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犬神家の一族

日本の小説、メディアミックス作品
金田一耕助 > 犬神家の一族

犬神家の一族』(いぬがみけのいちぞく)は、横溝正史の長編推理小説。「金田一耕助シリーズ」の一つ。

犬神家の一族
著者 横溝正史
発行日 1972年6月
ジャンル 小説
日本の旗 日本
言語 日本語
ページ数 414
コード ISBN 4041304059
ISBN 978-4041304051(文庫本)
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横溝作品としては『八つ墓村』と並んで映像化回数が最も多い作品で、2006年12月公開作品を含め映画が3本、テレビドラマが6作品公開されており、特に市川崑監督による1976年公開の映画版は、メディアによって「日本映画の金字塔」と称されることもある[1]

目次

概要編集

雑誌『キング』に1950年1月号から1951年5月号まで掲載された作品。『獄門島』のように殺人に一つひとつ意味を付与して欲しいとの編集サイドからの注文に応じ、家宝の「斧、琴、菊(よき、こと、きく)」[注釈 1]による見立て殺人が考案された。

当時、横溝は初回を激賞した編集長から「作品を3年続けて欲しい」と要望されたものの、それだけの大長編を書く準備がなかったため断らざるをえなかったが、「この言葉には非常にやる気が出た」と後年語っている。

当初は通俗長編であるとして、権田萬治による『日本探偵作家論』(1975年)などに見られるように専門家の評価は低かったが、1976年角川春樹の鶴の一声での映画化と、横溝正史シリーズの第一作としてのテレビドラマ化とで人気が一気にあがった。また、当初は欠点とされていた犯人とトリック全体の関連性なども、むしろ時代の先取りとして評価する声も少なくない。作品中の犯人の「無作為の作為」が田中潤司をはじめ推理小説研究家の間で見直され、田中は「金田一もの」のベスト5を選出した中で、本作を『獄門島』『本陣殺人事件』に次いで第3位に挙げている[3]。「東西ミステリーベスト100」(『週刊文春』)2012年版国内編で、本作品は39位に選出されている[注釈 2][注釈 3]

本作の映画化を皮切りに、旧作が次々に映画化、復刊された。作者はこのとき70歳を過ぎていたが、世間の期待に応えるように旺盛に新作を発表し、1981年に没する直前まで書き続けた[4]

本作をモチーフにしたキャラクターや演出は後年に渡って広く知られ、漫画、アニメ、ゲーム、ドラマなどさまざまなメディアで数多く制作されている。それらの中には、「ゴムマスクを着用した佐清の容姿や名称」「大股開きで逆さまになって下半身だけ露出した死体」[注釈 4]「犬神家をもじった名称の一族による遺産騒動」などの共通性を持つものが多い。

あらすじ編集

昭和2×年2月、那須湖畔の本宅で信州財界の大物・犬神佐兵衛(いぬがみさへえ)が裸一貫から築いた莫大な財産を残し、家族に見守られながら他界した。その遺産の配当や事業相続者を記した遺言状は、長女松子の一人息子佐清(すけきよ)が戦地から復員してから発表されることになっており、一族は佐清の帰りを待つところとなっていた。佐兵衛は生涯に渡って正妻を持たず、それぞれ母親の違う娘が3人、皆婿養子をとり、さらにそれぞれに息子が1人ずついたが、お互いが反目し合っていた。

同年10月、金田一耕助は東京から単身で犬神家の本宅のある那須湖畔を訪れた。犬神家の顧問弁護士を務める古館恭三の法律事務所に勤務する若林豊一郎から、「近頃、犬神家に容易ならざる事態が起こりそうなので調査して欲しい」との手紙を受け取ったためであった。那須ホテルを宿泊拠点とした金田一は、湖畔から犬神家の豪邸を望んでいたところ、犬神家に寄寓している野々宮珠世の乗っているボートが沈みかかっているのを目撃し、犬神家の下男の猿蔵とともに珠世を救出する。ボートには穴が開けられており、猿蔵の語るところによると、珠世が何者かに狙われたのはこれで3度目だという。その後、金田一がホテルに戻ったところ、若林が何者かによって毒殺されていた。知らせを聞いて駆けつけた古館の語るところによると、どうやら若林は犬神家の誰かに買収されて、法律事務所の金庫に保管している佐兵衛の遺言状を盗み見てしまったらしい。先行きに不安を感じる古館の依頼で、金田一は犬神家の遺産相続に立ち会うこととなった。

