サルコイドーシス

サルコイドーシス (sarcoidosis) とは、非乾酪性類上皮細胞肉芽腫が臓器に認められる疾患である。なお、日本では厚生労働省が認定する特定疾患の1つである。

サルコイドーシス
Chest X-ray of sarcoidosis nodules.png
に認められるサルコイドーシスをX線撮影した写真。
分類および外部参照情報
診療科・
学術分野
血液学, 皮膚科学, 呼吸器学, 眼科学
ICD-10 D86
ICD-9-CM 135
OMIM 181000
MedlinePlus 000076
eMedicine med/2063
Patient UK サルコイドーシス
MeSH D012507
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概念編集

サルコイドーシスは、リンパ節皮膚を侵す場合が比較的多いものの[1]、心臓、骨格筋、肝臓、脾臓、唾液腺などが侵される場合も有るように、全身諸臓器に乾酪壊死を認めない類上皮細胞による肉芽腫の結節が形成される、全身性の肉芽腫性疾患である。典型的には若年女性に好発し、肺門部リンパ節腫脹および肺野病変、皮膚、関節および眼症状にて初発する場合が多く、約90%が肺病変を形成すると言われている。

サルコイドーシスには、Th1が関与した過敏性の免疫反応が、背景に存在していると考えられている。サルコイドーシスの免疫病態は、活性化したマクロファージT細胞の集積であり、その結果が、肉芽腫の形成である。マクロファージが放出するTNF-αは、肉芽腫の形成において重要な役割を担っていると考えられている。また、サルコイドーシスでは、マクロファージ活性化作用を有する、CD4陽性T細胞が放出するIFN-γも、重要な役割を発揮していると考えられている。

しかしながら、1869年にサルコイドーシスの皮膚病変が、イギリスの内科医のジョナサン・ユッチンソン英語版らによって報告されて以来、その原因は、なお不明である。

本症の病因として疑われている要因として、サルコイドーシスを引き起こし易い素因を有する宿主が、環境中の何らかの抗原物質(起因体)に暴露された結果として誘導される、Th1タイプの過敏性免疫反応に起因すると考えられている。その起因体の候補としては、例えば、グラム陽性嫌気性細菌であるアクネ桿菌英語版だという説も有る。このような常在菌による感染を起因体だと考える根拠の1つとして、抗菌薬の1種であるミノサイクリンの長期投与によって、皮膚サルコイドーシスが寛解したという報告が有る事が挙げられる。しかし、それこそ、どこにでも見られるような、種々の環境刺激に対して、サルコイドーシスの際で見られるような免疫反応が起きたとする報告も有る。さらには、ストレス等が遠因だとも言われるものの、その真偽は不明である。

疫学編集

日本での有病率は人口10万人当たり7.5~9.3で、罹患率は平均0.7である。女性に好発する傾向が見られる。アメリカ合衆国での人口10万人当たりの有病率は、男性5.9、女性で6.3である。好発年齢は40歳以下の成人に好発し、20歳代から30歳代に発症のピークが有る。ただし、スカンジナビア諸国と日本では、発症のピークが2峰性を示し、20歳代から30歳代だけでなく、50歳代から60歳代の女性が第2の発症のピークとして見られる。

また、地域別に見ると、北欧や北米、日本では北海道や東北地方など、寒冷地に多く見られる[2]

病理編集

 
サルコイドーシスによる非乾酪性の肉芽腫病変。ラングハンス型巨細胞を認める。

サルコイドーシスの病理は多彩だが、リンパ組織や肺に多い肉芽腫性病変、全身性の微小な血管炎(マイクロアンギオパチー)が多いとされている。肉芽腫性病変が肺で発生した場合は、リンパ管に沿うように間質に分布する場合が多いものの、その癒合性、局在部位、臓器特異性によって様々な形態像を見せる。

