幻覚

対象なき知覚
幻想から転送)

幻覚(げんかく、英語: hallucination)とは、医学(とくに精神医学)用語の一つで、対象なき知覚、すなわち「実際には外界からの入力がない感覚を体験してしまう症状」をさす[1]。聴覚、嗅覚、味覚、触覚などの幻覚も含むが、幻視の意味で使用されることもある。

アウグスト・ナッテラー英語版作「Meine Augen zur Zeit der Erscheinungen(幻視の瞬間の私の目)」

種類編集

幻覚には以下のものがある。

幻聴(幻声・テレパシーの会話・霊聴とも言われる事がある)auditory hallucination編集

聴覚の幻覚。 実在しない音や声がはっきりと、グループラインで話す会話と同じ精度で聞こえることをいう。自分の思考と解離する幻聴が多く、知らない知識、知らない単語、使い方を知らない用語も沢山聞こえており、標準語か方言かも多様に存在し、幻聴の相手の性別や居住区エリア、子供を育てた経験の有無等が、聞こえる会話の内容や言葉のなまり方で特定できる場合もある。 幻聴の中には、自殺の強要等のおどし、預貯金の口座管理に関する命令、セクハラ、詐欺まがいの会話の誘導、詐取した情報を元にして接触の機会の交渉や金品の請求、訴訟や示談を絡めたおどし、口座に振り込めとの命令、個人情報全般や会社情報全般、パソコン、スマホの内部情報全般が全て実況生中継のように連日標準語で幻聴化されて幻聴の聞こえる第三者に聞かれてしまっている感覚を持つケース、自分の行動詳細や服装、服の色や移動する場所(地名・建物名)どの方向に向かって歩いているか等を実況生中継の用に標準語で幻聴化されるケース等もある。また、これらを他言すると友人知人や親せきや会社の同僚も同じように幻聴で詮索して危害を加えるかのようなおどしも一緒に伝えられて誰にも相談できなくなっているケースもある。

医師に詳しく幻聴の内容や、体の不調がどのように幻聴に影響されて起こっているかを話し始めると、通院している主治医に何があっても良いのかと幻聴におどされるケースもある。また患者側が医師や家族に幻聴の内容を伝える際に、幻聴のおどしの内容をそのまま全部包み隠さず伝えて良いか聞く側に配慮して躊躇してしまう事で、幻聴が第三者による加害行為なのか、それともただの病気なのかの判断目安を患者や家族、医師、警察との間で共有しづらい現状があり、患者数の割に警察に相談するケースもあまり無い事から詳細が表面化にくく、医師の間でも何が原因なのか未だにはっきりと特定されていないと、多くの書籍にも記述がある。

また、第三者の加害行為によって幻聴が起きている可能性を示唆する医療機関もあったり、それを伝えると受診拒否をされてしまう医療機関もある事から、医師の間でも幻聴が何によって誘発されているのか、患者側にどう伝えて行くのかが全国で統一されておらず、診断書の記載内容も医師それぞれの判断で記載されているのが現状となっている。

公にも周知されにくい事情がある。幻聴の内容を聞こえたまま話すと、「あなたの妄想(被害妄想等)です。気にしないようにして下さい」と周囲から言われる為、社内情報が全部幻聴化されていても気にしなくて良いのかとポジティブでいようとする半面、顧客情報、パソコンの操作内容も幻聴化される為、責任者に詳細を伝えて個人情報取扱い業務から外れる等の対応をしている企業もある。実際に幻聴の内容で脅された事が具現化して金銭的な実害、不正ログイン等が具現化するケースもまれにあるので、加えて身体的な健康障害、幻聴による情報詐取の可能性が疑われる金銭的な被害が複数散見されたり、退職せざるを得ない程の健康障害を負う等があると、妄想だから気にしないようにと周囲は言うけれどもこのまま黙って置いた方がいいのか自問自答が続くこともある。

聞こえる会話の話の組み立て方が、自分の住んでいる地域のものではない話の組み立て方だったり、自分の住んでいる地域の方便を幻聴が模倣する事があってもTVで役者が演じているような不自然な方便の模倣(演技)だと明らかに違和感を感じる事もしばしばある。