そんな中、ビルマの戦地で顔に大怪我を負ったためゴムマスクを被った姿で佐清が帰ってきた。佐兵衛の遺言状は古館弁護士によって耕助の立ち会いのもと公開されることになるが、その内容は

「全相続権を示す犬神家の家宝“斧(よき)・琴(こと)・菊(きく)”の三つを、野々宮珠世(佐兵衛の終世の恩人たる野々宮大弐の唯一の血縁、大弐の孫娘)が佐清、佐武、佐智の佐兵衛の3人の孫息子の中から配偶者を選ぶことを条件に、珠世に与えるものとする」

というものであった。さらに、珠世が相続権を失うか死んだ場合、犬神家の財産は5等分され3人の孫息子は各5分の1ずつを相続し、残り5分の2を佐兵衛の愛人・青沼菊乃の息子の青沼静馬が相続することを聞き及んで、3姉妹の憎悪と怒りは頂点に達する。

こうして3姉妹の仲はいよいよ険悪となり、珠世の愛を勝ち得んとしての争いが始まる一方、佐清は偽者の嫌疑をかけられ、手形(指紋)確認を迫られるが、松子がこれを拒否する。

そんな中、佐武が生首を「菊」人形として飾られて惨殺されると、一転して佐清が手形確認に応じ、佐清本人であることが確認される。同じころ、下那須の旅館に顔を隠した復員服の男が宿泊し、べっとりと血の付いた手ぬぐいを残して立ち去っていた。そして、佐武の通夜の後、珠世の寝室から復員服の男が現れ猿三ともみ合った後、逃走する。

その後、佐智が珠世を襲おうとして失敗した後、何者かに首を絞められて殺される。そして、その首に「琴」糸が巻き付けられていたことを聞いた松子、梅子、竹子の3姉妹は、家宝の斧・琴・菊と、佐兵衛の愛人・青沼菊乃とその息子の静馬にまつわる秘密を明かす。30年前、佐兵衛が菊乃に入れ込んだ挙句、犬神家の家宝の斧・琴・菊を渡してしまい、さらに菊乃が男児を出産したことを知った3姉妹は菊乃を襲撃した。3姉妹は彼女を激しく折檻した挙句、赤ん坊の尻に焼け火箸をあてがい、遂に観念して斧・琴・菊を差し出す菊乃に対し、さらに赤ん坊は佐兵衛の子どもではなく情夫の子どもであると無理やり一札書かせた。しかし、菊乃は「いつかこの仕返しをせずにはおかぬ。いまにその斧、琴、菊がおまえたちの身にむくいるのじゃ。」と言い放ったのだという。

事件の発生年について編集

本作は、一個人の遺言状が惨劇を引き起こす物語となっているが、昭和22年に施行された日本国憲法の下で改正された民法遺留分制度により、遺言状の効力には法的限界があるため[注釈 5]、事件発生年が問題とされることがある。原作では事件の起きた年を「昭和2×年」とぼかしているが、原作中に登場する人物の年齢が昭和24年(1949年)を基準に設定されていることから、下に示すように事件発生年は昭和24年と推定できる。

  • 野々宮珠世は大正13年(1924年)生まれで事件当時は26歳。
  • 犬神佐清は奉納手形に「昭和18年 23歳、酉年の男」と書き記しており、事件当時は29歳。
  • 犬神佐兵衛は17歳のときに野々宮大弐に保護され、事件が起きる半年前の2月に81歳で死去している。これだけでは年代を特定できないが、出会ったときに42歳であった野々宮大弐が明治44年に68歳で死去しているので、佐兵衛と大弐の邂逅は明治18年だったことがわかる。つまり、佐兵衛が81歳で死亡したのは昭和24年となる。
  • 注:登場人物の年齢は数え年である。

一方、1976年の映画では冒頭に「昭和22年(1947年)」とテロップが入る。また、これ以降の『横溝正史シリーズ・犬神家の一族』(1977年)、『金田一耕助シリーズ5・犬神家の一族』(1994年)、『プレミアムステージ・犬神家の一族』(2004年)、そして1976年版のリメイクである映画『犬神家の一族』(2006年)は、すべて昭和22年との設定を踏襲している。