なお、非乾酪性肉芽腫を形成する異物型巨細胞の細胞質には、星状(: asteroid)小体やシャウマン(: Schaumann)小体が見られる場合があるものの、これは本症に特異的ではなく、例えば、結核ベリリウム症などでも認められる。肉芽腫性の病変の大部分は自然退縮するが、硝子化として残存したり、少数例では繊維化へと進展する。ミクロアンギオパチーは肉芽腫が血管壁を侵襲し、血管壁の構造破壊によって発生すると考えられている。病理学的な検討によると、血管壁での肉芽腫の分布は分節的であり、外膜から中膜にかけての分布が多いとされている。

肉芽腫性血管炎
肉芽腫による血管壁の構成成分の破壊が見られるという病理像を以って定義される。本症では肺、眼、脳、神経などで認められる。
病理解剖を行った肺では、弾性型肺動脈から小葉間静脈まで様々な血管で、肉芽腫が認められる。ただし、病理学的には静脈侵襲が目立つ傾向にある。血管での肉芽腫の分布は分節的で、血管外膜から中膜にかけて多く分布する。巨細胞は星状(asteroid)小体やシャウマン(Schaumann)小体など、細胞内封入体を有する場合がある。肉芽腫の中心部は、主にCD4陽性のリンパ球で構成され、辺縁部はCD8陽性細胞で構成される。なお、好中球浸潤やフィブリノイド壊死は認められない。
また、ミクロアンギオパチーが共存している場合も有る。
ミクロアンギオパチー
当初のミクロアンギオパチーは、眼底における細動脈の狭小化、白鞘化、静脈周囲炎、細動脈拡張などの変化に付けられた名称であった。

その後、全身の微小血管変化に用いられるようになった経緯を有する。

ミクロアンギオパチーには、類上皮細胞やマクロファージから分泌される内皮細胞増殖因子の関与も疑われる。病理学的には電子顕微鏡像で骨格筋、網膜血管、気管支粘膜、心筋、あるいは皮膚等における、毛細血管や細静脈に内皮細胞のの濃縮、変性、基底膜の多層化を特徴とする。
肉芽腫の転帰
サルコイドーシスの肉芽腫は多くの場合、自然消退するものの、中には硝子化、線維化へと進展する物が有る。消退の過程においては類上皮細胞が消失し、巨細胞が線維化の中に残る場合が多い。

自然経過編集

サルコイドーシスの臨床所見、自然経過、予後は極めて多彩である。サルコイドーシスの症例の多く(28~70%)は、自然治癒するとされている。その場合は、2年以内に病変が消失する。予後不良因子としてはlupus pernio、慢性ブドウ膜炎、40歳以降での発症、慢性高カルシウム血症、腎臓の石灰化病変、黒色人種、進行性肺サルコイドーシス、鼻粘膜病変、嚢胞性骨病変、神経サルコイドーシス、心筋病変、慢性呼吸不全とされている。1~5%が本症のサルコイドーシスの病変で死亡する。典型的な死因は、進行性の呼吸不全、中枢神経系や心臓病変による。日本においてはサルコイドーシスによる死亡の77%が心筋病変によるのに対して、アメリカ合衆国では心筋病変よりも肺病変による死亡の方が多い。

症状編集

  • 心サルコイドーシスによって発生した不整脈は、致死的な場合がある。
  • 肺での両側肺門リンパ節腫脹 (英語: bilateral hilar lymphadenopathy;BHL) は、サルコイドーシスで特徴的とされる。を症状として訴える。
  • 眼症状として、ブドウ膜炎を合併する場合がある。目のかすみ症状を訴え、飛蚊症、視力低下・眼圧上昇を来す事がある。
  • 皮膚症状として、結節性紅斑などを認める場合がある。

検査編集

サルコイドーシスの診断で重要な点として、サルコイドーシスの組織学的確認をする事、臓器病変の広がりとその程度を評価する事、病態が安定しているか進行性かを評価する事、治療が患者に利益を与えるかを評価する事の4点が挙げられる。

