北大西洋条約機構の加盟国

NATOの加盟国

北大西洋条約機構の加盟国(きたたいせいようじょうやくきこうのかめいこく、英語: Member states of North Atlantic Treaty Organization)では、北大西洋条約機構(NATO)の加盟国について解説する。

2024年現在の北大西洋条約機構加盟国(青)

北大西洋条約機構は、ヨーロッパおよび北アメリカの32か国の加盟国[1]で構成される集団防衛組織である[2]。1949年4月4日にアメリカ合衆国など原加盟国12か国が北大西洋条約に署名して発足した[3]

加盟国は域外国から攻撃を受けた場合、国連憲章第51条の規定で認められている個別的または集団的自衛権を行使し、武力行使を含む必要と思われる行動を個別または集団で行い、攻撃を受けた加盟国を支援する[4][5]。これは、北大西洋条約第5条で規定されており、武力行使およびその結果としてとったすべての措置について、直ちに国連安全保障理事会に報告するよう義務付けられている[6]

加盟国 編集

北大西洋条約機構への加盟にあたっては、北大西洋条約第10条で以下のように規定されている[7]

締約国は、全会一致で、本条約の諸原則を推進し北大西洋地域の安全保障に貢献する立場にある、他のいかなる欧州の国家をも本条約加盟へ招きいれることができる。招かれた、いかなる国家もアメリカ合衆国へ加盟文書を寄託することで本条約締約国になれる。アメリカ合衆国政府は各締約国にそのような加盟文書の寄託について通告する。 — 北大西洋条約第10条

12か国で発足した北大西洋条約機構は、冷戦期に拡大していき、1952年にギリシャトルコが加盟したのを皮切りに1955年には再軍備した西ドイツ、1982年に民主化したスペインが加盟した[8]

1991年のソビエト連邦の崩壊後、東側諸国が自国の安全保障を確実なものにするため、北大西洋条約機構への加盟を希求し、三度にわたる東方拡大が進んだ。第一次は1999年のチェコポーランドハンガリーの加盟、第二次は2004年のブルガリアエストニアラトビアリトアニアスロバキアスロベニアルーマニアの加盟、第三次は2009年のアルバニアクロアチアの加盟で、さらに2017年にモンテネグロ、2020年に北マケドニアが加盟している[9]

2022年のロシアによるウクライナ侵攻を契機に加盟国の北方拡大が進み、中立政策を掲げていたフィンランドスウェーデンがそれぞれ、2023年と2024年に加盟している[10][11]

国旗 位置 国名 首都 加盟年月日[12] 備考
    アイスランド レイキャヴィーク 1949年8月24日 原加盟国
    アメリカ合衆国 ワシントンD.C.
    アルバニア ティラナ 2009年4月1日
    イギリス ロンドン 1949年8月24日 原加盟国
    イタリア ローマ
    エストニア タリン 2004年3月29日
    オランダ アムステルダム 1949年8月24日 原加盟国
    カナダ オタワ
    北マケドニア スコピエ 2020年3月27日
    ギリシャ アテネ 1952年2月18日
    クロアチア ザグレブ 2009年4月1日
    スウェーデン ストックホルム 2024年3月7日
    スペイン マドリード 1982年5月30日
    スロバキア ブラチスラヴァ 2004年3月29日
    スロベニア リュブリャナ
    チェコ プラハ 1999年3月12日
    デンマーク コペンハーゲン 1949年8月24日 原加盟国
    ドイツ ベルリン 1955年5月6日
西ドイツ
1990年10月3日
(ドイツ)
    トルコ アンカラ 1952年2月18日
    ノルウェー オスロ 1949年8月24日 原加盟国
    ハンガリー ブダペスト 1999年3月12日
    フィンランド ヘルシンキ 2023年4月4日
    フランス パリ 1949年8月24日 原加盟国
    ブルガリア ソフィア 2004年3月29日
    ベルギー ブリュッセル 1949年8月24日 原加盟国
    ポーランド ワルシャワ 1999年3月12日
    ポルトガル リスボン 1949年8月24日 原加盟国
    モンテネグロ ポドゴリツァ 2017年6月5日
    ラトビア リガ 2004年3月29日
    リトアニア ヴィリニュス
    ルクセンブルク ルクセンブルク市 1949年8月24日 原加盟国
    ルーマニア ブカレスト 2004年3月29日