登場人物編集

金田一耕助(きんだいち こうすけ)
飄々とした私立探偵
野々宮 珠世(ののみや たまよ)
犬神佐兵衛の恩人・野々宮大弐の孫。26歳。この世のものとは思えない戦慄的な美しさを持つ絶世の美女。頭がよく勘も鋭いが、長い孤独な境遇のため他人に本心を明かさぬところがあり、時に狡猾でもある。
20歳前に両親を相次いで亡くし、大弐を終生の恩人と慕う佐兵衛によって犬神家に引き取られた。何者かが仕掛けた罠に3度も掛かるが、危機一髪で助かった。佐兵衛の遺言で、犬神家の遺産相続の鍵を握ることとなった。

犬神家編集

犬神 佐兵衛(いぬがみ さへえ)
犬神財閥の創始者。信州財界の巨頭であり、製糸業などで巨万の富を築いたことから「日本の生糸王」と呼ばれた。享年81。元は放浪の孤児であり、信州那須神社神官野々宮大弐に、17歳の頃拾われ養育された。若い頃は玉のような美少年だった。生涯正妻を娶らず、娘の松子、竹子、梅子はそれぞれ違う女との間に生ませた子である。
犬神 松子(いぬがみ まつこ)
佐兵衛の長女。先年、夫とは既に死別している。52-53歳ほど。いつも凛とした佇まいをしていて勝気。細いながらも竹のように強靭な体格。1人息子の佐清を溺愛している。
犬神 佐清(いぬがみ すけきよ)
松子の1人息子。29歳。優しく律儀な性格で懐中時計の修理ができるほど器用。元は美青年だったがビルマ戦線で顔に怪我を負って復員してきたため、松子が東京で作らせたゴム製のマスク姿で犬神家へ戻ってきた。
犬神 竹子(いぬがみ たけこ)
佐兵衛の次女。小太りで小山のような体型。直情的な性格である。3姉妹はそれぞれ仲が悪いが、仮面の佐清を松子がでっちあげたという疑いを共有したため、妹の梅子と結託する。
犬神 寅之助(いぬがみ とらのすけ)
竹子の夫。赤ら顔の大男。犬神製糸東京支店長。
犬神 佐武(いぬがみ すけたけ)
竹子の息子。28歳。両親似で衝立のような体形。性格も傲岸不遜で態度が大きい。佐清の手形合わせの話で呼び出された珠世に強引に関係を迫るが、猿蔵に妨害されて未遂に終わる。
犬神 小夜子(いぬがみ さよこ)
竹子の娘。22歳。珠世ほどではないが美人。多少気が強いものの大人しい性格。従兄の佐智とは結婚前提の恋人同士で梅子夫婦公認の仲。佐智に思いを寄せる。佐智の子を妊娠しており、珠世には佐智を結婚相手に選ばないように牽制している。事件後、佐智が殺害されたショックで精神の平衡を崩してしまう。
犬神 梅子(いぬがみ うめこ)
佐兵衛の三女。3姉妹の中では一番美人だが、一番底意地が悪い。1人息子佐智に当初は佐兵衛翁から相続できる遺産を増やすため、小夜子に取り入って結婚するように指示していたが、遺言状公開後、小夜子に遺産の取り分がないと分かると息子に小夜子から珠世に乗り換えて結婚するように指示する。
犬神 幸吉(いぬがみ こうきち)
梅子の夫。小柄で色が白く、一見柔和そうな顔つきだが、よく動く黒目から腹黒さが伺える。犬神製糸神戸支店長。
犬神 佐智(いぬがみ すけとも)
梅子の息子。27歳。ほっそりして華奢な体格。一見落ち着きがなく臆病そうだが狡猾。祖父からの遺産増額が目当てで従妹の小夜子と結婚を前提に交際している。梅子から遺産相続のため、結婚相手を小夜子から珠世に乗り換えるよう指示されて以降、珠世に媚態の限りを尽くす。自分と結婚する以外の選択肢を封じるため、珠世を薬で眠らせて手篭めにしようとしたが、現場に潜伏していた「影の人」を名乗る顔を隠した復員風の男から妨害され、またその男から電話を受けた猿蔵が珠世を救出に来て失敗に終わる。

系譜編集

  • 犬神氏
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
犬神佐清
 
 
 
 
 
 
 
 
犬神松子
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
寅之助
 
 
犬神佐武
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
犬神佐兵衛
 
 
犬神竹子
 
 
犬神小夜子
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
幸吉
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
犬神佐智
 
 
 
 
 
 
 
 
 
犬神梅子
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
青沼静馬
 
 
 
 
 
 
 
青沼菊乃
 
野々宮大弐
 
 
 
 
 
野々宮祝子
 
野々宮珠世
 
 
 