なお、サルコイドーシスの診断のために、以下のような検査を実施する場合がある。

CT胸部X線撮影
しばしば肺門部のリンパ節の腫脹が見られる。
健康診断などで胸部X線撮影を行った結果、偶然発見される場合もある。
血液検査
アンジオテンシン変換酵素(ACE)が高率で上昇する。ACEは肉芽腫の類上皮細胞(マクロファージに由来)が産生するとされる。
サルコイドーシスの診断基準2015では、血清可溶性インターロイキン2レセプター(sIL-2R)高値も、特徴的な検査所見として記載されている。
サルコイドーシスによる細胞性免疫低下のために、ツベルクリン反応が陰転化する事が知られているものの、サルコイドーシス診断基準2015では参考所見から除外された。
経気管支的肺生検 (TBLB)
気管支肺胞洗浄 (BAL)
ガリウムシンチグラフィー
放射性同位体である67Ga英語版のクエン酸塩を注射して、体外で67Gaから放出される放射線を検知して画像化する事で、炎症が起きている箇所を検索する検査である。この検査によって得られた、縦隔や両側肺門上部に、67Gaの集積が亢進した結果の画像である、いわゆる「パンダ様所見」は、サルコイドーシス診断を支持する。

治療編集

サルコイドーシスの臨床所見、自然経過、予後は極めて多様である。サルコイドーシス全体では60%以上に近い症例で自然寛解が得られる。しかし、30%程度の症例で慢性、ないし進行性の経過をとる。サルコイドーシスによって死亡する患者は、サルコイドーシス罹患者の5%以下であり、その死因は進行性の呼吸不全、中枢神経病変や心臓病変である。心臓や中枢神経に病変が及んだ例や、肺線維症を起こしてしまった場合は予後が悪い。

「ATS/ERS/WASOGによるサルコイドーシスに関するステートメント」によると、心臓病変、中枢神経病変、治療抵抗性の眼病変、高カルシウム血症を認めた場合は、積極的な治療適応が有るとしている。治療法は、ステロイド系抗炎症薬を経口投与する方法が一般的である。なお、びまん性浸潤型皮膚サルコイドーシス(Lupus pernio)[3] や、神経サルコイドーシスには、抗TNF-α抗体であるインフリキシマブの注射投与が有用だと報告されている[4]。なお、皮膚病変についてはサリドマイドも注目されている。

サルコイドーシスで見られる臓器の障碍編集

肺サルコイドーシス編集

サルコイドーシスは経過中に90~95%に肺実質病変を伴うことが知られている。日本での本症の特徴としては、50~70%が胸郭内病変で発見されている。無症候性の両側肺門リンパ節腫脹(BHL)などで、健康診断で指摘される場合が多い。進行例では、乾性咳嗽、労作時呼吸困難などが認められ、肺の線維化が認められる場合もある。本症の約2/3の症例に自然寛解認められるのに対して、10~30%の症例では慢性または進行性に経過する。発症年齢が40歳以上、肺外病変の存在、lupus prernioを予後不良因子とする報告も存在する。これに対して、肺サルコイドーシスの活動性指標は、予後因子ではない事が知られている。病理学的にはサルコイドーシスの類上皮細胞肉芽腫は、通常、気管支・血管束、小葉間隔壁、胸膜下リンパ流路に沿って分布する。肉芽腫の分布は両側性で上葉に著しい。基本的には0.2 mm程度の大きさの肉芽腫であり、これらが融合し、塊状陰影や線維化を形成すると考えられている。画像上は間質病変のパターンをとり、進行例では上葉に肺線維症の初見を示す場合がある。肺のみにならず、多臓器に発達した肉芽腫は70%以上自然退縮するが、一部の進行例は線維化と蜂窩肺形成する。そのためKL-6は進行例の活動性マーカーとされている。胸部X線撮影で観察された両側肺門リンパ節腫脹(BHL)と、肺野病変の有無によって5つのstageが存在する。ACCESSでは各病気の頻度としては、Ⅰ期39.7%、Ⅱ期36.7%、Ⅲ期9.8%、Ⅳ期5.4%と報告されている。ステロイド系抗炎症薬の投与を行えば、短期的には病変の消失や縮小には寄与するものの、長期的な有効性は明らかになっていない。Ⅱ期、Ⅲ期において自覚症状、呼吸症状が認められる場合に、ステロイド系抗炎症薬の使用が検討される。

