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友情のメダル

友情のメダル（ゆうじょうのメダル）とは、1936年（昭和11年）のベルリンオリンピック棒高跳に出場し、2位になった西田修平と3位になった大江季雄が、お互いの銀メダルと銅メダルを半分に分けて繋ぎ合わせたメダルである。このエピソードは、小学校の国語の教科書などにも掲載された。「友情メダル[1]」、「分割メダル[2]」、「友情の分割メダル[3]」、「つぎ合わせたメダル[4]」とも呼ばれる。

西田修平
大江季雄

概要 編集

1936年（昭和11年）に行われたベルリンオリンピックの棒高跳で、決勝戦の後の2・3位決定戦において西田修平と大江季雄の2人が残った。決勝戦が長引いたことと「同じ日本人だから。」という理由で2・3位決定戦が中止になった。西田は同率2位となると思っていたが、次回以降から適用されるはずのルールが採用されたことにより、西田が2位、大江が3位となった。西田はこの判定に納得せず、「前回のロサンゼルスオリンピックで銀メダルを貰ったから。」と大江を2位ということにした。帰国後、大江の兄が本来の順位を知り、西田にメダルの交換を申し出てきたため、半分に割ってそれぞれをくっつけるという案になり、「友情のメダル」が生まれた。その後、メダルを分けたという逸話が美談として新聞で取り上げられたこと等により人口に膾炙され、その逸話が小学校の国語の教科書や道徳の副読本にも掲載された。

沿革 編集

ベルリンオリンピック 編集

1936年（昭和11年）8月5日、ベルリンオリンピックの陸上競技・棒高跳の決勝戦に西田修平、大江季雄、アール・メドウス、ビル・セフトンの4人が出場する[5]。唯一4m35cmを跳んだメドウスの優勝が決まり、西田と大江の2・3位決定戦が残されたが、時間は午後9時を回っており、ドイツ人審判から「日本人同士だから」という理由で中止が提案され、西田・大江の2人が同意したため中止された[5]。西田は、記録が同じなので2人が共に2位になると思っていたが、4m25cmを西田が1回目、大江が2回目に成功したことから、翌日の表彰式では、西田が2位、大江が3位とされた[5]。西田は、試技数を順位判定の基準とするルールはベルリンオリンピックの次のオリンピックから適用されるものでベルリンオリンピックでは同記録は同順位のルールが適用されるべきであること、すでに前回のロサンゼルスオリンピックで銀メダルを取っているので銅メダルを貰い次のオリンピックで金メダルを獲得すれば金銀銅を揃えられるようになること等を理由に、表彰台では大江を2位として大江が銀メダルを受けることとした[5][6]。

帰国後 編集

大江は銀メダルを受け取り帰国したが、後に大江の兄がベルリン大会組織委員会から送られてきた賞状を見て順位の間違いに気付き、西田の銅メダルとの交換を申し出た[5][6]。両者ともに譲らず、西田は大江と相談の上、銀座の松屋百貨店で宝石店を営んでいる知り合いに依頼し、スポーツ展覧会などの出品を経て翌1937年（昭和12年）に2つのメダルを分割して繋ぎ合わせた[5][6][7]。

後年 編集

大江が第二次世界大戦で戦死し、戦後、遺族が秩父宮記念スポーツ博物館にメダルを寄贈したことや、1964年（昭和39年）の東京オリンピックが行われる前に、読売新聞運動部記者であった川本信正が友情のメダルの逸話を新聞記事に美談として取り上げたことにより、一般に知られるようになった[6][8][9]。その後、織田幹雄の文章で小学校の国語の教科書や道徳の副読本に掲載された[4][5][10]。

2016年（平成28年）12月10日、西田の母校である和歌山県立桐蔭高等学校（旧・和歌山中学校）と、大江の母校である京都府立西舞鶴高等学校（旧・京都府立舞鶴中学校）の生徒たちが交流し、桐蔭高等学校は記念の盾、西舞鶴高等学校は友情のメダルのレプリカをそれぞれ贈った[11]。

所蔵 編集

それぞれの友情のメダルは、西田が所有していたものは早稲田大学大学史資料センターに[12]、大江が所有していたものは秩父宮記念スポーツ博物館に所蔵されている[9][13]。