 
晴世

犬神家の使用人・旧主家・血縁者編集

猿蔵(さるぞう)
珠世の世話役の下男。もとはみなしごだったため、子供の頃から祝子によって珠世と共に育てられ、珠世が犬神家に引き取られると、下男として犬神家に入った。珠世に非常に忠実で、生前の佐兵衛から“命に代えても珠世を守れ”と命じられているため、珠世の身辺の世話だけでなく護衛も務め、作中でたびたび珠世を助ける。「猿蔵」というのは本名ではなく、猿に似ていることから付けられた通称で、本名は不明。粗野かつ無口で少し思慮が足りないが、力が強く、佐武や佐智も持て余している。
野々宮 大弐(ののみや だいに)
那須神社の神官。珠世の祖父。故人。犬神佐兵衛の恩人。42歳の頃、佐兵衛少年を拾う。美少年だった佐兵衛との間には衆道の契り(男色関係)があったと地元では噂されている。
野々宮 晴世(ののみや はるよ)
大弐の妻。夫より20歳も若く、大弐が佐兵衛を救った時は22歳。大弐が男色家であったため処女妻。心優しく、神々しいばかりの美女であった。夫が佐兵衛ばかりを寵愛したため一時実家に帰っていたことがあり、佐兵衛が野々宮家を出て以後、野々宮家に戻り祝子を産む。珠世の祖母。故人。
野々宮 祝子(ののみや のりこ)
野々宮夫妻の娘で、珠世の実母。故人。
青沼 菊乃(あおぬま きくの)
佐兵衛が50歳を越したときに持った愛人。女工だったが、18-19歳の頃に囲われる。年齢は松子より若い。実は野々宮晴世の従姉妹の娘に当たる。富山の遠い親戚に当たる津田家を頼り、静馬を預けて以降、消息不明。
青沼 静馬(あおぬま しずま)
菊乃と佐兵衛の息子。母同様消息不明。富山にある母の遠縁の家に養子に出されており、戸籍名は津田静馬。津田家から中学に通い、卒業後就職。21歳で徴兵され、その後数度の除隊と応召を繰り返す。年齢は甥・佐清と同じ29歳。

その他の関係者編集

古館 恭三(ふるだて きょうぞう)
弁護士。古館法律事務所所長。犬神家の顧問弁護士。佐兵衛より、遺言状の管理を任されていた。殺された若林豊一郎に代わり、金田一耕助に調査を依頼する。やがて金田一耕助に親愛の情を抱くようになる。
若林 豊一郎(わかばやし とよいちろう)
古館法律事務所に勤務。犬神家の遺産相続問題に関して金田一に捜査依頼をするが、金田一と会う前に毒殺された。
大山 泰輔(おおやま たいすけ)
那須神社の現在の神主[注釈 6]。神社の宝蔵から野々宮大弐と犬神佐兵衛が残した封印文書群が入った唐櫃を発見し、秘められていた事実を明らかにする。
宮川 香琴(みやがわ こうきん)
松子のの師匠。目が怪我で不整形になっていてかつ不自由。実は行方不明になっていた青沼菊乃。
橘(たちばな)
那須警察署の署長
藤崎
那須警察署の鑑識課員。ゴムマスクを被った佐清の手形を那須神社に奉納されていたものと照合した。
楠田
那須病院の院長。警察嘱託医として、殺人被害者の検死と解剖を担当した。
志摩 久平
下那須の宿屋「柏屋」の主人。顔を隠した不審な復員兵が宿泊していたことを警察に届け出た。

映画編集

市川崑監督・石坂浩二主演による1976年版は、1980年代にかけて一世を風靡することになる角川春樹事務所の第1回映像作品であり、金田一耕助を初めて原作どおりの着物姿で登場させたことでも知られる。横溝本人もゲスト出演(民宿・那須ホテルの主人役)している。大野雄二による主題曲「愛のバラード」も有名である。

2006年公開の映画版は、市川監督・石坂主演によって30年ぶりにリメイクされたものである。

映像作品での「波立つ水面から突き出た足」のシーンが有名であるが、原作では季節が初冬で湖面は凍った状態、死体はパジャマを着たまま、湖に突っ込んでいるのはヘソから上である。「斧、琴、菊」の見立て殺人の最後に残った「斧(ヨキ)」について、原作では屋敷から斧やそれに類する道具が一切処分されていたため、犯人は佐清(スケキヨ)を絞殺した後、さかさまにして下半身だけを見せることによって「ヨキ(ケス)」を表現している(この判じ物はすぐに金田一によって解かれている)。しかし映像作品では絞殺から斧による惨殺に変更されていることが多い。なお、同映画では寺田稔(猿蔵役)のスタントを務めた青木湖畔の旅館の主人が逆さ死体を演じている[5]