胸部X線像病期 内容
stage 0 正常な胸部X線像
stage Ⅰ 両側肺門リンパ節腫大
stage Ⅱ 両側肺門リンパ節腫大+肺陰影
stage Ⅲ 肺陰影のみ(両側肺門リンパ節腫大なし)
stage Ⅳ 肺線維

胸部X線写真の所見で、サルコイドーシスの予後を、ある程度予測できる。stageⅠの場合は胸部X線写真所見は通常、自然に改善ないし安定化する。肺門リンパ節腫大の持続は、活動性病変が続いている事を意味するわけではないため、経過観察が行われる。自然寛解は16~39%の症例で発症後6~12ヶ月の間で認められている。自然寛解の85%以上は、発症後2年以内に起こる。自然寛解した症例ないし、安定化した症例で、後に再燃が認められた症例は、わずかに2~8%程度である。2年以内に自然消退しない場合は、慢性ないし持続性の経過をとる可能性が高まる。よって肺サルコイドーシスの長期観察は、発症後2年間に最も集中的に行われるべきである。stage Ⅰでは6ヶ月毎、stageⅡ~Ⅳでは3~6ヶ月とより頻回の評価が必要である。治療を行った場合は、治療後最低3年間は追跡をする。また持続性のstage Ⅱ~Ⅳでは、少なくとも数年ごとに無期限に追跡をするべきとされている。重症の肺外病変がある場合も、長期の追跡が必要である。

病理学的には発症1年以内の症例で、画像所見の有無に関係無く95%で肺に肉芽腫が認められ、その率は、より経過が長い例では50%以下である。そのためサルコイドーシス確定診断のために、肺病変の検出が試みられる場合がある。経気管支肺生検(TBLB)、気管支粘膜生検(EBB)、縦隔リンパ節の経気管支吸引肺生検(TBNA)、気管支肺胞洗浄(BAL)などが用いられる。気管支拡張症を伴い、アスペルギローマを合併する場合は、イトラコナゾールのような抗真菌薬が使用される場合がある。

気管支鏡
気管支粘膜生検(EBB)
TBLBで4ないし5個の肺生検を行えば、診断率は40~90%である。
気管支肺胞洗浄(BAL)
殆ど侵襲なしに終末細気管支、肺胞領域からの細胞、吸入粉塵、病原物質、液体成分を採取できる。: サルコイドーシスのような、びまん性肺疾患の場合、BALは中葉から行われる。サルコイドーシスにおいては多くの場合、気管支肺胞洗浄液(BALF)中の総細胞数、リンパ球比率、CD4/CD8比が増加する。総細胞数やリンパ球比率の上昇は、種々のびまん性肺疾患で観察されるものの、CD4/CD8比の上昇が加わった場合はサルコイドーシスを疑う大きな根拠とされる。BALF中のCD4/CD8比が3.5以上に上昇すれば、サルコイドーシス診断の感度は52%、特異度は94%であり、CD4/CD8比が5.0では特異度97%となり生検しなくともサルコイドーシスと診断できるという報告がある。そのため生検を実施していない症例では、診断の補助となると考えられている。ただし、感度は低いためBALFが正常であっても、サルコイドーシスは否定できない。
なお、BALFは喫煙の影響を受け、喫煙によって総細胞数は3~4倍に増加し、マクロファージの比率が増加し、リンパ球比率が低下する。CD4/CD8比も低下するとされている。


眼サルコイドーシス編集

サルコイドーシスの約50%に眼病変が生ずるとされており、その多くはぶどう膜炎と呼ばれる眼内炎症疾患である。ぶどう膜炎の原因疾患は、かつてはベーチェット病が最も多かったものの、近年はサルコイドーシスが最も多い。眼サルコイドーシスでは非特異的な眼内炎症病変の他に、特徴的な眼病変が混在している。サルコイドーシスの診断基準では、前部ぶどう膜炎、隅角結節、周辺部虹彩前癒着、硝子体混濁、網膜周囲血管炎、網脈絡膜滲出斑および結節、網脈絡膜広範囲萎縮病変などが特徴的な所見とされている。サルコイドーシスでは長期にわたる慢性の眼内炎症によって、白内障、緑内障、嚢胞様黄斑浮腫、黄斑上膜などの視力の低下につながる重篤な合併症を生ずる場合がある。白内障は、サルコイドーシスの約半数に認められる。緑内障は、約20~30%に認められる。眼圧の上昇の原因としては、隅角結節による房水流出障害、テント上PASによる房水流出障害、ステロイド系抗炎症薬の副作用などが挙げられる。なお、隅角結節による眼圧の上昇には、ステロイド系抗炎症薬が有効であるものの、その副作用の有無について注意を払う必要がある。

