}
の単数
ε
0
{\displaystyle \textstyle \varepsilon _{0}}
が存在して、
ε
=
ε
0
p
{\displaystyle \textstyle \varepsilon =\varepsilon _{0}^{p}}
と表される。
正則素数についての詳細は、正則素数 を、フェルマーの最終定理については、フェルマーの最終定理 を参照のこと。
ガウス (C. F. Gauss)は、今日、ガウス和と呼ばれる1のベキ根の指数和を考察することにより、平方剰余の相互法則 、第1補充法則 、第2補充法則 を示した[ 注釈 3] 。さらに、
Q
(
ζ
3
)
,
Q
(
ζ
4
)
{\displaystyle \textstyle \mathbb {Q} (\zeta _{3}),\ \textstyle \mathbb {Q} (\zeta _{4})}
上のガウス和を考察することで、3次、4次剰余の相互法則を得ることができる。クンマーは、円分体に対する深い考察により、高次のベキの剰余に関する相互法則を与えた。
高次ベキの剰余の相互法則は、その後、フルトヴェングラー (P. Furtwängler)により全ての素数に対して与えられ、さらに、類体論 の結果を用いて、高木 、アルティン (E. Artin)、ハッセ (H. Hasse)らにより、より一般の形での相互法則が得られた。
以下において、p を奇素数とする。
円分体
Q
(
ζ
m
)
{\displaystyle \textstyle \mathbb {Q} (\zeta _{m})}
の類数を
h
(
m
)
{\displaystyle h(m)}
、最大実部分体
Q
(
ζ
m
+
1
/
ζ
m
)
{\displaystyle \textstyle \mathbb {Q} (\zeta _{m}+1/\zeta _{m})}
の類数を
h
2
(
m
)
{\displaystyle h_{2}(m)}
とすると、
h
(
m
)
=
h
1
(
m
)
h
2
(
m
)
{\displaystyle h(m)=h_{1}(m)h_{2}(m)}
(
h
1
(
m
)
{\displaystyle h_{1}(m)}
は有理整数)と表すことができる。
このとき、
h
1
(
m
)
{\displaystyle h_{1}(m)}
を第1因子 または相対類数 、
h
2
(
m
)
{\displaystyle h_{2}(m)}
を第2因子 または実類数 という。
第1因子については、以下の様な性質がある。
素数 p に対して、p が
h
(
p
)
{\displaystyle h(p)}
を割り切る必要十分条件は、p が第1因子を割り切ることである。
つまり、第1因子が p で割り切れないならば、p は正則素数である。
この性質により、第1因子はフェルマーの最終定理との関連で多くの研究がなされている。
素数 p に対して、p が第1因子を割り切る必要十分条件は、
p
2
{\displaystyle p^{2}}
が、
∑
j
=
1
p
−
1
j
2
k
{\displaystyle \textstyle \sum _{j=1}^{p-1}j^{2k}}
を割り切る様な整数 k
(
1
≦
k
≦
(
p
−
3
)
/
2
)
{\displaystyle \textstyle (1\leqq k\leqq (p-3)/2)}
が存在することである。
h
1
(
p
)
{\displaystyle h_{1}(p)}
が奇数であるならば、
h
2
(
p
)
{\displaystyle h_{2}(p)}
は奇数である。
クンマーは、第1因子の増大度に対して、
lim
p
→
∞
h
1
(
p
)
/
γ
(
p
)
=
1
{\displaystyle \textstyle \lim _{p\to \infty }h_{1}(p)/\gamma (p)=1}
と予想した。
但し、
γ
(
p
)
=
p
(
p
+
3
)
/
4
/
(
2
(
p
−
3
)
/
2
π
(
p
−
1
)
/
2
)
{\displaystyle \textstyle \gamma (p)=p^{(p+3)/4}/(2^{(p-3)/2}\pi ^{(p-1)/2})}
。[ 注釈 4]
この予想が成立するかは不明であるが、例えば、以下のことが知られている。
lim
p
→
∞
log
(
h
1
(
p
)
/
γ
(
p
)
)
log
p
=
0
{\displaystyle \lim _{p\to \infty }{\frac {\log(h_{1}(p)/\gamma (p))}{\log p}}=0}
。
第2因子に対しては、以下の様な性質がある。第1因子よりも取り扱いが難しいため、第2因子の性質はあまり分かっていない。
q を素数とし、
n
>
1
{\displaystyle n>1}
とする。
p
=
(
2
q
m
)
2
+
1
{\displaystyle p=(2qm)^{2}+1}
が素数であるならば、
h
2
(
p
)
>
2
{\displaystyle h_{2}(p)>2}
