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木島日記』(きじまにっき)は、大塚英志原作、森美夏画による漫画、および、大塚英志の小説。

目次

概要編集

エースダッシュ』1998年5月号から連載がスタートし、その後『月刊エースネクスト』、『エース特濃』vol.1と掲載紙を変えながらを2003年まで連載されたが未完である。単行本は4巻まで刊行された。原作者の大塚英志によってノベライズもされ2巻まで刊行されている。2009年4月『』vol.0026より小説『もどき開口 木島日記完結編』連載中。

民俗学者折口信夫と仮面の仕分け屋・木島平八郎が主人公のオカルト伝奇ミステリー。

二・二六事件が起こり、右傾化し戦争へと向かいながら、オカルトや猟奇事件が跋扈する昭和初頭の複雑怪奇な世相が描かれる。

柳田國男が狂言回しの『北神伝綺』、小泉八雲が狂言回しの『八雲百怪』と同じ三部作の二作目である。

あらすじ編集

民俗学者・折口信夫博士は、偶然迷い込んだ古書店「八坂堂」で、自分の名前が無断で借用された偽書を発見する。そこには仮面を付けた店主・木島平八郎の信じられないような過去が書かれていた。それ以来、折口博士は奇妙な事件に巻き込まれるようになる。

登場人物編集

メインキャラクター編集

木島平八郎(きじま へいはちろう)
仮面を被った謎の男。かつては「人倫よりも知的好奇心を優先する」帝大の科学者組織「瀬条機関」の研究員だったが、恋人の死を受け入れられず、恋人の死体を使って「死人返り」の実験を行うが失敗、恋人の死体は爆発し、飛び散った肉片が顔にへばりついて離れなくなる。木島が仮面を被っているのは、この肉片を保護するため。
事件後、大学を離れ、偽書専門の古書店「八坂堂」を開くが、組織との繋がりは続いており、組織の研究や実験の結果発生したものを、この世に「あってはならないもの」とそうでないものに「仕分け」する「仕分け屋」をしている。
折口信夫(おりくち しのぶ)
日本民俗学の創始者の一人。國學院大學教授。極度の女性嫌いであり、同性愛者でもある。自分の母は産みの親ではなく、どこかに本当の母親がいるという妄想に憑かれている。
美蘭(メイファン)
満州のサーカスで発見された巫女の資質を秘める少女。アーヴィング博士の研究の実験材料として日本に連れてこられた。その後、一ツ橋と偽装結婚するが、一ツ橋が建国大学に赴任することになったため、折口の家に居候することになる。他人の心理に感応し易い余り、自分の存在価値を他人の中にしか見出すことができない。
土玉(どたま)
瀬条機関の研究員。木島が瀬条機関にいた時の同僚で、頻繁に八坂堂に顔を出し、木島と組織のパイプ役をしている。専門は「水死体の研究」である。食えない性格で、死体を見ても全く動じない。なお、「どたま」とは通称で本名は土玉理(つちたま さとし)である[1]
一ツ橋光治(ひとつばし みつはる)
陸軍中尉(後に大尉に)。通称「陸軍一の世渡り上手」。陸軍のあらゆる派閥にコネクションを持っている。瀬条機関ともつながりがあり、美蘭と偽装結婚する。
清水義秋(しみず よしあき)
陸軍少尉。二・二六事件の生き残り。事件後の粛清人事で処刑される事となり、本人もそれを望んでいたのだが、自称・友人の一ツ橋の勝手な尽力で不本意ながら生き続けることとなる。代償として、軍の汚れ仕事である瀬条機関とのパイプ役をやらされている。
アーヴィング
ユダヤ人の女性。神秘学者であるが、ナチスドイツの工作員でもある。ナチスの命を受け、様々な政治工作に従事している。ユダヤ人でありながらナチスの命令で行動しているのは、彼女にとって民族などというものは何の意味も無いからである。
安江仙弘(やすえ のりひろ)
陸軍大佐。関東軍特務機関長。ヨーロッパで迫害されているユダヤ人を満洲国に迎え入れ、国際問題であるユダヤ人問題を解決する事で満洲国を国際社会に承認させ、ついでにユダヤ人の潤沢な資本を満州国に投下してもらい日本がちゃっかり甘い汁を吸うことを狙った国家的陰謀である、暗号名「河豚計画」の推進者。問題を現実的に解決できれば細かいことはどうでもいいという大雑把でいい加減な性格で、五族協和にユダヤ人を加えて「六族協和」にしようと主張。軍の極秘国家計画を白昼堂々と大衆の前で演説する怪人。
根津(ねづ)
木島の助手の青年。殺人鬼であり、食人鬼である。瀬条機関のリーダー・瀬条教授の「人類三大タブー」の研究の産物。
瀬条景鏡(せじょう かげあきら)
東京帝国大学教授。瀬条機関とは帝大の彼の研究室を中心とした帝大の科学者組織である。あらゆる分野の研究者を傘下に置いており、軍とも密接な関係にある。信条は「人倫よりも知的好奇心を優先する」こと。