国防予算 編集

加盟国の国防予算は国内総生産英語: Gross Domestic Product、略称:GDP)2パーセント水準とするガイドラインが、2014年のウェールズ首脳会合英語版において加盟国首脳間で同意され [13]、2022年のマドリード首脳会合英語版で再確認されている[14]

2014年時点で対GDP比2パーセント水準を達成した加盟国は3か国[注 1]に留まっていたが[15]、2024年にはドイツなど18の加盟国が達成する見通しとなっている[16][17]

アメリカ合衆国とそれ以外のNATO加盟国の国防予算の比較

  アメリカ合衆国 (70.46%)
  アメリカ合衆国以外のNATO加盟国合計[注 2] (29.53%)

アメリカ合衆国とフィンランドおよびスウェーデンを除くNATO加盟国の国防予算支出総額の比較[注 3]

  ギリシャ (1.58%)
  エストニア (0.21%)
  ポルトガル (1.09%)
  モンテネグロ (0.03%)
  リトアニア (0.35%)
  ノルウェー (2.34%)
  トルコ (4.54%)
  ラトビア (0.23%)
  デンマーク (1.55%)
  クロアチア (0.35%)
  北マケドニア (0.035%)
  ルーマニア (1.64%)
  ハンガリー (0.67%)
  ブルガリア (0.35%)
  イタリア (7.99%)
  フランス (16.55%)
  ポーランド (3.91%)
  スペイン (4.29%)
  スロベニア (0.18%)
  イギリス (19.72%)
  スロバキア (0.62%)
  カナダ (7.15%)
  ドイツ (17.68%)
  オランダ (4.05%)
  その他 (2.895%)
1988年から2019年までのアメリカ合衆国の国防予算に占めるヨーロッパのNATO加盟国(トルコ除く)国防予算とロシアおよび中国の国防予算の割合[18]
ヨーロッパのNATO加盟国(トルコ除く)国防予算 ソビエト連邦/ロシア連邦の国防予算 中国の国防予算

脚注 編集

注釈 編集

  1. ^ アメリカ合衆国、イギリス、ギリシャ。
  2. ^ フィンランドおよびスウェーデン除く。
  3. ^ その他はアイスランド、アルバニア、チェコ、ベルギー、ルクセンブルク。

出典 編集

  1. ^ Swedish flag raised at NATO Headquarters” (英語). 北大西洋条約機構 (2024年3月11日). 2024年3月12日閲覧。
  2. ^ 外務省欧州局政策課、P.1
  3. ^ 村上、P.22
  4. ^ 谷口、P.2
  5. ^ 村上、P.23
  6. ^ 村上、P.24
  7. ^ 谷口、P.194
  8. ^ 村上、P.112
  9. ^ 村上、P.113 - P.114
  10. ^ フィンランド、NATOに正式加盟 31番目の加盟国に”. BBC (2023年4月5日). 2024年3月12日閲覧。
  11. ^ スウェーデン、NATO正式加盟 32カ国に拡大”. ロイター (2024年3月8日). 2024年3月12日閲覧。
  12. ^ NATO member countries” (英語). 北大西洋条約機構. 2024年3月3日閲覧。
  13. ^ Defence expenditures and NATO’s 2% guideline” (英語). 北大西洋条約機構 (2024年2月20日). 2024年3月9日閲覧。
  14. ^ 外務省欧州局政策課、P.8
  15. ^ 北大西洋条約機構 (21 March 2023). Defence expenditure of NATO countries (2014-2022) (PDF) (Report). p. 3.
  16. ^ NATO国防費目標、24年は独など18カ国達成へ”. ロイター (2024年2月15日). 2024年3月12日閲覧。
  17. ^ ドイツ、NATO国防費2%達成 冷戦終結後初”. ロイター (2024年2月14日). 2024年3月12日閲覧。
  18. ^ SIPRI Military Expenditure Database” (英語). Stockholm International Peace Research Institute. doi:10.55163/cqgc9685. 2024年1月29日閲覧。

参考文献 編集

関連項目 編集

外部リンク 編集