犬神家の一族

横溝正史による日本の小説
金田一耕助 > 犬神家の一族

犬神家の一族』(いぬがみけのいちぞく)は、横溝正史の長編推理小説。「金田一耕助シリーズ」の一つ。

犬神家の一族
著者 横溝正史
発行日 1972年6月
ジャンル 小説
日本の旗 日本
言語 日本語
ページ数 414
コード ISBN 4041304059
ISBN 978-4041304051(文庫本)
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横溝作品としては『八つ墓村』に並んで映像化回数が多い作品で、映画が3本、テレビドラマが7作品公開されており、特に市川崑監督による1976年公開の映画版は、メディアによって「日本映画の金字塔」と称されることもある[1]

概要編集

雑誌『キング』に1950年1月号から1951年5月号まで掲載された作品。『獄門島』のように殺人に一つひとつ意味を付与して欲しいとの編集サイドからの注文に応じ、家宝の「斧、琴、菊(よき、こと、きく)」[注釈 1]による見立て殺人が考案された。

当時、横溝は初回を激賞した編集長から「作品を3年続けて欲しい」と要望されたものの、それだけの大長編を書く準備がなかったため断らざるをえなかったが、「この言葉には非常にやる気が出た」と後年語っている。

当初は通俗長編であるとして、権田萬治による『日本探偵作家論』(1975年)などに見られるように専門家の評価は低かったが、1976年角川春樹の鶴の一声での映画化と、横溝正史シリーズの第一作としてのテレビドラマ化とで人気が一気にあがった。また、当初は欠点とされていた犯人とトリック全体の関連性なども、むしろ時代の先取りとして評価する声も少なくない。作品中の犯人の「無作為の作為」が田中潤司をはじめ推理小説研究家の間で見直され、田中は「金田一もの」のベスト5を選出した中で、本作を『獄門島』『本陣殺人事件』に次いで第3位に挙げている[3]。「東西ミステリーベスト100」(『週刊文春』)2012年版国内編で、本作品は39位に選出されている[注釈 2]

 
湖で発見される遺体のイメージ

本作の映画化を皮切りに、旧作が次々に映画化、復刊された。作者はこのとき70歳を過ぎていたが、世間の期待に応えるように旺盛に新作を発表し、1981年に没する直前まで書き続けた[4]

本作をモチーフにしたキャラクターや演出は後年に渡って広く知られ、漫画、アニメ、ゲーム、ドラマなどさまざまなメディアで数多く制作されている。それらの中には、「ゴムマスクを着用した佐清の容姿や名称」「大股開きで逆さまになって下半身だけ露出した死体」[注釈 3]「犬神家をもじった名称の一族による遺産騒動」などの共通性を持つものが多い。

あらすじ編集

昭和20年代のとある年(具体的な年が分からない点は後述)の2月、那須湖畔の本宅で信州財界の大物・犬神佐兵衛(いぬがみさへえ)が裸一貫の身から興した製糸業で築いた莫大な財産を残し、家族に見守られながら他界した。その遺産の配当や事業相続者を記した遺言状は、一族全員が揃った場で発表されることになっており、長女松子の一人息子佐清(すけきよ)の戦地からの復員を待つところとなっていた。佐兵衛は生涯に渡って正妻を持たず、それぞれ母親の違う娘が3人、皆婿養子をとり、さらにそれぞれに息子が1人ずついたが、お互いが反目し合っていた。

同年10月、金田一耕助は東京から単身で犬神家の本宅のある那須湖畔を訪れた。犬神家の顧問弁護士を務める古館恭三の法律事務所に勤務する若林豊一郎から、「近頃、犬神家に容易ならざる事態が起こりそうなので調査して欲しい」との手紙を受け取ったためであった。那須ホテルを宿泊拠点とした金田一は、湖畔から犬神家の豪邸を望んでいたところ、犬神家に寄寓している野々宮珠世の乗っているボートが沈みかかっているのを目撃し、犬神家の下男の猿蔵とともに珠世を救出する。ボートには穴が開けられており、猿蔵の語るところによると、珠世が何者かに狙われたのはこれで3度目だという。その後、金田一がホテルに戻ったところ、若林が何者かによって毒殺されていた。知らせを聞いて駆けつけた古館の語るところによると、どうやら若林は犬神家の誰かに買収されて、法律事務所の金庫に保管している佐兵衛の遺言状を盗み見てしまったらしい。先行きに不安を感じる古館の依頼で、金田一は犬神家の遺産相続に立ち会うこととなった。

そんな中、ビルマの戦いで顔に大怪我を負いゴムマスクを被った姿で佐清が復員した。佐兵衛の遺言状は古館弁護士によって耕助の立ち会いのもと公開されることになるが、その内容は

「全相続権を示す犬神家の家宝“斧(よき)・琴(こと)・菊(きく)”の三つを、野々宮珠世(佐兵衛の終世の恩人たる野々宮大弐の唯一の血縁、大弐の孫娘)が佐清、佐武、佐智の佐兵衛の3人の孫息子の中から配偶者を選ぶことを条件に、珠世に与えるものとする」

というものであった。さらに、珠世が相続権を失うか死んだ場合、犬神家の財産は5等分され3人の孫息子は各5分の1ずつを相続し、残り5分の2を佐兵衛の愛人・青沼菊乃の息子の青沼静馬が相続することを聞き及んで、3姉妹の憎悪と怒りは頂点に達する。

こうして3姉妹の仲はいよいよ険悪となり、珠世の愛を勝ち得んとしての争いが始まる一方、佐清は偽者の嫌疑をかけられ、手形(指紋)確認を迫られるが、松子がこれを拒否する。

そんな中、佐武が生首を「菊」人形として飾られて惨殺されると、一転して佐清が手形確認に応じ、佐清本人であることが確認される。同じころ、下那須の旅館に顔を隠した復員服の男が宿泊し、べっとりと血の付いた手ぬぐいを残して立ち去っていた。そして、佐武の通夜の後、珠世の寝室から復員服の男が現れ猿蔵ともみ合った後、逃走する。

