大統領令13769号

アメリカ合衆国の大統領令

テロリストの入国からアメリカ合衆国を守る大統領令(テロリストのにゅうこくからアメリカがっしゅうこくをまもるだいとうりょうれい、英語:Protecting the Nation from Foreign Terrorist Entry into the United States)は、2017年1月27日にアメリカのドナルド・トランプ大統領が署名した大統領令である。

大統領令13769号
Executive Order 13769
テロリストの入国からアメリカ合衆国を守る大統領令
Protecting the Nation from Foreign
Terrorist Entry into the United States
Donald Trump signing the order in front of a large replica of a USAF Medal of Honor, with Mike Pence and James Mattis at his side
大統領令にサインするドナルド・トランプ大統領。左はマイク・ペンス副大統領、右はジェームズ・マティス国防長官
大統領令
署名日2017年1月27日 (2017-01-27)
適用日2017年1月27日 (2017-01-27)
管轄者国土安全保障長官
国務長官
国家情報長官
連邦捜査局長官英語版
司法長官
関連法令
1965年移民法英語版
概要
120日間(2017年5月27日まで)の難民認定プログラム英語版の効力停止
対象7カ国からの90日間(2017年4月27日まで、グリーンカード所持者英語版二重国籍者は除く)の入国拒否
シリア難民英語版の認定を永久停止
迫害にさらされている宗教の信者である場合の難民認定を優先
生態識別追跡システムの推進
その他の規定
現況:未施行
大統領令の対象となった7ヶ国

2021年1月20日、ジョー・バイデン大統領により廃止された[1]

概要編集

国外からのテロリストの入国を阻止するため、より厳格な入国審査制度の確立と、その間の難民の受け入れ及び中東アフリカの一部の国民のアメリカ合衆国への入国制限を命じる[2]。これによりアメリカ難民受け入れプログラムは120日間停止された後、個々の国ごとに再開される。イラクイランリビアソマリアスーダンイエメンの国民の入国は査証の有無に関わらず90日間禁止された後、国民の受け入れを停止する国の一覧が定められる。シリア国民の入国に関しては、ケースバイケースの例外を除いて査証の有無に関わらず無期限に停止されるが、国土安全保障省は当初の方針を変更し、永住権保持者に関しては大統領令の対象外となると発表した。

経過編集

トランプ大統領が署名した1月27日から1月29日までの期間で375人がアメリカ合衆国への入国を拒否された。この大統領令は国際的に非難を浴び、ジョン・F・ケネディ国際空港など、アメリカの主要空港で抗議デモが相次いで発生した。アメリカ自由人権協会(ACLU)は大統領令の施行を阻止するため、トランプ大統領を提訴した。アメリカ合衆国連邦裁判所ブルックリン支部が1月28日に大統領令の一部を停止したが、合憲性については判断を下さなかった。1月29日には、ボストンの裁判所が、「大統領令が無かった場合に入国できたであろう人」については拘留を禁止すると判断した。これにより、ジェネラル・エドワード・ローレンス・ローガン国際空港では禁止された7か国から来る合法な移民の入国が許可されることとなった。判決後も国土安全保障省は大統領令の全体を施行することを表明し、禁止された国々からの入国を引き続き拒否する意向を示している。28日以降も旅行者の拘留は続いていて、家族・友人に会うことや法的支援を受けることができない状況が続いた。

2月3日にはワシントン州シアトルの連邦裁判所が大統領令執行を一時差し止める命令を出した。命令は全米の入管で効力を持つ[3]。これを受け同日夜、税関・国境警備局は主要航空各社に対し、入国禁止とされていた7ヶ国からの乗客がアメリカ行きの便に搭乗することを認めるとの方針を伝え、国土安全保障省も大統領令の執行を停止することを表明した。また、国務省も大統領令に基づいてビザを無効とした措置を取り消すことを発表した[4]。これにより、続々と7ヶ国の人々が入国してきている[5]。政権側は判決を不服として連邦控訴裁判所に上訴したが、2月9日に退けられた[6]

その後、トランプは3月6日に大統領令13769号の中身を若干緩和した大統領令13780号英語版に署名し[7]、ハワイ州連邦地方裁判所により発効予定前日の3月15日に再び差し止めとなったものの[8]、6月26日に連邦最高裁が部分的な執行を認める判断を下した[9]

9月24日にトランプは大統領令13769号を更新する大統領令13780号英語版に署名した。スーダンが入国禁止から除外され、新たに北朝鮮ベネズエラチャドが追加された[10]

2021年1月20日、新大統領であるジョー・バイデンによりこの大統領令は廃止された[1]

脚注編集

  1. ^ a b Proclamation on Ending Discriminatory Bans on Entry to The United States”. ホワイトハウス. 2021年6月18日閲覧。
  2. ^ “Full Executive Order Text: Trump’s Action Limiting Refugees Into the U.S.”. The New York Times. (2017年 1月 27日). https://www.nytimes.com/2017/01/27/us/politics/refugee-muslim-executive-order-trump.html?smid=pl-share&_r=0 
  3. ^ “入国禁止令の差し止め命令=全米レベルで効力-米連邦地裁”. 時事ドットコム. (2017年2月4日). http://www.jiji.com/sp/article?k=2017020400307&g=int 
  4. ^ “大統領令停止で入国再開、トランプ氏はツイッターで反発”. CNN. (2017年2月5日). http://www.cnn.co.jp/m/usa/35096078-2.html 
  5. ^ “「やっと米国に来られた」入国再開の空港、喜びと不安と”. 朝日新聞デジタル. (2017年2月6日). http://www.asahi.com/sp/articles/ASK26544WK26UHBI008.html 
  6. ^ “米連邦控訴裁、入国制限命令の執行停止を支持 政権の上訴退け”. BBC News (BBC). (2017年2月10日). http://www.bbc.com/japanese/38927325 
  7. ^ “トランプ米大統領、新しい入国禁止の大統領令に署名”. BBC News (BBC). (2017年3月7日). http://www.bbc.com/japanese/39188856 2017年7月1日閲覧。 
  8. ^ 井上奈緒子 (2017年4月). “第107回 大統領令13780号(13769号の改正版)が憲法違反となる理由”. Junglecity Network. https://www.junglecity.com/pro/pro-ib-employment/executive-order-2/ 2017年7月1日閲覧。 
  9. ^ “米最高裁、トランプ政権の入国禁止を条件付きで容認”. BBC News (BBC). (2017年6月27日). http://www.bbc.com/japanese/40404126 2017年7月1日閲覧。 
  10. ^ トランプ政権が新たな入国禁止令、北朝鮮やベネズエラを追加”. AFPBB NEWS (2017年9月25日). 2017年9月29日閲覧。