また佐清のゴムマスクは、原作では美男子だった佐清の顔をそのまま写したもので、初めて見る人、目の悪い人には、すぐさま仮面とは分からないという描写があるが、映像作品では頭から首まですっぽり覆うものが定番になっている。また、原作ではゴムマスクの色は記されていないが、映像作品では白いゴムマスクが定番になっている。

1954年版編集

犬神家の謎 悪魔は踊る』は1954年8月10日に公開された。東映、監督は渡辺邦男、主演は片岡千恵蔵

1976年版編集

1976年10月16日に公開された。角川春樹事務所、監督は市川崑、主演は石坂浩二

2006年版編集

2006年12月16日に公開された。東宝、監督は市川崑、主演は石坂浩二。

テレビドラマ編集

1970年版編集

蒼いけものたち』は、日本テレビ系列の「火曜日の女シリーズ」(毎週火曜日21時30分 - 22時26分)で1970年8月25日から9月29日まで放送された。

キャスト
スタッフ
その他
  • 金田一は登場しない。
  • 時代を現代(1970年当時)に設定している。
  • 登場人物はすべて原作と名前が変わっている。
  • 清文(佐清)は、報道カメラマンとしてカンボジア内戦を取材中に戦闘に巻き込まれて顔を負傷したため、ゴムマスクをかぶっているという設定になっている。
  • 舞台が長野県から群馬県に変更されている。

1977年版編集

横溝正史シリーズI・犬神家の一族』は、TBS系列1977年4月2日から4月30日まで毎週土曜日22時 - 22時55分に放送された。

テレビドラマ版において金田一耕助を最も多く演じている古谷一行が初めて金田一役を演じたのが本作であり、初放映時の最高視聴率は40パーセントを超えた。 CMに移る前に「よき、こと、きく…」と佐兵衛仏前の紋章の画面になる。また各回の終わりに金田一耕助がコケるシーンになる。

概ね原作通りに進行するが、いくつかの要素が省略されている一方で、原作に無い(原作と積極的には矛盾しない)細かい設定(会話のやりとりなど)が多数追加されている。原作からの主な変更点は以下の通りである。

  • 青沼菊乃は病死していると判明しており、宮川香琴は全く登場しない。3姉妹が青沼菊乃を襲撃したとき静馬は記憶が明確に残る程度にまで成長しており、梅子が静馬を押さえつけて松子が胸に火傷を負わせる。
  • 金田一は若林を訪ねてまず古館の事務所を訪れ、古館の紹介で那須ホテルへ宿泊しており、若林殺害後には警察へ連行される前に那須ホテルの女中に若林の手紙を古館へ届けさせていた。そのため、古館は早い段階で金田一のことを把握している。
  • 金田一が最初に珠世を見たときボート上では事故は起こらず、猿蔵が運転する自動車で帰ろうとした途端にブレーキ故障で事故となり、金田一が駆けつける。このとき猿蔵は事故が3回目だと発言しているが、他の2回の内容は判らない。
  • 家宝はそれ自体が斧琴菊の形ではなく、斧琴菊が彫刻されている。
  • 佐清(静馬)は通常は手袋をしており、時計を触るときには手袋越しでは巧くいかず手袋を外した。
  • 佐武の胴体はボートに載せられた状態で発見され、大量の菊で飾られていた。
  • 佐清は佐智に顔を見られてしまったため静馬に殺害を命じられる。しかし旧宅へ戻ったところ、松子が拘束されている佐智を絞殺してしまった(松子が旧宅へ行った理由や松子自身のアリバイが成立した理由は不明)。そのため佐清は琴糸を巻きつける工作のみを行ったが、動転して佐智の位置を変えてしまい、絞殺の際にかぶせていた上着も元に戻し忘れた。なお、佐智が一旦自力で脱出して本宅へ戻る設定は無い。
  • 猿蔵は珠世の不在に気付いて旧宅まで探しに行って発見しており、佐清からの連絡があったわけではない。猿蔵が佐智を置き去りにして珠世を連れ帰ったことが判明したあと、旧宅へは梅子や珠世も同行した。小夜子が発狂する設定は無い。
  • 3姉妹の母親たちの部屋(佐兵衛の死まで開かずの間になっていた)が描写されている。松子が自分の母の寝室で佐兵衛が苦手としていた麝香を能面に焚き染め、その能面を犯行時に着用していたため、佐智殺害現場の上着にも麝香の匂いが残っていた。
  • 佐清と静馬は同一小隊に居た設定である。佐清は将校ではなく下士官だったが、結果的に負傷した静馬を置き去りにする形になってしまい、それも負い目になっていた。
  • 大山神主は佐兵衛の過去を悲劇拡大防止のために確認したいという金田一と古館の強い依頼で封印を解き、大山自身も文書の内容を初めて見る。原作通り珠世が佐兵衛の孫であることが判明するが、それは公表されない。したがって、静馬が珠世と叔父姪の関係と知って結婚を目指せなくなり窮する設定も無く、佐清との結婚を迫る松子に対して珠世が佐清(静馬)に対する漠然とした違和感を理由に回答を保留する展開となる。不安を抱いた松子は佐清(静馬)の背嚢を探って青沼菊乃の写真を所持していることを知り、持ち出して佐兵衛の遺影の前で焼き捨てる。そのあと静馬が松子に屈服を迫って斧で殺害される。遺体には「スケキヨ」の文字が書かれて「ヨキケス」の見立てが判りやすくなっていた。
  • 佐清は松子の舞を珠世が見ているところへ現れ、その直後に逮捕される。派手な雪中逃走劇は展開していない。
  • 松子は犯行を認めたあと支度をするといって自室に戻り、誰にも見られずに毒煙草で自殺した。
キャスト