前部ぶどう膜炎
前部ぶどう膜炎とは、虹彩あるいは毛様体などの前眼部に発生した炎症を言う。前房水中に炎症細胞浸潤が認められれば、前部ぶどう膜炎と診断される。
ただし、これはサルコイドーシスに限らず、ベーチェット病、vogt-小柳-原田病など、殆ど全てのぶどう膜炎で見られる非特異的な眼病変である。
肉芽腫性前部ぶどう膜炎
豚脂様角膜後面沈着物や虹彩結節が認められる前部ぶどう膜炎を肉芽腫性前部ぶどう膜と言い、サルコイドーシスに特異的と考えられている。ベーチェット病など非肉芽腫性血管炎では、角膜後面沈着物は炎症細胞びまん性に沈着する。これに対して、サルコイドーシスの場合は炎症細胞が集簇し、大型の角膜後面沈着物を形成する。これを豚脂様角膜後面沈着物と言う。
虹彩結節
虹彩結節は虹彩に生じる肉芽腫であり、瞳孔縁のKoeppe結節や虹彩実質のBusacca結節が知られ、特異度の高い所見とされている。
隅角結節、テント上虹彩前癒着(テント上PAS)
虹彩と角膜が合わさる部分である前房隅角を、隅角鏡で観察する。線維柱帯に、隅角結節(肉芽腫)やテント上虹彩前癒着(肉芽腫の瘢痕)が認められる場合がある。
硝子体病変
ぶどう膜炎では炎症細胞が硝子体に浸潤して、硝子体混濁を起こす。非肉芽腫性ぶどう膜炎ではびまん性の硝子体混濁が起こるのに対して、サルコイドーシスでは硝子体中に類上皮性肉芽腫を形成した結果として数珠状の硝子体混濁が起こる。
脈絡膜炎
ぶどう膜炎では炎症細胞が網膜や脈絡膜に滲出した結果、眼底の白斑あるいは滲出斑と呼ばれる病変が出現する。白斑、滲出斑、出血が黄斑部に及ぶと、高度の視力低下の原因となる。ただし、これはベーチェット病、結核、交感性眼炎、サイトメガロ網膜症などでも認められる非特異的病変である。
網膜静脈周囲炎
ぶどう膜炎の網膜血管炎は、幾つかのパターンが知られている。ヘルペスウイルスによる急性網膜壊死では動脈炎が主体、サルコイドーシスや結核では静脈炎が主体、ベーチェット病では動脈、静脈が同様に広範囲に障害され、vogt-小柳-原田病では網膜血管炎は認められない。サルコイドーシスの静脈周囲炎は、網膜静脈に沿って結節状の白色浸潤が所々に生じる。この竹の節状の網膜静脈周囲炎はサルコイドーシスに特異的と考えられている。


神経サルコイドーシス編集

神経症状は全サルコイドーシスの5%程にのみ認められる、比較的な稀な合併症である。神経サルコイドーシスの約50%は神経症状を初発とするため、診断が難渋する場合が多い。長期観察では、神経サルコイドーシスの90%が神経系以外の臨床症状を示すと報告されている。剖検例では10%から25%程の無症候性サルコイドーシスが認められ、近年は全身症状に欠く、英語: isolated sarcoidosisも認められ、頻度は上昇している。血管壁と軟膜が神経サルコイドーシスの初発と考えられている。病変の進展メカニズムとしては軟膜や血管壁の肉芽腫によって、血液脳関門の破綻が発生し、血管周囲腔Virchow-Robin腔英語版)に肉芽腫が侵入し、血管周囲腔に沿って脳実質に進展してゆくと考えられている。血管周囲腔が脳底部で特に大きいため、視床下部第三脳室視神経脳幹から出る脳神経(特に顔面神経)が、障碍され易いと考えられている。その過程や肉芽腫性血管炎によって虚血性変化、脳梗塞も起ると考えられている。慢性髄膜炎を原因とする、急速進行性認知症を起こす場合もある。慢性髄膜炎は治療可能な認知症であるため、これが疑われた場合は、造影MRIと髄液検査で髄膜炎の診断を行い、早期治療が望まれる。