その後、佐智が珠世を襲おうとして失敗した後、何者かに首を絞められて殺される。そして、その首に「琴」糸が巻き付けられていたことを聞いた松子、梅子、竹子の3姉妹は、家宝の斧・琴・菊と、佐兵衛の愛人・青沼菊乃とその息子の静馬にまつわる秘密を明かす。30年前、佐兵衛が菊乃に入れ込んだ挙句、犬神家の家宝の斧・琴・菊を渡してしまい、さらに菊乃が男児を出産した[注釈 4]ことを知った3姉妹は菊乃を襲撃した。3姉妹は彼女を激しく折檻した挙句、赤ん坊の尻に焼け火箸をあてがい、遂に観念して斧・琴・菊を差し出す菊乃に対し、さらに赤ん坊は佐兵衛の子どもではなく情夫の子どもであると無理やり一札書かせた。しかし、菊乃は「いつかこの仕返しをせずにはおかぬ。いまにその斧、琴、菊がおまえたちの身にむくいるのじゃ。」と言い放ったのだという。

事件の発生年について編集

本作は、一個人の遺言状が惨劇を引き起こす物語となっているが、1947年(昭和22年)に施行された日本国憲法の下で改正された民法遺留分制度により、遺言状の効力には法的限界があるため[注釈 5]、事件発生年が問題とされることがある。原作では事件の起きた年を「昭和2×年」とぼかしているが、下に示すように登場人物の年齢が1949年(昭和24年)を基準に設定されていることから、この年が事件発生年であると推定できる。

  • 野々宮珠世は1924年大正13年)生まれで事件当時は26歳。
  • 犬神佐清は奉納手形に「昭和18年 23歳、酉年の男」と書き記しており、事件当時は29歳。
  • 犬神佐兵衛は17歳のときに野々宮大弐に保護され、事件が起きる半年前の2月に81歳で死去している。これだけでは年代を特定できないが、出会ったときに42歳であった野々宮大弐が1911年明治44年)に68歳で死去しているので、佐兵衛と大弐の邂逅は1885年(明治18年)だったことがわかる。つまり、佐兵衛が81歳で死亡したのは1949年(昭和24年)となる。

注:登場人物の年齢は数え年である。

映像化作品では、1976年版が1947年(昭和22年)とし、1977年版、1994年版、2004年版、2006年版がこの設定を踏襲している。1990年版は1949年(昭和24年)の設定であり、2018年版と2020年版は年を明記していない。なお、1970年版は時代設定を変更している。

登場人物編集

金田一耕助(きんだいち こうすけ)
飄々とした私立探偵

犬神家編集

犬神 佐兵衛(いぬがみ さへえ)
犬神財閥の創始者。信州財界の巨頭であり、製糸業などで巨万の富を築いたことから「日本の生糸王」と呼ばれた。享年81。
元は放浪の孤児であり、信州那須神社神官野々宮大弐に、17歳の頃拾われ養育された。若い頃は玉のような美少年だった。
生涯正妻を娶らず、娘の松子、竹子、梅子はそれぞれ違う女との間に生ませた子である。

犬神松子の家族編集

犬神 松子(いぬがみ まつこ)
佐兵衛の長女。先年、夫とは既に死別している。52 - 53歳ほど。
いつも凛とした佇まいをしていて勝気。細いながらも竹のように強靭な体格。1人息子の佐清を溺愛している。
犬神 佐清(いぬがみ すけきよ)
松子の1人息子。29歳。優しく律儀な性格で懐中時計の修理ができるほど器用。
元は美青年だったがビルマの戦いで顔に怪我を負って復員してきたため、松子が東京で作らせたゴム製のマスクを被り、犬神家へ戻ってきた。
実はマスクを被った佐清は青沼静馬が成り代わった偽者で、本物の佐清は復員した後静馬が自分になりすまして家に戻ったことを知り、離れた場所から様子を窺っていた。
静馬の顔に火傷があることが分かり、また、祖父の佐兵衛から青沼親子の悲惨な過去を聞いて同情しており、なるべく事を荒立てずに静馬と入れ替わり、彼にも出来るだけの財産を分与したいと考えていたが、事件の渦に巻き込まれ叶わなくなる。

犬神竹子の家族編集

犬神 竹子(いぬがみ たけこ)
佐兵衛の次女。小太りで小山のような体型。直情的な性格である。
3姉妹はそれぞれ仲が悪いが、仮面の佐清を松子がでっちあげたという疑いを共有したため、妹の梅子と結託する。
犬神 寅之助(いぬがみ とらのすけ)
竹子の夫。赤ら顔の大男。犬神製糸東京支店長。
犬神 佐武(いぬがみ すけたけ)
竹子の息子。28歳。両親似で衝立のような体形。性格も傲岸不遜で態度が大きい。
佐清の手形合わせの話で呼び出された珠世に強引に関係を迫るが、猿蔵に妨害されて未遂に終わる。
犬神 小夜子(いぬがみ さよこ)
竹子の娘。22歳。珠世ほどではないが美人。多少気が強いものの大人しい性格。
従兄の佐智とは結婚前提の恋人同士で梅子夫婦公認の仲。佐智の子を妊娠しており、珠世には佐智を結婚相手に選ばないように牽制している。事件後、佐智が殺害されたショックで精神の平衡を崩してしまう。

犬神梅子の家族編集

犬神 梅子(いぬがみ うめこ)
佐兵衛の三女。3姉妹の中では一番美人だが、一番底意地が悪い。
1人息子佐智に当初は佐兵衛翁から相続できる遺産を増やすため、小夜子に取り入って結婚するように指示していたが、遺言状公開後、小夜子に遺産の取り分がないと分かると息子に小夜子から珠世に乗り換えて結婚するように指示する。
犬神 幸吉(いぬがみ こうきち)
梅子の夫。小柄で色が白く、一見柔和そうな顔つきだが、よく動く黒目から腹黒さがうかがえる。犬神製糸神戸支店長。
犬神 佐智(いぬがみ すけとも)
梅子の息子。27歳。ほっそりして華奢な体格。一見落ち着きがなく臆病そうだが狡猾。祖父からの遺産増額が目当てで従妹の小夜子と結婚を前提に交際している。
梅子から遺産相続のため、結婚相手を小夜子から珠世に乗り換えるよう指示されて以降、珠世に媚態の限りを尽くす。既成事実を作り自分と結婚する以外の選択肢を封じるため、珠世を薬で眠らせて手篭めにしようとしたが、現場に潜伏していた「影の人」を名乗る顔を隠した復員風の男から妨害され、またその男から電話を受けた猿蔵が珠世を救出に来て失敗に終わる。