1990年版編集

横溝正史傑作サスペンス・犬神家の一族』は、テレビ朝日系列1990年3月27日の火曜日19時2分 - 21時48分に放送された。

キャスト
スタッフ
その他
  • 本作の金田一は、白いスーツにハンチング帽、丸メガネという出で立ちで、池田明子という“助手”を連れている。

1994年版編集

横溝正史シリーズ5・犬神家の一族』は、フジテレビ系列2時間ドラマ金曜エンタテイメント」(毎週金曜日21時 - 22時52分)で1994年10月7日に放送された。

キャスト
その他
  • 舞台は岡山県香賀美市で、市内の鏡美神社で佐兵衛が行き倒れていた。東京に関わるエピソードは全て神戸に変更されている。
  • 青沼菊乃は静馬出産後に殺害されていることが冒頭で明示される。正妻の座を狙った菊乃が松子を殺害しようとして、過剰防衛で殺害した松子の単独犯行であることが終盤で明らかになる。
  • 松子、竹子、梅子は佐兵衛の愛人で、佐清、佐武、佐智は異母兄弟、珠世も野々宮大弐・晴世の娘である。珠世が実は佐兵衛の末裔という設定は無い。
  • 古館弁護士は2代にわたる犬神家顧問で、先代の名が古館恭三、当代は金田一の戦友である。
  • 金田一には、佐兵衛の女性関係ゆえに自称相続人が現れる可能性があるという前提で、その調査を松子が依頼している。
  • 遺言状に青沼静馬の名は出てこない。
  • 佐武の首は菊人形にはなっておらず、単なる盆栽である。
  • 佐智は珠世が岸辺に止めたボートで寝ているところへ自動車で現れる。猿蔵は佐清がボートに残したメモに従って珠世の救出に向かった。
  • 佐智の死体は屋根から逆さに吊されていた。
  • 佐清になりすましていた静馬は松子の寝こみを襲い、返り討ち(戦時自決用の毒薬を無理矢理飲まされる)に遭う。
  • 佐武と佐智の殺害実行犯は静馬で、佐清の犯行と考えた松子が事後処理をしており、佐清は単なる目撃者であった。

2004年版編集

金田一耕助シリーズ・犬神家の一族』は、フジテレビ系列の「プレミアムステージ」(毎週土曜日21時 - 22時54分)で2004年4月3日に放送された。

キャスト
その他
  • 冒頭の「誰も知らない金田一耕助」というドラマオリジナルで、『本陣殺人事件』の冒頭で言及されていた金田一のアメリカ時代のエピソードが描かれた。
  • 青沼菊乃は既に死亡しており、青沼菊乃=宮川香琴という設定はない。
  • 見立て殺人の「斧」は、映像化作品のなかでは最も原作に忠実である。

2018年版編集

スペシャルドラマ『犬神家の一族』は、2018年12月24日21時30分 - 23時33分にフジテレビ系列で放送された[6]

