手洗い
手洗い(てあらい、英: hand washingあるいはhandwashing)は、手指の汚れや微生物を除去する行為である[1][2]。感染症への感染や食中毒の予防に大きな効果がある。
歴史編集
手洗いの分類編集
手洗いは要求される清浄度に応じて、(1)外出先から帰宅した場合などにおいて汚れの除去を目的とする日常手洗い[2][1]、(2)学校給食の調理現場などにおいて通過細菌の除去を目的とする衛生的手洗い[2][1]、(3)外科手術などにおいて常在細菌の除去も目的とする手術時手洗いとに分けられる[1]。
一般には石鹸やハンドソープ等で、手の平・手の甲・指先・指の間・親指・手首、の順番で洗って行く(「平・甲・先・間・親の首」で覚えると良い)。勿論、石鹸を水で流し、タオルやハンカチ等で手に付いた水を拭き取る事を心掛ける事により、黴菌の繁殖を防ぐ事にも繋がる。なお、爪を洗う際に爪ブラシ(ネイルブラシ)が用いられることもある。
日常手洗い編集
日常手洗いは外出先から帰宅した場合などに一般家庭で行われる手洗いである[2][1]。石けんと流水による方法で十分な場合が多く適宜アルコールなども用いられる[2][1]。
感染症の予防法として幼稚園や小学校の幼少時からうがいと並んで教えられる。確実な感染症予防には消毒液も使われ、特に風邪やインフルエンザの予防には効果があるとされ、ノロウイルス対策にも効果が期待できるといわれる(石けんやアルコールそのものにはノロウイルスを直接失活化させる効果はないが[3][4]、手の脂肪などの汚れを落とすとともにウイルスを剥がれやすくするという効果は認められている[3])。しかし、必要以上の手洗いの繰り返しは皮膚を健全に維持するのに必要な油脂まで洗い流してしまい、肌荒れなどの皮膚病の原因ともなる。
衛生的手洗い編集
衛生的手洗いは学校給食の調理現場などで通過細菌や汚染菌の除去を目的に行われる手洗いである[2][1]。特に爪の間の菌の除去のために爪ブラシを使用するとともにアルコールによる消毒も必要となる[2][1]。使い捨てのペーパータオルも多く用いられ、ペーパータオル によって水分をしっかりと取り去ることで付着微生物を少なくすることができるという研究結果がある[1]。
手術時手洗い編集
手術時手洗いは外科手術など最も清浄度が要求される環境において常在細菌の除去も目的に行われる手洗いである[1]。
病院などにおいて院内感染を確実に防ぐため手術前などの手洗いについては、完璧さが要求される。具体的には手を触れることのない蛇口の使用(自動給水方式またはペダル方式)、手洗い用の洗剤、石鹸、消毒液も自動滴下式を使用し、手拭はペーパータオルまたは熱風式を採用し、完璧に乾くまで行う必要がある。洗浄槽も跳ね返りの少ないものを使用し、定期的な消毒が必要である。
石鹸編集
薬用石鹸には皮膚の殺菌消毒用のデオドラントソープと肌荒れ防止用のメディカルソープの2種類がある。デオドラントソープには塩化ベンザルコニウムやイソプロピルメチルフェノール、トリクロサン等の殺菌剤成分が含有されている。またメディカルソープには肌荒れを防止する成分が含まれており、アセルイセチアンサン塩等の界面活性剤が洗浄成分として含有される。肌荒れ予防用のクリーム等の共同使用も避けるべきである。
強迫性障害と手洗い編集
強迫性障害の症状の一つに洗浄強迫というものがある。手の汚れが気になり、何度も洗わねばいられないという症状である。それを繰り返さないと不安がつのるため自分でもおかしいと思いながらもやめられない。治療にはSSRIなどをはじめとする抗うつ薬や、ベンゾジアゼピン系などのマイナートランキライザーを主とした薬物療法と並行して行動療法や認知行動療法などが有効である。
脚注編集
出典編集
関連項目編集
- 消毒
- センメルヴェイス・イグナーツ - 手洗いの意義の発見者。
- 手洗いに関連する疾患等 - 不潔恐怖症、強迫性障害、強迫神経症
外部リンク編集
- 手洗いの手順 - 厚生労働省((社)日本食品衛生協会平成24年度食品衛生指導員巡回指導資料より)