野々宮家編集

野々宮 珠世(ののみや たまよ)
犬神佐兵衛の恩人・野々宮大弐の孫。26歳。頭がよく勘も鋭いが、長い孤独な境遇のため他人に本心を明かさぬところがある。
20歳前に両親を相次いで亡くし、大弐を終生の恩人と慕う佐兵衛によって犬神家に引き取られた。何者かが仕掛けた罠に3度も掛かるが、危機一髪で助かった。佐兵衛の遺言で、犬神家の遺産相続の鍵を握ることとなった。
野々宮 大弐(ののみや だいに)
那須神社の神官。珠世の祖父。故人。犬神佐兵衛の恩人。
42歳の頃、佐兵衛少年を拾う。美少年だった佐兵衛との間には衆道の契り(男色関係)があったと地元では噂されている。
野々宮 晴世(ののみや はるよ)
大弐の妻。珠世の祖母。故人。夫より20歳も若く、大弐が佐兵衛を救った時は22歳で、大弐が男色家であったため処女妻であった。心優しく、神々しいばかりの美女であった。
夫が佐兵衛ばかりを寵愛したため一時実家に帰っていたことがあり、佐兵衛が野々宮家を出て以後、野々宮家に戻り祝子を産む。
野々宮 祝子(ののみや のりこ)
野々宮夫妻の娘で、珠世の実母。故人。
猿蔵(さるぞう)
珠世の世話役の下男。
もとはみなしごだったため、子供の頃から祝子によって珠世と共に育てられ、珠世が犬神家に引き取られると、下男として犬神家に入った。珠世に非常に忠実で、生前の佐兵衛から“命に代えても珠世を守れ”と命じられているため、珠世の身辺の世話だけでなく護衛も務め、作中でたびたび珠世を助ける。
「猿蔵」というのは猿に似ていることから付けられた通称で、本名は作中では明らかにされていない。
粗野かつ無口で少し思慮が足りないが、力が強く、佐武や佐智も持て余している。

青沼家編集

青沼 菊乃(あおぬま きくの)
佐兵衛が50歳を越したときに持った愛人。女工だったが、18 - 19歳の頃に囲われる。年齢は松子より若い。実は野々宮晴世のいとこの娘に当たることが遺言公表後の追加調査で明らかになった。
佐兵衛から相続権を示す家宝を与えられていたが、それを知った松子たちに暴力を振るわれ、力づくで取り戻されてしまう。その後、富山の遠い親戚に当たる津田家を頼り、静馬を預けたところまでは古館弁護士ら関係者が把握していたが、その後の消息は不明だった。
青沼 静馬(あおぬま しずま)
菊乃と佐兵衛の息子。富山にある母の遠縁の津田家に養子に出されており、戸籍名は津田静馬。年齢は甥・佐清と同じ29歳。
津田家から中学に通い、卒業後就職。21歳で徴兵され、その後数度の除隊と応召を繰り返す。その後の消息は不明だった。ビルマの別の部隊にいた自分とよく似ているという佐清の存在を知り、対面すると意気投合し友人となる。
後、戦場で佐清の部隊が全滅したことを知ると、佐清が死んだと思い、また自身も顔に深い火傷を負ってしまう。
母を襲撃した佐清の母、松子のことは根深く恨んでおり、顔の怪我を利用して佐清になりすまし犬神家の財産を手に入れることで復讐しようと画策する。
元々は穏やかな性格であったが、戦場であらゆる状況に対する判断能力や知恵を身につけており、松子の殺人を復讐に利用するよう見立て、またマスクを利用して佐清と巧みに入れ替わり奉納手形の照合を切り抜ける等、機転が利く。
自身の姪にあたる珠世との結婚を拒み、守るべき一線は守り、また香琴が母・菊乃であることに気付いており、思い遣りを見せる等母思いな面を持つ。

系譜編集

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
犬神佐清
 
 
 
 
 
 
 
 
犬神松子
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
寅之助
 
 
犬神佐武
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
犬神佐兵衛
 
 
犬神竹子
 
 
犬神小夜子
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
幸吉
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
犬神佐智
 
 
 
 
 
 
 
 
 
犬神梅子
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
青沼静馬
 
 
 
 
 
 
 
青沼菊乃
 
野々宮大弐
 
 
 
 
 
野々宮祝子
 
野々宮珠世
 
 
 
 
晴世

その他の関係者編集

古館 恭三(ふるだて きょうぞう)
弁護士。古館法律事務所所長。犬神家の顧問弁護士。
佐兵衛より、遺言状の管理を任されていた。殺された若林豊一郎に代わり、金田一耕助に調査を依頼する。やがて金田一耕助に親愛の情を抱くようになる。
若林 豊一郎(わかばやし とよいちろう)
古館法律事務所に勤務。
犬神家の遺産相続問題に関して金田一に捜査依頼をするが、金田一と会う前に毒殺された。
大山 泰輔(おおやま たいすけ)
那須神社の現在の神主[注釈 6]
神社の宝蔵から野々宮大弐と犬神佐兵衛が残した封印文書群が入った唐櫃を発見し、秘められていた事実を明らかにする。
宮川 香琴(みやがわ こうきん)
松子のの師匠。目が怪我で不整形になっていてかつ不自由。
実は行方不明になっていた青沼菊乃。同じく琴の師匠をしていた宮川松風と親しくなって正妻の死後に事実上の妻となり、戸籍を動かすことで消息が知れるのを恐れて入籍はしなかったが、周囲は正式の妻と思っていたため宮川姓を名乗るようになった。事件の2年ほど前まで那須付近を回っていた師匠が中風で倒れて代稽古を務めることになってしまったが、名前が違ううえ風貌も変わっていたので松子には気付かれなかった。
橘(たちばな)
那須警察署の署長
藤崎
那須警察署の鑑識課員。
ゴムマスクを被った佐清の手形を那須神社に奉納されていたものと照合した。
楠田
那須病院の院長。
警察嘱託医として、殺人被害者の検死と解剖を担当した。
志摩 久平
下那須の宿屋「柏屋」の主人。
顔を隠した不審な復員兵が宿泊していたことを警察に届け出た。