キャスト
スタッフ
その他
  • 大弐と佐兵衛の男色や、佐兵衛と晴世の公認不倫のエピソードがカットされたため、珠世が実は佐兵衛の孫という設定も無くなり、単に恩人の孫を養子として引き取っただけになっている。その結果、原作や他の映像化作品に見られる過去の因縁の忌まわしさという部分はやや薄れている。
  • 原作では明らかでない橘署長と藤崎鑑識課員のフルネームが、テレビ局が公表した登場人物相関図に記載されている。
  • 犬神小夜子は登場しない。
  • 見立て殺人の「斧」の表現方法は、原作に忠実である。
  • 青沼静馬の遺体は、珠世が疑われる可能性を松子に指摘された猿蔵が遺棄した。猿蔵は愚者を装っているが、実は「ヨキケス」の見立てを発案できるほどの知恵があった。
  • 宮川香琴=青沼菊乃という設定はカットされている。
  • 佐清が顔を隠して宿屋に泊まるシーンがカットされている。

舞台編集

劇団ヘロヘロQカムパニー編集

「劇団ヘロヘロQカムパニー」第34回公演で、金田一シリーズとしては『八つ墓村』『悪魔が来りて笛を吹く』『獄門島』に続く4作目。2017年4月22日~30日に全労済ホール/スペース・ゼロで上演された[10]

キャスト
スタッフ
  • 脚本・演出 : 関智一[10]
その他
  • 一部1976年の映画版の要素があるが、ほぼ原作に忠実に舞台化された作品。
  • (回り舞台)や映像を使った大掛かりな舞台装置で、湖や屋敷を再現している。

新派編集

新派130年にあたる2018年11月に、特別公演として大阪松竹座新橋演舞場で上演[11][12]。大阪松竹座での公演は11月1日から10日[13]、新橋演舞場での公演は同年11月14日から11月25日まで行なわれた[14]

キャスト[12]
スタッフ

漫画編集

  • 犬神家の一族 (作画:つのだじろう講談社漫画文庫)
    • 復員兵という佐清の設定を、火事で火傷を負ったという設定に変更して、現代劇にアレンジしている。また、犬神家が狼を祀る奇怪な宗教を統べる一族であるという、伝奇ホラー風味の味付けがなされている。金田一は洋装でメガネをかけた若干ひょうきんなキャラクターとされているほか、佐清がジーンズ姿であるなど、映画版とはビジュアルイメージが重複しないようにオリジナリティを追求している。
  • 犬神家の一族 (作画:いけうち誠一、講談社コミックブックシリーズ)
  • 犬神家の一族 (作画:JET角川書店あすかコミックスDX)
  • 犬神家の一族 (作画:長尾文子秋田書店サスペリアミステリーコミックス)
  • 犬神家の一族 (作画:小山田いくぶんか社『ホラー・ミステリー』掲載、単行本未刊)

ゲーム編集

関連イベント編集

エキスポランド
「人が演じる幽霊屋敷」『犬神家の一族』[15]

関連人物編集

片倉佐一
片倉財閥総帥。実兄の片倉兼太郎から家督を継承し、二代目兼太郎を襲名した。自身の率いる片倉製糸紡績株式会社尾澤福太郎の率いる株式会社尾澤組を合併させ、日本国内の製糸所の7割を手中に収めたことから、「日本のシルクエンペラー」と呼ばれた。片倉財閥は長野県諏訪地域発祥の信州財閥であり、諏訪湖畔に温泉施設「片倉館」を建設している。佐一は1934年に長野県で没しているが、横溝正史は同年より長野県で療養生活を送っており、のちに本作を執筆する際に参考にしたと推定されている[16]。ただし、佐一没後の家督は長男の片倉脩一が継承しており、本作のような相続争いは発生していない。