プレドニゾロンを60 (mg/day)で開始し、6か月で20 (mg/day)まで減量し、その後20 (mg/day)で2年間維持するという方法はよくとられるが、これは多くの施設で20 mg前後で再発を起こしているという経験に基づくものである。2年間安定していれば5 mgごと慎重に減量し、全投与を4年程度とするのが一般的である。ステロイド系抗炎症薬による反応が充分でない場合や、ステロイドの副作用により治療継続困難な場合は、シクロフォスファミドメソトレキセートアザチオプリンミコフェノール酸モフェチルなどが用いられる。しかし神経サルコイドーシスにおいては、免疫抑制剤の使用に関しても比較論文は存在しない。治療効果が予測できないため免疫抑制剤は複数使用してから免疫抑制剤耐性と考えるべきとの意見もある。しかし神経病変の場合は他の臓器よりも不可逆的な変化が短い期間で生じ易く、治療抵抗性、遷延性と判断するタイミングが早い傾向がある。神経学会では3か月から1年以上で遷延性とすることが多いが、日本サルコイドーシス学会では1年から5年以上で遷延性とすることが多い。治療抵抗性の場合は、エンドキサンパルス療法、インフリキシマブ療法、サリドマイド療法が用いられる場合もある。

心臓サルコイドーシス編集

サルコイドーシス患者における心臓病変の頻度は、5~10%程度とされている。サルコイドーシス剖検例の20~27%に心サルコイドーシスが認められ、生前の診断率は40~50%程度である。心サルコイドーシスと診断されていないサルコイドーシスの患者も、精査をすると40~50%程度に心サルコイドーシスが見れられるとも言われたり、高齢の日本人女性の場合は80%程度が心サルコイドーシスを合併していると言われたりするなど、その合併頻度に関してはバラつきが多い。

心サルコイドーシス診断には、心電図ホルター心電図心シンチグラフィィMRI心臓カテーテル、心筋生検PETなどを用いるが、示す病像が病期や重症度に応じて多岐に及ぶため診断は容易ではない。例えば、心筋生検を行うと、病変部が採取できていれば、乾酪壊死を伴わない類上皮細胞肉芽腫を始め、ラングハンス型巨細胞(星芒小体やSchaumann小体を持つ)、異物型巨細胞やリンパ球浸潤が認められる。しかし、サルコイドーシスは結節性の疾患であり、心筋内に散在性に病変が認められるため、心筋生検を行っても、心サルコイドーシスの病変部が含まれない可能性もある。また、心筋生検を行った事が不整脈を誘発し得るので、注意を要する。採取したサルコイドーシスの心筋を電子顕微鏡で観察すると、心筋内毛細血管の基底膜の多層化が認められ、ミクロアンギオパチーの機序による病態も提唱されているが、この所見は糖尿病でも認められサルコイドーシスに特異的ではない。

心サルコイドーシスは、重症心不全や致死的不整脈を引き起こし得て、サルコイドーシスによる死因として上位の合併症である。心サルコイドーシスによる不整脈は、脚ブロック房室ブロックから洞不全症候群などの致死性不整脈まで進行する場合もある。