映像化作品(共通事項)編集

映像作品(特に1976年版映画)での「波立つ水面から突き出た足」のシーンが有名であるが、原作では季節が初冬で湖面は凍った状態、死体はパジャマを着たまま、湖に突っ込んでいるのはヘソから上である。「斧、琴、菊」の見立て殺人の最後に残った「斧(ヨキ)」について、原作では屋敷から斧やそれに類する道具が一切処分されていたため、犯人は佐清(スケキヨ)を絞殺した後、さかさまにして下半身だけを見せることによって「ヨキ(ケス)」を表現している(この判じ物はすぐに金田一によって解かれている)。しかし1976年版映画や1977年版テレビドラマなど知名度の高い映像作品で、原作の設定を無視して斧を殺害の凶器とし、「判じ物」を必要とした理由が解らなくなっている。

また佐清のゴムマスクは、原作では美男子だった佐清の顔をそのまま写したもので、視力の衰えた宮川香琴が初めて見たときすぐさま仮面とは分からなかったという描写があり、1970年版テレビドラマではその描写に従っているが、1976年版映画で頭から首まですっぽり覆うものに変更され、この変更がその後の映像化(2020年版テレビドラマを除く)でも踏襲されている。また、原作における製作経緯や上述の描写からはマスクは自然な肌の色と推測できる(佐智殺害後の描写に「白い仮面」とあるが「白っぽい」意味と考えられる)が、映像作品では真っ白なマスクとしていることが多い。なお、1954年版映画ではずっと頭巾をかぶっている。

原作の重要なトリックの1つに佐智が監禁場所から自力脱出し殺害後に戻されたというものがあるが、映像作品で採用しているのは1970年版と2004年版のテレビドラマのみである(1977年版テレビドラマは監禁場所で殺害、2020年版テレビドラマは殺害場所が不明確、他は死体発見場所が異なる)。

原作の印象的な場面の1つに、佐清が犯人は自分であると印象づけるために雪山で警官隊と銃撃戦を演じたあと自殺を図るというものがあるが、1度も映像化されていない。雪山という状況を排した銃撃戦も、初期の1954年版映画や1970年版テレビドラマの他には2018年版テレビドラマで映像化されているのみである。

映画編集

1954年版編集

犬神家の謎 悪魔は踊る』は1954年8月10日に公開された。東映、監督は渡辺邦男、主演は片岡千恵蔵

1976年版編集

1976年10月16日に公開された。角川春樹事務所、監督は市川崑、主演は石坂浩二

1980年代にかけて一世を風靡することになる角川春樹事務所の第1回映像作品であり、金田一耕助を初めて原作どおりの着物姿で登場させたことでも知られる。

2006年版編集

2006年12月16日に公開された。東宝、監督は市川崑、主演は石坂浩二。

1976年版と同一の監督・主演によって30年ぶりにリメイクされたものである。

テレビドラマ編集

1970年版編集

蒼いけものたち』は、日本テレビ系列の「火曜日の女シリーズ」(毎週火曜日21時30分 - 22時26分)で1970年8月25日から9月29日まで放送された(全6回)。

基本設定を大きく変えているため原作通りでない部分が多いが、個々の場面の情景を細かく再現しようとしている。「斧琴菊」に相当する「見立て」は無いが、犯行手順に関するトリックは基本的に原作通りである。原作通りの指紋確認のほか、胸の痣を確認するためにもう1回、仮面の男の実体が入れ替わる。

  • 金田一は登場せず、登場人物の氏名は多くが変更されており、特に苗字が原作通りの人物は無い。3姉妹は「松竹梅」から「雪月花」に変更されている。弁護士・館野(原作の古館)が金田一の役割の多くを担っている。
  • 時代を制作当時に設定し、舞台を東京都の山間部に存在する設定と思われる「新多摩町」に変更している。
  • 美矢子(原作の珠世)が東京の裏町で小学4年生の弟・武と二人で暮らしていたところ、館野の訪問を受け、25年前の東京空襲のときに亡父に助けられたという土地成り金の老人・富岡佐兵衛の遺言状開示に出席するよう求められる。遺言状には3人の孫、清文、武臣、智和のうちの1人との結婚を条件に遺産が譲られるとあった。選択期限は原作より短い1箇月である。
  • 3姉妹は遺産獲得に執念を燃やすが、3人の孫は冷静に構えている。
  • 三枝菊乃(原作の青沼菊乃)を佐兵衛がいつのまにか正式の妻にしていたため、美矢子が相続権を失った場合に当時の民法の規定(庶出子の法定相続分は嫡出子の半分)により原作通り修平(原作の静馬)が他に倍する遺産を得ることになる設定としている。
  • 清文(原作の佐清)は、報道カメラマンとしてカンボジア内戦を取材中にゲリラに誘拐されて顔を負傷したためゴムマスクをかぶっているという設定になっている。ゴムマスクは眉毛まで生えている肌色のもので一見すると仮面とはわからない(原作と同様)。
  • 武臣(原作の佐武)は蝶の研究者で武と意気投合する。研究のために遺産が欲しいと正直に打ち明ける武臣に美矢子は好意を持つが、最初に殺害されてしまう。
  • 智和(原作の佐智)は職場が美矢子と隣同士だったことが判明する。美矢子が着替えを取りに東京へ戻るとき智和も東京に用件があって同道する展開がある。以前から「恋人未満」の関係だった富岡家の女中・小夜子は、廃屋(山小屋)で美矢子が待っていると偽って智和を呼び出し関係を迫ったうえ、脳震盪を起こした智和を柱に縛りつけて、3姉妹が美矢子に配偶者選択を迫る場に参加させないようにする。しかし、縛りつけた場所で智和の死体が発見され、小夜子は後追い自殺する。
  • 清文はカンボジアでの誘拐の経緯からスパイ容疑をかけられ、軍用機で帰国し在日米軍基地から脱走していたため大っぴらに行動できなかった。
  • 原作と違って清文と美矢子には元々の接点が無いため、最後は清文が結婚を拒絶することにより美矢子が配偶者を選ぶ義務から解放される。ラストシーンは館野と美矢子が結ばれることを匂わせる演出で終わる。
キャスト

※「水川」の読みは「みなかわ」

スタッフ

1977年版編集

横溝正史シリーズI・犬神家の一族』は、毎日放送(MBSテレビ)と角川春樹事務所(旧法人)の共同企画、大映京都の製作によりTBS系列1977年4月2日から4月30日まで毎週土曜日22時 - 22時55分に放送された。