である。
ヴァンディヴァー (H. S. Vandiver)は、p は
h
2
(
p
)
{\displaystyle h_{2}(p)}
を割り切らないと予想した(ヴァンディヴァー予想 )。現在でも、この予想が正しいかは不明である。
円分体の類数を求めるには、
h
(
m
)
=
h
1
(
m
)
h
2
(
m
)
{\displaystyle h(m)=h_{1}(m)h_{2}(m)}
より、第1因子と第2因子を求めればよい。[ 注釈 5]
第1因子
h
1
(
m
)
=
δ
(
2
m
)
1
2
φ
(
m
)
−
1
∏
χ
∈
S
∑
n
=
1
m
−
1
χ
(
n
)
n
{\displaystyle h_{1}(m)={\frac {\delta }{(2m)^{{\frac {1}{2}}\varphi (m)-1}}}\prod _{\chi \in S}\sum _{n=1}^{m-1}\chi (n)n}
。
ここで、
δ
=
{
1
(
m
≢
0
(
mod
4
)
)
,
1
2
(
m
≡
0
(
mod
4
)
)
,
{\displaystyle \delta ={\begin{cases}1&(m\not \equiv 0{\pmod {4}}),\\{\frac {1}{2}}&(m\equiv 0{\pmod {4}}),\end{cases}}}
S は、
χ
(
−
1
)
=
−
1
{\displaystyle \chi (-1)=-1}
を満たす、法 m に関する指標 の集合とする。
特に、m が素数 p の場合、以下の形で表される。
h
1
(
p
)
=
1
(
2
p
)
(
p
−
3
)
/
2
|
∏
χ
∈
S
∑
k
=
1
p
−
1
χ
(
k
)
k
|
{\displaystyle h_{1}(p)={\frac {1}{(2p)^{(p-3)/2}}}\left|\prod _{\chi \in S}\sum _{k=1}^{p-1}\chi (k)k\right|}
。
m が素数のとき、以下の様な式がある。
h
1
(
p
)
=
1
(
2
p
)
(
p
−
3
)
/
2
|
G
(
η
)
G
(
η
2
)
⋯
G
(
η
p
−
2
)
|
{\displaystyle h_{1}(p)={\frac {1}{(2p)^{(p-3)/2}}}|G(\eta )G(\eta ^{2})\cdots G(\eta ^{p-2})|}
ここで、η は、1 の原始
p
−
1
{\displaystyle p-1}
乗根とし、
G
(
X
)
=
∑
j
=
0
p
−
2
g
j
X
j
{\displaystyle \textstyle G(X)=\sum _{j=0}^{p-2}g_{j}X^{j}}
。
但し、g を、法 p に対する原始根としたとき、
j
=
0
,
1
,
…
,
p
−
2
{\displaystyle \textstyle j=0,1,\ldots ,p-2}
に対して、
1
≦
g
j
≦
p
−
1
{\displaystyle \textstyle 1\leqq g_{j}\leqq p-1}
は、
g
j
≡
g
j
(
mod
p
)
{\displaystyle \textstyle g^{j}\equiv g_{j}\ (\operatorname {mod} \ p)}
を満たす正整数とする。
p の倍数ではない整数 r に対して、
1
≦
R
(
r
)
≦
p
−
1
{\displaystyle \textstyle 1\leqq R(r)\leqq p-1}
を、
r
≡
R
(
r
)
(
mod
p
)
{\displaystyle \textstyle r\equiv R(r)\ (\operatorname {mod} \ p)}
を満たすようにとる。
また、
1
≦
r
′
≦
p
−
1
{\displaystyle \textstyle 1\leqq r'\leqq p-1}
を、
r
r
′
≡
1
(
mod
p
)
{\displaystyle \textstyle rr'\equiv 1\ (\operatorname {mod} \ p)}
を満たすようにとる。
M
p
=
(
R
(
r
s
′
)
)
r
,
s
=
1
,
2
,
…
,
(
p
−
1
)
/
2
{\displaystyle M_{p}=(R(rs'))_{r,s=1,2,\ldots ,(p-1)/2}}
[ 注釈 6] とおくと、
h
1
(
p
)
=
1
p
(
p
−
3
)
/
2
|
det
M
p
|
{\displaystyle h_{1}(p)={\frac {1}{p^{(p-3)/2}}}|\det M_{p}|}
である。
第2因子
h
2
(
m
)
=
2
1
2
φ
(
m
)
−
1
R
∏
χ
∈
T
∑
n
=
1
[
m
−
1
2
]
χ
(
n
)
log
|
1
−
ζ
m
n
|