サルコイドーシス関連心不全を呈する患者の心臓は、拡張型心筋症(DCM)を呈するのが一般的である。ただし、日本では特発性DCMの5年生存率が64%である一方で、心サルコイドーシスの5年生存率は37%と低い。2006年に改訂されたサルコイドーシスの診断基準と診断手引では、心臓サルコイドーシスに比較的特徴的である完全房室ブロック、心室中隔基部の菲薄化、心臓へのガリウムの異常集積、左室収縮不全が主徴候とされ、新たに造影MRIの遅延増強所見が加えられた。遅延増強効果は、活動性炎症部位の評価や、ステロイド系抗炎症薬投与による治療効果の判定にも有効である。心サルコイドーシスのステロイド系抗炎症薬の全身投与の適応は、高度房室ブロック、心室頻拍などの重症心室不整脈、局所壁異常運動、あるいはポンプ失調とされている。その治療効果は房室ブロックでは伝導障害が改善し正常化する例が有り、低心機能例では収縮能は改善しないまでもそれ以上に悪化しない例が多い。また低収縮に至る前に治療を行った場合は、改善する例も知られている。


なお、重症不整脈に関してはペースメーカーカテーテルアブレーション、植え込み型除細動器などが用いられる。

皮膚サルコイド編集

サルコイドーシス患者におけるサルコイドーシスの皮膚病変の発生頻度は、10~30%程度である。これは、胸郭内病変、リンパ節病変、眼病変に次ぐ。サルコイドーシスの発見契機となる自覚症状としては、眼病変に次いで2番目に多い。皮膚の場合は、他の臓器と比べて生検が行い易く、生検を行って診断を行う。日本では福代の分類に従って記載される。福代の分類は、組織学的特徴を加味した分類であり、結節性紅斑、瘢痕浸潤、皮膚サルコイドに大別される。皮膚サルコイドはさらに結節型、局面型、びまん浸潤型、皮下型、その他の稀な病型に分類される。皮膚サルコイドの中では結節型が最も多く、局面型、皮下型がそれに次ぐ。結節型、局面型ともに顔面に好発し、皮下型は四肢に多発する。組織像は類上皮細胞が種々の大きさの肉芽腫を形成する。肉芽腫の大きさの分布は、病型によって異なる。皮膚病変の治療の原則は、ステロイド系抗炎症薬の外用である。ただし、strong以下の外用薬は著効しない。なお、ミノサイクリンの長期投与で皮膚サルコイドーシスが寛解したという報告が有る。

結節性紅斑
結節性紅斑は、肉芽腫を認めない、発赤を伴った有痛性の皮下硬結が、両側下腿伸側に多発した病変である。初期には好中球浸潤、後期には多核巨細胞が認められることがあるものの、肉芽腫は認められない。
ただし、これは非特異的病変であり、これが見られてもサルコイドーシスとは限らない。
瘢痕浸潤
肉芽腫と共に異物が証明される病変である。陳旧性の瘢痕に、肉芽腫反応が認められる。紅褐色の丘疹、結節、あるいはそれらが癒合した病変である場合が多い。外傷を受け易い、膝蓋、肘、顔面に好発する。組織学的には類上皮細胞性肉芽腫に加えて、偏光顕微鏡で病変部に重屈折性を示す異物が認められる。
皮膚サルコイド
肉芽腫を認め、サルコイドーシスに特異的な病変である。結節型、局面型、びまん浸潤型、皮下型、その他の稀な病型に分類される。
結節型
隆起型の病変であり、皮膚サルコイドの中で最も頻度が高い。紅色の丘疹、結節で、鱗屑や血管拡張を伴う場合が多い。顔面、四肢に好発する。なお、顔面では鼻周囲に生じる例が多い。組織像では真皮全層に大型の結節が認められる。
局面型
水平方向に伸展する病型であり、環状の形態を示す場合と斑状の病変とがある。なお、環状病変が多い。
環状病変は辺縁がやや堤防上に隆起し、中央部は正常皮膚色でやや萎縮性である。種々の大きさを示し、場合によっては、手掌大に達する例もある。なお、前額部に好発し、多発する傾向がある。組織像は真皮上層に比較的小さな肉芽腫が認められる。
なお、局面型の皮膚病変が見られる場合には、心サルコイドーシスの合併率が、他の皮膚病変と比べて高い。
びまん浸潤型
lupus pernioに相当する病変である。組織像は、小型の肉芽腫が真皮全層に散在し、血管拡張を伴う。自然寛解する例は稀で、遷延する場合が多い。
皮下型
皮下の弾性硬の結節、硬結であり、表面の皮膚は通常の皮膚色と変わらない。多発傾向で、四肢に好発する。組織像は皮下脂肪組織中に局在する。稀に、顕著な壊死が認められる。