テレビドラマ版において金田一耕助を最も多く演じている古谷一行が初めて金田一役を演じたのが本作であり、初放映時の最高視聴率は40.2パーセントであった[5]

CMに移る前に「よき、こと、きく…」と佐兵衛仏前の紋章の画面になる。また各回の終わりに金田一耕助がコケるシーンになる。

概ね原作通りに進行するが、いくつかの要素が省略されている一方で、原作に無い(原作と積極的には矛盾しない)細かい設定(会話のやりとりなど)が多数追加されている。原作からの主な変更点は以下の通りである。

  • 青沼菊乃は病死していると判明しており、宮川香琴は全く登場しない。3姉妹が青沼菊乃を襲撃したとき静馬は記憶が明確に残る程度にまで成長しており、梅子が静馬を押さえつけて松子が胸に火傷を負わせる。
  • 金田一は若林を訪ねてまず古館の事務所を訪れ、古館の紹介で那須ホテルへ宿泊しており、若林殺害後には警察へ連行される前に那須ホテルの女中に若林の手紙を古館へ届けさせていた。そのため、古館は早い段階で金田一のことを把握している。
  • 金田一が最初に珠世を見たときボート上では事故は起こらず、猿蔵が運転する自動車で帰ろうとした途端にブレーキ故障で事故となり、金田一が駆けつける。このとき猿蔵は事故が3回目で、うち1回は原作通り「寝室の蝮」だと発言しているが、残る1回の内容は判らない。
  • 家宝はそれ自体が斧琴菊の形ではなく、斧琴菊が彫刻されている。
  • 佐清(静馬)のゴムマスクは白色で、佐清の顔ではなく能面を模した物になっている。
  • 佐清(静馬)は通常は手袋をしており、時計を触るときには手袋越しでは巧くいかず手袋を外した。
  • 佐武の胴体はボートに載せられた状態で発見され、大量の菊で飾られていた。
  • 佐清は佐智に顔を見られてしまったため静馬に殺害を命じられる。しかし旧宅へ戻ったところ、松子が拘束されている佐智を絞殺してしまった(松子が旧宅へ行った理由や松子自身のアリバイが成立した理由は不明)。そのため佐清は琴糸を巻きつける工作のみを行ったが、動転して佐智の位置を変えてしまい、絞殺の際にかぶせていた上着も元に戻し忘れた。なお、佐智が一旦自力で脱出して本宅へ戻る設定は無い。
  • 猿蔵は珠世の不在に気付いて旧宅まで探しに行って発見しており、佐清からの連絡があったわけではない。猿蔵が佐智を置き去りにして珠世を連れ帰ったことが判明したあと、旧宅へは梅子や珠世も同行した。小夜子が発狂する設定は無い。
  • 3姉妹の母親たちの部屋(佐兵衛の死まで開かずの間になっていた)が描写されている。松子が自分の母の寝室で佐兵衛が苦手としていた麝香を能面に焚き染め、その能面を犯行時に着用していたため、佐智殺害現場の上着にも麝香の匂いが残っていた。
  • 佐清と静馬は同一小隊に居た設定である。佐清は将校ではなく下士官だったが、結果的に負傷した静馬を置き去りにする形になってしまい、それも負い目になっていた。
  • 大山神主は佐兵衛の過去を悲劇拡大防止のために確認したいという金田一と古館の強い依頼で封印を解き、大山自身も文書の内容を初めて見る。原作通り珠世が佐兵衛の孫であることが判明するが、それは公表されない。したがって、静馬が珠世と叔父姪の関係と知って結婚を目指せなくなり窮する設定も無く、佐清との結婚を迫る松子に対して珠世が佐清(静馬)に対する漠然とした違和感を理由に回答を保留する展開となる。不安を抱いた松子は佐清(静馬)の背嚢を探って青沼菊乃の写真を所持していることを知り、持ち出して佐兵衛の遺影の前で焼き捨てる。そのあと静馬が松子に屈服を迫って斧で殺害される。遺体には「スケキヨ」の文字が書かれて「ヨキケス」の見立てが解りやすくなっていた。
  • 佐清は松子の舞を珠世が見ているところへ現れ、その直後に逮捕される。派手な雪中逃走劇は展開していない。
  • 松子は犯行を認めたあと支度をするといって自室に戻り、誰にも見られずに毒煙草で自殺した。
キャスト

1990年版編集

横溝正史傑作サスペンス・犬神家の一族』は、テレビ朝日系列1990年3月27日の火曜日19時2分 - 21時48分に放送された。

本作の金田一は、白いスーツにハンチング帽、丸メガネという出で立ちで、池田明子という“助手”を連れている。

  • 昭和24年という設定であり、地名が長野県小沢(こざわ)市犬神町となっている。
  • 若林は金田一を東京に訪ねて調査を依頼しており、殺害されたときには初対面ではなく単に打ち合わせの予定だった。
  • 佐武は指紋や血液型の研究者でイギリス留学の経験があり、佐智は神戸の犬神興産、寅之助は大阪の犬神不動産、幸吉は静岡の犬神製薬研究所を任されている。佐清、佐武、佐智は全員同年齢である。
  • 珠世の頭上から多数の斧が落下したり、ボートに開けた穴に琴爪が詰められていたり、殺害された若林の口に菊花が咥えさせられているなど、最初から「斧琴菊」が強調されている。また、佐武は琴糸で絞殺されたうえ斧で首を切られて菊人形になり、佐智は菊花を付けたハサミで刺殺されたうえ斧を刺した木に琴糸で宙吊りになり、いずれも各々に対して「斧琴菊」がまとめて表現されている。
  • 佐清は弓の名手であり、珠世が正体を見極める手段とするほか、佐智に拉致された珠世の行方を猿蔵に知らせる際にも弓矢を使っている。
  • 佐智はボートに乗って岸近くにいた珠世に自動車で近づき、佐清が死んだと偽って珠世を廃屋へ連れて行ってから殴って昏睡させている。
  • 松子は若林殺害時に悪魔の手毬唄風の老婆に変装して毒茶を直接飲ませており、時間差トリックは用いていない。佐智殺害時にも老婆に変装していた。
  • 宮川香琴は青沼菊乃本人ではなく妹である。菊乃が静馬を連れて金沢へ移り数年経ってから3姉妹が乗り込んで「斧琴菊」を奪還しており、菊乃はそのときの傷が元で死んだ。香琴は松子に買収されてアリバイ工作(佐武殺害と佐智殺害の両者とも)に協力し、後で暴露することで復讐を果たした。
  • 菊乃は古館弁護士の恋人だったのを佐兵衛が奪い、古館は見返りに開業資金を提供されていた。担当の警察関係者も犬神家に恩恵と恨みを併せ持っている。
  • 松子は最初から静馬を佐清の偽物と知ったうえで相続権のために受け入れており、竹子や梅子も息子の死よりもそれによる相続権喪失を悲しむなど、3姉妹が財産に執着している。
  • 佐清による事後工作は静馬に強いられたわけではなく自分の意志によるもの。静馬は佐清が戦死せず生きていることを最後まで知らず、指紋照合も静馬がマスクを外して入浴している間に佐清が勝手に行っていた。
  • 大弐と佐兵衛の男色や、佐兵衛と晴世の公認不倫の設定は無く、したがって珠世が実は佐兵衛の孫という設定も無い。また、静馬の素顔が佐清に瓜二つという設定も無い。
キャスト(エンドクレジット順)
スタッフ

