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四季』(しき、: Quattro stagioni, : The Four Seasons)は、ジュゼッペ・アルチンボルドが描いた一連の絵画の総称。

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作品編集

アルチンボルドは、ウィーン周辺に動物園や植物園を設立するほど自然科学に関心が高かったマクシミリアン2世に、新年の贈り物として『四季』と『四大元素』の2つの連作を捧げた。連作は相互に関係しており、『夏』は暑くて乾燥している『火』、同様に『春』と『大気』、『秋』と『大地』、『冬』と『水』がペアとなっている[1]。連作はともに大きな評判を集めたため、いくつかのバージョンが製作されている(箇条書きで示した製作年代などはそれぞれ右写真のもの)[2][3]

『春』編集

 
『春』

アルチンボルドは、庇護者の皇帝たちが収集していた珍しい動物や植物をいち早く実見し、写生することができたと考えられている。その特権を活かしつつ、地元のミラノで培った自然主義的描法を活用して、この作品を完成させた。細密に描かれた約80種類の植物は、ほぼ特定することができる[4][5]

『夏』編集

 
『夏』

新鮮な野菜やフルーツを組み合わせ、さわやかで豊かな夏をイメージさせる。肩には製作年が、襟元にはサインが記されている。新大陸からもたらされたばかりのトウモロコシやインド原産のナスなど、当時のヨーロッパでは珍しかった野菜を描き込むことによって、観る人をさらに驚かせよう、という意図があったものと考えられる[4][5][6]

  • 製作年代:1563年
  • 技法:油彩、板
  • サイズ:67×50.8cm
  • 所蔵:ウィーン、美術史美術館

『秋』編集

 
『秋』

1563年のオリジナル版は失われてしまったが、デンヴァー美術館の蔵品は現存する『秋』の中ではそれに最も近いものとされている。果実やきのこなどによって秋の恵みを表現しつつ、葡萄の頭と樽の身体でバッカス神を連想させるなど、アルチンボルドの技とユーモアが発揮されている。ルーヴル美術館の蔵品に比べて前髪の葡萄の色が濃く、全体に重厚な印象がある[3]

『冬』編集

 
『冬』

レオナルド・ダ・ヴィンチによるグロテスクなカリカチュアの影響がうかがえる。美術史美術館版の肖像のマントには、マクシミリアン2世の肖像であることを示すいくつかの証拠がある。背には、皇帝のイニシャルである「M」の文字が、襟もとには、金羊毛騎士団の紋章にみられる火打金の絵柄が織り出されている[1][7]。また、ローマ皇帝の月桂冠を彷彿とさせる頭上の枝のフォルムは、すなわち神聖ローマ帝国皇帝を暗示しているものとみられる[3]

  • 製作年代:1563年
  • 技法:油彩、板
  • サイズ:66.6×50.5cm
  • 所蔵:ウィーン、美術史美術館

ギャラリー編集

解釈編集

美術史家の小林頼子は、「連作の製作意図は、もちろん、まずは奇想を喜ぶことにあったであろう。しかし、それと同時に、ハプスブルク家による世界統治の象徴という、政治的寓意にも狙いがあったはずである。世界を構成する各基本元素を表す四大も、宇宙のめぐりに呼応する四季も、ハプスブルク家の支配が自然の構成や秩序にまで及んでいることを示唆するのである」と述べている[8]

脚注編集

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  1. ^ a b 『芸術新潮』 2017, p. 42.
  2. ^ 古川幹夫 (2017年6月19日). “アルチンボルド展”. インターネットミュージアム. 2018年9月23日閲覧。
  3. ^ a b c 『芸術新潮』 2017, p. 23.
  4. ^ a b 『芸術新潮』 2017, p. 22.
  5. ^ a b 椋田大揮 (2017年9月7日). “アルチンボルドの寄せ絵に皇帝の力を見る”. 多摩美術大学芸術学科. 2018年9月23日閲覧。
  6. ^ 福光恵 (2017年8月26日). “アルチンボルドが「寄せ絵」で表現したのは何の縮図?”. 朝日新聞社. 2018年9月23日閲覧。
  7. ^ 「アルチンボルド展」 だまし絵に隠された知的独創性”. 産経新聞社 (2017年7月2日). 2018年9月23日閲覧。
  8. ^ 『花と果実の美術館』 2010, p. 92.

参考文献編集

  • 『芸術新潮』第68巻第7号、新潮社、2017年7月。
  • 小林頼子『花と果実の美術館 名画の中の植物』八坂書房、2010年。ISBN 978-4-89694-967-4