古い言葉を多用する、慣用句が多く含まれる等で幻聴の相手の年齢層が概ね特定できる場合もある。聞こえるものは会話の流れを全く汲まない単語の反復、人の話し声、数人の会話、6人の会話、幻聴の内容を他人に話すと精神疾患患者としか思われないような支離滅裂な言葉の羅列も聞こえる事がある。また、自分の行動や目視した物や、黙読した本やネットで目視した文字を全て幻聴化されてしまう不快感を伴うこともあり、幻聴にとらわれる時間が長い時は内容に不安を覚えたり、学業や仕事の集中力を欠く原因となる事も多く報告されている。このように幻聴は複雑なものまで程度は様々である。てんかんなどでも起こりえるが、会話の場合は統合失調症の可能性が高くなる。現実的なの会話とは記憶のされ方が異なる事もあり、幻聴で聞こえた内容はすぐに忘れてしまう傾向も報告されている。幻聴からの命令があるとメモしたり他言したりをし難い場合もある。(治療法については、「統合失調症#治療」を参照)。

統合失調症では意識障害時ではなく意識清明期におこり、「声を聴かされる」と一方的に聞こえるという受身形が多い[2]。耳から聞こえてくる、頭の中に直接響いてくる、腹部から聞こえてくる、喉ぼとけの位置から聞こえてくる、大胸筋の中心から直接響いてくる、頭上から声が下りてくる、人差し指の先端(幻聴が聞こえる指を右から左に移動すると、幻聴もスピーカーが移動するかのように右から左に移動する)から聞こえてくる場合もある。統合失調症ではただの音であったり、音楽、モールス信号、耳鳴り音、友人、知人、親戚、有名人の声、神の声、宇宙人の声、霊能者の声、亡くなった先祖の声、武士の声、から話しかけられていると思える超常現象に関する話や談笑(しばしば空笑の原因となる)、悪口や、あれをしなさいこれをしなさいと言う命令幻聴がある。

中には、あたかも自分の考えかのように自分の事を第三者が代弁している思考化声が起こり始め、同時に「あなたの思考が心の声になっているんです」と何度も何度も繰り返す幻聴が起こることもある。ここで、頭の中や胸の中心等、自分の体内から思考幻聴が聞こえてくる錯覚が起き始める等して思考化声と、本来の自分らしい思考との境界線が徐々に曖昧になり、本来の自分ではない思考化声を自分の考えだと錯覚する過程で妄想が進行していく事がある。またその内容は様々で、妄想に結びつくのが特徴である。急性期は鮮明に聞こえるが、軽快するにつれ不鮮明となるため陽性症状の指標ともなる。聞こうとすれば聞こえる、聞こうとしなくても聞こえる、声に逆らうことができない、といったことも重症度の目安となる。

対処法として、音楽を聴いたり趣味にとりかかったり、運動に夢中になる等して、幻聴から注意をそらしていく技法や、医師に幻聴や体に起こる症状をノートに書いてコピーする等して伝えて行く。脳波の測定ができる精神科やMRIで脳に異常があるかも検査して投薬治療が本当に必要かの判断材料を得る検査を受けてから精神科医に相談してみる。精神疾患の程度を判定する指標を用いた問診を受けられる精神科を受診してみる。患者の精神状態に合うカウンセリングが受けられる病院を探したり、複数の病院を受診して無理せず自分に合う病院を探す。統合失調症の本やネットを読む事で自分に起っている事と起こっていない事を客観視する。患者と支援者が一緒に幻聴の内容が正しいかどうか検討する、焦点を合わせる技法がある[3]。また、自分自身に対して否定的な考えがある際には幻聴の内容を信じてしまいやすくなる場合があるため、支援者は患者の良いところを見つけたり、成功体験に着目したり、物事の新たな捉え方(自らを責めなくて良い捉え方)を提示したりして、自らを肯定できるようサポートする[3]

幻視(visual hallucination)編集

視覚の幻覚。実在しないものがみえるものである。単純な要素的なものから複雑で具体的なものまで程度は様々である。多くの場合は意識混濁という意識障害時に起こることが多く、特に薬物離脱症状(アルコールなどの中毒性疾患[2])や神経変性疾患認知症でよく認められる[2]

アルコール中毒で認められる幻視は典型的には小動物が認められるというものである。これらは意識変容によっておこるものと考えられている。特殊な例としては脳幹病変の際に幻覚様体験が起こることがあり、脳脚性幻覚と言われる。脳幹は意識において極めて重要な役割を担う部位であり、大脳と脳幹の連絡の障害が金縛りと考えられている。

統合失調症で幻視が認められることは極めて稀である。たとえば存在しない人、モノ、建物がまるで本当に存在するかのように見える等。また、視覚障害者の1割程度は脳の過活動から、精神に異常が無いにもかかわらず幻視を見る(シャルル・ボネ症候群)。他の事例としては、遭難中に幻視を見る、ということも挙げられる。こちらは逆に救助者や飲み物、帰る家など自分の期待するものを脳が作り出すと見られている。