1994年版編集

横溝正史シリーズ5・犬神家の一族』は、フジテレビ系列2時間ドラマ金曜エンタテイメント」(毎週金曜日21時 - 22時52分)で1994年10月7日に放送された。

舞台は岡山県香賀美市で、野々宮珠世の実家は市内の鏡美神社である。東京に関わるエピソードは全て神戸に変更されている。

  • 松子、竹子、梅子は佐兵衛の愛人で犬神姓を名乗れない設定、佐清、佐武、佐智は異母兄弟、珠世も野々宮大弐・晴世の娘である。佐兵衛は晴世に思慕の念を抱いていたものの、珠世が実は佐兵衛の末裔という設定ではない。
  • 青沼菊乃は静馬出産後に殺害されていることが冒頭で明示される。犯人不明だったが、正妻の座を狙った菊乃が佐清を誘拐、取り戻そうとした松子の目前で殺害しようとしたため、過剰防衛で殺害した松子の単独犯行であることが終盤で明らかになる。「よきこときく」は佐兵衛が菊乃殺害疑惑を表現したもので、凶器、松子、菊乃を示していた。
  • 古舘弁護士は2代にわたる犬神家顧問で、先代の名が古舘恭三、当代は金田一の戦友である。遺言状は内容を知らずに預かっていた。若林は登場しない。
  • 佐兵衛の女性関係は無節操だったという設定で、金田一は古舘の紹介で松子に依頼され、佐兵衛の愛人たちに隠し子が無いかどうか調べているうちに事件が発生した。
  • 遺言状に青沼静馬の名は出てこず、珠世が相続権を失った場合には財産は国庫帰属、事業は岡山経済同友会で競札することになっている。
  • 佐武の首は菊人形にはなっておらず、単に菊の盆栽と並べられていた。
  • 佐智は珠世がボートで岸近くに出て寝ているところへ自動車で現れて岸へ呼び、麻酔薬をかがせて工場跡へ連れ込む。猿蔵は佐清がボートに残したメモに従って珠世の救出に向かった。
  • 佐智の死体は給水塔の屋根から逆さに吊されていた。
  • 佐清になりすましていた静馬は松子の寝こみを襲うが、揉み合っていて頭を撲られて倒れ、戦時自決用の毒薬を無理矢理飲まされた。
  • 佐武と佐智の殺害実行犯は静馬で、佐清の犯行と考えた松子が事後処理をしていた。

※「古館」の字体は「古舘」

キャスト

2004年版編集

金田一耕助シリーズ・犬神家の一族』は、フジテレビ系列の「プレミアムステージ」(毎週土曜日21時 - 22時54分)で2004年4月3日に放送された。

  • 冒頭の「誰も知らない金田一耕助」というドラマオリジナルで、『本陣殺人事件』の冒頭で言及されていた金田一のアメリカ時代のエピソードが描かれた。
  • 青沼菊乃は既に死亡しており、青沼菊乃=宮川香琴という設定はない。
  • 1976年の映画版でも描かれた佐清(実際は静馬)のゴムマスクを作る過程の回想シーンが今作でもある他、仮面師が静馬の顔に型を取るための粘土を塗る、それとは別に佐清の写真を基に顔の造形を手掛ける、型が完成すると樹脂を入れて固まる面積を増やすために左右に揺らす、樹脂が固まってゴムマスクが完成すると型から剥がして佐清を模したマスクを裏返すという細かいシーンが不気味に描かれている。
キャスト
スタッフ

2018年版編集

スペシャルドラマ『犬神家の一族』は、2018年12月24日21時30分 - 23時33分にフジテレビ系列で放送された[6]

  • 大弐と佐兵衛の男色や、佐兵衛と晴世の公認不倫のエピソードがカットされたため、珠世が実は佐兵衛の孫という設定も無くなり、単に恩人の孫を養子として引き取っただけになっている。その結果、原作や他の映像化作品に見られる過去の因縁の忌まわしさという部分はやや薄れている。
  • 原作では明らかでない橘署長と藤崎鑑識課員のフルネームが、テレビ局が公表した登場人物相関図に記載されている。
  • 犬神小夜子は登場しない。
  • 佐智は岸辺にいた珠世に近づいて手を組むことを持ちかけ、断られると追いかけて麻酔薬を嗅がせ、近くの廃屋へ徒歩で連れ込んで強姦未遂に及ぶ。
  • 佐智の死体は殺害場所の近くの木に吊るされていた。
  • 青沼静馬は金槌で撲殺され、遺体は珠世が疑われる可能性を松子に指摘された猿蔵が遺棄した。猿蔵は愚者を装っているが、実は「ヨキケス」の見立てを発案できるほどの知恵があった。
  • 佐清が警官隊の目前で自殺しようとする展開は原作通りだが大幅に簡略化されており、珠世を「殺す真似」もしていない。自殺を止めたのは猿蔵である。
  • 宮川香琴=青沼菊乃という設定はカットされている。
  • 佐清が顔を隠して宿屋に泊まる設定がカットされている。
  • 静馬の素顔は上唇がなくなってしまっているほど凄まじいものとなっている。
  • 静馬は美味い酒と煙草好きという設定になっている。
キャスト
スタッフ
その他