展示 編集

関連文書 編集

脚注 編集

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  1. ^ 「その後 西田と大江 比島に散る 友情メダル」『読売新聞』、1959年7月26日、15面。
  2. ^ 「祖国に捧げた責任感 世界に印象づけた“友情” 棒高の大江」『読売新聞』、1942年11月19日、3面。
  3. ^ 「早大スポーツ史一堂に展示 早慶戦の毛筆「挑戦状」や友情の分割メダルも」『読売新聞』、1993年10月24日、27面。
  4. ^ a b “「友情のメダル」が載っている教科書を探している。内容は、オリンピック棒高跳びで2位と3位になった日本人選手が、銀と銅メダルを半分ずつつぎ合わせたというもの。”. レファレンス協同データベース (2008年8月7日). 2021年11月15日閲覧。
  5. ^ a b c d e f g 佐野慎輔. “西田修平・大江季雄　友情のメダル”. 笹川スポーツ財団. 2021年11月15日閲覧。
  6. ^ a b c d 第20回 西田修平・大江季雄「友情のメダル」 ～美談の真相 - オリンピック・メモリアルグッズ - JOC - ウェイバックマシン（2014年8月22日アーカイブ分）
  7. ^ 「繋ぐ友情牌　二、三等の栄誉を分つ　西田大江の美技永久に」『朝日新聞』、1937年3月26日、2面。
  8. ^ 「友情のメダル」『読売新聞』、1964年1月19日、5面。
  9. ^ a b 「銀と銅　友情のメダル」『朝日新聞』、2020年1月28日、5面。
  10. ^ “オリンピック・パラリンピック”. 早稲田大学 競技スポーツセンター. 2021年11月15日閲覧。
  11. ^ 「友情のメダル、母校つないだ　ベルリン五輪、棒高跳び銀・銅　桐蔭高と西舞鶴高」『朝日新聞』、2016年12月11日、33面。
  12. ^ a b 友情のメダル　本学に寄贈　～西田修平氏旧蔵資料寄贈式～ - ウェイバックマシン（2019年5月30日アーカイブ分）
  13. ^ “収蔵品一覧”. 秩父宮記念スポーツ博物館・図書館. 2021年11月15日閲覧。
  14. ^ 「「オリンピックメダル展」 日本橋通りで」『読売新聞』、1964年8月12日、13面。
  15. ^ 「早大スポーツ史一堂に展示 早慶戦の毛筆「挑戦状」や友情の分割メダルも」『毎日新聞』、1996年7月19日、29面。
  16. ^ 「乗馬の西、「友情のメダル」の大江… 戦場に散った選手たちの写真や遺品展示」『読売新聞』、1997年8月1日、30面。
  17. ^ 「「友情のメダル」五輪棒高跳び選手・故西田修平さん展示会」『朝日新聞』、1998年8月22日。
  18. ^ 「“死闘”ベルリン五輪棒高跳び 62年ぶりメダル再会 29日舞鶴で展示」『毎日新聞』、1998年11月18日、26面。
  19. ^ 「五輪のお宝を公開 富山市で「20世紀日本のスポーツ展」」『朝日新聞』、2000年10月12日、31面。
  20. ^ “県広報とやま 第337号” (PDF). 富山県 (2020年9月). 2021年11月15日閲覧。
  21. ^ 「ワセダに生きる「友情のメダル」 きょうから展示」『読売新聞』、2005年7月16日、29面。
  22. ^ “特別展「近代日本と慶應スポーツ」を開催（11/28-12/13）” (PDF). 慶應義塾 (2017年11月13日). 2021年11月15日閲覧。
  23. ^ “「友情のメダル」期間限定展示のお知らせ（早稲田大学歴史館）”. 早稲田文化. 早稲田大学. 2021年11月15日閲覧。
  24. ^ “特別展「オリンピック・パラリンピックと教科書」”. 福井県教育博物館　福井県教育総合研究所. 2021年11月15日閲覧。
  25. ^ “企画展「土佐人 山本忠興と近代オリンピック」” (PDF). 高知県文化財団. 2021年11月15日閲覧。
  26. ^ “高知県立歴史民俗資料館だより・岡豊風日 第112号” (PDF). 高知県文化財団 (2021年6月30日). 2021年11月15日閲覧。

関連項目 編集

外部リンク 編集

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