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姫鶴一文字(ひめつるいちもんじ、ひめづるいちもんじ)は、鎌倉時代作の太刀。1949年5月30日、国の重要文化財に指定されている[1][注釈 1]。指定名称は「太刀 銘一 附 打刀拵」(たち めいいち つけたり うちがたなごしらえ)[1][注釈 2]上杉家伝来[1]。山形県・米沢市上杉博物館蔵。

目次

刀身・外装編集

刃長71.5cm、反り2.1cm、拵は全長104.4cm[2]

刀姿は腰反り高く、踏ん張りがあり、切先は中切先が詰まって猪首(いくび)切先となる[注釈 3]。茎(なかご)は先端をやや切り詰めるほかは生ぶで、ほぼ製作当初の姿を残す。鍛え肌は板目を主体に杢目、流れ肌が交じり、乱れ映りが立つ[注釈 4]。刃文は匂出来(においでき)が主体で小沸(こにえ)交じる[注釈 5]。鎬にかかるほどの大模様の乱れ刃で、袋丁子、大房丁子、重花(じゅうか)丁子などの丁子乱れを主体に互の目(ぐのめ)を交えるなど多彩である。帽子は表は乱れ込んで丸く返り、裏は「一枚」風になる[注釈 6]。佩表(はきおもて)の茎の目釘孔上に「一」の銘がある[注釈 7][3]

備前国、一文字派の作で、鎌倉時代、13世紀の作とみられる。一文字派は銘字を「一」とのみ切る作刀があることからこのように呼ばれる。本作の銘は「一」のみで個別の刀工名は明らかでない[3]

拵は鐔の無い合口拵えで、上杉家刀剣に特徴的な様式である[2]。刀剣研究者の廣井雄一は2001年の論文で上杉家伝来の打刀拵は大まかに2種類に分類することができ、姫鶴一文字をそのうちの片方に分類できるとしている[4]。その特徴として刃の方が鞘の厚みが薄く、断面が卵のような形をとり、下げ緒を通すための栗型が山のような形状で高く作られており[5]、柄の先端部が大きめに作られており、輪鼓と呼ばれる飾りが目立つものであるとしている[4][6]。柄巻は藍革巻[注釈 8]

号の伝来編集

上杉景勝自筆腰物目録に上秘蔵「ひめつる一もんし」の名称で記されている[8]。名の由来には諸説あり、昭和33年(1958年6月に開催された「歴史が物語る名刀展」リーフレットの解説では、波紋が鶴の翼に似ていることを挙げている[9]。2001年の米沢上杉博物館にて開催された展示では号の由来は曖昧なものとされている[8]。刀剣研究家の福永酔剣は著書で、御腰物係が研師に磨り上げの依頼を出したところ、二人の夢に二晩に渡ってつると名乗る姫が現れ依頼の中止を嘆願した由来を紹介しているが、一方で呼び名が姫鶴であって鶴姫でないことに関しても触れている[10]

脚注編集

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注釈編集

  1. ^ 当時の国宝保存法に基づく旧国宝(文化財保護法下の「重要文化財」に相当)に指定。
  2. ^ 指定名称には「姫鶴一文字」の文言は入らない。
  3. ^ 「腰反り」とは、刀身の反りの中心が手元よりにあるものを指す。「踏ん張りがある」とは、刀身の元幅と先幅の差が大きい意。
  4. ^ 「映り」とは、刃文の影のような模様が平地(刀身の焼きの入っていない部分)に見えるもの。「映り」は他地方の刀剣にもあるが、備前刀に特に顕著にみられる。
  5. ^ 刃文を構成する鋼の粒子が肉眼で見分けられる程度に大きいものを「沸」(にえ)、粒子が一粒一粒見分けられない程度に細かいものを「匂」と称する。刃文が匂出来となるのは備前刀の特色である。
  6. ^ 「帽子」とは切先部分の刃文のこと。「一枚」とは、切先部分の焼き入れが深く、切先全体に焼きが入っているような状態を指す。
  7. ^ 「佩表」とは、太刀を、刃を下、棟を上にして左腰から提げた場合に、体の外側になる面を指す。
  8. ^ 現在では青がかった緑色となっているが、これは燻革(ふすべかわ:松葉などの煙でいぶした革。武具に使うものは鹿革をいぶしたものが一般的である)を藍染めにしたため、経年変化で色が褪せた結果、このような色味になったと推測されている[7]

出典編集

  1. ^ a b c 昭和24年5月30日文部省告示第149号(参照:国立国会図書館デジタルコレクション
  2. ^ a b 渡邉 2017, p. 27.
  3. ^ a b 渡邉 2011, p. 38.
  4. ^ a b 廣井 2001, p. 74.
  5. ^ 「栗形」、『デジタル大辞泉』 (朝日新聞社)。 オリジナルの2019年2月11日時点によるアーカイブhttps://web.archive.org/web/20190211013431/https://kotobank.jp/word/%E6%A0%97%E5%BD%A2-486082 
  6. ^ 「輪鼓/輪子」、『デジタル大辞泉』 (朝日新聞社)。 オリジナルの2019年2月11日時点によるアーカイブhttps://web.archive.org/web/20190211014605/https://kotobank.jp/word/%E8%BC%AA%E9%BC%93-658679 
  7. ^ 高山 2006, p. 25.
  8. ^ a b 米沢市上杉博物館 2001, p. 13.
  9. ^ 日本美術刀剣保存協会協力団体庄内支部 『歴史を物語る名刀展 1-1』 日本美術刀剣保存協会協力団体庄内支部、2012年7月15日。 オリジナルの2017年11月11日時点によるアーカイブhttps://web.archive.org/web/20171111041740/http://toukensyonai.blog.fc2.com/blog-entry-94.html2017年11月11日閲覧 
  10. ^ 福永酔剣 『日本刀おもしろ話』 雄山閣出版、2000年6月25日、67-68頁。ISBN 4639015399NCID BA36653779 

参考文献編集

  • 高山一之 『日本刀の拵―高山一之作品集』 慶友社、2006年。ISBN 978-4874492390 
  • 竹村雅夫 『上杉謙信・景勝と家中の武装』 宮帯出版社、2010年。ISBN 978-4863660564 
  • 広井雄一 『刀剣のみかた: 技術と流派』 第一法規出版株式会社、1971年。 
  • 米沢市上杉博物館 「太刀 銘 一 (号姫鶴一文字)」、『開館記念特別展 上杉家の至宝』、2001年9月29日。 
  • 廣井雄一 「上杉家に伝来した刀剣・甲冑」、『開館記念特別展 上杉家の至宝』、2001年9月29日。 
  • 上杉博物館; 佐野美術館; 埼玉県立歴史と民俗の博物館 『上杉家の名刀と三十五腰』 佐野美術館、埼玉県立歴史と民俗の博物館、米沢市上杉博物館、2017年9月23日。ISBN 978-4-915857-95-9NCID BB24791466 
    • 渡邉妙子 『太刀 銘 一 (姫鶴一文字) 黒塗合口打刀拵』、2017年9月23日、27頁。 
  • 根津美術館富山県水墨美術館佐野美術館徳川美術館編・発行『名物刀剣』(展覧会図録)、2011 ISBN 978-4-915857-79-9 NCID BB06911850
    • 渡邉妙子 『太刀 銘 一 (号姫鶴一文字) 』、2011年、38頁。 

外部リンク編集