ゲストキャラクター編集

月(つき)
瀬条機関が某所より入手した人体実験用の少女。木島の恋人だったが自殺。死体の肉片が木島の顔にはりついている。
平賀譲(ひらが ゆずる)

海軍中将。「軍艦の神様」とよばれている。

カール・ハウスホッファー

ドイツの地政学者。瀬条機関の前身である緑竜会の創設メンバーの一人。ヒトラーのブレーンであったが、妻がユダヤ人であるためヒトラーに疎まれている。UFOの設計図を日本に持ち込み木島に「仕分け」を依頼する。

スパイM

変装の名人。骨と皮がゴムの様に変化する特殊な顔で、どんな人間にも変装できる。木島の依頼で仕分けを手伝うこともある。

単行本編集

小説版編集

漫画版とはストーリーや結末、人物名が一部変更されている。漫画版には登場しない「語り手」が登場しており、木島平八郎が自分の体験を小説化した「偽書」→それを送りつけられた折口信夫が、木島の体験に自分の体験を書き加えて何者かに口述筆記させた「ノート」→そのノートを古本屋で偶然見つけた語り手が、それをノベライズした小説版「木島日記」、とまるで伝言ゲームのような実験的な手法が試みられている。

小説版オリジナルの登場人物編集

“語り手”
現代日本の人物である男性。名前は不明。木島平八郎の顔と同じ位置に生まれつき痣がある。元は折口民俗学の研究者であったが、大学院生の時に些細な一言が指導教官の逆鱗に触れてしまったため、アカデミズムでのキャリアを断念せざるを得なくなり、現在は地方の短大の講師をしている。ある日古本屋で折口博士が記したともそうでないともとれる怪しげなノートを見つけ、その内容に惹かれた彼は、生活費を稼ぐために、そのノートをノベライズしたいいかげんな小説をミステリー雑誌に偽名で発表し始める。(ちなみに彼はそのノートが折口博士とは無関係の人物が創作した偽書ではないかと疑っている)

小説版の単行本編集

  1. 木島日記(角川書店:2000年:ISBN 4-04-873234-X、角川文庫:2003年:ISBN 4-04-419112-3。初出はKADOKAWAミステリ1999年11月号、12月号、2000年1月号、3月号〜5月号) - 第22回吉川英治文学新人賞候補作
  2. 木島日記 乞丐相(角川書店:2001年:ISBN 4-04-873327-3、角川文庫:2004年:ISBN 4-04-419118-2。初出はKADOKAWAミステリ2000年12月号〜2001年6月号) - 巻末に「キャラクターファイル」が収録されている。
※まんが版の『天地に宣る』のノベライズに相当する小説が『KADOKAWAミステリ』2002年4〜5、7〜11月号、2003年1、3月号に連載されたが同誌の休刊のため未完。未単行本化。

他の作品との関係編集

  • 多重人格探偵サイコ』に登場する「清水老人」と本作の「清水義秋」は同一人物である。
  • 瀬条機関は『サイコ』に登場する科学者グループ「学窓」の前身である。
  • 本作に登場するアーヴィング教授は『多重人格探偵サイコ』に登場する「ミセスてう」と同一人物。

モチーフ編集

  • 仮面で顔を隠した木島平八郎のビジュアルは、横溝正史の小説を原作とするテレビドラマ『犬神家の一族』の登場人物、犬神佐清からの着想とされる[2]
  • 第10話『身毒丸』作中で神隠しに遭う少年のモデルは、評論家の江藤淳である[3]。江頭淳夫は江藤淳の本名。

脚註編集

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  1. ^ 『木島日記 乞丐相』収録の「キャラクターファイル」より。また、一ツ橋・清水・アーヴィング・安江・瀬条のフルネームも小説版の1巻と2巻を参照してある。
  2. ^ 大塚英志『キャラクター小説の作り方』角川書店、2006年6月25日(原著2003年)、初版、45頁。ISBN 4-04-419122-0
  3. ^ 旧版の第三巻の「あとがき」より

関連項目編集