2020年版編集

シリーズ横溝正史短編集II「金田一耕助踊る!」犬神家の一族』は、2020年2月1日NHK BSプレミアムにて29分の短編ドラマとして放送された[11]

短編とするため大幅に省略しているが、科白を全て原作から抽出した文言としている(ナレーションは用いていない)。しかし、科白に伴う回想シーンを比較的リアルな画面に切り替えているのを除いて、ほぼ全編を1つの座敷内またはその座敷の周辺の空間で、演劇の立ち稽古(読み合わせ)のような形で展開している。服装は原作の人物属性を大袈裟に表現したものになっている。佐清のマスクは演じる俳優の頭部を正確に写した被り物で、単に異様に大きくすることでマスクだと判るようにしている。

犬神家一族の者は最初から最後まで同じ位置で立って発言するのを基本とし、佐武はその場で首と菊人形の胴体に、佐智はその場で椅子に縛り付けられた死体に、静馬はその場で盥(湖の代わり)から突き出た2本の足になる。佐智は元々珠世の隣にいて、単にクローズアップされた状況で昏睡させ、その場の足元で横になって強姦未遂に及ぶ。小夜子は一言も発言せず、特に後半では発狂した様子を黙々と演じ続けている。

金田一、橘署長ら警察関係者、古館弁護士は、一族の者の間や周囲を動き回る。大山神主、猿蔵、柏屋の亭主と女中は必要に応じて書院の窓の外から発言し、あるいは窓から入ってくる。青沼菊乃は回想シーンのみに登場し、宮川香琴としての登場部分は省略されている。若林豊一郎は遺言状の写しを入手したことと殺害されたこととを1つの回想シーンで表現しているため、原作と矛盾する映像になっている。

キャスト
スタッフ

2023年版編集

犬神家の一族
ジャンル テレビドラマ
原作 横溝正史
脚本 小林靖子
演出 吉田照幸
出演者 吉岡秀隆
大竹しのぶ
国・地域   日本
言語 日本語
製作
制作統括 樋口俊一(NHK
西村崇(NHK EP
大谷直哉(ザロック)
放送
放送チャンネルNHK BSプレミアム
NHK BS4K
映像形式文字多重放送
音声形式ステレオ放送
放送国・地域  日本
放送期間前編:2023年4月(予定)
後編:2023年4月(予定)
放送分各90分
回数2(予定)
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NHKが制作を手掛ける「金田一耕助」シリーズの第4弾として、2023年4月NHK BSプレミアムNHK BS4Kで前・後編仕立てで放送予定[14]

キャスト編集

スタッフ編集

舞台編集

劇団ヘロヘロQカムパニー編集

「劇団ヘロヘロQカムパニー」第34回公演で、金田一シリーズとしては『八つ墓村』『悪魔が来りて笛を吹く』『獄門島』に続く4作目。2017年4月22日~30日に全労済ホール/スペース・ゼロで上演された[16]

  • 一部1976年の映画版の要素があるが、ほぼ原作に忠実に舞台化された作品。
  • (回り舞台)や映像を使った大掛かりな舞台装置で、湖や屋敷を再現している。
キャスト
スタッフ
  • 脚本・演出 : 関智一[16]

新派編集

新派130年にあたる2018年11月に、特別公演として大阪松竹座新橋演舞場で上演[17][18]。大阪松竹座での公演は11月1日から10日[19]、新橋演舞場での公演は同年11月14日から11月25日まで行なわれた[20]。シナリオは原作に忠実で、琴の師匠が重要な鍵を握っており、映画版を見慣れた人も楽しめる内容になっていた。

キャスト[18]
スタッフ

漫画編集

  • 犬神家の一族 (作画:つのだじろう講談社漫画文庫)
    • 復員兵という佐清の設定を、火事で火傷を負ったという設定に変更して、現代劇にアレンジしている。また、犬神家が狼を祀る奇怪な宗教を統べる一族であるという、伝奇ホラー風味の味付けがなされている。金田一は洋装でメガネをかけた若干ひょうきんなキャラクターとされているほか、佐清がジーンズ姿であるなど、映画版とはビジュアルイメージが重複しないようにオリジナリティを追求している。
  • 犬神家の一族 (作画:いけうち誠一、講談社コミックブックシリーズ)
  • 犬神家の一族 (作画:JET角川書店あすかコミックスDX)
  • 犬神家の一族 (作画:長尾文子秋田書店サスペリアミステリーコミックス)
  • 犬神家の一族 (作画:小山田いくぶんか社『ホラー・ミステリー』掲載、単行本未刊)

ゲーム編集

関連イベント編集

エキスポランド
「人が演じる幽霊屋敷」『犬神家の一族』[21]

関連人物編集

 
片倉佐一
片倉兼太郎 (2代目)
片倉佐一
片倉財閥総帥。実兄の片倉兼太郎から家督を継承し、二代目兼太郎を襲名した。自身の率いる片倉製糸紡績株式会社尾澤福太郎の率いる株式会社尾澤組を合併させ、日本国内の製糸所の7割を手中に収めたことから、「日本のシルクエンペラー」と呼ばれた。片倉財閥は長野県諏訪地域発祥の信州財閥であり、諏訪湖畔に温泉施設「片倉館」を建設している。佐一は1934年に長野県で没しているが、横溝正史は同年より長野県で療養生活を送っており、のちに本作を執筆する際に参考にしたと推定されている[22]。ただし、佐一没後の家督は長男の片倉脩一が継承しており、本作のような相続争いは発生していない。

その他編集

  • テレビ朝日火曜ミステリー劇場」の『なんでも屋探偵帳 はりつけ島連続殺人』(1990年)は、本作の犬神家をもじった「大神家」が登場、当主の名前も犬神佐兵衛をもじった“大神右兵衛”となっており、本作のパロディ的な作品となっている。

脚注編集

[脚注の使い方]