{\displaystyle h_{2}(m)={\frac {2^{{\frac {1}{2}}\varphi (m)-1}}{R}}\prod _{\chi \in T}\sum _{n=1}^{[{\frac {m-1}{2}}]}\chi (n)\log |1-\zeta _{m}^{n}|}
。
ここで、R は、
Q
(
ζ
m
)
{\displaystyle \textstyle \mathbb {Q} (\zeta _{m})}
の単数基準 、T は、
χ
(
−
1
)
=
1
{\displaystyle \chi (-1)=1}
を満たす、法 m に関する指標のうち、単位指標ではない指標の集合とする。
特に、m が素数 p の場合、以下の形で表される。
h
2
(
p
)
=
2
(
p
−
3
)
/
2
R
∏
k
=
1
(
p
−
3
)
/
2
|
∑
j
=
0
(
p
−
3
)
/
2
η
2
k
j
log
|
1
−
ζ
p
g
j
|
|
{\displaystyle h_{2}(p)={\frac {2^{(p-3)/2}}{R}}\prod _{k=1}^{(p-3)/2}\left|\sum _{j=0}^{(p-3)/2}\eta ^{2k^{j}}\log |1-\zeta _{p}^{g^{j}}|\right|}
。
ここで、η は、1 の原始
p
−
1
{\displaystyle p-1}
乗根、g は、法 p に対する原始根とする。
m が素数のとき、以下の様な式がある。
k
=
2
,
3
,
…
,
(
p
−
1
)
/
2
{\displaystyle \textstyle k=2,3,\ldots ,(p-1)/2}
に対して、
δ
k
=
(
1
−
ζ
p
k
)
(
1
−
ζ
p
−
k
)
(
1
−
ζ
)
(
1
−
ζ
−
1
)
{\displaystyle \delta _{k}={\sqrt {\textstyle {\frac {(1-\zeta _{p}^{k})(1-\zeta _{p}^{-k})}{(1-\zeta )(1-\zeta ^{-1})}}}}}
[ 注釈 7] とおく。
g を法 p に関する原始根とし、
δ
=
δ
g
{\displaystyle \delta =\delta _{g}}
とおく。
また、σ を、
σ
(
ζ
p
)
=
ζ
p
g
{\displaystyle \textstyle \sigma (\zeta _{p})=\zeta _{p}^{g}}
を満たす、
Gal
(
Q
(
ζ
p
)
/
Q
)
{\displaystyle \textstyle \operatorname {Gal} (\mathbb {Q} (\zeta _{p})/\mathbb {Q} )}
の生成元とする。
M
=
(
log
σ
i
+
j
(
δ
)
)
i
,
j
=
0
,
1
,
…
,
(
p
−
5
)
/
2
{\displaystyle M=(\log \sigma ^{i+j}(\delta ))_{i,j=0,1,\ldots ,(p-5)/2}}
とおくと、
h
2
(
p
)
=
2
(
p
−
3
)
/
2
R
|
det
M
|
{\displaystyle h_{2}(p)={\frac {2^{(p-3)/2}}{R}}|\det M|}
。
但し、R は、
Q
(
ζ
p
)
{\displaystyle \textstyle \mathbb {Q} (\zeta _{p})}
の単数基準とする。
^ 有理整数である素数のこと。
^
m
=
4
k
+
2
{\displaystyle m=4k+2}
としたとき、
Q
(
ζ
m
)
=
Q
(
ζ
2
k
+
1
)
{\displaystyle \textstyle \mathbb {Q} (\zeta _{m})=\mathbb {Q} (\zeta _{2k+1})}
であるので、
m
≢
2
(
mod
4
)
{\displaystyle \textstyle m\not \equiv 2{\pmod {4}}}
としてよい。
^ この証明は、ガウスによる4番目の証明である。(1805年8月30日に証明)
^
h
1
(
p
)
=
γ
(
p
)
∏
χ
∈
S
L
(
1
,
χ
)
{\displaystyle \textstyle h_{1}(p)=\gamma (p)\prod _{\chi \in S}L(1,\chi )}
が成立するので、ディリクレのL関数 の積が 1 に収束することと同値である。
^ 実際は、円分体に対して、直接類数公式 で求めるのが普通である。
^ マイレ(Maillet)の行列 という。
^ 各 δk は、
Q
(
ζ
p
)
{\displaystyle \textstyle \mathbb {Q} (\zeta _{p})}
の正の実数である単数であり、クンマー単数 または円単数 と呼ばれる。
足立恒雄 『フェルマーの大定理 整数論の源流』筑摩書房 〈ちくま学芸文庫 ア24‐1 Math & Science〉、2006年9月。ISBN 978-4-480-09012-6 。
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