筋サルコイドーシス編集

筋サルコイドーシスは無症候性病変が多い。サルコイドーシスの患者に対して無作為に筋生検を行うと、50~80%に類上皮肉芽腫が認められるとされている。症候性は1.4~2.3%と少ない。症候性は腫瘤型(急性、亜急性)とミオパチー型(慢性)に分かれる。末梢性ニューロパチーを合併する場合もあり、その多くは軸索障害だが、脱髄の報告もある。慢性ミオパチー型では、筋ジストロフィーや皮膚筋炎に類似し、びまん性の筋力低下や筋萎縮が認められる。腫瘤の画像所見としては、T2強調画像、T1強調画像どちらでも周辺が高信号、中心が低信号を示す。Gd増強効果が周辺部に認められる。ミオパチーではこのような特徴はなく、炎症性ミオパチーと同様の所見とされる。病理では肉芽腫が血管周囲に形成され、肉芽腫性血管炎やミクロアンギオパチーが認められる。慢性ミオパチーの20%は腫瘤型で発生しており、腫瘤型は経過観察して良いのかという意見もある。腫瘤型筋サルコイドーシスは、プレドニゾロンを30~40 mg開始し徐々に漸減で軽快するが、プレドニゾロンの減量や中止によって再燃する例も知られている。どの時点で治療を開始し、中止するのか明確になっていない。

その他の臓器障害編集

肝病変編集

サルコイドーシス患者に腹腔鏡・肝生検を実施すると、80%の高頻度で潜在性の肉芽腫性病変が認められる。腹部CTでは、転移性肝悪性腫瘍を疑わせる、多発性結節性低吸収域として認められる。ただし、生化学所見や臨床所見で肝病変の証拠が有っても、生検を行う事は稀である。

脾病変編集

潜在性の脾病変は、サルコイドーシス患者の38~77%で認められる。CTでは多発性低吸収域や形態異常を示す。

高カルシウム血症編集

サルコイドーシスに高カルシウム血症が高頻度に合併する事は、古くから知られている。サルコイドーシスや結核では、肺胞マクロファージや肉芽腫の類上皮細胞がビタミンD-1α水酸化酵素を産出し、1,25(OH)2Dが過剰に変換されるために、消化管でのカルシウムの吸収率が増加し、また骨からのカルシウムの動員が行われ易くなり、高カルシウム血症が起こる。

サルコイドーシスに伴う肉芽腫の類上皮細胞でのビタミンD-1α水酸化酵素の増加の場合は、副甲状腺ホルモン(PTH)による支配は受けずに、IFNγによって産出は亢進され、ステロイドホルモンによって抑制される。すなわち、ステロイド系抗炎症薬の投与によって、サルコイドーシスに伴う高カルシウム血症は改善する。つまりサルコイド肉芽腫自体が、内分泌器官として働いているとも言える。PTHrpとの関連は不明な点が多い。

腎病変編集

サルコイドーシスでは、高カルシウム血症による腎障害、尿細管間質性腎炎、肉芽腫性間質性腎炎、糸球体腎炎、腎血管炎が稀に起こる。

内分泌病変編集

間脳-脳下垂体系は神経系との接点であり、中枢神経病変としてもサルコイド肉芽腫がよく見られる部位である。血管壁や血管周囲に肉芽腫が形成される。

出典編集

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  1. ^ 土山 秀夫(編)『病理学 総論』 p.237 医歯薬出版 1983年7月1日発行
  2. ^ 病気がみえるVol.4 第2版 P174 メディックメディア社発行  ISBN 978-4896324617
  3. ^ CHEST 135(2); 468-476, 2009
  4. ^ Neurology 72; 337-340, 2009

参考文献編集

関連項目編集

外部リンク編集