注釈編集

  1. ^ 「斧、琴、菊(よき、こと、きく)」は歌舞伎、音羽屋尾上菊五郎役者文様で、横溝は音羽屋よりクレームが来ないかヒヤヒヤしたと語っている[2]。2006年の映画『犬神家の一族』において7代目尾上菊五郎の息子尾上菊之助 (5代目)が佐清役を、菊五郎の妻の富司純子が松子役を演じた。
  2. ^ 週刊文春』が推理作家や推理小説の愛好者ら約500名のアンケートにより選出したもので、他の横溝作品では『獄門島』が1位、『本陣殺人事件』が10位、『八つ墓村』が57位、『悪魔の手毬唄』が75位に選出されている。なお、1985年版では本作品はノーランクだった。
  3. ^ 作中で「大股開きで逆さまになる」という姿勢の遺体が発見されたのは犬神佐清ではなく、入れ替わっていた青沼静馬である。
  4. ^ 当時の明治民法(旧民法)では、戸主が死亡すると次代戸主の家督相続人に全財産が渡されるが、この家督相続人(原則、前戸主の直系卑属)は第970条の規定により、子供同士なら庶子(松子たちも庶子だが)や年齢が若くても男が優先であった。
  5. ^ 原則として、松子・竹子・梅子はそれぞれ、相続財産の6分の1を取得しうる。
  6. ^ 意図的な書き分けなのかどうか不明だが、野々宮大弐とその養子(祝子の夫)は「神官」、大山泰輔は「神主」である。戦後の国家神道解体神官という職制が廃止されたことを反映している可能性も考えられる。
  7. ^ 加藤武は1976年の映画版にも橘署長役で出演している。
  8. ^ 三田佳子扮する松子の髪型は原作小説の表紙絵の髪型を忠実に再現したものとなっている。
  9. ^ 佳那晃子は1976年の映画版では菊乃を演じている。
  10. ^ 岸田今日子は1976年の映画版にも香琴役で出演している。
  11. ^ 江幡高志は、1970年のテレビドラマ『蒼いけものたち』では江波多寛児名義で畑野栄蔵役を演じている。

出典編集

  1. ^ ぴあ (2007年12月1日). “正月映画は日本映画・時代劇が人気をリードする!”. 2006年12月15日時点のオリジナルよりアーカイブ。2009年2月13日閲覧。
  2. ^ 『横溝正史読本』(2008年改版)小林信彦編、角川文庫2008年 第二部 自作を語る「『八つ墓村』と『犬神家の一族』」。
  3. ^ 『真説 金田一耕助』 横溝正史、角川文庫、1979年 「私のベスト10」。
  4. ^ 文藝春秋』写真資料部 (2011年7月11日). “昭和随一の流行作家は超遅咲き 横溝正史”. 本の話WEB. 文藝春秋社. 2017年5月10日閲覧。
  5. ^ 映画(総合)”. 週間高世帯視聴率番組. 2021年6月19日閲覧。
  6. ^ “NEWS加藤シゲアキ、金田一耕助に!「犬神家の一族」SPドラマ、イブに放送”. シネマトゥデイ (株式会社シネマトゥデイ). (2018年10月26日). https://www.cinematoday.jp/news/N0104492 2018年10月26日閲覧。 
  7. ^ “賀来賢人『犬神家の一族』でスケキヨ役に起用「丁寧に演じられたら」”. ORICON NEWS (oricon ME). (2018年11月19日). https://www.oricon.co.jp/news/2123709/full/ 2018年11月19日閲覧。 
  8. ^ “加藤シゲアキ主演「犬神家の一族」ヒロインは高梨臨、「新しい珠世を演じられれば」”. 映画ナタリー (ナターシャ). (2018年11月29日). https://natalie.mu/eiga/news/309929 2018年12月5日閲覧。 
  9. ^ a b c “黒木瞳、犬神家で松子役に「身の引き締まる思い」”. 日刊スポーツ (日刊スポーツ新聞社). (2018年12月4日). https://www.nikkansports.com/entertainment/news/201812040000933.html 2018年12月5日閲覧。 
  10. ^ TVステーション 関東版』2020年1号、ダイヤモンド社、 80頁。
  11. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s 令和初の犬神家は、小型犬のようにせっかちだった ~『犬神家の一族』2020エディション~”. 長岡京エイリアンブログ. 2021年8月22日閲覧。
  12. ^ “【出演情報】NHK BSプレミアム ~シリーズ横溝正史短編集Ⅱ~ 第3回「犬神家の一族」に佐清役で出演します”. Sony Music Artists Inc. (2020年1月27日). https://www.sma.co.jp/s/sma/news/detail/87158?ima=0000#/ 2020年2月7日閲覧。 
  13. ^ “久保田紗友のインスタグラム”. Instagram. (2020年1月29日). https://www.instagram.com/p/B75VvPMg6xH/ 2020年9月28日閲覧。 
  14. ^ a b c d e NHKドラマ「犬神家の一族」に吉岡秀隆と大竹しのぶ、脚本は小林靖子が担当”. 映画ナタリー. ナターシャ (2023年1月18日). 2023年1月18日閲覧。
  15. ^ 「犬神家の一族」制作開始のお知らせ”. NHKドラマ. 日本放送協会 (2023年1月18日). 2023年1月19日閲覧。
  16. ^ a b "★第34回公演「犬神家の一族」公演詳細★”. ヘロQニュース (2017年2月1日). 2019年2月15日閲覧。
  17. ^ “「犬神家の一族」が新派130年に登場、ゲストに佐藤B作”. ステージナタリー (ナターシャ). (2017年12月22日). https://natalie.mu/stage/news/262316 2018年1月2日閲覧。 
  18. ^ a b 「新派百三十年 十一月特別公演 犬神家の一族」2018年11月(公式パンフレット)
  19. ^ “十一月新派特別公演 犬神家の一族 会場 大阪松竹座”. 松竹. https://www.shochiku.co.jp/play/schedules/detail/2018_inugamike_shochikuza/ 2018年9月16日閲覧。 
  20. ^ “十一月新派特別公演 犬神家の一族 会場 新橋演舞場”. 松竹. https://www.shochiku.co.jp/play/schedules/detail/2018_inugamike_enbujyo-2/ 2018年9月16日閲覧。 
  21. ^ 遊園地/お化け屋敷 本当に怖いお化け屋敷ランキング! エキスポランド「犬神家の一族」”. All About公式SNS. 2019年1月26日閲覧。
  22. ^ 内田隆三「八つ墓村 / 犬神家 - 非対称性の社会学」『i feel-評論紀伊國屋書店

関連項目編集

外部リンク編集