幻嗅(olfactory hallucination)編集

嗅覚の幻覚。頭部へのダメージなどで無嗅覚症になった人や鼻炎などで嗅覚を失った人が、視覚など他の感覚からの情報と記憶から幻臭を感じることがある[4]。また、嗅覚があっても偏頭痛PTSDなど、他の疾患と関連して発症する場合もある。不快な幻臭がとくに酷いケースは悪臭症と呼ばれる[4]。幻臭は状況やヒントに影響されて相応の臭いが生じる場合もあるが、場違いな臭いを感じたり本来の臭いから変容してしまう場合もある。また、現実の経験では嗅いだことのない説明困難な臭いを感じる人もいるが継続的に幻臭が続いたり、逆に継続的に臭いに無頓着になったりが一定期間続く、又は瞬間的に起こる等が、しばしば幻聴のある時期に起こる。

幻味(gustatory hallucination)編集

味覚の幻覚。 急な食の好みの変化が幻聴時期に起こることがある。今まで好物だったものが急に美味しいと感じなくなり、一定期間食べなくなったり、苦手な食材が毎日でも食べられるようになったり、いつも自分が作っているレシピで作っても美味しいと感じない日があるが、翌日に全く同じ物を作ったらいつも通り美味しいと感じられる。 一時的な感覚で、すぐに元の味覚に戻る場合が多い。

幻肢編集

触覚の錯覚。 撫でまわされている様な錯覚。トントンと外部から叩かれるような錯覚。全身の特定の部位に起こる場合もある。

病態編集

さまざまな説が提案されているが、現在のところはっきりとは分かっていない。

中脳辺縁系のドーパミン神経の過活動
ドーパミン作動薬である覚醒剤や大麻の成分が幻覚を起こすこと、幻覚に対してドーパミン拮抗薬である抗精神病薬が有効なことなどから推測される。
自己モニタリング機能の障害
自己と他者の区別を行う機能である自己モニタリング機能が正常に作動している人であれば、空想時などに自己の脳の中で生じる内的な発声を外部からの音声だと知覚することはないが、この機能が障害されている場合、外部からの音声だと知覚して幻聴が生じることになる。

原因編集

幻覚は、麻薬などの服用、あるいは精神病心的外傷後ストレス障害(PTSD)などといった、特殊な状況でのみ起きるわけではない。正常人であっても、夜間の高速道路をずっと走っている時など、刺激の少ない、いわば感覚遮断に近い状態が継続した場合に発生することがある。アイソレーション・タンクのように徹底して感覚を遮断することでも幻覚が見られる。

器質性編集

脳の器質疾患により幻覚が起こりうる。ナルコレプシー脳血管障害脳炎、脳外傷、脳腫瘍、あるタイプのてんかん痴呆など。

レビー小体型認知症(DLB)において特徴的な症状である[5][2]

症状性編集

全身性の疾患に続発して幻覚が起こることがある。代謝性疾患、内分泌性疾患、神経疾患など。

精神病性編集

主に統合失調症圏の疾患で幻覚がみられる[2]統合失調症をはじめ、統合失調症様障害、非定型精神病など。感情障害でも幻聴が起こることがある[6]

心因性編集

重度の心因反応、PTSDなど。他に、遭難中に救助者や飲み物の幻覚を見ることは多い。いずれも脳の防衛本能によるものとされる。

薬理性編集

LSDなどの幻覚剤覚醒剤大麻などの薬物使用によって生じることがある。ステロイドなどの治療薬でも幻覚が起こることがある。フラッシュバック (薬物)も起こることもある。

特殊状況下の正常な反応編集

断眠、感覚遮断、高電磁場など

幻覚の原因と内容の関連編集

疾患により幻覚の内容が異なる傾向があると言われている。例えば統合失調症では幻聴が、レビー小体病では幻視が、アルコール依存症の離脱症状では小動物幻視(小さい虫などが見える)が多いとされているが、必ずしも全例に当てはまる訳ではない。

脚注編集

[脚注の使い方]
  1. ^ ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説『幻覚』 - コトバンク参照
  2. ^ a b c d e 春日武彦 『援助者必携 はじめての精神科』(3版)医学書院、2020年、Chapt.3。ISBN 978-4-260-04235-2 
  3. ^ a b Jesse H. Wright, Douglas Turkington, David G. Kingdon, Monica Ramirez Basco 著、古川壽亮・木下善弘・木下久慈 訳 『認知行動療法トレーニングブックー統合失調症・双極性障害・難治性うつ病編―』医学書院、2010年、165-170頁。 
  4. ^ a b サックス 2014, pp. 63–72.
  5. ^ Dementia with Lewy bodies”. NHS (2015年1月22日). 2015年1月22日閲覧。
  6. ^ 私の頭の中の声”. TED. 2017年12月3日閲覧。

参考文献編集

関連項目編集