脚注編集

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注釈編集

  1. ^ 「斧、琴、菊(よき、こと、きく)」は歌舞伎、音羽屋尾上菊五郎役者文様で、横溝は音羽屋よりクレームが来ないかヒヤヒヤしたと語っている[2]。2006年の映画『犬神家の一族』において7代目尾上菊五郎の息子尾上菊之助 (5代目)が佐清役を、菊五郎の妻の富司純子が松子役を演じた。
  2. ^ 週刊文春』が推理作家や推理小説の愛好者ら約500名のアンケートにより選出したもので、1985年版では本作品はノーランクだった。
  3. ^ 他の横溝作品では『獄門島』が1位、『本陣殺人事件』が10位、『八つ墓村』が57位、『悪魔の手毬唄』が75位に選出されている。
  4. ^ 作中で「大股開きで逆さまになる」という姿勢の遺体が発見されたのは犬神佐清ではなく、入れ替わっていた青沼静馬である。
  5. ^ 原則として、松子・竹子・梅子はそれぞれ、相続財産の6分の1を取得しうる。
  6. ^ 意図的な書き分けなのかどうか不明だが、野々宮大弐とその養子(祝子の夫)は「神官」、大山泰輔は「神主」である。戦後の国家神道解体神官という職制が廃止されたことを反映している可能性も考えられる。
  7. ^ 加藤武は1976年の映画版にも橘署長役で出演している。
  8. ^ 三田佳子扮する松子の髪型は原作小説の表紙絵の髪型を忠実に再現したものとなっている。
  9. ^ 佳那晃子は1976年の映画版では菊乃を演じている。
  10. ^ 岸田今日子は1976年の映画版にも香琴役で出演している。
  11. ^ 江幡高志は、1970年のテレビドラマ『蒼いけものたち』では江波多寛児名義で畑野栄蔵役を演じている。

出典編集

  1. ^ ぴあ (2007年12月1日). “正月映画は日本映画・時代劇が人気をリードする!”. 2006年12月15日時点のオリジナルよりアーカイブ。2009年2月13日閲覧。
  2. ^ 『横溝正史読本』(2008年改版)小林信彦編、角川文庫2008年 第二部 自作を語る「『八つ墓村』と『犬神家の一族』」。
  3. ^ 『真説 金田一耕助』 横溝正史、角川文庫、1979年 「私のベスト10」。
  4. ^ 文藝春秋』写真資料部 (2011年7月11日). “昭和随一の流行作家は超遅咲き 横溝正史”. 本の話WEB. 文藝春秋社. 2017年5月10日閲覧。
  5. ^ 北山美紀・水原文人「メイキング・オブ・犬神家の一族」『プレミア日本版』2002年11月号、アシェット婦人画報社、93-103頁。
  6. ^ “NEWS加藤シゲアキ、金田一耕助に!「犬神家の一族」SPドラマ、イブに放送”. シネマトゥデイ (株式会社シネマトゥデイ). (2018年10月26日). https://www.cinematoday.jp/news/N0104492 2018年10月26日閲覧。 
  7. ^ “賀来賢人『犬神家の一族』でスケキヨ役に起用「丁寧に演じられたら」”. ORICON NEWS (oricon ME). (2018年11月19日). https://www.oricon.co.jp/news/2123709/full/ 2018年11月19日閲覧。 
  8. ^ “加藤シゲアキ主演「犬神家の一族」ヒロインは高梨臨、「新しい珠世を演じられれば」”. 映画ナタリー (ナターシャ). (2018年11月29日). https://natalie.mu/eiga/news/309929 2018年12月5日閲覧。 
  9. ^ a b c “黒木瞳、犬神家で松子役に「身の引き締まる思い」”. 日刊スポーツ (日刊スポーツ新聞社). (2018年12月4日). https://www.nikkansports.com/entertainment/news/201812040000933.html 2018年12月5日閲覧。 
  10. ^ a b "★第34回公演「犬神家の一族」公演詳細★”. ヘロQニュース (2017年2月1日). 2019年2月15日閲覧。
  11. ^ “「犬神家の一族」が新派130年に登場、ゲストに佐藤B作”. ステージナタリー (ナターシャ). (2017年12月22日). https://natalie.mu/stage/news/262316 2018年1月2日閲覧。 
  12. ^ a b 「新派百三十年 十一月特別公演 犬神家の一族」2018年11月(公式パンフレット)
  13. ^ “十一月新派特別公演 犬神家の一族 会場 大阪松竹座”. 松竹. https://www.shochiku.co.jp/play/schedules/detail/2018_inugamike_shochikuza/ 2018年9月16日閲覧。 
  14. ^ “十一月新派特別公演 犬神家の一族 会場 新橋演舞場”. 松竹. https://www.shochiku.co.jp/play/schedules/detail/2018_inugamike_enbujyo-2/ 2018年9月16日閲覧。 
  15. ^ 遊園地/お化け屋敷 本当に怖いお化け屋敷ランキング! エキスポランド「犬神家の一族」”. All About公式SNS. 2019年1月26日閲覧。
  16. ^ 内田隆三「八つ墓村 / 犬神家 - 非対称性の社会学」『i feel-評論紀伊國屋書店

関連項目編集

外部リンク編集