アメリカ合衆国国務長官
アメリカ合衆国国務長官(アメリカがっしゅうこくこくむちょうかん、英: Secretary of State of the United States)は、アメリカ合衆国の外交を担当するアメリカ合衆国大統領顧問団の1人。日本の外務大臣に相当する。
![]() 国務長官 Secretary of State of the United States of America | |
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![]() 国務長官章 | |
![]() 国務長官旗 | |
行政府 | |
種類 | 閣僚 |
所属機関 | 大統領顧問団 |
担当機関 | 国務省 |
指名 | 大統領 (ジョー・バイデン) |
任命 | 上院の承認 |
前身 | 外務長官 |
初代就任 | 1789年4月6日 |
初代 | トーマス・ジェファーソン |
継承 | 第4位 |
職務代行者 | 国務副長官 (空席) |
ウェブサイト | www.state.gov |
アメリカ合衆国大統領が指名し、アメリカ合衆国上院の指名承認公聴会での質疑応答を経た後でアメリカ合衆国上院本会議にて出席議員の過半数以上の賛成多数をもって就任が承認される。
初代アメリカ合衆国国務長官はトーマス・ジェファーソン。2021年1月時点でジョー・バイデン大統領よりアントニー・ブリンケンが国務長官に指名されているが、上院にて人事案の承認が完了していないため、ダニエル・ベネット・スミスが代理を務めている。
概要編集
アメリカ合衆国国務長官はアメリカ合衆国国務省の長であり閣僚の一員であるが、諸外国における外相よりも強力な権限を持ち、ときには外交のみならず通商・国家行事なども統括することがある。
またアメリカ合衆国政府の首席閣僚であり、アメリカ合衆国憲法第2条第1節の6の規定に基づき制定された大統領権限継承法の定めるところにより、大統領が欠けた場合のアメリカ合衆国大統領の継承順位でアメリカ合衆国副大統領(アメリカ合衆国上院議長を兼務)・下院議長・上院仮議長に次いで第4位に位置付けられており、非国会議員(立法と行政を厳格に分離する大統領制のもとでは、閣僚が議員を兼ねることは無い)のなかでは最上位である。
このためアメリカ合衆国国務長官の地位は実務的には大統領に次ぐ事実上の行政府ナンバー2に近い扱いである。これによって政権の支持率までもが左右されることもあるため、当ポストは政権の最重要人事の一つとなっている。1973年にリチャード・ニクソン大統領はベトナム和平交渉を主導し各界から信望を得ていたヘンリー・キッシンジャー国家安全保障問題担当大統領補佐官をアメリカ合衆国国務長官に任命し、政権の浮揚を計っている。キッシンジャーはこの直後にノーベル平和賞を受賞したためこの人事は大成功と思われたが、ニクソンは翌年のウォーターゲート事件によって辞任を余儀無くされる。このとき大統領が辞表を提出したのもキッシンジャーに対してであった。
歴代アメリカ合衆国国務長官編集
アメリカ合衆国国務長官編集
アメリカ合衆国国務長官代理編集
アメリカ合衆国国務長官に限らずアメリカ合衆国上院における新閣僚の承認の手続きには、公聴会・委員会採決・本会議採決などに少なくとも数日から1週間の期間を要する。アメリカ合衆国大統領選挙後の新政権発足時には通常新大統領が全ての閣僚を新たに指名するので、アメリカ合衆国上院はその承認手続きで大忙しとなる。このため新大統領の就任までに新しいアメリカ合衆国国務長官の承認が間に合わず、アメリカ合衆国国務長官が短期間不在になることが多い。こうした事態を極力避けるため、今日ではアメリカ合衆国大統領当選者が就任前にあらかじめ新閣僚の指名を行い、アメリカ合衆国上院はそれに基づいて承認手続きをかなり早い時点で開始することが通例となっている[2]。
またアメリカ合衆国国務長官が死去したり職務不能になった場合や(ただしこれまでにそうした例はない)、アメリカ合衆国国務長官が他のポストに転出したり、やむなき理由により直ちに辞任した場合にもアメリカ合衆国国務長官が一時的に不在になることがある。こうした場合はアメリカ合衆国大統領が指名した後任の者をアメリカ合衆国上院が承認するまでの間、他の公職にある者がアメリカ合衆国国務長官の職務を兼任というかたちで代理する。今日ではアメリカ合衆国国務省の次官級の役職にある者がこの代理務めることが多いが、かつては他の省庁の長官や最高裁判所長官などがこれを兼任することもあった。
以下表中の「代」は代理者が引き継いだアメリカ合衆国国務長官の歴代数に対応する。同じ数字が続くところは代理が代理を引き継いでいるためである。「本官」は代理者の本来の公職。
注釈編集
- ^ a b c d e f g h i j k 後任の国務長官が指名承認されるまで、次の大統領の下で短期間(8日以内)在任。
- ^ 例えばオバマ大統領1期目の内閣でアメリカ合衆国国務長官を務めたヒラリー・クリントンの場合はその指名・承認の経緯は以下の通りだったが、これだけ前もって手続きを始めても承認が新大統領の就任式に間に合わず、結果的に1月20日正午から21日午後までの1日間に渡ってアメリカ合衆国国務長官が不在となり、代理をおいたことがわかる。
- 2008年11月4日 大統領選挙でバラク・オバマ候補の勝利が確定。
- 2008年11月中旬 バラク・オバマ次期大統領がヒラリー・クリントン上院議員に次期アメリカ合衆国国務長官就任を打診。
- 2008年11月21日 ヒラリー・クリントン上院議員が次期国務長官就任を受諾。
- 2008年12月1日 バラク・オバマ次期大統領がヒラリー・クリントン上院議員を次期アメリカ合衆国国務長官に正式指名。
- 2009年1月3日 第111議会が開会。
- 2009年1月8日 大統領選挙人団による投票でバラク・オバマ次期大統領を正式に選出。
- 2009年1月13日 アメリカ上院外交委員会がヒラリー・クリントン上院議員を召還し公聴会を開始。
- 2009年1月15日 アメリカ上院外交委員会が賛成16反対1でヒラリー・クリントン次期国務長官を承認。
- 2009年1月20日 正午をもってバラク・オバマ大統領が44代目アメリカ合衆国大統領に就任した。
- 2009年1月21日 アメリカ上院本会議が賛成94反対2でヒラリー・クリントン次期国務長官を承認し、同日午後にヒラリー・クリントンが67代目アメリカ合衆国国務長官に就任した。
- ^ 国務長官が最高裁長官に転出したことに伴い、前任者本人が後任者承認までの期間を兼任。
- ^ 国務長官が陸軍長官に一時転出したことに伴い、前任者本人が国務長官に復職するまでの期間を兼任。
- ^ 弁護士。初代財務長官アレクサンダー・ハミルトンの三男。ジャクソン大統領との個人的な親交により、任命者承認までの期間を特例として代理。
外部リンク編集
- 歴代アメリカ合衆国国務長官(米国国務省公式ページ)